なんだ…こ─────
「(れ…ッ!)」
……声が、出ない?今明らかに発声しようとした筈なのに。
というかここは何処だ…?学校…?
俺は『バトル』中でフィールドに居たはずだが?
それとなんだこの状況
埃っぽいマットや壊れかけの跳び箱が置いてあるここは
学校の体育館倉庫か?
どうして俺はここに?
それに俺はこんな所に1人で居た記憶も思い出もない…
体育館から喧騒が聞こえないということは体育の授業中に何かの片付けでここにいるわけでもないだろう
これは夢────?
「ぐッ…!」
ズキンと傷んだ頭を抑える。
なんなんだよ…一体────────
■
「……邪魔だ」
俺は目の前に迫っていたナイトに思いっきり身体をぶつけて退かす
空いた路を駆けて、俺はタワーに張り付いた。
続いてジャイアントとリオがタワーに到達。
みるみるうちに
「らららららららァァァ〜!」
ジャイアント程の攻撃力は持たないがそれでも攻撃した後のクールタイムが終わったら間髪入れずにリオは殴っている。
俺も同じく、攻撃力は皆無だがそれでも無いよりはマシだろう…それに
「マズイな、
先にメインタワーを落としたら勝ちの時間勝負。
「アリサ、防衛に
「う、うんっ!」
ボカァンという派手な音と共に、メインタワーが崩れ落ちる
「っ…はぁ…はぁっ」
「…ふぅ」
「ほっ…」
落としたのは
タワーが落ちた後俺達はフィールド上から『WIN』とデカデカ書かれた文字を見上げながら、次の瞬間神殿へとワープした。
────それにしてもさっきの断片的な記憶?夢?は一体何だったんだろうな。『バトル』で殴り合いをしていると、たまに頭がズキズキ痛むのも何か関係しているのか…?それともただの片頭痛でさっきのも疲れからくる幻覚幻聴の類のものか…?─────
「どうしたの?初めてのバトルで勝ったのに嬉しそうじゃないね?」
「…いや、なんでもない」
「そっか、ならいいんだけど」
俺達とアレスを隔てていた壁が消え、地面に突っ伏しているアレスが見えた
「くっそぉぉぉ何故だァァァ」
相変わらず煩いな、まさかバトル中もあんな感じだったのか?
だがプレイからは冷静さみたいなのが垣間見えて居たんだが…
「いつもと変わらず教えられた通りにやったのにィィィ」
「
どうやら自分で考えた戦術じゃなかったようだ
だから奴のプレイは冷静に見えたのか
俺は疑問に思い、アレスに近づく
「賭け通り、10万ペリスと1トロフィーを貰う、ところでお前にプレイングを教えたのは誰か出来ればいいので教えてくれないか?」
「はあ?お前ら、初心者とは言っても、まさか『スパセルセンター』を知らないわけじゃないよなァ?」
スパセルセンター?なんだそれ。何故かスパセルという言葉は知ってるんだが…クラロワの開発会社『supercell』を略してスパセルと呼んだりしていたからな
「…………知らない」
「いやマジで知らねぇのかよォォ!おまっ、お前じゃあまさか宝玉持ってねぇのか?いやそんな事はある訳ねぇ!15歳になったら強制的にこの
…地獄への道…?なんのことだ?
「…俺とリオは
「……なんでだ?15歳になったら否が応でも宝玉は渡されるはずだぞッ!だってこの世界の
アレスが切羽詰まった様子で何かを俺に話そうとしたところで
「バトル終了、お疲れ様でした。『賭け』に従い
と無機質な機械音が流れた。
次の瞬間俺達の目の前はまっしろになる
「それでは現実世界へと帰還します」
「…っ」
意識が段々と薄れてゆく─────
■
「ふぅ、今度はしっかり意識を直ぐに覚醒できた…っぽいな」
俺達は元居た路地裏に戻ってきて尻餅をついていた
長い間肉体はここにこうして居たのかと思うと少し硬直が気になるが、
「問題ない…な、どうなってんだ…」
よっ、と立ち上がってみてもなんの障害もなくすっと立ち上がれた
バトル中は肉体と精神は切り離され、精神だけがバトルの会場である神殿へと飛ばされる、その間肉体は
しかし流石は
「あ、トロフィーが1増えた…それに、ぺリスも!」
「ん?いや、まだアレス手渡してないんじゃ…」
アレスが手渡したようには思えなかった、何故ならアレスは未だ地面に突っ伏しているからだ
それなのにトロフィーは電子的なものだし手渡しではないのは分かるが、ぺリスは物体なのに手渡されてはない
だがアリサの手に持つ財布と思えるハートの刺繍の入ったポーチにはしっかりと札束が分厚く入っていた
いつの間に…俺の見ていないところで?
