うちの姉様は過保護すぎる。   作:律乃

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デデデ……デースッ!! (←本編どうぞの意)


003 1129(いいにく)チケット~情報収集~

 

「…え? 姉様も買ったの?」

 

 そう言って、隣の席で目をパチクリしている妹の反応が想像通りなので、前もって準備してあった台詞(・・・・・・・・・)を満面の笑顔を浮かべながら言う。

 

「はい! 歌兎にこの前見せてもらって、面白そうって思ったので」

 

 もちろん、口実である。

 本当の目的はあたしが現在進行形で持っている、歌兎がさっきまでプレイしていたであろう百合百合しいゲームとそのゲームをアニメ化したものを『オススメ』と言って、あたしの可愛くて可愛くて仕方がない妹へと手渡したのが誰なのか、どんな人物で、歌兎とどんな関係なのか等をごく自然と聞き出すためだけの小道具。

 

「…そうなんだ」

 

 歌兎はそう言うとゲームソフトに向けていた視線をあたしへと向けてくる。

 どうやら、あたしの用件がそれだけではないことを薄々感づいていたらしい。

 

“朝ごはんも丁度食べ終わったようデスし、そろそろ切り出しましょうか”

 

 真っ直ぐ見上げてくる眠たそうな黄緑色の瞳を見つめ返しながら、眉をひそめてから段取り通りに事を進めていく。

 

「それで、歌兎にお願いなんデスが。お姉ちゃんにこのゲームの攻略を教えてくれませんか? あたし、あまりギャルゲーとか恋愛ゲームした事なんデスから……やり方がよく分からなくって……」

「…あ、姉様とシラねぇがしているジャンルってRPGや格闘ゲームが主だもんね。ん、いいよ、僕で姉様の力になれるなら」

 

 淡く微笑む歌兎と食べ終わった食器を片付けた後にソファに座ってからゲームをする事を約束してから、流し台で洗い物をしているとふきんを持った歌兎があたしの横に自分専用の台を置いて登るのを見て、ここで茶碗や皿を渡さないのは意地悪しているようだと考えて……姉妹で肩を並べて、仲良く食器を片付けることに専念する。

 

「お疲れ様デス、歌兎。手が冷たくなっちゃいましたね、暖かい飲み物でも入れましょうか」

「…ん、ありがと、姉様」

 

 お礼を言う歌兎のリクエストであるホットココアを其々のマグカップに入れてから、テーブルに置く。

 そこからゴソゴソとテレビゲーム機の電源とテレビの電源を入れてから、ソフトを挿入してからズカとソファに腰を落とすと"どこに座ろうか"と悩んでいる歌兎を手招きして、トントンと妹が腰掛けるくらいに開けた股の間の隙間を叩く。

 

「…失礼します」

「どうぞどうぞ」

 

 誘うあたしと他の隙間に座ろうか、暫く悩んだ歌兎は苦笑いというよりも照れ笑いを浮かべながら、結局はあたしのところに座る事にしたらしく、ストンと小さな隙間へと腰を落とす。

 そして、落ちないよう微調整した後に後ろを振り返って、オズオズと尋ねてくる。

 

「…縋っていい?」

「もちろんデスとも。好きなだけ縋っていいデスよ」

「…ん、ありがと。それじゃあ失礼します」

 

 何故か再度敬語となり、おずおずと縋ってくる歌兎の小柄な体躯がすっぽりと胸の中へと収まるので–––

 

(あぁん、このヒット感……最高デス……)

 

 ––––堪らずギュッと抱きしめるあたしの谷間へと埋まるさらさらな水銀の髪へと手櫛を差し入れながら、ナデナデしていると物静かな声がボソッと何かを呟く。

 

「……………柔らかいのが逆に辛い。神様はどこまでも不公平」

 

 ボソッと呟いた張本人は自身の胸を軽く触った後に眠たそうな瞳が一瞬色を無くし小さく嘆息するのを見て、心配で堪らず声をかける。

 

「何か言ったデス? 歌兎」

「…ううん、何にも」

 

 振り返ってから淡く微笑む歌兎はいつもの可愛さを具現化したような愛らしさでさっきの一瞬感じた邪悪なオーラはなんだったんだと目をパチクリさせているとテーブルの上に置いたままにしてあるコントローラーを前のめりにしてから取ると小首を傾げる。

 

「コントローラー、どうする? 僕が持つ? それとも姉様?」

「お姉ちゃんが持ちますよ。お姉ちゃんが頼んだことデスし」

 

