クラロワ   作:青空 優成

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第4話 初めてのバトル

声のした商店街の奥の方に行くと

ムキムキマッチョの某モンスターハン○ーの鍛冶屋みたいな男がそこには居た。

通りゆく人々に「バトル!!バトルゥゥゥッ!」

と声をかけているが、奇異なものでも見るような目でスルーされている。

横に居るアリサとその横のエルゼも同じように冷めた目で見ていた。

ただ俺達はこの男に声をかけなくてはならないのだ…

「よし…行くか…」

他にバトルをやってくれそうな人は居ないし、しょうがない。

「そ、そうだね」

アリサも若干引いたまま同意して、俺達は男へと近づいていく。

男はこちらに気づき、今までと同様俺達に

「ば、バトルお願いだあああああっ!!」

声をかけてきた。

道行く人々の視線が俺たちに向けられているのが分かる

俺は男の顔を見て、若干死んだ顔で言う

「ああ、バトル頼むよ…」

「「な!……!」」

通行人達と、男の声が被る。

全員もれなく驚いてるみたいだ。

「……いいんだな?」

「うんっ!お願いします!」

「じゃあ、そうだな…バトルの【賭け】を決めよう、お互い納得したら…バトル成立だ」

「うん。分かった、それではまず私の方の要求は【賭け金 10万ペリス】」

と、いきなり10万ペリスを要求するアリサに男は驚き

「はぁっ!?10万!?じゃあこっちもそれなりに要求させてもらうぞ?」

「こちらの【賭け金は 0ペリス】」

そして追い打ちのようにこっちは何も賭けん宣言に男はとうとう呆れ始める

「はぁっ!?0!?いやいや待て待てェッ!おかしいだろ!辞めだ辞めェ!バトルは成立しな------」

しかしその言葉を遮りアリサ

「でも、私の要求する【賭けトロ】は最低賭けトロの1でいい…そしてこっちの【賭けトロは300】賭ける…どう?貴方の叫び声をさっき聞いていたけど、王になりたいんでしょう?それならこの300トロは悪い話ではないと思うけど?」

「300……トロ…だと…!?」

その提案に男が下を向いて何やら計算を始める。

すると、顔を上げた時には最初と同じように「やったぜ」という顔をしていた

「よし、いいぞ、その賭け条件で…んじゃあさっさとバトルやろうぜぇぇッ!」

「うん!」

アリサが応え、バトルの準備を始める。

男もそれを見て、バトルの準備を始めた。

お互いに宝玉(トロフィー)を取り出し、目の前に差し出す。

そして宝玉を持ったいない方の手で相手の宝玉に触れて、唱えた。

 

 

「「クラッシュ!バトルッ!」」

 

 

すると、宝玉からブゥゥンと淡い光が漏れだして、俺たちを包み込む。

そして包み終えた瞬間に宝玉から無機質な声が流れ始めた。

「警告--------ここでバトルを行うと、他の方への邪魔となります、近くの空き場へと移動させても宜しいでしょうか?」

「だ、誰の声!?」

いきなりの知らない人の声でリオが驚く。

「これは運営(カミサマ)の声だ…知らないところを見ると、バトル初心者か?」

ムキムキマッチョの男がリオに顔を向ける。

「あ…はい…初めて…です」

俺とリオは勿論の初心者だ。

そしてアリサも、初心者って言ってたな。

「そうか、手加減はしないからな」

内心カモだと思っているのだろう男はほくそ笑んだ。

だがそうはならない。俺達は部兵人形(ユニットドール)…相手は1人だったのを見ても部兵人形が居ないのは明らか。

「(この初バトルは俺達次第だな)」

グッと両手を握り込み、静かに闘士を燃やす。

あまり運動は得意ではないし、好きでもないが、

勝敗がつくゲームや戦いは別だ。

基本楽しめばいい〔快楽主義者〕の俺も、

本能的に、勝たないとつまらないのは分かっているからな。

そんな事を考えているうちに周りの景色は商店街から、人気のない路地裏へ変わっていた

「それでは両者【賭け金】【賭け宝玉(トロフィー)】を設定してください」

またも流れてくる無機質な運営の声。

「こちらの【賭け金は0ペリス】【賭けトロは300】ね!」

「こちらの【賭け金は……10万ペリス】【賭けトロは1】だ」

お互いに賭けるモノを宣言して、宝玉に触れる

淡く光を放ち続けていた宝玉はその宣言に色をより一層濃くした青い色を放って、すぐに元の淡い光に戻る。

濃い色に変わることで、承認との事だろうか?

