もしも織斑一夏が現実的だったら   作:舞波@現在進行形ゴールデン

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VSセシリア。タイトルは某第18話のパロディです。今回も一夏が色々突っ込んでいきます。


見せてもらうぞ傲慢の果てを

周りの騒めきが聴こえる。大方俺がISを装着していないからだろう。

 

「何でISを装着していませんの⁉︎」

 

「慌てるな。形状が形状でな、『俺が戦っていない』なんて難癖をつけられたくないからな」

 

右手にはナックルを握っている。が、これはイクサの待機状態では無かったりする。実はこれは武装展開状態であり、待機状態はロザリオで、それを奪われた所でこれを使えないようにする為だ。

 

「始めようか。変身!」

 

《レ・ディ・ー》

 

《フィ・ス・ト・オ・ン》

 

全身が白の装甲に覆われ、顔には特徴的な金の十字の意匠が施されている。

 

「イクサ、最初の聖戦を始めようか!」

 

周りは驚きに包まれた。イクサの姿はISの中では異端であった。全身が装甲に覆われて何処も露出していない《全身装甲(フルスキン)》だったからだろう。が、目の前の蒼蛙は気にもせずに馬鹿なことを言い出した。

 

「ふん、聖戦がどうとか知りませんが、私が貴方に勝つのは必然。謝れば許しても「そうか、英国の女性は無謀で冗談好きか。覚えておこう」

 

くだらない戯言を自信満々に言うその様は滑稽過ぎたので途中で割り込んだ。時間の無駄でしかない。ついでだ、この戦いは無傷で勝とう。

 

「〜〜〜ッ!なら!」

 

《試合開始》

 

「お別れですわね!」

 

ライフルから放たれた一筋の光が俺に向かって一直線に飛んできた。視認できる程度に遅かった。まるでーーーー虫が飛ぶくらいに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セシリア・オルコット。その生い立ちや家庭環境を話せば同情する者や尊敬する者もいるだろう。だが彼女の思考は、まともな思考ではないと断言していい程の女尊男卑だった。そしてこの模擬戦も、このレーザーの一撃で終わると思っていた。が、そこにいたのはーーー傷一つない白い戦士の姿があった。

 

「これだけか?」

 

「なっ…⁉︎」

 

正直言って俺はつまらなかった。そもそもたかがレーザー一発で勝負がつくくらいならこの機体はとんでもない欠陥品だろう。と言うよりあの機体でISと対戦したことがあるならいくらクリーンヒットでも一撃で勝つのは無理だと分かるはずだ。連射するならまだしも一発撃って終わり、とは三流は愚か一つ飛ばして五流もいい所だ。

 

「どうした?エリートなんだろう?動けよ」

 

「飛べましたの⁉︎」

 

「飛べないISなど欠陥品だろう?まあいい。お前には」

 

イクサナックルを外す。これは見た目に反して遠近両用な為使う場を選ばない。

 

「お前にはこれ一つで充分だ、よく狙えよ?そのライフルが飾りでないなら、的に当てられない方がおかしいからな」

 

「どこまでも私を馬鹿にして!」

 

「まあ、何でもいいがーーー付いて来れるか」

 

四肢のバーニアを全開に吹かす。発想自体は元々脚部に付けるなら腕にも付けて格闘能力を向上させる、という物だったが、扱い切るにはそれなりの時間を要した。今となっては自由自在だが。

 

「消えた⁉︎」

 

「後ろだ、ラアッ‼︎」

 

「ぐっ、ティアーズ!」

 

接近されている上に攻撃までされているというのに今更ビット兵器を出す蒼が…面倒なので蛙は、こちらを見ないまま逃げるように後退した。

 

「無様だな?お前の勝利が必然なら何故逃げる必要がある?」

 

「うるさい‼︎」

 

展開されたビットからの攻撃は全て一方向のみにしか飛んで来なかった。しかもライフルと同時に飛んで来ないときた。断言しよう、BT兵器より使い勝手の良い物が出来てしまえば固定砲台にしかならないこの蛙はさっさと捨てられる。近接攻撃をしないのは単に出来ないのだろう。

 

「〜ッ!ミサイル、行きなさい!」

 

相変わらず単発のビットとそれに加えミサイル。射線を読まれるようではスナイプなど不可能。と言うより何故イギリスの科学者共は遠距離しか出来ない機体を作ったんだ?戦闘で使うなら中距離型の機体に仕上げるのがセオリーだろう。障害物など一つもないフィールドでどうやって狙撃しろと?