 そうすることで必然的に歌兎を後ろから抱きしめられ、密着できるという下心はひた隠し、あくまでも頼んだのは自分だから自分が持つのが当たり前と言う口実で半端強引にコントローラーを受け取ってから、ギュッと前に座っている妹の背中に密着する。

 

(ぁぁ……歌兎ってば、なんでこんなにも可愛いんでしょうか。180度どこ見ても可愛いとか天使デスか? それとも女神なんデスか? もう大好きッ)

 

「…ね、姉様……そんなに抱きしめられると苦しいよ」

「デ!? ごめんなさい、歌兎」

 

 興奮しすぎて抱きしめすぎてしまったらしく、表情を曇らせながらそういう歌兎から少しだけ身を離してから、小さな指が画面を指差すので視線をそちらへと向けると最初は映像が流れる仕様になっているらしく、主人公である銀髪の少女が攻略対象と思しき少女と接触してしまっている。

 

(しっかし、何度見てもその主人公って歌兎に似てますよね……)

 

 目の前であたしに背中を預けて、画面を見つめる最愛の妹と画面で恋愛ゲーム・ギャルゲーのテンプレであろう曲がった角の先でヒロインとぶつかるというフラグを回収している主人公を務める少女を見比べながら、うんうんと一人納得するようにうなづく。

 

「…姉様? 名前決めた?」

 

 何度見比べても瓜二つと言わざるおえない画面の少女と最愛の妹の共通してないところを逆に探す事に夢中になって、主人公の名前を決める事を忘れていた。

 

(ん……ここは敢えて友達の情報を聞き出すために、歌兎がプレイした時のことを聞いたほうがいいかもデスね……)

 

 そう考えたあたしはこっちを心配そうに見上げている歌兎を見つめながら、問いかけてみる。

 

「因みに歌兎はどんな名前にしたんデス?」

「…僕? 僕は友達の強いススメで自分の名前にしたよ。その方が楽しめるって言われたから」

 

 あっけらかんと言う歌兎をマジマジと見つめながら、心の中で絶叫する。

 

(どんだけ強引なんデスか!? 歌兎の友達!!!?)

 

 今日一でびっくりした気がする。

 この様子だと自分が今画面に映っている少女と瓜二つであることを……瓜二つである少女が主人公を務め、女の子達を堕としていくゲームを故意で友達にオススメされたことは気づいてない様。

 

「歌兎がいい子に育ってくれて、お姉ちゃんは嬉しいデスよ」

 

 よしよし、と頭を突然撫でられた歌兎は目をパチクリしていたがあたしは妹が素直で真面目な子に育ってくれたことが嬉しくて堪らない、さっきその生真面目に新たな黒歴史が作られたことはすっかり頭から抜け落ちていた。

 暫く、頭を撫でた後、「歌兎がそうしたなら、あたしも……」と言いつつ、プレイヤーネームに《切歌》と打ち込み、恋愛ゲームを開始し、表示される会話文を読み、時折アドバイスを貰いながら、進めていく。

 イベントを数回行い、そろそろエンディングかなというタイミングでチラッと真面目な様子で画面を見つめる歌兎へと見ながら、世間話を話すかの様に例の事を問いかけてみる。

 

「その……歌兎……」

「…どうしたの、姉様?」

「歌兎にこのゲームを教えた友達ってどんな子なんデスか?」

「…どんな子? んー、どんな子と言われても困る……」

 

 珍しく言いどまり、眉をひそめながら困惑した様な表情で固まる妹を見つめながら、あたしは内心穏やかなではなかった。

 

(それどういう意味で? もう、手を出されちゃったんデス!?)

 

 歌兎がゲームの主人公を自分と認識ないなんて些細な事だった。

 この子は昔から自分の事に関して無関心である上に時の流れやその場の流れには流されやすく、ゴリ押ししちゃえばゲームの展開とは別に襲えてしまうのではないだろうか? もし歌兎のそういう所を相手が気付いてしまえば……もうそこから先は赤子の手をつねってしまうくらいに簡単な事なのではないだろうかッ。

 

(あばばばば……歌兎がぁ……あたしの可愛い歌兎が……もう大人に……)

 

 みるみるうちに顔色が悪くなっていくあたしに気付いた歌兎は慌てた様にぶんぶんと首と手を横に振りながら、まだ困った様な表情をしながら、時折言葉を詰まらせながら友達がどんな子なのか説明してくれる。

 

「…違うのっ。困るっていうのは一言で言い表せないから困るって言っただけで……。その、ね……最初に会った時はすごく大人しそうな子だなって思ったんだけど……友達……ううん、知り合いになってから、色んな表情を見せてくれるようになったから」

「色んな表情?」

「…例えば、姉様が最初に攻略していった画面の子はツンデレ属性っていうのらしいんだけど……そのツンデレになってみたり、クーデレっていうのになってみたり、急に甘えん坊になったりとか……僕もよく分からないの」

 

(歌兎の友達っていったい何者なんデスか?)

