「その チャリには 爆弾 が 仕掛けて ありやがります」
朝、僕たちはなんでだらだらと過ごしてしまったんだろう。
その結果がこれだよまったく。
「チャリ を 減速 させやがったり 降りやがると 爆発 しやがります」
僕らの後方にはセグウェイという乗り物が併走していた。
この間抜けなしゃべり方の主もこのセグウェイに取り付けられたスピーカーかなにかだろう。
そして問題なのはそこじゃない。
このセグウェイ、厄介なことに自動銃座が取り付けられている。
銃の種類はUZI
秒間10発の9mm弾をぶっ放すサブマシンガン。
つまりこれは……自転車ジャック?
なんだそのバカみたいにしょぼいテロは。
だけど実際に起きているわけで……
「キンジ! これってなにさ!何が起きてるのさ!」
「知るか! わかることは最大級のピンチだってことだ!」
「そんなことは誰でもわかるよ! というか爆弾!? どこにさ!」
「こういう時仕掛けられるとしたら普段目につかない場所だ! サドルの下とかに仕掛けられてるかもしれん!」
頭パニックだが取りあえず状況を把握しないことにはどうしようもないので言われた通りサドルの下を探ってみる。
すると爆弾と思われる物体は――ない。
「僕のサドルの下にはないみたい! 他に考えられるところは……キンジ?」
キンジも同様にサドルの下を探ったようだが様子がおかしい……まさか。
「キンジ? ひょっとして……」
「あぁ……ある、タイプまではわからないがC4、プラスチック爆弾だ。しかもこのサイズ、チャリどころか車でさえ吹っ飛ばすぞ……」
なんだって!? 本当に爆弾が仕掛けられているだって!?
さらに頭はパニックになる。
どうすればいいんだ、くそっ、まずは助けを……
僕がポケットからスマホを取り出そうとすると。
「助けを 求めやがったり 携帯 を 使用しやがると 爆発 しやがります」
畜生! やっぱダメか!
「吉井、お前は離れろ、恐らくターゲットは俺一人だ」
「そんなことできるわけないよ! 友達を見捨てるなんて!」
「バカヤロウ、そうじゃない、離れれば助けを呼ぶことも可能だろうが、俺一人だったら助けを呼びに行くことも出来なかった。今は吉井だけが頼りなんだ」
バカか僕は、そうじゃないか、キンジはこんなところで死ぬわけがない。
見捨てるんじゃない、互いに信じて出来ることをするんだ。
『仲間を信じ、仲間を助けよ』
いくら頭が悪くても、これだけは忘れるもんか!
「わかったよキンジ! 助けを呼んでくる! なんとしてでも助けるよ!」
「あぁ、俺は今から第二グラウンドの方へ向かう、そっちのほうが人気も少ないだろうし安全だ。あと吉井、念の為お前のスマホは使うな、電波が読み取られてるかもしれん」
そういってキンジはスピードを少し上げる。
ここで二手に分かれようという合図だろう。
そして僕は次の交差点をキンジとは逆の左に曲がった。
早く人を探さないと……!
☆
キンジと別れた僕は始業式の行われる体育館に向かっていた。
恐らくそこには武偵としての仲間、助けを求められる人がたくさんいるはずだ。
だが体育館はまだ少し遠い上に第二グラウンドからも離れている。
そこへ行くまでになんとか人を見つけたい。キンジの体力も無限じゃない。
(くそっ! 誰かいないのか!)
だが運が悪いことになかなか人が見つからない。このままでは――
そして、見つけた。
赤髪でツインテールの女の子を。
武偵高のセーラー服……だけど背が小さいような?中学生?
まぁいい、今は猫の手でも借りたい気持ちだ。
「君! 大変なんだ! 助けてほしい!」
「え、何どうしたの?」
息を切らしながらその子に追いつく。
まずは状況を簡潔に伝えないと!
「爆弾の友達が今自転車で第二グラウンドに!」
「は?」
なにを言ってるんだ僕は!
焦りすぎてて説明になってないじゃないか!
ほら、この女の子にもかわいそうな目で見られてるよ!
「はぁ、まずは落ち着きなさい、武偵たるもの状況説明は落ち着いた状態で正確にね」
こんな小さな子に諭されてしまうなんて情けない……だけど今は落ち込んでいる暇なんてない。言われた通り落ち着いて説明しないと。
そして僕は現在起きている事件をなるべく簡潔に説明した。
「なるほどね、理解したわ」
「じゃあ早く教務科に連絡を――」
「そんな悠長な暇はないわ、行くわよ」
「え……行くってどこに?」
「決まってるでしょ」
そしてこの女の子はさも当然かのように言い放つ。
「あんたの友達を助けに行くのよ」
全っ然話が進みませんでした。
文字数も少ないですが区切りがいいので一旦切らせていただきます。
続きは明日投稿しますので話が進まなかったことをお許しください。