もしも織斑一夏が現実的だったら   作:舞波@現在進行形ゴールデン

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遅くなってすみません。設定に色々と追加しました。
VS蟲野郎。無双開始です。


俺を呼ぶなら

ピットに戻ると、其処には円夏とダリルさんがいた。

 

「よ、お疲れさん」

 

「大して疲れてませんがね。で、何でここに?」

 

「私が山田先生に『友人です』って言ったら簡単にOKしてくれたよ」

 

「緩っ!」

 

つくづく大丈夫かIS学園。まあ今に始まった事ではないだろう。…寧ろその方が問題だが。

 

「そう言えばこの後は直ぐに次か?」

 

「まあ大方暴君が俺を休ませないつもりでそうしたんでしょうけど…俺としては愉しんでましたが」

 

「あの会話全部聞こえてたから多分愉悦してるんだろうなーって思ってたけど。やっぱりそうだったね」

 

「当然だろう?そろそろ行くぞ」

 

「1つだけ忠告してやるよ、なんか仕掛けられてるかもしれねーから気をつけろよ」

 

「…わかりました。警戒はしときますよ」

 

そう言いながらピットから歩いてフィールドに出た瞬間。

 

「!」

 

バラララッ!

 

銃弾が飛んできたので片手で側転して躱す。其処には蟲野郎とは別に五機のISが浮いていた。中にはモップまでいる。

 

「何のつもりだ?」

 

「フン、あんたの勝利なんてまぐれよ、だから私達頼まれたの。織斑先生に、あんたを叩き潰せって!」

 

「聞いたか2人目⁉︎千冬姉は俺を勝たせたいんだ!大人しく踏み台になれ‼︎」

 

まだイクサを展開してもいないのに一切の躊躇も無くライフルを撃ってくる。地上で躱し続けるのも無理があるのでワイヤーと黒鍵を出し、ワイヤーを天井に向かって投げる。尚、これは『対IS用兵装(・・・・・)』と呼ばれる物であり、普通に使うならば危険過ぎて使用できないが、IS相手ならこれだけの物が必要だった為に束さんが作成した物である。

 

「なっ⁉︎」

 

「飛んだだと⁉︎」

 

「不正解だ」

 

傍目には浮いているように見えるが実際には引っ掛けたワイヤーからぶら下がっているだけだ。このまま戦ってもいいが後が面倒になりそうなので邪魔されない内にさっさと展開する。

 

「変身」

 

苦情が来たので変身音は省略させて頂く

(↑メタ発言ッッッ!by作者)。

 

「さて、死ぬ覚悟は出来てるな?ああ何も言うな、答えは聞いてない」

 

「そんなIS一機でこの数を倒せるとでも⁉︎」

 

「まずは煩い雌共を掃除してやるか」

 

そう言った瞬間、イクサの十字架が開き、2つの赤いカメラアイが露出する。煙を出して排熱処理を終え、イクサはようやく元のポテンシャルに戻る。まあ、あくまで『競技用』レベルだが。

 

「姿が変わった⁉︎」

 

「イクサ、『バーストモード』だ。以後お見知り置きを」

 

この姿になってさえしまえば誇張抜きで負ける事は無い。なにせ、セーブモードの2倍の出力が有るのだ。さあ、始めようか。セーブモードでは使っていなかったカリバーを抜く。飛んでから銃弾は全て斬り伏せた。

 

「弾幕どころか連携も無いか」

 

ただ闇雲に撃つだけでは幼稚な遊びと変わらない。さっさと落とそう。ナックルのチャージは既に終了している。右手にナックルを構えたままスヴェルを動かし、モップと蟲を除いた4機を一箇所に集める。相手は誘導された事にも気づいていないだろうが。

 

「イージー過ぎるな、『ブロウクン・ファング』‼︎」

 

「なっ⁉︎ちょ、あんたどきなさいよ!」

「あんたがどけばいいでしょ⁉︎」

「煩いわよ!」

「もう間に合わな、いやぁぁぁぁぁ⁉︎」

 

