Fate/kaleid liner~指輪の魔術師~ 作:ほにゃー
「凛さん!ルヴィアさん!」
剣士の後ろで血を流してる二人に気付き、イリヤが走り出そうとする。
「待て!イリヤ!」
イリヤの手を掴み、止める。
「落ち着け!闇雲に近づいてもやられるだけだ!」
「で、でも凛さんとルヴィアさんが……!」
「サファイア。二人の生体反応は?」
海斗がサファイアに尋ねると、サファイアはすぐに確認をし出す。
『生体反応あり。お二人は生きています』
「だったらなおさら……!」
「だからこそだ!二人が生きてるから、冷静に、確実に行動しないといけないんだ」
「零夜の意見に賛成。ここは確実に動くべき」
「今俺達に出来ることは二つ。一つは奴を即座に倒す。もう一つは隙を突き、二人を確保して脱出だ」
「そうだ!あの槍は?あの槍なら一撃必殺で」
「だめ、今は使えない」
『一度カードを
『どうもアク禁くらうっぽいですねー』
アク禁って、ネトゲかよ………
「ライダーは試してみたけど、単体では意味をなさなかった」
「キャスターは不明。本番で行き成り使うのはリスクが大きすぎる」
「加えてアーチャーは役立たず……か」
『これは選択肢二番でいくしかないですね』
ルビーの言葉に俺達は頷く。
「私が敵を引き付ける。その間に右側から木に隠れて接近して二人を確保。即座にこの空間から脱出して」
「美遊、一人じゃ危険だ。俺も一緒に囮になる。零夜、イリヤスフィールと一緒に凛さんとルヴィアさんを頼むぞ」
「あ、ああ」
「わ、分かった」
そして、頷き合うと俺達は左右に分かれる。
美遊と海斗は空に飛ぶ。
「
「チェイン!」
美遊の魔力弾と海斗の鎖が剣士に襲い掛かる。
だが、二人の攻撃は剣士の辺りに漂う黒い霧のようなもので阻まれ、弾かれる。
「おい、ルビー。あれも反射平面とかいう奴か?」
『いえ、魔術を使っている様子はありません。あの黒い霧は……まさか!』
ルビーが何かに気付いた瞬間、剣士は持っている黒い剣に斬りを纏わせ、斬撃を放った。
「ディフェンス!」
海斗がその斬撃を防ごうとしたが、斬撃は海斗の障壁を破り、海斗の肩を切り裂く。
「海斗君!」
その時、イリヤが声を上げた。
そして、剣士はこちらを向き、斬撃を放つ。
「くっ!ディフェンス!」
俺も障壁を張りイリヤを守ろうとするが、やはり斬撃は障壁を破り、俺を切り裂く。
肩から鮮血が流れる。
「くっ………防御魔術が付与されてるんじゃなかったのかよ、この服」
肩を押さえながら吐き捨てるように言う。
「レイ!」
「大丈夫。かすり傷だ」
『この程度なら回復魔術で治せます。それに、今ので分かりました。あの黒い霧の正体……………アレは信じ難いほどに高密度な魔力の霧です!』
「てことは、さっきの攻撃は、魔術じゃなくて魔力を飛ばした攻撃か」
『はい。あの異常な高魔力の領域に魔力砲も、海斗さんの攻撃も弾かれているようです。あれでは、魔術障壁じゃ無効化できません』
剣士は俺たちが話しているのにも構わず、近寄り剣を構える。
「追撃来るぞ!走るぞ、イリヤ!」
イリヤにそう呼び掛ける。
だが、イリヤは恐怖から動けず蹲ってしまった。
「う……あぅ……」
「イリヤ!」
剣士が走り出す。
その瞬間、数個の宝石が剣士の方に跳び、勢いよく爆発した。
『あ、あれは!』
ルビーが驚きの声を上げる。
宝石を投げたのは凛さんとルヴィアさんだった。
二人ともクビを切りつけられていながら、立ち上がり剣士に攻撃をした。
「くっ……やってくれるわね、この黒鎧……!」
「一度距離を取って立て直しを………!」
その時、煙の中から剣士が現れ俺達の方に向かってくる。
俺はイリヤだけでもと思い、イリヤを体で隠し腕で顔を守るようにする。
「サファイア!」
『物理保護全開!』
美遊が俺と剣士の間に入り、剣を受け止める。
「せいっ!」
海斗が横から剣士の脇を殴りつけ、吹き飛ばし距離を稼ぐ。
「美遊さん!」
「海斗!」
「俺達は大丈夫だ」
「それより、あの敵……」
『まずいですね……とんでもない強敵です。魔力砲も魔術も、レイさんと海斗さんの魔術も無効。遠距離・近距離も対応可能。こちらの
まずい、本格的にヤバイ。
イリヤは戦意を失い欠けてる。
それに、凛さんとルヴィアさんも重傷だ。
この状態で戦えば、間違いなく誰かが死ぬ。
下手すれば全滅もあり得る。
その時、凛さんとルヴィアさんも体力が尽きたのかその場に倒れる。
「ど、どうしようルビー!どうすればいいいの!?」
「落ち着いて!パニックを起こさないで!」
慌てるイリヤを美遊が止める。
「………俺がアイツを足止めする!その隙に二人の救出を!」
海斗がそう言い出す。
その瞬間、俺は海斗の肩を掴む。
「何言ってるんだよ!死ぬ気か!?」
「どの道、誰かが囮にならなければいけないんだ!なら、この中で戦い慣れしてる俺が囮になるべきだ!」
「だからって危険過ぎる!第一あの斬撃はどうするんだよ!」
「攻撃は一直線にしか飛ばない!タイミングを合わせれば避けれる!」
俺と海斗の言い合いにイリヤと美遊は慌てて止めようとする。
その時―――
『ルビーデュアルチョップ!』
ルビーが俺と海斗の頭にチョップを叩き込む。
「イッツ!………ルビー!こんな時に何してるんだよ!」
『喧嘩してる場合ですか!そんな言い合いしてる暇があれば、もっとまともな作戦を考えてください!』
「だが、現状ではこの作戦が一番助けられる可能性が……!」
『いいえ。まだもう一つ手はあります。最後の手段です。いいですね、サファイアちゃん』
『はい、姉さん』
ルビーの作戦を聞き、俺達は驚くと同時に、確かに囮作戦よりも可能性はあるし、勝つことも可能かもしれないと思った。
剣士は、重傷で動けない凛さんとルヴィアさんに向かっていた。
「凛さん!ルヴィアさん!」
イリヤと美遊の二人が走り出す。
「バカ!退きなさい!あんたたちじゃ、こいつは倒せない!」
確かに二人どころか、四人でぶつかって行っても勝つことも、救出も出来ない。
だから――――――
「選択肢……三番!」
イリヤと美遊はルビーとサファイアを投げ飛ばす。
その時、剣士の後ろで光が輝く。
『まったく、世話の焼ける人達です。見捨てるのも忍びないので今回だけは特別ですよ』
「良く言うわ。最初からこうしておけば良かったのよ」
『ゲスト登録による一時承認です。…不本意ですが』
「何を偉そうに……これが本来の形でしょうに」
ルビーとサファイアは凛さんとルヴィアさんの手の中にあり、二人は魔法少女の恰好となって立っていた。
「それじゃ……本番を始めましょうか」