「両者その賭けで宜しいですか?」

「うん」「ああ!」

「両手の承諾が確認されました。それではバトルの設定を始めます-------」

「アリサ陣営の指揮官を選出してください」

指揮官を選出しろとの命令が下され、勿論こちらはアリサを選出する

選出されたアリサは宝玉に手を触れて、またも宝玉が色濃く変わって元に戻る。

「【アリサ】が選出されました-----」

「それではアレス陣営の指揮官を選出_____、自動的に【アレス】が選出されました」

男の名前が判明、アレスというらしい如何にもムキムキって感じの名前だった

そして1人しかアレス陣営には居ないので自動的にアレスが選ばれたといった感じだ

慣れているのか余裕の表情でアレスは首に左手を当ててグキグキ鳴らしていた

「!-----------アリサ陣営に部兵人形を確認しました。参加しますか?」

「ああ」「もちろん!」

「【ヨウfeetラヴァハウンド】【リオfeetディガー】が選出されました」

「--------それではバトルを開始します」

と、バトルがいざ始まる!といったことろで1人の男が叫んだ

「ッ!おおおおおぃいっ!聞いてねぇぞぉ!!部兵人形が居るなんてよォオ」

見るとアレスが先程とは打って変わって焦った表情に変わりながら地団駄を踏んでいた。

しかし俺は冷めた表情でアレスを見て言い放つ

「そういうのはバトル開始前に確認しとかなきゃなぁ?まぁ、そっちは何回かバトルやってて慣れてるみたいだし、こっちは初心者なんだからそれくらいのハンデはあってもいいんじゃないスカ?」

「くっ、…いや、でもそっちは指揮官も見た感じ初心者だし…そうだな、まだ勝機はある」

指揮官がどれくらい重要なのか俺はまだ分かっていないがきっと重要なのだろう。

そしてアレスも言った通り、アリサは初心者だ。

このバトルはクラロワに酷似しているし、少しでもアドバイスをしといた方がいいな。

そう思い、横にいるアリサに耳打ちをする

「極力燃料(エリクサー)は俺とリオに使え、あと無闇にNPCユニットを出すなよ?俺達の声がお前に届くのかは分からんが…とにかく----------」

しかし言い終わる前に視界が真っ白に包まれてしまう_____。

「(な…)」

声に出そうと思った言葉は声にならず、宙を舞う。

そしてフワフワと意識は飛んでいってしまった。

 

 

「バトルフィールドに到着しました。それではお互いにデッキを構築してください。尚、部兵人形は入れても入れなくても構いません」

目が覚めた時、そこは神殿のような場所であった。

立ったまま寝ていたらしく、棒立ち状態。

先に目覚めていたのか、アリサ、リオ、エルゼ、アレスの4人は俺から少し離れた前に居たので慌てて駆け寄る

「っと、悪ぃ悪ぃ…」

「揃ったね!よし、じゃあ…バトルを始めよう」

「------------バトルを開始します」

目の前にデカいモニターのような物と、端末のようなものがアリサとアレスの前に登場した。

画面には、所持カードと括られた一覧と、八つの空いたパネルが表示されている

「(まんまクラロワっぽいな…)」

どうやら所持カードから8枚カードを選び、パネルに埋め込んでデッキを作れとのことらしい。

アリサとアレスは両者画面が見えないように移動すると神殿内に分厚い壁が出来て、アリサ陣営とアレス陣営がキッパリと別れる。

これでお互いの声は聞こえないし、姿も見えない。

アリサは初心者だからか所持カードが少なかった…これではデッキの構築の幅も狭まってしまう。どうやって新カードを入手するのだろうか。

だがそれでも救いはクラロワと違い、レベルという概念が存在しないことだろう。

言うなれば、レベル統一状態。

レベル差にごり押される悲しい事件は起こらなそうだ。

アリサが作成したデッキは

「ヨウ(ラヴァ)、リオ(ディガー)、ジャイアント、マスケット銃士、ナイト、アーチャー、ファイアーボール、矢の雨」

アレスが作成したデッキは分からないが、これが最善だと俺も思う。

とりあえずまんまクラロワということが分かったので、別にクラロワ上手くはないが簡単にアドバイスでもしといてやるか

「アリサ、よく聞け」

俺が教えたのは

「燃料はなるべく俺とリオに使うように」

「無闇にファイアーボールや矢の雨を打つな、ジャイアントなどのHPが多い敵には絶対に打つな」

「なるべくジャイアント単体じゃなく、ナイトでもマスケでもアーチャーでも…他のユニットを後ろに付けろ」

のたったの三つだけだ。

アリサはうんうんと頷いて聞いてくれていたからきっと、初心者でも下手なりには指揮してくれるはずだ

俺は「まぁ」とポンとアリサの肩に手を置いて

「そこまで緊張する事は無い。俺達がなんとかする」

「う…うん…」

ブーッ!とブザーのような音がした後、

「お互いデッキが完成した事を確認しました。それではバトルを開始します_____」

アリサの持つ端末に、

アリサの残り燃料(エリクサー)

