Fate/kaleid liner~指輪の魔術師~   作:ほにゃー

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空想することが大事

「油断しないでね、イリヤ、零夜君。敵とルヴィア、両方に警戒するのよ」

 

なんで味方のはずのルヴィアさんまで警戒しないといけないんだろ?

 

「えっと……」

 

『お二人の喧嘩に巻き込まないでほしいものですね』

 

まったく同感だ。

 

「美遊、速攻ですわ。開始と同時に距離を詰め、極力遠坂凛を巻き込む形で仕留めなさい」

 

「後半以外は了解です」

 

『殺人の指示はご遠慮ください』

 

遠慮じゃなく止めてほしい。

 

「頼むから協力してカード回収してくれよ………」

 

海斗は憂鬱そうな表情で胃を押さえる。

 

「じゃあ、行くわよ!3……2……1!」

 

『『限定次元反射路形成!鏡界回廊一部反転!』』

 

「「ジャンプ!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

五分後、俺達は鏡面界から帰還し、膝をついた。

 

ボロ負けでした。

 

『いや~、ものの見事に完敗でしたね。歴史的大敗です』

 

「なんだったのよ、あの敵は……?」

 

「どういうことですの?カレイドの魔法少女は無敵なのではなくて!」

 

『私に当たるのはおやめください、ルヴィア様』

 

ルヴィアさんがサファイアに八つ当たりをする。

 

『サファイアちゃんを苛める人は許しませんよ!』

 

するとルビーがルヴィアさんの眼球目掛けアタックする。

 

「ぬおおおおおおおお!!?」

 

ルヴィアさんは淑女らしからぬ悲鳴を上げ、地面を転げまわる。

 

『それに魔法少女が無敵だなんて慢心も良い所です!まぁ、大抵の相手なら圧倒できるだけの性能はありますが、それでも相性と言うものがあります!』

 

「つまり、今回の敵は相性が悪かったって訳か」

 

鏡面界に着いた途端、出迎えたのは点を覆い尽くすほどの魔法陣。

 

そして、集中砲火、いや、絨毯爆撃にあった。

 

さらに、魔法陣は魔力指向制御平面とか言う技でイリヤたちの攻撃は弾かれ無効化される。

 

結果、一方的に攻撃され、逃げ帰って来たと言う訳だ。

 

『あれは現在のどの系統に属さない魔法陣に呪文。恐らく失われた神話の時代のものです』

 

「あの魔力反射平面も問題だわ。あれがある限り、こっちの攻撃が効かないわ」

 

『攻撃陣も反射平面も座標固定型の様ですから、魔法陣の上まで飛んで行ければ叩けると思うのですが』

 

「簡単に言ってくれるわね」

 

ん?空を飛ぶってそんな難しいことなのか?

 

魔法少女って言うぐらいだし飛べると思うんだが…………

 

「そっか。飛んじゃえばよかったんだね」

 

そう言ってイリヤはひょいっと空を飛んでいた。

 

「お、やっぱ飛べるんだな」

 

「「「なっ!?」」」

 

イリヤが飛んでることに凛さん、ルヴィアさん、海斗が驚く。

 

「ちょ、ちょっと!なんで行き成り飛んでるのよ!?」

 

『凄いですよ、イリヤさん!高度な飛行をあっさりと!』

 

「え?そんな凄いことなの?」

 

『強固なイメージが無いと浮くことすら出来ないのにどうして…………』

 

サファイアも驚きながら、イリヤに聞く。

 

「どうしてって言われても……魔法少女って飛ぶものでしょ?」

 

「「「な、なんて頼もしい思い込み!」」」

 

つまり、普段からのイリヤのイメージのお陰で、イリヤはこうもあっさりと飛んでるって訳か。

 

「負けられませんわよ!美遊、貴女も今すぐ飛んでみなさい!」

 

「…………人は、飛べません!」

 

「な、なんて夢の無い子!?そんな考えだから飛べないのですわ!」

 

そう言ってルヴィアさんは美遊の襟を掴み引き摺る。

 

「次までに飛べるように特訓ですわ!」

 

その後を、海斗は溜息を吐いて追って行った。

 

「やれやれ、取り敢えず今日はお開きね。私も戦力を練ってみるわ」

 

