バカと緋弾と武装探偵   作:DJTAiGA

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5弾 徒手格闘

 キンジがセグウェイを破壊した後の事。

「恩になんか着ないわよ、それに、さっきの件をうやむやにしようったって、そうはいかないんだから! あれは強制猥褻! レッキとした犯罪よ!」

「それは悲しい誤解だよ、アリア、あれは不可抗力って奴だ。理解してほしい」

「不可抗力ですって? 嘘言わないで! だって、あ、あんた……」

 

 アリアちゃんがみるみるうちに真っ赤になっていく恥ずかしさと怒りが合わさった様な表情でキンジを睨み付けている。

 

「あ、あたしが気絶している隙に、ふ、服を、ぬ、ぬぬ、脱がそうとしてたじゃない! それに、む、むむむ、胸、見てたぁああああ! これがどうやったら不可抗力って事になるのよ!」

「そうだ! キンジ! 犯罪者は大人しくお縄につけ!」

「あんたも同罪よ! どうせ黙って一緒に見てたんでしょ!」

 

 ……え?

 

「いやいやいやまってよ! 僕はむしろキンジを止めようとしてたんだよ!?」

「でも! 見てたのは事実! 止められなかったのなら同じ!」

「横暴だ!」

「よしアリア、冷静に考えよう。いいか。俺たちは高校生、中学生を脱がしたりするわけないだろう? 年が離れすぎだ」

「そ、そうだよアリアちゃん! コイツはともかく僕にそんな趣味はないよ!」

「おい」

 

 この言い分ならアリアちゃんも納得してくれるはず……

 あれ? なんか怒ってない?

 涙目になって僕たちを睨んでるんだけど。

 あ! もしかして!

 

「ひょっとしてインターンで入ってきた小学生⁉ ごめん! 気づかなかった! でもすごいよ! その年であんな立ち回りが出来るなんて!」

 

 女の子は実際より年上にみられると怒っちゃうからね! 

 よくやった僕! ナイスフォロー……

 あれ、なんか更に怒って……

 

「アンタ達なんか……助けるんじゃ、なかった!!」

 ズガガン!!

「うおっ!」

 え? 何が起きたの?

 僕とキンジの足元に2発の銃跡……

「え?」

 撃ったの⁉ うそでしょ⁉

 

「 あ た し は 高 2 だ !!」

 

 アリアちゃん……アリアさんが銃を向け直してきた。

「うわ! 待って待って!」

 

 あ、ヤバイこれ死ぬかも。

 なんて思ってたらキンジがアリアさんに飛びついていた。

 ――ズガンズガン!

 キンジはアリアさんの両腕をつかみ銃弾を背後の床に逸らす。

 キンジがあの状態で助かった!

 普段のキンジだったら今頃二人とも床をのたうち回っていただろう。

「――んっ――やぁっ!」

 

 今度はキンジを投げた! 徒手格闘も出来るのか!

 しかも今の……ひょっとして僕より(・・・)……

 

「逃がさないわよ! あたしは逃走犯を逃がしたことは一度も! ない! ……あれ? あれれ?」

 

 いつの間にかキンジは体育倉庫の外に出ていた。

 そして先ほど取っ組み合いになったときに掏り取ったと思われる弾倉を見せびらかしながら……

「ひょっとして探してるのはこれかい? ごめんよ」

 そんな事を言って弾倉を明後日の方向へ投げ捨てた。

 

 ってやばいやばい、このままだとキンジだけが逃げる未来が見えた。

 僕もこっそり……

 

「もう許さない! アンタ達二人! 跪いて謝ったって許さないんだから! ってアンタも何逃げようとしてるのよ!」

 ばれた。

「おいおい吉井、背後からこっそり逃げるなんて、男としてどうなんだろうな?」

 くそう! キンジめ!

 君だって普段の状態ならそうする癖に!

 だけどここは仕方ない!

 ――ダンッ!

 僕は地面を強く蹴りアリアさんの方向へ突進する。

「舐められたものね! さっきの投げを見てなかったの? あたしは格闘術も出来るのよ!」

 アリアさんは素早く僕を掴みにかかろうとしてくる。

 恐らくさっきの投げから見るにこの子の格闘スキルはバリートゥードだ。

 それなら!

 ――僕はアリアさんの手をいなすように躱していく。

 状況的に肩や腰あたりに手を触れさせてしまうけど、掴まれる事は……ない!

 体を上下左右あらゆる方向にひねりながらアリアさんの掴もうとする力を体の外側へと、逸らしていく。

「――っ」

 違和感に気づいたアリアさんが僕の腹部あたりを狙った膝蹴りも織り交ぜてきたけど、それも僕は体を左に逸らし、躱す。

 そしてついには。

 アリアさんの背後にまで回ってしまう。

 

「ゴメンアリアちゃ……アリアさん! 必ずお詫びとお礼はするから!」

 僕は銃や刀剣系の扱いは苦手だけど……徒手格闘には自信があるんだ。

 今はあれの力(・・・・)は使わなかったけど、これくらいの芸当なら出来る!

 もっともアリアさんが油断してなかったらどうなっていたかわからないけどね。

 僕はキンジがばら撒いたであろう銃弾を避けながら走って体育倉庫から離れる。

 

「ま、まちなさい!」

 アリアさんはセーラー服の背に手を突っ込み二本の刀を引っ張り出してきた。

 刀も扱えるの!?

「強猥団は神妙に――っわぉきゃ!」

 アリアさんは僕たちに向かってこようとしてキンジのばら撒いた銃弾ですっころんだ。

 冷静さを欠くとあんな罠にも引っかかっちゃうんだね……

「ってうわぁ!」

――ズデン

「痛い! だれだよこんなところに銃弾ばら撒いたの!」

「お前が引っかかってどうすんだ」

 まったくこんな神妙な罠を仕掛けるなんてひどい奴だ。

「まちなさ……みゃおきゃっ!」

 アリアさんは立ち上がろうとして弾を踏んでこけてのループに陥っていた。

 僕は何とか銃弾を避けて立ち上がりキンジの後ろについて逃げる。

 

「この卑怯者共! でっかい風穴! 開けてやるんだからぁ!!」

     

        ☆

 

 まぁ色々あったわけだが、これが俺たちの、なんとも言えない壮絶で最低最悪の出会いだった。

 そして――

 

「先生、あたしアイツの隣に座りたい」

「んなっ!」

 

 ここまでくると何かの陰謀なんじゃないだろうか。

 他の学校とかだとこのまま

『どういうことなの!』『どういう関係なの?』『ひょっとして2人は!?』

 とかいう意味のわからん質問攻めに遭うだけだがここでそれは……!

 

「「これより、異端審問会を開く」」

 

 死を意味するものなんだ!


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