マップ

現在の所持手札と次に廻ってくるカードが表示されている。

今回のマップは平原、相手の城が自分の陣地から見えているオーソドックスなフィールドだ

これなら相手の位置も分かるし対策も立てやすい。

「じゃあ、ヨウ!お願いね!」

「おう」

アリサは手札にあった俺を体力7消費して召喚した。

俺は神殿からワープして、アリサの端末から眺めていたマップと思われる場所に飛ぶ。

 

 

一瞬の間にして、石造りの神殿から草生い茂る野原へと転送された俺は、横にあるサイドタワーに近寄る。

「(なるほど、部兵人形(ユニットドール)は対地対空対建物などの攻撃目標が無いと聞かされてはいたが、本当のようだな、自由に動ける)」

サイドタワーは一周にしておよそ10メートルくらいの大きさで、中には梯子があるだけ

サイドタワーの上には弓兵らしき者が居る。

多分クラロワ同様近づいてきた敵を狙撃するのだろう。

コンコンと表面と叩いてみる、どうやらハリボテではなく本物の石建築。

周囲を見渡してみると、平線上の反対側にもうひとつサイドタワー、右斜め後ろにメインタワーと思われるサイドタワーに比べ大きな建物があり、相手のゾーンにも同じ構成だ。

「(ようっ!大丈夫?!私初めて部兵人形使ってから心配…)」

脳内に直接アリサの声が響いてきた。

一瞬驚くも、戦場であることを意識し、最低限のリアクションに留める。

「(アリサかっ!?どうして会話が出来る?)」

「(ヨウを召喚してから運営の声に指揮官(プレイヤー)と部兵人形は戦闘中でも会話が出来るって言われたから試しにやってみたの!本当に出来た!)」

「(なるほど、これなら多少のアドバイスを出来る上に、第三者目線としての情報を受け取れ、大分有利になるな)」

「(あ!そうか!そっちだと相手の様子とか分からない感じ?)」

「(いや、そういう訳では無いが…)」

ここのフィールドは、シンプルな構造で、建物が3つあるだけ、相手の様子は丸わかりだが、ここのフィールドがそういう構造をしているだけであって、他のフィールドでは障害物などで相手の様子が分からない状況になるかもしれない。そんな時には天の目であるアリサの情報は大変貴重と考えての発言だったのだが。

「(まぁとりあえず今燃料(エリクサー)はどれくらいある?)」

「(ずっと10のままだね)」

「(いや使えよッ!)」

確かに上級者は相手が動くまで先に動かないという話を聞いたことはあるが…

もう既に俺を召喚してしまって動いたのだし、動かず体力を温存するのは良い手ではない

「(うーん…でも燃料は温存したいし…)」

「(燃料は時間とともに回復するんだから使わない方が勿体ないだろう…それに相手はまだ部兵人形である俺を出したのにも関わらず何もしてこない、今のうちに攻めるのもいいと思うぞ?)」

「(そうだね!じゃあ、リオを召喚っ!)」

俺の目の前にリオが穴を掘って召喚される。

「ぶばァっ!」

穴から飛び出たリオはスコップ片手にロウソク帽子、服は作業服とthe炭鉱夫みたいな格好をしていた。

「あれ、穴掘ってたのに疲れてない」

「登場モーションで体力を消費するのは流石に理不尽だろ…っていうか部兵(ユニット)に体力という概念は存在するのか?」

「どうなんだろ…でも攻撃力、体力はfeet〇〇と同じらしいよ…だから例えばヨウが一撃でビルを崩壊させられるほどの打撃力の持ち主だとしても、ここではラヴァとしての打撃力が反映される…つまりは攻撃目標が自由だけど、敵部兵を殴っても倒すことは厳しいってこと」

なるほど、まぁ流石に攻撃力、体力が現実のものが反映されていたらそれはそれでバランスが崩れてしまうしな…

俺なんて体力無いからすぐ死ぬし…。

そんな事を話している間にアレスはジャイアント____

 

ブクブクと太ったおっさん顎横髭が長い盾型ユニット

レアリティはレア。コスト5

【攻撃力/211】【体力/3344】

【攻撃速度/1.5秒】【射程/近接】____

 

を召喚したようだった。

アレスは部兵人形が居ないから全てNPC、ジャイアントは対建物だから俺たちを殴ってくることはないが、放っておくと城を壊されてしまうな。

いよいよ本格的に初めてのバトルが開幕しようとしていた-------




投稿が少しばかり遅れてしまいました。
今回から少しずつペースが落ちていくと思ってください。
理由は来週に定期テストが迫っているのと、それが終わると色々と行事が詰め込んでいてあまり執筆出来る時間が取れないからです。
ですが暇な時間を見つけては執筆したり、プロット帳に展開構想を書いたりとしていますので、どうかゆっくりとお待ちください。

主についてのワンポイントコーナー

チャット大好き勢

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