うちの姉様は過保護すぎる。   作:律乃

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本編じゃなくてすいません……そして、お久しぶりの更新となっております。

今回の話は簡単にいうとーーーーある日を境に1日ごとに1歳若返ってしまう歌兎の話です!

今回はプロローグということで、事件が起きてから数日経ったある日の出来事という感じで書いてます。

久しぶりに過保護切ちゃんを書けて、私はとても嬉しかったです。

それでは、本編をどうぞ!


001 妹が小さくなってしまったデス。

「コラ!歌兎」

 

S.O.N.G.の食堂に響く怒声に雪音クリスは正面へと視線を向ける。

 

そこには一人の少女と幼女が居た。

 

少女の外見は癖っ毛の多いショートの金髪は後頭部に二本の寝癖があり、垂れ目がちな黄緑の瞳は下を向いている。

 

その垂れ目がちな瞳に映っているのは、自身の太ももの上に腰掛けている幼女であり、小さな腰へと掌を添えており、ぽんぽんと髪の毛を撫でる。

 

幼女の外見は肩のところで切りそろえられている銀髪であり、眠たそうに開かれている黄緑の瞳でまっすぐ前へと向いている。

 

どこか無邪気な雰囲気を感じる眠たそうな黄緑の瞳は自分の近くにある焦げ茶色のお椀へと手を伸ばす手がお椀に触れた瞬間、ハッとした顔で身を乗り出す腰をぐっと自分へと引き寄せる腕を鬱陶しそうに両手を添えてからジタバタする幼女。

 

彼女達の名前は少女の方が暁切歌。幼女の方は暁歌兎。

二人は姉妹であり、このS.O.N.G.内でちょっとした有名人だったりする。

 

(有名なのは、主に姉の行動の方だがな…)

 

クリスは今まで妹を思うあまりに姉が起こした数々の騒動を思い浮かべながら、もぐもぐとハンバーグ定食をスプーンで一口サイズにして、口に含むとくちゃくちゃと咀嚼音を鳴らし食べながら、姉妹のいつもよりも穏やかで可愛らしい攻防を黙って見守る。

 

「…むー」

 

クリスが見守る中、切歌は歌兎が火傷しないように立ち回るのに苦労しているようだった。

そんな姉の苦労を知らない妹は不機嫌な声をあげながら、近くにある焦げ茶色のお椀へと小さな手を引っ掛けて、自分の方へ引き寄せようとしてお椀が傾いて、中に入っている液体が自分の方へと傾くのを見た切歌は瞬時に手を素早く掴んで、空いている手で歌兎の手の届かないところへと移動させた切歌は頬をフグのように膨らませて「むーむー」と不機嫌な声を上げている妹へと叱咤する。

 

「むーじゃありません。これに触ったらあついあついになって、歌兎が痛い痛いになってしまうんデスよ?」

 

「…やだー、すーぷのみたい」

 

「ダメデス!まだ飲めませんっ」

 

姉に怒られても懲りてない様子の妹は身を乗り出してからお椀を掴もうとし、切歌は顔を青ざめさせるとより遠くへと置く。そして、歌兎の手首を掴むと膝の上へと置く。

 

「ダメと言ったらダメデス!まだ熱いので、歌兎にはあげられません。まだお野菜やおかずが残ってるでしょう。先にこっちから食べましょう?」

 

歌兎用に取り分けたプラスチック製の小皿の上に乗っかっている一欠片のオムレツ、ブロッコリー、ミニトマト、小ぶりのふりかけがかかったおむすびが残っているのを見てから、歌兎が右手に掴んでいるスプーンでそれらを掬おうとすると歌兎がブンッと手を横に振る。

 

「…もうあきた。すーぷのみたい」

 

ブンブンとスプーンを振り回しながら、駄々をこねる妹に切歌は困り顔で宥めるが歌兎の我が儘は収まる気配は無く、より強くなっていく。

 