 

「すまんな。どうやら欠陥機に乗っていたのはお前の方らしい」

 

「何ですって⁉︎」

 

迫るレーザーにミサイル。だが、正直避けるのは飽きた。決着を付けるか。

 

「避けないのならただの的でしてよ?」

 

さっきまで的に当てられていなかった蛙が何か言っているが、それは俺に当たる前に霧散する。見えない壁に阻まれるように。少し口角を上げて、呟く。

 

「ステルスモード、解除」

 

何も無い空間から現れたのは、イクサよりも巨大な大楯だった。フワリと浮いたそれは俺に付き従うように左側に静止する。

 

「それは…まさか!」

 

「そうだ、これが俺の機体で唯一の《非固定浮遊部位(アンロックユニット)》、『スヴェル(冷やすもの)』だ」

 

名は北欧神話の盾から取った。イクサ、それはありとあらゆる人間(かいぶつ)が恐れる太陽の如く。それに従う盾は永遠に落ちず、何一つ燃え上がる事は無い。

 

「…さて、いい加減堕とされる覚悟は出来たか?」

 

「ヒッ!」

 

無駄だというのにまだビットは俺を撃ってくる。溜息を吐きながらナックルの引き金を引く。

 

ズダンッ!

 

その瞬間、二機のビットが消滅した。破壊した本人(と、それを元々知る妹)以外は時が止まったようだった。

 

「最低出力で撃ってこれか。此方が強すぎるのか、もしくは向こうが脆すぎるのか」

 

まあ、それはいいか。残りの四機も落とそう。

 

ズダンッ!ズダンッ!

 

二枚抜きが出来ると少し面白い。今度最大出力で試してみるか。固まっている蛙からライフルを引っ剥がす。

 

「フン‼︎」

 

バキッ!

 

へし折ったそれを適当に投げる。蛙の目は、

俺好みの絶望した目に変わっていた。ゆっくり、ゆっくり近づく。

 

「さて、現時点でお前の武装は無い訳だが、何か言う事はあるか?」

 

「あ、あ、」

 

「そうか。ならそろそろーーーーーーーーー眠れ」

 

打つ、打つ、打つ。一撃毎に装甲は割れ、吹き飛ばしたらスヴェルで此方へ弾き、再び打ち込む。三度程それを繰り返し、上に跳ね上げる。

 

「精々意識を飛ばして懺悔しろ」

 

《イ・ク・サ・ナッ・ク・ル・ラ・イ・ズ・アッ・プ》

 

フエッスルをセットしたイクサナックルを掲げ、引き金を引いた瞬間、辺りは閃光に包まれる。

 

「『ブロウクン・ファング』‼︎」

 

撃ち出された雷撃は蛙の機体を易々と貫いた。まあ、死んではいないだろう。ISの保護機能は伊達ではない。が、落下して打ち所悪くて死亡、と言うのは笑えないのでスヴェルで受け止めて地上に降り立った。それと同時にイクサは消えるように解除される。

 

『し、試合終了…勝者、白陽一夏‼︎』

 

ドン、と聞こえた気がしたすぐ後に、歓声が響き渡った。先程までの静寂は何処にも無い。

 

「…意外だな」

 

これも無知故か。気楽なものだと思いながら少し気分を良くして盾に蛙…オルコットを乗せながらピットに戻っていった。




基本私はストックとか作らない(作れる程ドンドン出てこない)タイプなんですが、ブルー・ティアーズについての考察は書いている時に浮かんだものです。
第2世代のコンセプトが『バランスと強化』なら第3世代は殆どの場合第2世代を上回っていて当然なんです。が、ブルー・ティアーズは近接性能が低いという欠陥があります。そう考えると鈴やラウラの機体は順当な『進化』と言えるでしょう。
少し長い考察を失礼しました。

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