Fate/kaleid liner~指輪の魔術師~   作:ほにゃー

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三番目の選択肢

「凛さん!ルヴィアさん!」

 

剣士の後ろで血を流してる二人に気付き、イリヤが走り出そうとする。

 

「待て!イリヤ!」

 

イリヤの手を掴み、止める。

 

「落ち着け!闇雲に近づいてもやられるだけだ!」

 

「で、でも凛さんとルヴィアさんが……!」

 

「サファイア。二人の生体反応は?」

 

海斗がサファイアに尋ねると、サファイアはすぐに確認をし出す。

 

『生体反応あり。お二人は生きています』

 

「だったらなおさら……!」

 

「だからこそだ!二人が生きてるから、冷静に、確実に行動しないといけないんだ」

 

「零夜の意見に賛成。ここは確実に動くべき」

 

「今俺達に出来ることは二つ。一つは奴を即座に倒す。もう一つは隙を突き、二人を確保して脱出だ」

 

「そうだ!あの槍は?あの槍なら一撃必殺で」

 

「だめ、今は使えない」

 

『一度カードを限定展開(インクルード)すると数時間はそのカードが使えなくなります』

 

『どうもアク禁くらうっぽいですねー』

 

アク禁って、ネトゲかよ………

 

「ライダーは試してみたけど、単体では意味をなさなかった」

 

「キャスターは不明。本番で行き成り使うのはリスクが大きすぎる」

 

「加えてアーチャーは役立たず……か」

 

『これは選択肢二番でいくしかないですね』

 

ルビーの言葉に俺達は頷く。

 

「私が敵を引き付ける。その間に右側から木に隠れて接近して二人を確保。即座にこの空間から脱出して」

 

「美遊、一人じゃ危険だ。俺も一緒に囮になる。零夜、イリヤスフィールと一緒に凛さんとルヴィアさんを頼むぞ」

 

「あ、ああ」

 

「わ、分かった」

 

そして、頷き合うと俺達は左右に分かれる。

 

美遊と海斗は空に飛ぶ。

 

速射(シュート)!」

 

「チェイン!」

 

美遊の魔力弾と海斗の鎖が剣士に襲い掛かる。

 

だが、二人の攻撃は剣士の辺りに漂う黒い霧のようなもので阻まれ、弾かれる。

 

「おい、ルビー。あれも反射平面とかいう奴か?」

 

『いえ、魔術を使っている様子はありません。あの黒い霧は……まさか!』

 

ルビーが何かに気付いた瞬間、剣士は持っている黒い剣に斬りを纏わせ、斬撃を放った。

 

「ディフェンス!」

 

海斗がその斬撃を防ごうとしたが、斬撃は海斗の障壁を破り、海斗の肩を切り裂く。

 

「海斗君!」

 

その時、イリヤが声を上げた。

 

そして、剣士はこちらを向き、斬撃を放つ。

 

「くっ!ディフェンス!」

 

俺も障壁を張りイリヤを守ろうとするが、やはり斬撃は障壁を破り、俺を切り裂く。

 

肩から鮮血が流れる。

 

「くっ………防御魔術が付与されてるんじゃなかったのかよ、この服」

 

肩を押さえながら吐き捨てるように言う。

 

「レイ!」

 

「大丈夫。かすり傷だ」

 

『この程度なら回復魔術で治せます。それに、今ので分かりました。あの黒い霧の正体……………アレは信じ難いほどに高密度な魔力の霧です!』

 

「てことは、さっきの攻撃は、魔術じゃなくて魔力を飛ばした攻撃か」

 

『はい。あの異常な高魔力の領域に魔力砲も、海斗さんの攻撃も弾かれているようです。あれでは、魔術障壁じゃ無効化できません』

 

剣士は俺たちが話しているのにも構わず、近寄り剣を構える。

 

「追撃来るぞ!走るぞ、イリヤ!」

 

イリヤにそう呼び掛ける。

 

だが、イリヤは恐怖から動けず蹲ってしまった。

 

「う……あぅ……」

 

「イリヤ!」

 

剣士が走り出す。

 

