地道に頑張っていきます。
「ねぇ! 助けに行くってどうするのさ!」
「ゴチャゴチャうるさいわね、今はとにかく全力で漕ぎなさい」
僕らは今第二グラウンドの方に向かって全力で自転車を漕いでいる。
「ちょっと、こんなスピードじゃ間に合わないかもしれないじゃない。あと仮にも私を乗せてるんだからもう少し安全運転に心がけて」
「無茶振りだ!」
訂正、全力で漕いでいるのは僕だけだ。
この子は一体何なのだろうか。
この子に助けを求めたのは間違いだったかもしれない、という不安に煽られながらも何気に自転車で女の子と二人乗りをするのは初という嬉しさも合わさって良くわかんない感情に陥っている。
「ん、第二グラウンドが見えてきたわね、思ったより早いじゃない。褒めてあげる」
本当になんでこんなに偉そうなんだ。
確かに助けを求めたのは僕だけど僕ってこんな小さな子に下に見られてるの?
いや、今はそんな事よりキンジを助けなきゃ。
第二グラウンドにもうすぐ着く。
爆音などが聞こえなかったことを考えるとキンジはまだ無事と考えていいだろう。
だがキンジの姿が見えない。
僕らより先に向かったはずなのにどうして?
「あんたの友達、どうやら人気のないところをひたすら回ってるっぽいわ、多分私たちが到着する時間を見越して時間稼ぎをしてるんだと思う。なかなか優秀よ」
僕もわかっていたよ、うん。
「それで、こっからどうすればいいのさ、助ける手段があってここまで来たんでしょ?」
「アンタはもう何もしなくていいわ、足手まといだから」
なんでだろう、涙が出てきた。
「じゃあアンタはここで待機してて、私は救助に向かうから」
そういって少女は第二グラウンドに隣接している施設、その中でも一番高いビルに向かって走っていった。
「あっちょ! ……行っちゃったよ」
あの子は一体何者なんだろうか。
☆
「足がもう限界だ!」
吉井は助けを呼ぶことはできたのか!?
体力ももうない、吉井を信じて第二グラウンドへ行くしか……!
――俺は、ひたすら走り、走り、第二グラウンドへ向かっていく。
金網越しに見たグラウンドにはいつも通り人はいない。
だがグラウンドの端の方、体育倉庫側に一人だけ見知った人物がいた。
「吉井! 助かった!」
俺はそこにいた吉井を見て安堵し思わず叫んでしまったが違和感に気づいた。
吉井一人だけ……?
おかしい、俺は助けを呼んでこいと言ったのだ、だが吉井以外に人はいない。
失敗……したのか?
いや、最後まであきらめるな、アイツはバカだがここにいるという事は何か策があるとみていいのだろう。
今はそれに懸けるしか……
そう考えた瞬間――
「上だ! キンジ!」
吉井が俺に対し、第二グラウンドに隣接するビル(たしかあれは女子寮だ)の方向を見るよう促してきた。
なんだ、一体。
チャリを漕ぐ足は止めず、促されるままにそちらを向く。
そして俺はありえないものを見た。
女子寮の屋上の縁に女の子が立っていたのだ。
遠目にもわかる長いツインテールを靡かせ、屋上から
その女の子はそのままパラグライダーを開きこちらに向かってくる。
そして――
「そこのバカ! さっさと伏せなさい!」
――ズガガガガンッ!
一瞬でUZI搭載セグウェイを破壊してしまった……
拳銃での交戦距離は通常約7m。
彼女からセグウェイまでの距離はおおよそ20mはあった。
しかも彼女はパラグライダーという不安定な状況での射撃だ。
あんな凄いやつ、うちの学校にいたか……?
吉井の方を見るとアイツも唖然としていた。
そしてその女の子はどんどんこっちに迫ってきている。
「おいっバカ! こっちに来るな! このチャリには爆弾が――」
「知ってるわよそんな事! 『仲間を信じ、仲間を助けよ』これを守らずしてどうするの! いくわよ!」
……いくわよ?
「ま、まて! 何をする気だ!」
少女はまったく聞く耳持たず次の行動へ移る。
そして――ぶらん。
さっきまで手で引いていたブレークコードのハンドルに足を突っ込み逆さ吊りの状態になった。
そのままもの凄いスピードで突っ込んでくる。
「まじかよ」
意図は理解したが、いや、理解できてないが……
やるべきことはわかった。
俺も全力で漕ぎ、チャリをなるべく遠くまで飛ばせるように仕向ける。
ってちょっとまてこの角度――!
このまま俺がこの少女につかまり後ろに逸れたら……
吉井に――ぶつかる!
「ちょっと後ろのバカッ! なにやってるのどきなさい!」
「へ? え? 僕はどうなるのこれ、どうすればいいの!」
だが、もう遅い。
俺と少女はどんどん距離を詰めていき、上下逆のまま抱き合う形になった。
そして。
「ぶべぇっぶぅ!」
間抜けな声を上げるバカにもぶつかり――
ドガァァァァアアアアアアアン!
閃光と轟音、続けて爆風。
爆弾はやはり、本物だった――!
熱風に吹っ飛ばされ、俺たちは三人共々体育倉庫へと突っ込み……
俺の意識は、途絶えた。
☆
そしてプロローグへと話は繋がる……
いかがでしたでしょうか。
チャリジャックでアリアが助けに来るシーンに明久を加えることで「アリアはどうしてあそこにいたのか」という疑問を拭ってみました。(僕がしっかりと読み込んでないだけでちゃんも理由は描写されていたかも?)
更新遅れた件は申し訳ありません。
書き溜めをし、次々回でようやく3人以外のキャラが登場することが分かりました。
順次上げていくのでよろしくお願いします。