うちの姉様は過保護すぎる。   作:律乃

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禁断の愛に目覚め、開けてはいけない扉を開け放ってしまった切ちゃんの話デス。

前回と引き続き、この話も私の単なる趣味であります。なので、見たくない人は回れ右か高速スライドをオススメ致します。
ですが、狂った切ちゃんが見たいッ!又は、読みたいッ!ヤンデレ好きッ!危ない人が好きッ!という方は伝い文章で御座いますが、読んでいただけると嬉しいですっ!

さて、ここから先は狂った切ちゃんが現れます。そして、この作品の主人公・歌兎が酷い目にあいます。
それでも…それでもいいという方、もう止めはしません!

この先に進むといいデスよ!(なんで上から目線なのだろう私は…)

という事で…タイトル的にもアレですが、『縛って囁いて愛されたい。』開演デース!!


※本編は3話構成で、1・2話は切ちゃんの視点の話でして、3話は歌兎の話となってます。
また、この話は初の試みをしてみた話ですので…そういう面も含めて、感想を頂けると嬉しいです(土下座)


縛って囁いて愛されたい。《きりうたエピソード》

一.

 

(あたしは病気なんデス。妹にこんな感情を抱いちゃうなんて病気に違いないんデス)

 

心の奥深くから『好き。歌兎が好き』と囁きかけてくるもう一人あたしの声に無理やり蓋をして、《病気なんだ》と思い込むように自己暗示をかけてから、色んな意味で最愛の妹の自室へと一応ノックしてから立ち入る。

 

「…すぅ…すぅ……」

 

落ち着いた色で統一されている妹・歌兎の部屋はほとんど家具が置かれてない…のだが、以前に比べるとまだ人間味が溢れる部屋になったと思う。

歌兎自身が時に身を任せすぎているという特殊な性格からか、物欲があまりなく、あたしやマリア達が世話を焼いてあげて、買い揃えた勉強机や本棚はきっと何と無く置いているのだろう、この間取り図は。

 

(まぁ、歌兎らしいといえばらしいデス)

 

因みに、その間取り図は入って真っ正面に素っ気なく鎮座されているシングルベットの頭側にあたしとマリアが送った本や絵本が丁寧に整列してある本棚が並べて二つあり、ベットの脚側の右端には綺麗に整理整頓された勉強机、左端にはあたしがいつも下着や服を出し入れしているタンスがある。

 

「すぅ…すぅ…すぅ……」

 

あたしが入ってきたというのに、いまだに気持ち良さげに眠りこける歌兎は暑かったのか、毛布を蹴飛ばしており、パジャマも毛布につられて捲り上がってしまったようでお臍が見えてしまっている。

響さんと司令の二人に鍛え上げれ、ただ細いだけでなくなった適度に引き締まったお臍が歌兎が寝息を漏らすたびに僅かに凹み、空気を吸い込むたびに膨れ上がる。

 

「…っ」

 

ごくり、と生唾を飲み込む音がやけに大きく聞こえてくる。

『実妹のお臍になに興奮してるデスか!?こんなのただの変態デスッ!!』と喚くあたしも居れば、『もっと近くで見つめていたいデス』『上下するお臍に走る縦縞を舐めたいデス』と私欲に忠実なあたしも居る。

そして、心のあたし達が激論している中、あたしがとった行動というのは---

 

「すぅ…っ、んっ…っ」

 

---上下するお臍に走る縦縞を指でなぞる、だった。

 

つぅー、と右中指で触れた歌兎の肌はシルクのように滑らかだった。確かに、日頃からお世話という名目で歌兎の肌や身体を触っている。しかし、今回のように歌兎の意識がはっきりしてない…無防備という状況で触れた事は歌兎を意識してしまってからは無かったため、ついドギマギしてしまう。

 

(…無防備な時に触れてるって思うと胸がドキドキするデス)

 

病気だと自己暗示をかけていたというのに、あっさりと解けてしまったあたしは続けて無意識で視界に収めたのは、寝息を漏らし、時折むにゃむにゃと緩ませる桜色の唇で。

 

「…すぅ…すぅ…っ、むにゃ…」

 

カーテンからもれている朝日に照らされて光る歌兎の桜色の唇は艶っぽく…あたしはそのどこか色っぽい唇に引き寄せられるように、ギィ……とベッドを軋ませて、両手を歌兎の寝顔を跨ぐように付くとゆっくりとあたしの唇が歌兎のへと近づいていく。

