はっと目が覚める。そして後頭部に感じる痛み。
「あいたたたたた・・・どこここ?」
頭をさすりながら辺りを見回すとそこには美しい天使のようなひとがいた。こっちが気が付いたのを確認すると申し訳なさそうな顔で頭を下げられた。
「申し訳ありません。落陽の女神。本来ならば貴女様はまだこのような場に来ることはないのですが・・・何分こちらも人手が足りず・・・」
「あー、ちょっと待ってくださいね・・・うん、ひょっとして私を階段から突き落としたのはもしやあなたかあなたの関係者ですか?」
少し落ち着いたら思い出してきた。帰りに教室から出た瞬間階段にワープさせられてて凄い強い力で押されたのだ何を思ったのか私は押した犯人を確かめようと振り返ろうとしたから、当然後頭部を強打した。そして現在この空間に招かれている。
「そうです。この場に呼び寄せるにはまず一度死んでいただかなくてはならないので一時的に気絶していただいています」
「あ、じゃあ私はまだ死んでないんですね」
「はい。本来ここは若くして死んでしまった方が来る場所なのですが・・・・エリス様があなた様のような力を持った方に来ていただきたいと」
天使のお姉さんいわく、そのエリス様という女神様が管理する世界で魔王軍が勢力を伸ばし世界滅亡の危機が迫っていること。なのでこちらの世界で年若くして死んでしまった人たちをチート特典付きでそっくりそのまま転生させていること。
しかしそれでも魔王軍は滅ばず膠着状態に近いこと。
「なるほど。ってあれ?そのチュートリアル・・・・世界についてのナビゲートもチート特典を授けるのも話を聞いてるかぎりだと女神様なんですよね?」
「はい。ですが、元々その役割を担っていた女神・アクア様は今から少し前に「特典」として異世界へ旅立たれました」
特典として持っていかれちゃったんだ女神様・・・・というか女神様を持っていくって発想する人っていったい・・・・
「しかし、実のところアクア様には浄化と治癒以外の魔法はほとんど使えないのです。そのうえ教義の性質などからアクア様の祀られているアクシズ教は教徒の数が少なく、信仰による恩恵がほぼない状態でして・・・」
「あー、それはなんというか・・・ご愁傷様です」
そんなで大丈夫なんだろうか。なにより女神様のスペックを知らずに即決したならその選んだ人が一番可哀想、というか苦労しそう。
「エリス様も世界の管理や他の仕事が重なっていまして手が回らないのが現状なのです。ですからそれならば他の力のある女神に来ていただきお力を貸してもらおうと、こうして勝手ながらお呼びさせていただきました」
「私、現代だと抑止力で制限受けてて神代の時ほど出力ないですけどいいんですか?」
「いえ、今の状態でも十分です。ちなみに本当は伝えるべきか迷ったのですが向こうの世界で抑止力は働きません。世界が違いますから。ただこちらの名残で本来の全盛期の容姿・性能に戻るにはやや時間がかかるかもしれません」
「そっか・・・うん、せっかくだし、行きましょう異世界。行って少しでも助けられる人がいるのなら、異世界くらいどうってことないですよ!」
「本当ですか!ありがとうございます!ではさっそく転送しますので魔法陣の上に」
そして魔法陣の上に乗ると途端に光り出し私は浮上する。
「それでは行ってらっしゃいませ。――――――――どうか世界をお救い下さい。お気を付けて」
その言葉を聞き終わると同時に私は異世界へと転送されるのだった。