ガンダムビルドファイターズプレジデント   作:級長

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 ガンダムアストレア

 ソレスタルビーイングが開発した第二世代モビルスーツにしてエクシアのプロトタイプ。兵装のテストを主に行った汎用性の高い機体だが、その柔軟なフレームから近接型のエクシアへ採用された。
 ソレスタルビーイングの武力介入時にはサポート組織フェレシュテで0ガンダムのGNドライヴを搭載して運用された。CB崩壊後はエクシアのパーツが合流し、性能の底上げが行われた。
 ガンプラとしては付録で再現用パーツが付属し、HGのエクシアをアストレアに出来た。後に多数の武装を装備した赤いtypeFが発売、そして白い本来のアストレアも発売された。
 キットの都合、エクシアのパーツが丸々付属するため単体でのカスタムが捗る一品。


9.女神アストレア

「やっぱガタ来てんな、こいつ」

 激戦から翌日、部室でプレジデントから借りた装備を外しながら、継人がぼやいた。それはガンダムプレジデントカスタムのことであった。よく見ると旧版の陸戦型ガンダムをベースにしており、ダメージレベルの低いバトルでも関節への負担はそれなりに掛かっていた。

「新しい機体に替えるの?」

 詩乃は聞いてみた。ガンプラバトルはガンプラを消耗する競技。今後の参考に、慣れた者がどう対応しているのかみておこうと思ったのだ。

「新機体は作ってる途中。あと武装が仕上がれば完成だ」

「もう作ってったんだ」

 継人は次のガンプラを既に完成寸前まで仕上げていた。しかし武装が無いのであればまだ出られる状況ではない。一方、響達は今後のチーム運営について話していた。

「まずは基礎拠点を強化しよう。基礎拠点にマスドライバーを配置出来れば、宇宙に出るのが容易になる」

「そのためにも資源系ミッションを受ける必要があるな」

 衛士も甲子園の勝手は知っており、そのために何をすべきかはわかっていた。だが、それにも一つの問題があった。

「邪魔、入るんでしょ?」

 霞の言う通り、デルタロウ連合に一帯を支配されている以上、そのミッションにも妨害が入る可能性は大だ。現在選べる資源系のミッションは一つ。『輸送列車護衛』のみ。この輸送列車のルートにもよるが、どんなルートを通ってもデルタロウ連合の支配地域は避けられない。

「とにかく今日は輸送列車の護衛をやってみよう!」

「そうだな。それしか選択肢はあるまい。あらかた昨日の戦いで向こうにも被害が出ているだろうしな」

 というわけで、響の希望により輸送列車の護衛任務を受けることになったリヴァティーゾーン。継人は後から合流することになった。

「おー、みんないるな」

 そこへ富士川がやってくる。何か手に資料を持っている様子だが、昨日のバトルで出会った『赤目のジャンゴ』について個別で調べていたのだ。

「詩乃、お前が会った赤目のジャンゴってのは中学野球の選手だったな」

「ええ」

 ジャンゴと詩乃は因縁がある。それだけはわかっていたが、それ以上はどうにもはぐらかされて知りようが無かったのだ。

「常に充血した目からそう呼ばれている選手で、後輩潰しで有名な野球界の鼻つまみ者だ。練習中、他の選手を死に至らしめていることが分かった。それを最初隠そうとしたが生徒数人の告発で発覚、野球部は廃部になったそうだ」

「そうなのか!」

 継人は大げさに驚いて見せる。

「君は中学のバトル部をいくつか事実上の廃部にしただろう」

 これには衛士も呆れるばかり。

「その告発した生徒が君かね? 詩乃」

 富士川は詩乃に直接聞く。彼女もそこまで調べられたなら、と観念して話す。

「私がしたのは校長とか教頭に職無くすよって脅しだけ。だって殺人野球部のあった学校の出身なんて言われたくいじゃん?」

 やや後ろ向きな理由が彼女らしいが、これで因縁はわかった。それに加え、富士川は他のことについても調べていた。

「それがデルタロウ連合なんだが、主な参加者は運動部との兼部だ。おそらく、ベンチ選手を有効活用しようって策略だろう」

「っへ、自分の世界でレギュラーになれねー奴らなら怖くもなんともないぜ」

 継人はそう意気込むが、如何せん数だけは多い。この数をどう切り抜けるかが勝負のカギだ。

 

   @

 

『ミッションの概要を説明します。今回の任務は資源を乗せた輸送列車を基礎拠点まで護衛することです。まずは基礎拠点から輸送列車の停車する駅まで向かってください。コースは事前に指定しておきますので、行きにある程度道を掃除しておくといいでしょう。駅に着いたら輸送列車が発車しますので、これを基礎拠点まで護衛してください。説明は以上です。では、健闘を』

 

 輸送列車護衛任務

 

「で、なんで行きは違うルート通るの?」

 詩乃は流星号をベースジャバーに乗せ、他のメンバーに追随しながら聞く。事前に指定されたものと違う線路を辿り、NPCのリーオーを撃破しながら進む。

「あっちこっちでデルタロウの連中が見てやがると考えて、わざわざ輸送列車のルートを教えてやる必要はないのさ」

 衛士はバイクの様な馬にクロスボーンを乗せ、先を急ぐ。霞もベースジャバーで進んでいた。その中、自身の推力だけで進む響のストライクは格が違った。マントをビームガンにして、エールストライカーを装備している。