 

熱に侵されたようにぼやける視界の中でも艶っぽい歌兎の唇だけはハッキリと見えて…もうお互いの吐く息が頬にかかっている。

 

(こんな近くに歌兎の顔が…っ)

 

もう3センチ…きっとこの線を超えてしまったならば、あたしはもう戻れないだろう。

それでも…そうだとしてもっ、あたしは歌兎と------。

 

「…んぅっ…、ねえ、さ…ま?」

 

1センチのところで唇が触れ合うというところでぼやぁとまだ眠たそうに半開きされる黄緑の瞳と至近距離で見つめ返す少し垂れ目の黄緑の瞳。

パチクリと瞬きを繰り返すあたしの目をただ黙ってみつめる歌兎…そして、あたしは放心状態から立ち直ると、勢いよく飛び退ける。

 

「デデデッ!?」

 

飛び退いたあたしは秘めた想いを気付かれたのではないかと不安になり顔を青ざめさせ、続けて無自覚であんな事をしでかそうとしていたあたし自身に怒りやら羞恥心やらが溢れ出て、顔が真っ赤になる。

そんなあたしを暫し不思議そうに見つめる歌兎はんーっ、と大きく背伸びするとポンポンとあたしの肩を叩く。

 

「…姉様、具合悪いの?顔赤いよ」

 

振り返るあたしに心配そうに声を掛けてくる歌兎。そんな歌兎にあたしは首を横に振るといつものように答える。

 

「心配しなくても大丈夫デスよ、歌兎。歌兎がなかなか起きないからイタズラしようと思っただけで」

「…そう、なの?姉様のイタズラか…どんなだろう」

 

その後、歌兎の着替えをいつものように手伝い、あたしは調と一緒に学校に行き、その夜に改めて歌兎への想いを再認識してしまったあたしにとっては衝撃的な出来事が待っていた。

 

 

 

 

 

二.

 

あたしの部屋へと心なしが緊張した様子で足を踏み入れてきた歌兎はあたしの隣へと腰を下ろすとソレをボソッと呟いた。

 

「歌兎…さっきなんていったんデス……?」

 

心なしが震える声でもう一度尋ねるあたしに歌兎ははっきりとソレを口にした。

きっと聞き間違いだ。歌兎に限ってそんな事は。だって、歌兎が好きなのはあたしで間違いないのだから。

でも、そんな想いとは裏腹に歌兎がハッキリとあたしの目を見て言ってきた愛の告白(ソレ)はあたしの深いところへと泥水のように流れ込んでくる。

 

僕、好きな人出来たんだ。

 

照れるようにそう言う歌兎。

その幸せそうな顔に何の感情も浮かばなくなる、あたしの中にあるのはただ、裏切れたという真っ黒な感情と好きな人が出来た事を姉として祝ってあげたいという真っ白な感情だった。

 

真っ黒と真っ白は混ざり合わないままに、歌兎は話し続ける。自分の想い人の事を、ほんのりと頬を赤で染めて。

 

そんな歌兎を横目で見るあたしはきっと驚くほど冷めた目をしていたのだと思う。

 

歌兎の口から想い人の名前が漏れる度に、混ざり合わないままであった真っ黒と真っ白は真っ黒が真っ白を飲み込んでいき…------そして、あたしの心の中は泥水のようにドロドロな真っ黒い水で満たされたのだった。

 

そして、思う。

 

なんで、歌兎はあたしが…あたしがッ、こんなにも想っているというのに、どこぞの骨ともわからない男に現を抜かすのだろう。こんなにも…こんなにもッ、あたしは貴女だけを見ているというのに。

 

あぁ、ワカった。愛の告白(コレ)はあタしへのサプライズなんデスね

 

歌兎はイイ子なんデス。あたしか悲シムことはしないハズ。

それに、歌兎ならあたしのキモちにキヅイテくれてイルんですヨね?きづいテテ、そんナいじワルするんデスよネ?

 

あぁ、そっカ。そウにちガイないンデス。

 

歌兎は想い人(ソイツ)にオドさレテルんデスね?よわミをにぎラレて、そんなココろにもナいこトヲいってルんデスヨね?