「ダーメ。もう少し冷ましてから飲みましょう……ね?ほら、まだオムレツが残ってますよ。歌兎、このオムレツ甘くて美味しいって言ってたでしょう。お姉ちゃんが食べさせてあげるから、お口開けて…あ〜ん」

 

「…やだー。すーぷ、のむの!」

 

切歌の差し出すオムレツののったスプーンを手で阻止し、さらに加速していく妹の我が儘に折れたのは切歌の方だったようで、小さくため息をついてから、スープでスプーンを掬う。

 

「…はぁ……分かりました。お姉ちゃんがフゥーフゥーしてからね?」

 

「…ん!」

 

切歌がスプーンで掬い、フゥーフゥーと息を吹きかけ、よく冷ましてから目をキラキラさせている歌兎へと差し出してから小さな口へと添えてからゆっくりと傾けてからゴクゴク飲んでいく妹を見下ろし、嬉しそうに微笑む切歌。

 

その様子をクリスは暫く見てから、二人の抗争が落ち着いた頃を見計らってから切歌へと声をかける。

 

「過保護は大変じゃないのか?」

 

「にゃ?」

 

「チビが小さくなり始めてから、ずっとそうやって世話してんだろ?さっきの駄々も毎日となると参ってくるだろ」

 

切歌は暫くぽかーんとしていたが、やっとクリスが尋ねたいことに気づいようでくいくいと袖を引っ張り、二杯目をご所望する歌兎に「フゥーフゥー」と息を吹きかけてから冷ましたスープを差し出しながら、暫く思考した後にクリスへと首を傾げながら問いかける。

 

「クリス先輩はあたしが大変そうに見えますか?」

 

逆に尋ねてくる切歌の顔をまじまじと見つめたクリスは一言言う。

 

「……全然見えないな」

 

というか、いつもよりも肌は艶々しているように見えるし、イキイキしているようにも思える。

 

(確か前に歌兎エキスがなんとかかんとか言ってたな…)

 

今はその歌兎エキスがたくさん摂取出来ているって事だろうか?

しかし、さっきの駄々等を毎日やっていると思うとやはり大変だと思うのだが……お風呂とかもこの調子だと駄々を言ってそうだし……しかし、歌兎の事を大事に抱きしめているこの姉を思うとーーーー

 

(ーーーーその苦労すらも楽しんでそうだよな…)

 

僅かに苦笑するクリスの問いに必死に答えようとしている切歌は歌兎の催促に応えながら、しばらく「うーうー」と唸り声をあげながら、瞼を閉じてから考えた切歌はパッと目を見開くとポツリと問いへの答えを口にする。

 

「確かに歌兎が小さくなって大変だったこともあるデスよ」

 

そう言いながら、歌兎の口元を拭ってあげてから今度はプラスチックの容器にあるオムレツを切ってから歌兎の口に含んでから、今度はスープを冷ましてから飲ましてあげる。

 

「小さくなるにつれて記憶を失っていって、あの時みたいに人見知りになっちゃうし……あたしのいうことを聞いてくれない時もいっぱいありますし……やんちゃばかりして転んだりとか危ないことばかりして……心配しちゃう時もありますけど……」

 

そこで言葉を切った切歌はクリスへとにっこりと笑いかけながら、歌兎のぷにっと膨らんだ頬をツンツンと突く。

 

「でも、どうしようもなく可愛いんデスよね」

 

プニプニする切歌の指を鬱陶しそうに小さな手で防ぐ歌兎の髪の毛を手櫛しながら、切歌はギュッと歌兎を抱きしめる。

 

「迷惑かけられても心配しても何をさせてもこの子の笑顔というデスか……顔見てたら、些細な事がどうでもいいように思えてくるんデスよね。もう可愛いくて愛おしくて……あたしにとって、こうして歌兎と居れる時間がとても大切なんだなって……今回の事件で思ったことデスね」

 