その瞬間、数個の宝石が剣士の方に跳び、勢いよく爆発した。

 

『あ、あれは!』

 

ルビーが驚きの声を上げる。

 

宝石を投げたのは凛さんとルヴィアさんだった。

 

二人ともクビを切りつけられていながら、立ち上がり剣士に攻撃をした。

 

「くっ……やってくれるわね、この黒鎧……!」

 

「一度距離を取って立て直しを………!」

 

その時、煙の中から剣士が現れ俺達の方に向かってくる。

 

俺はイリヤだけでもと思い、イリヤを体で隠し腕で顔を守るようにする。

 

「サファイア!」

 

『物理保護全開!』

 

美遊が俺と剣士の間に入り、剣を受け止める。

 

「せいっ!」

 

海斗が横から剣士の脇を殴りつけ、吹き飛ばし距離を稼ぐ。

 

「美遊さん!」

 

「海斗!」

 

「俺達は大丈夫だ」

 

「それより、あの敵……」

 

『まずいですね……とんでもない強敵です。魔力砲も魔術も、レイさんと海斗さんの魔術も無効。遠距離・近距離も対応可能。こちらの戦術的優位性(アドバンテージ)が真正面から覆されてます。直球ど真ん中で最強の敵ですよ、アレ』

 

まずい、本格的にヤバイ。

 

イリヤは戦意を失い欠けてる。

 

それに、凛さんとルヴィアさんも重傷だ。

 

この状態で戦えば、間違いなく誰かが死ぬ。

 

下手すれば全滅もあり得る。

 

その時、凛さんとルヴィアさんも体力が尽きたのかその場に倒れる。

 

「ど、どうしようルビー!どうすればいいいの!?」

 

「落ち着いて!パニックを起こさないで!」

 

慌てるイリヤを美遊が止める。

 

「………俺がアイツを足止めする!その隙に二人の救出を!」

 

海斗がそう言い出す。

 

その瞬間、俺は海斗の肩を掴む。

 

「何言ってるんだよ!死ぬ気か!?」

 

「どの道、誰かが囮にならなければいけないんだ!なら、この中で戦い慣れしてる俺が囮になるべきだ!」

 

「だからって危険過ぎる!第一あの斬撃はどうするんだよ!」

 

「攻撃は一直線にしか飛ばない!タイミングを合わせれば避けれる!」

 

俺と海斗の言い合いにイリヤと美遊は慌てて止めようとする。

 

その時―――

 

『ルビーデュアルチョップ!』

 

ルビーが俺と海斗の頭にチョップを叩き込む。

 

「イッツ!………ルビー!こんな時に何してるんだよ!」

 

『喧嘩してる場合ですか!そんな言い合いしてる暇があれば、もっとまともな作戦を考えてください!』

 

「だが、現状ではこの作戦が一番助けられる可能性が……!」

 

『いいえ。まだもう一つ手はあります。最後の手段です。いいですね、サファイアちゃん』

 

『はい、姉さん』

 

ルビーの作戦を聞き、俺達は驚くと同時に、確かに囮作戦よりも可能性はあるし、勝つことも可能かもしれないと思った。

 

 

剣士は、重傷で動けない凛さんとルヴィアさんに向かっていた。

 

「凛さん!ルヴィアさん!」

 

イリヤと美遊の二人が走り出す。

 

「バカ!退きなさい!あんたたちじゃ、こいつは倒せない!」

 

確かに二人どころか、四人でぶつかって行っても勝つことも、救出も出来ない。

 

だから――――――

 

「選択肢……三番!」

 

イリヤと美遊はルビーとサファイアを投げ飛ばす。

 

その時、剣士の後ろで光が輝く。

 

『まったく、世話の焼ける人達です。見捨てるのも忍びないので今回だけは特別ですよ』

 

「良く言うわ。最初からこうしておけば良かったのよ」

 

『ゲスト登録による一時承認です。…不本意ですが』

 

「何を偉そうに……これが本来の形でしょうに」

 

ルビーとサファイアは凛さんとルヴィアさんの手の中にあり、二人は魔法少女の恰好となって立っていた。

 

「それじゃ……本番を始めましょうか」

 


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