「それでも人海戦術で埋め尽くされそうだけどね」

「そんときゃ全滅させればいいべ」

 衛士も継人の思考に毒されている部分があるのか、むしろ敵の戦力を削れてラッキー程度にしか考えていなかった。

 駅までは何事もなく到着。ここからが本番だ。モビルスーツより小型な輸送列車が動き始め、指定のルートを通っていく。しかし、不気味なまでに静かだった。何者の妨害も無く、道を半分まで行くことが出来た。

「迂闊に触るのを諦めたのかな?」

「だといいけど」

 詩乃は前日の戦況から楽観的に判断するが、響は警戒していた。そして、四機の敵を発見する。

「そら出た! お客さんだ!」

 その四機は先日、デルタロウ四天王と名乗った四人の機体だった。カルタ機とマクギリス機のリッター、カルタ機は大型のシールドを装備している。シュヴァルベに赤目のジャンゴのグレイズまでいる始末だ。

「本格的な報復かな?」

「そのようだね」

 衛士と響は警戒する。列車も敵の存在に動きを止める。流石に線路の上に立たれては、推し通れるサイズではなかった。

『マザーウィルの件! 報復させてもらうぞ!』

 マクギリス機が一歩前に出る。そのマザーウィルを撃破した当人はここにはいないが、なにやら相手機体全機の様子がおかしい。紫色のオーラを出しており、妙な威圧感を感じる。

「これは……?」

 響がビームガンを最大出力で放つ。が、マクギリス機は棒立ちでそれを受けた。なんと、ビームが拡散し機体は無傷。応急手当のガンプラの攻撃とはいえ工作が入っている分威力は上がっているはずが、何故か劇中の名のラミネート装甲みたく弾いてしまった。

「なんだ?」

『これが選ばれし者の力……ブレイクデカールだ!』

 ブレイクデカール、それは『ガンダムビルドダイバーズ』で使用された不正ツールのこと。どうやら元ネタを知らない様子で、自慢げに語っている。

「ブレイクデカール? チートじゃないか!」

 響は抗議するが、マクギリス機のファイターはその力を誇るばかり。

『これが選ばれた人間の力だ』

 線路の周囲にはいつの間にか。ブレイクデカールを使用したグレイズ軍団に囲まれていた。これでは貨物列車どころか自身の安全も危うい。もしやすると、ダメージレベルさえ無視したダメージをガンプラに与えてきかねないからだ。

「どうする?」

「輸送列車破棄してトンズラ、ログデータを運営に送る」

「決まりだ!」

 詩乃が聞くと、霞が対応策を答える。これには衛士も乘らざるを得ない。その時、一筋のビームがマクギリス機焼いた。光線色はピンク、彼ら四天王の背後からだ。

『利かないっての……!』

 反撃の為反転したマクギリス機だが、その瞬間崩れ落ちた。そして爆散。

『誰だ!』

『捜索中で……通信が……センサー系が……』

 カルタ機が部下に探させるが、通信障害が起きている様子だった。グレイズもリアクターによる通信障害を引き起こす機体だが、当然自分達にそれが襲われないように対策をしている。にも拘わらずこの電波障害。

「俺だよ!」

 通信障害が晴れたかと思えば、青いアストレアが上空にいた。詩乃達から見たら友軍機、つまり継人の機体だ。

「ガンダムアストレアtypeP、いっくぜー!」

 装備したGNキャノンと両手のGNソードⅡを合わせ、一気に放射する。すると、ビームが球状に収束して敵を襲う。

『させるか!』

 カルタ機がシールドを手に前へ出るが、シールドを弾き飛ばされたばかりか機体がビームに包まれて消滅する。

『なんだこいつは!』

 ジャンゴは付近に着陸され、警戒する。が、警戒が遅すぎた。ソードを刺され、そのままビームの乱射を雨の様に受ける。鉄血機体には珍しく、爆散していく四天王。

『そんなバカなー!』

 四天王を一気に三人撃破する継人。シュヴァルベも危険性に気づいたのか、一気にランスで突進を仕掛ける。

『接近戦ならこっちが有利!』

 だが、継人はGNソードⅡを剣に変形させてランスごと敵を切り裂いた。

「これが俺の、ガンプラだ!」

 頑丈なはずのフレームごと断ち切り、真っ二つにして撃破。これで四天王は全滅した。

「これが継人の……新しい力」

 新たな力を手にした継人を詩乃は見る。頼もしい新戦力の登場だ。

 

   @

 

「ここまでは計画通りだな」

 黒曜学院の応接間で白馬はこの戦いを見ていた。

「ガンプラバトルのプロ競技化計画、そのための贄が育ちつつある」

 机には膨大な資料が置かれていた。それは全て、『ガンプラバトルプロ競技化計画』に纏わるものであった。

「しかし疑問だ。なぜメイジンカワグチもニルス・ニールセンもこの計画に反対なのだ? 彼らにも利はあるはずだ」

 だが、白馬は気づいていなかった。彼らが求める真の戦いはこの計画の先に無いことを。

 本気の遊びに利益という毒牙が迫りつつあった。




経「次回、『アシムレイトの秘密』。なにやら騒がしいが、どうも奴らはわかっていないようだな。この俺たちの掌の上で転がされているということにな」

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