これで答えになっているかとクリスの顔を見てくれる切歌へとクリスはスプーンをお盆へと置く。

そして、一言だけ呆れたように掌を重ねてから席を立つ。

 

「お前の妹好きは筋金入りだな」

 

「ふふ。クリス先輩もようやく気づいたようーーってなんでそんなに呆れ顔してるんデスかっ!?」

 

「お前を心配したあたしが馬鹿だったなーって思ってな。ごちそうさん」

 

お盆を持って、切歌達から背を向けてから食堂を去っていくクリスへと右手を伸ばしてから止めようとする切歌だったが、歌兎の妨害により、それも上手くいかずにクリスの姿が見えなくなってしまう。

 

「って、クリス先輩!?話はまだ終わってないと思うのデス!!まーー」

 

「ーー…おねえちゃん、すーぷ」

 

「はいはい。スープデスね。フゥーフゥー……はい、どうぞ」

 

「って、クリス先輩!!もう居ないデスし……もう…」

 

(クリス先輩は結局、あたしに何を尋ねたかったんデスかね…?)

 

切歌は小さくため息をついてから、クリスが立ち去る前に僅かに口元に笑みを浮かべていたことに眉を顰めながらもくいくいと袖を引っ張ってから新たなスープをご所望する小さな我が儘お姫様へとしっかり冷やしたスープを小さな口元へと添えるのだった。




次回から話を遡って書かせていただきます。

今回の切ちゃんがいつもよりもお姉ちゃんしてましたね(微笑)


〜今回の話の補足〜

今回登場した歌兎は3〜5歳児です。
一人で椅子に座って食べるには背が足りないので、食堂で食事を摂る時は切ちゃんの膝の上に座って食べてます。
といっても、定食は量が多くて食べられないので……切ちゃんが頼んだ定食を食堂で小皿をもらってから、そこにご飯やおかず等を少しずつ取ってもらってスプーンフォークでもぐもぐ食べています。
ですが、作中でもありましたが、お汁物に関しては歌兎が火傷をしてはいけないので…歌兎の手の届かないところに置いて、冷ましてから飲ませています。
そして、お風呂など危険を伴うもの、トイレや着替えなど危険を伴わないものも含めて、切ちゃんが付ききっかりでお世話をしており……歌兎が小さくなってからは切ちゃんの部屋で二人で寝ています。

そして、今回の歌兎を少し駄々っ子のように書いたのは……偶にはそういう彼女でもいいかな〜と思ったからです。
今書き直しているメインストーリーではいい子すぎる程にいい子なので……小さくなった時くらいお姉ちゃんや周りの人たちを困らせる駄々っ子になってもいいかな〜と。
切ちゃんは少してんてこまいな感じでしたが、クリスちゃんのいう通り、切ちゃんはこういう歌兎とのやりとりも楽しんでそうなので…(微笑)

以上、今回の話の補足でした!



最後に、今日は響ちゃんの誕生日であるのと同時に茅野愛衣さんの誕生日ですね!!
お二方の誕生日を心からお祝いするのと同時に、この日にお生まれになられた方々にもお祝い申し上げます、本当におめでとうございます!!!!
響ちゃんと茅野さんが生まれてきてくれたこの日に感謝し、後書きを終えたいと思います。
また、来年もお二方の誕生日のお祝いをできるととても嬉しいです!!



また、最後にちょっとしたお知らせなのですが……

pixivの方で【うちの姉様は過保護すぎる。(チャット風小説版)】を0:00に投稿させていただきました。

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=16009723

こちらはチャット小説風にこの作品をリメイクしたもので、まだ第1章の始まり部分しか書いていませんが……随時、他の話も載せていく予定です。
あまり文を読まれるのが得意ではない方、ささっと文を読みたい方におすすめとなっていますが、この作品を読んでくださっている方にも楽しんでいただけるよう、新たなセリフの入れていこうと思いますので……この【うちの姉様は過保護すぎる。】【R指定】共に、応援をよろしくお願いいたします(深々とお辞儀)

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