「う、うん……勝てるのかな?あれに」

 

「勝つのよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日

 

俺とイリヤは人気のない山奥にやって来た。

 

「この辺でいいかな?」

 

「大丈夫だろ。この辺りに人はいないし、バレることもないはずだ」

 

そして、俺とイリヤは転身する。

 

今日は特訓の為にここに来た。

 

俺は転身した後、チェーンから空色の指輪を取り出し左手の中指に嵌める。

 

海斗から聞いた話によると俺達の魔術は、凛さんやルヴィアさんが使う宝石魔術と違い、宝石の中に魔力が、そこに使用者の魔力を送り込むことで魔法が使えるらしい。

 

要するに宝石の中の魔力はモーターで、使用者の魔力はモーターを動かす電力。

 

その魔力を起動させることで魔術が使えるとのことだ。

 

で、宝石につき使える魔術も違うらしい。

 

ちなみに調べた所、この指輪は空を飛べることが出来る。

 

「フライ!」

 

そう叫ぶと、俺の体が光り、俺の体はゆっくりと飛び上がる。

 

「ちょっと不安定だが、練習すればいけるな」

 

「あ、レイも飛べるようになったんだね!」

 

「ああ、指輪の使い方も大分分かってきたし、次からは俺も戦いに参戦できる。で、イリヤ。凛さんからクラスカード預かってたんだろ」

 

「ああ、そうだった」

 

イリヤは思い出した様にカードケースからクラスカード“アーチャー”を取り出す。

 

「アーチャーっていうぐらいだから弓だよね。よし!限定展開(インクルード)!」

 

クラスカードをルビーに重ねるように言うと、ルビーの形状が弓へと変わる。

 

「凄い!よし、早速試し打ちを!」

 

弓を構え、弦を引っ張るが肝心の矢が無い。

 

「あれ?矢は?」

 

『無いですよ?凛さんが使った時は近くにあった剣を矢代わりにしてました』

 

「矢が無けりゃ使えねぇじゃん」

 

「はぁー……地道に特訓してくしかないね」

 

『頑張りましょう。美遊さんも海斗さんも、今頃特訓してるはずですよ』

 

「……どんな特訓してるんだろうね?」

 

「空飛ぶ訓練じゃないか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある山の上空

 

「ルヴィアさん、これは流石に無茶があるんじゃないかと………」

 

「………無理です」

 

現在、俺は美遊の空を飛ぶための訓練に付き合ってる。

 

別に特訓に付き合うのはいい。

 

ただ、どうしてヘリからの飛び降り自殺を美遊はすることになってるんだ?

 

「美遊。最初から決めつけていては、何も出来ませんわ」

 

「……ですが」

 

『おやめください、ルヴィア様。パラシュートなしでのスカイダイビングは危険です』

 

「美優は常識に捕らわれ過ぎなのです。魔法少女の力は空想の力。常識を破らなければ道は切り開けません!さぁ、一歩を踏み出しなさい!出来ると信じれば不可能などないのですわ!」

 

その言葉に美遊はヘリから飛び降りようとするが、やっぱ怖いらしく飛び降りるのを止めようとする。

 

「無理で――」

 

その瞬間、ルヴィアさんは美遊を蹴り飛ばした。

 

そして、美遊は真っ逆さまに落ちて行った。

 

「何やってんだ!アンタはああああああああ!!」

 

俺は叫び、慌ててヘリを飛び降りる。

 

なんで俺の周りには自分勝手やとんでもない奴しかいないんだよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?」

 

「どうした、イリヤ?」

 

上の方を見ながらイリヤが何かに気付く。

 

俺も見上げると、上空から人が降って来た。

 

「人!?」

 

「イリヤ、危ない!」

 

落下するコースにイリヤが居るのに気付き慌てて引っ張りよせる。

 

幸い落下物はイリヤには当たらずそのまま地面に激突する。

 

「危なかった~。ありがとう、レイ」

 

「別にいいさ。それにしても………一体何が」

 

土煙が晴れ現れたのは美遊と美遊の下敷きになってる海斗だった。

 

『全魔力を物理保護に回しました。お怪我はありませんか、美遊さま?』

 

「な、なんとか」

 

