うちの姉様は過保護すぎる。   作:律乃

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今回の漫談はとにかく楽しい話を書こうと思い、書いたものデス。
なので、この話を読んで、読者の皆さんが笑ってくださったらと思ってます。

まぁ、今回の切ちゃんも過保護度は安定の100パーセントですので…それに巻き込まれるみんなはとても大変だと思います(笑)

今回の話のあらすじは
学校で仲良くなった友達の家へとお泊まりに行こうとなった切歌と調だが…。そこで、切歌が歌兎を置いて、お泊まりにはいけないとタダをこねる。そこで、歌兎も切歌を説得しようとするが…、切歌は聞く耳を持たずに。終いには、切歌が泣き出してしまうといったところから、スタートとなっております。

過保護な姉様が織りなすハチャメチャなお泊まり劇をどうぞ!

*今回はかなり短いです。


001 お泊まり

二課にある休憩所の中。金髪に黒のバッテンの髪飾りが特徴的な少女が膝立ちになって、目の前にいる水色が混ざる銀髪を背中近くまで伸ばした少女へと抱きついて、ポロポロと涙を流している。

その様子に周りにあるものは唖然とし、ある者は苦笑いを浮かべ、またある者は申し訳なそうな表情を浮かべ、最後の一人に至って呆れ顔を浮かべている。

いつものことながら、この二人ーー暁姉妹は波乱の中を生きている。いや、姉の方が進んで、波乱を進んでいくのだ。故に、妹もその姉の背中を追いかけてしまってるため、もう誰もこの二人の暴走を止められないのだ。

 

「…うぅ…歌兎ぅ〜…」

「…姉様、泣かないで。明後日には会えるから」

 

年甲斐もなく、妹・歌兎の胸へと顔を押し付けて泣いている姉・切歌へと歌兎は姉の頭を撫でながら、優しく語りかける。しかし、歌兎の励ましの気持ちは肝心の姉には届かずに、またしても姉様お得意のちんぷんかんぷんな方向へと話が進んでいく。それには、流石の歌兎も困った表情になっていた。

 

「1日も離れ離れなんデスよ!明日、お姉ちゃんはどうすればいいのデス?」

「…姉様にはシラねぇがいるから。それに、僕は友達とも仲良くしてほしいって思ってる」

「なんデスと!!?歌兎はお姉ちゃんと離れ離れでも寂しくないと…そういうデスか…?」

「…ううん、そうじゃなくてね…。僕が言いたいのは…」

 

そんな二人の様子を遠くから見ていた明るい茶色の髪をしている少女・響が切歌を見てはポツンと呟く。 その隣にいる青い髪を結んでいる女性・翼は眉を潜めると、事の成り行きを見守っている。そして、そんな翼の横にいる白髪の髪を赤いシュシュで結んでいる少女・クリスが実に様々な表情を浮かべている元F.I.S.組へと問いかける。

 

「あらあら、随分荒れてますなぁ〜」

「むぅ?何故、切歌は歌兎に抱きついて泣いているのか?」

「…なぁ、なんだ?これ」

 

顎で目の前の光景を指され、元F.I.S.組は視線を下へと向けると揃って頭を下げる。それはまるで、うちのダメ娘がまたやんちゃを…とお詫びの品を持って回る親の姿によく似ており、この三人が普段からこの過保護な姉に手を焼いているのかがよく分かる反応であった。

 

「え…と…」

「三人ともお騒がせしてごめんなさいね」

「明日、私と切ちゃんが友達の家にお泊りに行くんです。何ですが、切ちゃんが歌兎を置いてはいけないって。私は皆の邪魔になるし、最も歌兎が居づらいだろうから。諦めようって言ったんですが…終始、こんな状態でして」

 

漆黒の髪をツインテールにしてる少女・調はチラッと切歌の方を見ると、まだ抱きつかれている歌兎へと視線を向ける。歌兎は調たちの方を見ており、その眠たそうな黄緑色の瞳には大きく“たすけて”の四文字が浮かんでいた。

基本、姉には絶対服従の妹すらもドン引きの駄々をこね続ける切歌。だが、ここに居る誰もが歌兎へと期待をしているのだが、この状態では切歌の勝ちとなってしまうかもしれない。

しかし、意外な人が発した言葉により、この話は終焉を迎える。

 

「あぁ、なるほど、そういうことか。でも、それって、たった1日だけなんでしょう?私や未来もよく遊びに行ってるし、切歌ちゃんも楽しんでくるといいよ。歌兎ちゃんはここにいるみんながしっかりお世話するからさ」

「そういう簡単な問題じゃないんデスよ!響さんっ」

 

響が何気に発したセリフに切歌がつっかかる。グイッと整った顔立ちを響へと近づけると、力強く肩を揺らす。それに、響は目を回す。

 

「おぉっ!?急に食いついてきたね、切歌ちゃん」

「響さんまでなんでそんなこというデスか!?そんなにあたしと歌兎を切り離して、何を企んでるんデスか!あたしが悲しむ姿を見て、みんなして笑ってるんデスか〜っ」

「肩を揺らさないで、切歌ちゃ〜ん〜」

 

高速で前後ろと響の肩を揺らすたびに、響の首がカクンカクンと良からぬ音を立てており、琥珀色の瞳はぐるぐると渦巻きを作っている。その様子に、今まで傍観していた翼が興奮している切歌の方を叩く。

 

「まあまあ。落ち着け、切歌。誰もそんなことは考えてない。ただ、切歌にも楽しんできて欲しいだけなんだ、友との思い出、とてもいいではないか。私は切歌にも…もちろん、月読にも心に残る思い出を作って欲しいと思っているぞ」

 

翼の暑いスピーチの後、目を回している響の肩を強く握りしめて、下を向いている切歌はポツンと呟く。それには眉をひそめるクリスに切歌は大きな声でちんぷんかんぷんな事を言う。

 

「…さい」

「はぁ?なんて言ったんだ?」

「じゃあ、今日だけは歌兎とずっと一緒にいさせてください!それで、明日を生き抜く為の歌兎成分を貯めるのデス!」

 

その時、ここにいる人たち誰もが思っただろうーー

 

(ーーいさせてくださいも何も毎日一緒にいるじゃないか)と。

 

それと、(歌兎成分ってなんだ?)とも。当事者である妹の歌兎までもが、普段は絶対服従の姉へと何言ってるんだ?こいつ、みたいな顔をしているのを周りにいる誰もが目撃していた…




というわけで、次回はお泊まり前日と当日の話を書こうと思います。

主人公が誰の家に泊まるかは…次回までのお楽しみということで(笑)

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