ついでに言っておくと絶対防御を破れるレベルの高電圧にしてある為、打たれ方が悪ければ内臓を易々と焼くだろう。少しやり過ぎな気もするが、こいつらにISを使う資格は無いだろうから。

 

「いくらISを纏っているとはいえ、やはり臭うな」

 

焦げ臭い。まして人の体は特に。この戦闘(IS)がトラウマになってくれればこいつらはもう偉ぶる事は無いだろう。

一方、周りはハラハラしながら俺を見ていた。何でこのような状況になっているのか分からないのだろう。更についでを言えば先の会話は聴かれている筈なので暴君があの雌共を送り込んだ事を皆知っている、ということになる。

 

「っと。何故猪がここにいる?」

 

「黙れ!卑怯な手を使って恥ずかしく無いのか⁉︎」

 

「それをお前らに言われたくないな」

 

突っ込んで来たモップ型猪の突進を躱す。というか先まで見てなかったがまさか近接のみを狙っていたわけではない…よな?センサーで確認すれば後ろには蟲野郎。挟み撃ちするつもりらしい。

 

「面倒は嫌いなんでな…開けスヴェル!」

 

その声が終わる前にスヴェルが3つに分離する。2枚の双刃カッターが蟲野郎の腕を捉えて壁に張り付けにする。流石にこの問題児共を同時に相手にするのは精神的に疲れる。何か蟲が喚いているが俺にはそれが言葉と認識できない。

 

「このっ!」

 

「遅過ぎるな」

 

「早く秋十を離せ!」

 

「お望みどおりの一対一の正々堂々だぞ?何を怒る?」

 

「黙れ!お前があんなものを使っているのが悪い!」

 

滑稽すぎる。

都合が良すぎる。

自分勝手すぎる。

馬鹿馬鹿しすぎて目も当てられない。動きはトロい、剣は大振り、それで更に当たらない。この猪モップはこれだから束さんに

『私が才能を持って行き過ぎなければもっとマシな人間に…』なんて言われるのだ。早く終わるのがつまらないから避け続けているが、本当にこの猪モップは剣道しか能が無いらしい。

 

「或る意味馬鹿の一つ覚えか」

 

「誰が馬鹿だと⁉︎」

 

「激昂するなら心当たりがあるんだな」

 

「〜〜〜ッッッ!」

 

もう口に出せる事が無いのか黙って剣を振り続ける。元々雑だったが更に雑に磨きがかかっている。そろそろ頃合いだろうと思いカリバーのガンモードを構える。スヴェルのマシンガンはオートで猪モップをロックしている。

 

「精々逃げ回れ」

 

「銃なんて使うな卑怯者が‼︎」

 

「獣を殺すなら飛び道具が一番だろう?」

 

このやり取りの間もただ真っ直ぐ進んでくる猪モップは、自分から当たりに行っているのかと思う程弾丸を喰らっていた。

 

「このおおぉぉ‼︎」

 

「ハァ…堕ちろ」

 

叩き堕とす。そう決めた俺は拳を握りスヴェルのパイルバンカー(杭打ち機)をセットする。そしてそれをーー思いっきり振り下ろす。

 

「なっ⁉︎ガハッ‼︎」

 

一気に加速してモップを捉えたまま地面に激突、更にトドメのインパクトが放たれる。煙が晴れるとそこには気絶したモップが一…つ?

 

「さて後はお前だけだが」

 

カッターが回転しながら戻って来る。盾には戻さず三つに分かれたまま浮かせる。

 

「てめぇよくも箒を‼︎」

 

「ルールに則って落としただけだが何か?」

 

「ここで勝っていいのは俺だけなんだ!邪魔ばかりしやがって‼︎」

 

「何様だ、お前」

 

「お前が出てこなけりゃハーレムだったのによ⁉︎」

 

「ハァ…念の為言っておくが聴かれているぞ?」

 

「煩い!勝った奴が正しいんだ‼︎」

 

喚くだけ喚くと蟲の武器が開き、光を放っていた。

 

「分かるだろ?この零落白夜があれば、お前なんか‼︎」

 