「そうだよな……サファイアいるから大丈夫だったよな。俺は何を焦っていたんだ………アハハ」

 

なんか海斗の奴、自虐みたいな笑みを浮かべてやがる。

 

「美遊さん、海斗君………どうして空から……」

 

「……飛んでる」

 

『はい、ごく自然に飛んでます』

 

「……零夜も飛んでる」

 

『はい、飛んでますね』

 

イリヤが美遊の近くに降りたので俺も降り、海斗に近づく。

 

「海斗、生きてるか?」

 

「なんとか………でも、俺の心はボロボロだ」

 

「重傷だな、心が」

 

「あの、一緒に練習しない?」

 

海斗を心配してるとイリヤが美遊にそう言った。

 

「空が飛べないと戦えないし」

 

「……教えてほしい…飛び方を」

 

「うん!」

 

その様子を見て、俺と海斗は思わず笑みを浮かべた。

 

あの妙な空気はもう無い。

 

これなら次の戦いで勝てるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、思ってた時期がありました。

 

美遊は人=飛べないと言うイメージというか常識があって、どうやっても空を飛ぶことが出来ない。

 

イリヤは魔法少女=空を飛ぶと思っているので簡単に飛べている。

 

つまり、イリヤは殆ど思い込みと感覚のみで空を飛んでる。

 

常識で考える美遊には難しいんだろう。

 

新たな課題だな。

 

「そう言えばイリヤスフィールは魔法少女は空を飛ぶものだって言ってたよな」

 

「うん」

 

「なら、そのイメージの元になったものがあるはずだ。それはなんだ?」

 

海斗にそう言われイリヤは思い当たる物があるらしく二人を家に招待した。

 

そして、イリヤお気に入りの魔法少女アニメを美遊に見せる。

 

「こ、これが……!」

 

「私の魔法少女イメージの大本……の一つかな」

 

「航空力学はおろか重力も慣性も作用・反作用も無視をしたでたらめな動き……!」

 

「なぁ、海斗。美遊って真面目すぎるのか?」

 

「真面目っていうよりバカ真面目で天然なんだよ。お陰で俺の胃が………」

 

ご愁傷様です。

 

『このアニメを全部見れば、美遊さまも飛べるようになるのでしょうか?』

 

「……多分無理。これを見ても飛んでる原理が分からない。具体的なイメージは繋がらない。桔梗の様な浮力を利用してるようには見えないから、これは飛行機と同じ揚力を中心とした飛行法則にあると思える。でもそれだと揚力の方程式である――――――」

 

何やら専門的なこととか言い始めた。

 

イリヤは頭を抱え出し、海斗は胃を押さえだした。

 

『ルビーデコピン!』

 

そんな状況を見かねたルビーが、美遊の額に強烈なデコピンをお見舞いする。

 

「な、何を…!」

 

『まったくもぉ!美遊さんは基本性能は素晴らしいですが、そんなコチコチの頭じゃ魔法少女は務まりませんよ!見てください、イリヤさんを。理屈や工程をすっ飛ばして結果だけをイメージする。それぐらい能天気な頭の方が魔法少女に向いているんです!』

 

「なんか酷い言われよう!」

 

『そうですね。美遊さんにはこの言葉を送りましょう“人が空想できる起こりうる全てのことは魔法事象”私たちの想像主たる魔法使いの言葉です』

 

「…物理事象じゃなくて」

 

『そうです!』

 

なるほど、面白いことを言う人もいるんだな。

 

「つまりこう言う事だね。“考えるな!空想しろ!”」

 

イリヤのその言葉に美遊は納得できないっと言った表情をする。

 

「……少しは考え方が分かった気がする」

 

「う、うん!美遊さんならきっと大丈夫だよ!」

 

そう言って美遊と海斗は立ち上がり、その場を後にする。

 

「……じゃあ、また」

 

「またな」

 

見送った後、イリヤは息を吐く。

 

「貴女は戦うなって言われた昨日よりは前進かな?」

 

「だな」

 

『後はお二人できちんと連携が取れれば言う事なしなんですが』

 

「そうだね」

 

こうして今日も一日が過ぎようとする。

 

そして、深夜。

 

二度目のカード回収戦が始まる。


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