いや、俺はしっかり目を開けていたし、何よりずっと突っ伏しているアレスの動きもしっかり目に映っていた。
となると…
「【報告】敗者より勝者に賭けが付与されました」
やはり
「【報告】経過時間 2日と2時間、現在時間19時28分」
「お疲れ様でした。安全空間状態を解除します───」
そう言うと俺たちを覆っていた謎の光が消え、声も途絶える
「………くそッ」
未だ立ち上がる気配すら見せないアレスを置いて、俺達は路地裏を後にする
商店街は、バトルを始めた時に比べ、夜なので暗く行き交う人も少なかった。
「…おつかれ、アリサにリオ」
「うん、おつかれ」
「おつかれさまでしたっ」
3人労いの言葉を掛け合うとなんだやりきった感が出てくる。
そんな悦に浸ろうとしているところに
「お前らお疲れさんだッ!」
突然元気な女の子の声が混じる───
「ってエルゼ!おまえ今までどこに?」
───そこに居たのは俺達がバトルをするキッカケにもなった小娘であった
というより本当に今までどこに居たんだろうか
バトル開始の時にはいた記憶はあるが、神殿では見ていない
俺達が持ち逃げするのを心配して見張るとか言って居たのに…
「アンタらがトロフィーに触れて路地裏に飛ばされたのを確認したらそっからはバトルで逃げることは出来ないから、アタシは爺ちゃんが心配だったしここと病院を行ったり来たりしてたんだ…」
「そうだったの…おじいちゃんは平気?」
「ああ、今んとこはな…ただまだ手術は必要だ…んでそこの姉ちゃん、10万ぺリスは用意出来たんだろーな?」
「勿論っ!10万ぺリスは用意できたよ」
「おおっほんとか!うっし、信じてたぜお前らぁ!」
「…早速手渡そうか?」
「…いや、今日は遅いし病院はもうやってない、明日の15時に病院前で待ち合わせだ」
「そう、分かった」
「んじゃあアタシも疲れたし今日は帰って寝るわ!んじゃ15時な〜」
それだけ言い残すとエルザは帰って行った。
俺達はその姿を見送ると、今日の寝床について話し始める
「そういえばアリサ、いつも旅人のお前はどうやって寝てるんだ?」
「野宿ってわけじゃ…ないよね?」
「んー、まぁ野宿の日もたまにはあるけどね〜。でも基本は宿でしっかり休むよ」
野宿の日もあるのか…実年齢こそ知らないが見た感じでは同い年くらいなアリサに野宿は辛いだろう。野宿を耐えてまで宝玉を集める理由とは1体…
疑問に思ったが今それを聞いても不思議に思われるだけだろう。
まだ知り合って数時間の関係だし…
「んで、今日はどうすんだ?」
「そうだね、流石に野宿は辛いしお金に今は余裕もあるし、宿に泊まろっか」
「あ、じゃあ僕とヨウは一緒の部屋でいいよ、いいよね?ヨウ」
「勿論だ、別にリオと一緒で不都合な事も無いしな、それによく分かってない土地で1人寝れるかと聞かれると若干不安だし」
もしベッドがダブルじゃなくシングルだった場合は2人でベッド…いや、片方は床だな…流石に狭い。
「あ、うんそうだね、わたしで一部屋、ヨウとリオで一部屋だね!そうと決まれば早速宿探しだねっ!」
■
「んァー…んぅ…zzz」
「…」
「……むにゃ…うにゃ…zzz」
「……」
………駄目だ、眠れない。
「…はぁ、」
俺は一息付いて身体をむくりと起こす
隣のベッドでは既に眠りについたリオがすやすやと眠っている
その寝顔を見るとやはりリオは顔が丸っこく整っているので可愛くもイケメンに思う。
「(それにしても…)」
今日はなんだか沢山の非日常的現象を体験した気がする。
正確には『今日』ではないのだが
この世界に来た日は2日前の話だ。
だがバトル中には睡眠や食事を一切取る必要が無かったので2日経ったという感覚がない
この世界に来て初めての睡眠、ただまだ現状を理解出来ていない不安からか中々寝付けなかった
「…(でも、実際に俺はこうして存在してるわけだしなぁ…)」
アリサが見付けてくれた宿の部屋の窓から外を見ると、闇の中に月の光だけが光る空間が存在している、ところどころ点々と家の電気が付いてもいる。
こうして見ると本当はここは地球なのではないかと疑ってしまう。
だが先程のバトルは紛れもなく現実味を帯びていない事でもあって。
「……ここは1体何処なんだろうな…」
ふと声に出して漏らしてしまったのは完全なる疑問。
分かるはずもない問いの答えを探すのは野暮だと分かってはいるが、それでも声に出してしまったのは本当に不安だからだろう。
今頃、
俺達が消えたと大騒ぎしている頃だろうか。
「(今考えても意味は無いな…寝るか)」
考える事を辞めて布団に身体を任せると、心地よい眠りがヨウを攫っていった───
遅れて申し訳ございませんでしたァァァ!
バトルがメインの物語なのにバトル描写がとてつもなく苦手なので色々と勉強していました。
良くなってるといいのですが…。
もっとリアルに描写したいです。