Fate/kaleid liner~指輪の魔術師~ 作:ほにゃー
「まさか一年で帰ってくるとは思わなかったわ」
遠坂凛は夕焼け色に染まる空港で一人そう呟く。
凛は魔術師だ。
ロンドン時計塔の魔術師にして、そこで主席候補になるぐらい優秀な魔術師。
『久々の帰郷、気分はどうですか、マスター?』
凛に声を掛けたのは現在、彼女が持つキャスターの中にある魔術礼装「カレイドステッキ」のマジカルルビー。
魔法少女が持っていそうな魔法のステッキの様な見た目で、先端は真ん中をくり抜き、そこに星をはめ込み、その両隣に羽根の装飾品が付いている。
話が出来る魔法のステッキの様なものだ。
「別に、どうとでも。てか、アンタよく税関通ったわね」
「はぁ~、湿っぽくて雑多な国です事」
その時、凛の背後から声がし、その声の主に凛は苛立ちと殺意を憶えた。
「エレガンスの欠片もない、ホント、どっかの誰かさんみたいですわ」
高飛車な性格に、お嬢様口調。
その少女の名はルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト。
凛と同じ魔術師で、ことあるごとに凛に喧嘩を仕掛けている。
それに対し、凛もその喧嘩を買っている。
「ルビー、さっきの言葉訂正するわ。こんなバカと一緒に帰ってくるなんて反吐が出るわ!」
「……それはこちらの方ですわ!元々こうなったのも全て貴方が原因なのですよ!」
「自分の事は棚に上げ解いて良く言うわ、この縦ロール」
「なんですって!?」
公共の場で行き成り喧嘩を始める二人にルビーとそして、ルビーと対になる魔術礼装「カレイドステッキ」で、ルビーの妹であるマジカルサファイアは呆れる。
『公共の場での喧嘩は止して下さい、マスター』
『ホントに恥ずかしい人達ですね』
「はぁ~……先が思いやられる」
最後にそう呟いたのは、二人の喧嘩を背後から見ていた一人の少年だった。
海斗・F・ディオール。
彼女たちと魔術師であり、ディオール家の当主でもある。
彼女たちが何故日本に居るかと言うと、それはある任務の為だ。
凛は魔導元帥ゼルレッチの弟子に志願しようとした直前にルヴィアと時計塔内で大乱闘を起こしてしまい、そのため弟子入りの条件および時計塔からの懲罰としてゼルレッチにある物の回収を命じられ、ルヴィアとともにここ、冬木にやってきた。
海斗はと言うと、海斗はディオール家の当主ではあるが、まだ子供であり、屋敷や財産等はディオール家と付き合いの長い、エーデルフェルト家が後見人として管理している。
そして、海斗一人をロンドンに残すのは忍びないとして海斗も連れてこられた。
あと、魔術の特訓として、ある物の回収も手伝わせようともルヴィアは考えている。
海斗は詳しい事情は聞かされてはいないものの、この任務が成功するのか不安を抱きながら、夕焼け色に染まる空を呆然と見つめた。