そう言いながら突っ込んで来る蟲。思い知らせてやる為にも俺はそれを敢えて受けた。

 

「終わりだ…⁉︎」

 

剣が触れる瞬間、黒い閃光が走る。渦を巻くそれは易々と弱者(秋十)を吹き飛ばす。

 

「グァッ‼︎」

 

無茶苦茶な程の力を持つ黒い嵐は中から斬られる形で崩れ、顕われたのは異様なオーラを纏うイクサの姿だった。

 

「………」

 

「何なんだよお前⁉︎」

 

 

「何、と?」

「その眼に己の事しか見えぬお前には解らんよ」

万昇暗夜(ばんしょうあんや)。白き夜は夜にあらず」

「教えてやろう、半端者。如何に自分が弱いかを」

「力の狂信者如きに負ける事は『無い』」

 

 

「言わせておけば!くらええぇ!」

 

C.O(コマンドオーダー)システム起動」

 

青い光と共にシステムを呼び出す。この場で要されるのは必断の一撃。つまり、それはーーーー

 

「『一刀両断』‼︎」

 

ズガアァン‼︎

 

居合の要領で振られたカリバーは零落白夜、もとい雪片を容易く斬り裂いた。

 

「何でだ⁉︎何でだよ‼︎お前なんかに、何でこの雪片が⁉︎」

 

「言っただろう、解らんと。終わりだ…!」

 

掲げられたカリバーにそれを覆うように万昇暗夜のエネルギーが黒い渦となる。一瞬、収束したそれは爆発したように膨張し、黒光の剣と化す。

 

「お前なんかにいぃぃ!」

 

使い物にならなくなった雪片を投げ捨て、殴りに来る蟲。狙ってくれと言わんばかりだ。

 

「終わらせよう」

 

「あああぁぁ‼︎」

 

 

夢幻(ゆめまぼろし)に消えて行け」

 

「『幻夢(げんむ)(ぜろ)』‼︎」

 

 

フッ…ズアアアアン‼︎

 

本当に僅かな静寂の後、斬られた蟲は殆どIS部分が無い状態で地に堕ちた。頭から行ったがこの際どうでもいい。

 

『勝者‼︎白陽一夏‼︎見事この謎の乱戦を勝ち抜きました‼︎』

 

実況?の声と同時に歓声が上がる。蟲を一瞥してイクサを解除し早々にピットに戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…これで終われば良かったのだが。俺のピットには暴君が仁王立ちしていた。正直邪魔なのでどいてほしい。

 

「白陽、お前のISを寄越せ」

 

「断る」

 

「いいから渡せ。あの機体は秋十が使うべきだ」

 

「断ると言っている。お前の命令に従う理由は無い。ここは軍隊ではない、間違っている事は指摘するのが正解だ」

 

「黙れ!どうせ何かイカサマをしたんだ、そうに決まっている!でなければ秋十が負けるものか!」

 

「阿保か。イカサマなんてあの雑魚には必要無い」

 

「煩い!」

 

とうとう手を出してきた暴君。軽く避けて腹に二割程の威力の蹴りを入れるとあっさり吹き飛んで二転三転して地に伏せた。

 

「この化け物め…!」

 

「お前みたいなのが皆人間なら化け物の方がマシだな」

 

「くそっ!」

 

「あと今の一部始終はISで録画させてもらった。減俸待った無しだな」

 

「待て!」

 

「ああ最後に言っておく、俺の事は『正義の味方』と呼びなさい」

 

それだけ言って学園長室に向かい先の事を学園長夫妻に報告した後、部屋に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜。少女は門の前に立っていた。風に彼女の髪は揺れている。

 

「IS学園…」

 

星など見えぬ空を見ながら小さく、けれどしっかりとした声で呟く。

 

「やっと会えるんだね、一夏、円夏」

 

少しの笑みと共に少女は門をくぐった。愛する男に、会う為に。その腕には、黒いブレスレットが光っていた。




英霊剣豪や新作の作成もあって遅くなってしまいごめんなさい。次回、いよいよヒロイン登場。デレッデレなのは言うまでも無し。

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