 

「…姉様?突然、抱きついてきてどうしたの?」

「歌兎、大好きデス」

 

歌兎を後ろから抱き寄せ、耳元で囁く。

 

「…ふふふ、擽ったいよ、姉様。ん、僕も姉様の事を大好きだよ」

 

擽ったそうに身を捩りながら、あたしの方を振り返って、歌兎は明るい笑顔を向けて、あたしへと好きって言ってくれてる。

 

「…ありがと、姉様。話を聞いてもらって、気持ちが楽になったよ」

 

そう淡く微笑み、あたしの部屋を去っていく歌兎の背中を見つめながら、あたしが思うのは----歌兎の想い人(ソイツ)からどうやって、歌兎を解放するか、だった。

 

ソイツの魔の手が届かないところへと避難させて、運命の赤い糸であたしと歌兎を縛って、もう二度と悪い奴に騙されないようにあたしの愛を永遠に耳元で囁き続ける。

 

だって、歌兎もそレヲのゾンでいるんデスかラ…

 

 

 

 

 

 

 

 

三.

 

「…んぅっ、あれ…?僕…」

 

(なんで、眠っていたんだっけ…?)

と、頭を悩ました後に徐々に思い出したことがあった。

そう。確か、姉様に明日彼に初めて誘われたデートにどんな服を着ていけばいいのか、と相談しようと思って、部屋を訪ねてからの記憶がごっそり無くなっているのだ。

 

きっとその原因を知っているであろう姉様の姿も見当たらない。

立ち上がって探そうにも何かが僕の身体に巻きついて自由を奪っている。

 

(待って…何が僕の身体に巻きついてるの?)

 

視線を胸元へと向ける。そこで浮かび上がるのは何故か薄暗い部屋の中に---僕の肢体へと絡みつくのは、真っ赤な縄だった。

 

待って待って待って、なんで僕赤い縄なんてものに縛られてるの?

何か悪いことした?ううん、してない。

してないのに、なんで姉様は僕にこんな事を…。

 

「…ぐっ、だ…め、かたい…」

 

そう簡単に逃げられないように縛られているのだろう。後ろに回された両手も思うままに動かさないままに…辺りを見渡すと、僕を取り囲むように姉様の誕生日に僕が手作りして作った僕を象ったぬいぐるみ達が僕と同じように縛られた。いいや、縛られているのは同じだけど…縛り方が一体一体違う。

 

それに気づいてしまった瞬間悪寒が背中を掛けた。

 

ここ最近、シラねぇが姉様が自室から出てこないと嘆いていた…学校と訓練以外はずっと自室にこもり続ける姉様と僕の周りを取り囲む、赤い縄で縛り上げられた僕を象ったぬいぐるみ達…それもゆうに30体か50体はあると思う。

そのぬいぐるみ達をこの短時間で縛られるわけがない、中にはよく見ると何度も縛り直した跡があるのもあった。

 

それらを合わせると---まるで、姉様が僕を赤い縄で縛り上げる為に練習したようじゃないか

 

「ひぃいい」

 

もう、異様だった。異様としか思えなかった。

 

この薄暗い空間次第も。きっとこのぬいぐるみ達と僕をお揃いの赤い縄で縛り上げたのであろう姉様も。

 

「あっ、歌兎。起きたんデスね」

「…姉様、これとどういう---」

 

---事なの?とキツく尋ねようとして、言葉を失った。

僕を見つめる姉様の瞳に何の感情も浮かんでないのだ、底なし沼のように澱みどんな光も反射しない黄緑の瞳。

鏡のように反射する姉様の瞳に映る僕は眠たそうに見開いている瞳を開けていて、その表情には驚愕と恐怖で埋め尽くされていた。

 

そんな僕の様子など気にとめてない様子で姉様は僕の頬を撫でると笑いかけてくる。

 

「…ふふ、やっぱり歌兎は後手胸縄縛りがよく似合ってるデス。本当は後頭両手縛りも試したかったんデスけれども、あれは長時間続けるのには腕がだるくなるデスからね」

 

まるで世間話をするかのように、日常の一コマを訪ねるかのように、この異様な光景を言ってのける姉様をまじまじと見つめる。

 

可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しいおかし---…

 

(可笑しいよ、こんなの…)

誰なの、僕の目の前にいるこの人は?本当にあの姉様なの?