 

 確かにそこまで多くの属性を持っている人はあたしも見たことないデス………とと、あたしも一緒になって困惑している場合じゃないのデス。

 ここから先が一番重要なんデスからッ、と心で意気込んだあたしは未だ友達を一言で表すための最善の言葉を探している様子の歌兎へと一番聞きたかった事を聞く。

 

「歌兎はその友達の事、どう思ってるデス?」

「…どう思ってるか……んーー」

 

 ドクンドクンと脈立つ鼓動を掻き消すように頤へと利き手を添えてから考え込んでいた歌兎が物静かな声があげる。

 

「…そうだね……僕にはもったいない人かな」

「もったいない人、デスか」

「…ん。僕は姉様やねぇや逹、お姉ちゃん逹に比べると表情とか口数も乏しいし少ないほうだから……学校通いだした頃は友達が作れなかったんだけど……その子と友達になってから色んな人と友達になれたし、毎日が楽しいんだ」

 

 そう言って、満面の笑顔を浮かべる妹の姿を見ていたら、あたしがしようとしていること自体が馬鹿馬鹿しいほどに浅ましいことのように思えて……素直に答えてくれた歌兎の頭をポンポンと撫でてから、もう暫くその友達の様子を見ることにしたのだった。




本編のちょっとした補足〜。
歌兎の友達が代わる代わる属性を変えたのは、歌兎がどの属性が好きなのか見極めるためです。



ここから先は前に少しだけしか触れられなかったシンフォギアラジオ74回の感想なのですが……

前にも言いましたが、本当に素敵な回だった……(しみじみ)

所々入れてくださった切ちゃんボイスの『デース』『デデデ』『あったかいものどうぞデス』は可愛いにつきりますし、トークの所がより熱かったですね!!
この前の南條さん回でも語られてた【切ちゃんの過去】の聴いた後はこれまでの切ちゃんの行動にも納得出来るとおっしゃっていましたし……何よりも中の方がシンフォギアを通して、いつの間にか仲良くなっていったというエピソードには聴いている私もF.I.S.組の三人は茅さん、南條さん、日笠さんしか考えられませんし、三人がここまで役を演じてくださったことに感謝しかないです。
また、XVのユニゾン曲完成版が収録の二日前に渡されて、歌えるか不安だったけど『調とだから』つられずに歌えたっていうトークにもう……きりしらファンとしてみたら何よりも嬉しい言葉ですよねっ。

あと、XVで切ちゃんの変身バンクが一位っていうことが話題になりましたね〜♪
確かにあの変身バンクはエロさも可愛さもかっこよさも丁度いいですし……ポールダンスならぬ鎌ダンスの時の動きとか……ね、あれはヤバイです(語尾力無くなる)
また、内側の太ももをなぞりながらのニーソをパッチーンは穴が開くほどみたい箇所ですよね……(しみじみする変態)
因みに私が好きなシーンは切ちゃんが『XV』と書くシーンです……あの時の切ちゃんの笑顔共にイケメンすぎて……もう……(鼻血を抑える)

続いて、復活したメモリアのコーナーも素敵な作品だらけでしたよね〜♪
井口さんも高垣さんも茅さんも絵が上手すぎるっ。
特に茅さんの絵をそのままTシャツかメモリアにするって案には深くうなづきました。
あのゆるい感じの絵は私大好きです!!
茅さん、絵本……書いて欲しいなぁ………

『この手には君を笑い殺す力がある』のコーナーでは、茅さんの一人きりしらが聞けてもう眼福ならぬ耳福です……あそこだけ延々にリピート出来る……またお題もきりしららしいものでしたし……調ちゃんを演じていらっしゃる茅さんの声は今まで聴いた中では聴いたことがない声音でしたし……最後の『し、調。照れるデスよ。そんなデーススクトップにしたら』の言い方が好きすぎるっ。
また、その後のF.I.S.組の高垣さんのマリアさんも良かった……

今回もいいラジオを聴かせていただきました(手を合わせる)

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