バカと緋弾と武装探偵   作:DJTAiGA

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4弾 7つの銃声

 時間はプロローグ後まで進み……

    

     ☆

 

「死にさらせ! この変態ロリコン野郎!」

「待て! 本当に誤解なんだ! 俺はただこの子の捲れ上がったブラウスを直そうとしただけなんだ!」

 

 この期に及んでまだ誤解だというのかコイツは。

 確かに、跳び箱に二人同時に嵌るまでなら有り得ただろうね。

 だが! コイツは! あろうことか揉んだのだ!

 まだ中学生、いや小学生ともとれる女の子の胸を!

 つまりキンジは実はロリコンであり、たった今犯罪を犯した。

 よって有罪! 死刑! 閉廷!

 

「バイバイキンジ、君はもっとまともな奴だと思っていたよ……」

「まて、なんで最後の言葉を俺に投げかける。おい、銃を下ろせ正気か!」

 

 僕が引き金を引くその瞬間。

 

「……へ……へ……」

「――?」

「ヘンタイ!!」

 

 突然聞こえたそれは、アニメ声というか、すごく幼い声だった。

 その顔でそのかわいい声は反則級だと思う。

 だけど僕には聞き覚えがあった。キンジを助ける為にこの子を呼んだのは僕だったからね。

 

「さっ、さささっ、サイッテー‼」

 

 そういいながら少女、神崎・H・アリア(名札が見えた)はブラウスを戻しキンジに向かって力が入っていないハンマーパンチを落とし始めた。

 そんなんじゃ生ぬるいから銃で撃ってやれ!

 

「おい、やっ、やめろ!」

「このチカン! 恩知らず! 人でなし!」

「アホキンジ! ネクラ! 女垂らし!」

「て、てめぇ吉井! ま、混ざんな! いてっ、だっ、だからやめろ! 俺は何も、してな……」

 

 ちぃっ! 僕のさりげない罵声がばれたか。

 そんな事を考えていると……

 ――ガガガガガガンッ‼

 突然の轟音が、体育倉庫を襲った。

 ――えっ?何が起きた?

 キンジとアリアちゃんが嵌っている跳び箱から火花が上がったのも見えた。

 まるで銃で撃たれたみたいな……

 

「うっ! まだいたのねっ!」

「『いた』って、何がだ!」

「もしかしてさっきのセグウェイ!?」

「そうよ!『武偵殺し』のあのオモチャ!」

 てことは今のは、まるで、じゃなくて本当に銃撃だったの!?

 跳び箱が防弾じゃなかったらキンジ達は……ていうか僕も死角に立ってなかったら危なかったんじゃ……

 とっ、とりあえず応戦しないと!

 僕は手に持っていたM93Rをしっかりと構え直す。

「あんたも! ほら! 戦いなさいよ! 仮にも武偵高の生徒でしょ!」

「むッ、無理だ! 少なくとも今の(・・)俺では応戦できない!」

「向こうは7台いる! 少しでも手があったほうがいいわ!」

 

 確かに今のキンジでは無理だと思う。だけどあの時の……受験の時みたいなキンジなら……

 キンジは時々、とんでもない力を発揮することがあるんだ。

 でもそれがどんな状況でなるかは分からない。

 だから今それに頼るのは止めたほうが方がよさそうだ。

 わずかな可能性にかけてちゃ今ここで死んでしまうかもしれない。

 ここは僕がやるしか――!

 そう考え飛び出そうとした瞬間予想外の事が起きた。

 

 ババッ! バババッ!

 

 キンジとアリアちゃんの方から銃撃の音が聞こえたのだ。

 すぐさまそっちを見るとアリアちゃんが跳び箱から腕だけを乗り出して2丁の拳銃を構え応戦していた。

 

 キンジに胸を押し付けて。

 

 あれ、僕の攻撃対象ってあのどうでもいいセグウェイなんかよりこっちなんじゃないか?

 アリアちゃんが一先ず銃撃を終えキンジから身を離すと同時に僕はキンジを撃つ体制に入った。何度目かわからないけど死ねキンジ!

 

「――やったか」

 

 ……!

 この、感覚……この声の感じ……まさか。

「射程圏外に追い払っただけよ。ヤツら,並木の向こうに隠れたけど……きっとすぐまた出てくるわ」

 アリアちゃんはまだ気づいていないけど、これは……

「強い子だ。それだけでも上出来だよ」

「……は?」

 このキザったらしい喋り方、クールな感じ……間違いない。

 これはあのキンジだ。

 アリアちゃんはいきなり何いってんだコイツとなっているが無理もない。

「きゃっ‼」

 キンジはそんなアリアちゃんの足と背中を持ち上げ軽々とお姫様抱っこしてしまう。

「ご褒美に、ちょっとの間だけ――お姫様にしてあげよう」

 そんなことを言われ、アリアちゃんは一瞬で耳まで真っ赤になっていた。

 なんだろう、ものすごくむかつく。

 だけど今のキンジに僕は勝てない。

 強すぎるんだ。このキンジは。

 そんなキンジはアリアちゃんを積み上げられたマットの上に……ちょこん。

 お人形みたいに座らせていた。

「な、なに……?」

 アリアちゃんは先ほどからの急展開続きに困惑しているようだ。

 

「姫はその席でごゆっくり。あとは俺がなんとかするよ」

「あ……あんた……どうしたのよ‼ おかしくなっちゃった?」

 

 そしてキンジはUZIの射撃線が交錯するドアの方へ向かっていく。

 

「あ、あぶない! 撃たれるわ! そこのアンタもなに黙ってみてるのよ! 友達が撃たれちゃうわよ!」

 アリアちゃんが僕に向かってそんな事を言ってくるけど、僕は確信している。

 

「大丈夫だよ、今のキンジは、誰にも負けないから」

「その通りだよアリア、今の俺は誰にも負けない、それにアリアが撃たれるよりずっといいさ」

「はぁっ⁉ だから! さっきからなに急にキャラ変えてるのよ! そっちのバカが言ってることもよくわかんないし! 何する気なの!」

 僕の扱い酷くない?

 

「アリアを、守るのさ」

 僕の思考も関係なしにキンジは銃を抜く。

 マットシルバーのベレッタ・M92F

 僕のM93Rと同じ会社のハンドガン。

 その銃を構え、ドアの外へ身を晒す。

 その瞬間7台のUZI搭載セグウェイがキンジに向けて射撃を開始した。

 だがその次の瞬間には――

 ズガガガガガガガンッ!

 

 7つのUZIそのすべてが破壊されていた。

 正直何が起きたのかわからなかった。だけど

 今キンジから聞こえたのは7回の銃声だった。

 つまり、たった7発ですべてのUZIを破壊した。

 そのとんでもない事実だけは理解できた。

 

 ほんとうに、このキンジは化け物だ……

 

 

 

 

 

 

 

 


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