 

僕が好きだった姉様はこんな何も宿してない瞳をしてなかったし、こんな不気味な笑みを浮かべなかった。

姉様…元に戻ってよ。

僕の願いは叶う事はなく、僕を取り囲んでいたぬいぐるみ達を脇によけると姉様はベッドへと横たわると僕へと身を寄せてくる。

 

「…やっと二人っきりデスね、歌兎」

 

慈しむように僕を抱き寄せ、愛おしそうに僕の水色がかかった髪の毛へと手櫛を入れ、頬を赤らめて姉様は僕へと呟く。

 

「やっと言えるデス…歌兎好きデス…大好きデスよ…一人の女性として、愛しているデス…」

「…何言ってるの、姉様。僕達は姉妹なんだよ?血が繋がってるんだよ?」

「関係ないデスよ。歌兎とあたしは愛し合ってるんデス、愛し合っている二人の間を誰が踏みにじれるデスか?歌兎があたしを求めて、あたしも歌兎を求めて…それ以外に何がいるんデスか?何もいらないデスよね…?ねぇ、歌兎」

 

澱んだ黄緑の瞳を笑みの形へと変え、僕の髪を梳きながら言う姉様。

そんな絵空事のような事、信じているの?姉様。

 

「…可笑しい、可笑しいよ…姉様…。どうしちゃったの…?…あの人との事も応援してくれるって言ってくれたのに…どうして?なんでなの、姉様ぁ…」

「------」

 

ギュッ…っ、と赤い縄の結び目をワザときつく縛る姉様。僕は手首に食い込み、上の皮がむけ、血を流す手首の染みるような痛みに顔を歪める。

 

「…ぐぅ…ッ」

 

そんな僕のことを見つめるのは、氷のように冷たい目をした姉様で。

 

「まだ、そんな妄言を言うんデスか、歌兎。まだ、脅されているんデスね…?脅されているからそんな心にもないことを…大丈夫デスよ、あたしは分かっているデスから。歌兎が世界一好きなのはあたしデスもんね。そんな歌兎の優しい心を弄んだアイツが許せないデスよ…可哀想に…あたしがすぐに始末してきてあげるデスからね。だから、それまでこの目隠しとヘッドホンをしていてくださいね」

 

そう言って、姉様は歪んだ笑顔のまま、僕に目隠しをして…僕の視界は真っ黒になった。

そして、続けてヘッドホンをつけられるのだが…そこから流れてくるのは『歌兎、好きデス。大好き大好き大好き、愛している愛している愛している』と一定の安定と音量で息継ぎもなく喋り続ける姉様の声で---普段とは全く正反対の暗く湿ったその声をこんな暗闇で聞きづけると思うと気が狂ってきてしまう。

 

「…姉様ッ!お願い、このヘッドホンのを止めて!止めたくはないと」

 

僕の気持ちが通じたのか、右側のヘッドホンが外され、流れ込んでくる姉様の声。

 

「あたしの気持ちを沢山詰め込みましたから…じっくり聞いて、あたしのこともっともっと好きになってほしいんデス」

 

そう照れたように言われ、ヘッドホンを再度耳かけられ----僕は絶望した。

 

待って、姉様。待ってお願い、僕が悪かったから…僕が悪いから、お願い。

 

お願いだから…僕を一人にしないで----

 

それを最後に僕は真っ暗闇の中に閉じ込められ、『好き』『大好き』『愛している』の海へと沈んで行くのだった……




というわけで、禁断の愛に走った上に狂ってしまった切ちゃんの話でした。
感情とか表現とかちゃんと書けたかは不安でしかありませんが、楽しんでもらえたならば嬉しいです!

また、初の試みをついてですが…皆さんもご覧の通りで、文章の色や大きさを変えてみました。
少しでも切ちゃんの狂っていく感じや歌兎の絶望感を表現出来たのであれば、嬉しく思います。


今回の話で使った"縛り"なんですが…ずっと前に電子漫画でそれを題材にした漫画がありまして、それを一時真剣に読んでいたなぁ〜と思い出しまして、今回の話に取り入れさせてもらった次第です。
その電子漫画は今やタイトルも思い出せないのですが…兎に角おもしろかったです!


ということで、ここまで読んでいただきありがとうございますm(_ _)m

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