託された力   作:lulufen

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第5話 実技試験ー裏側ー

 受験生たちがそれぞれ仮想敵と戦いPを稼いでいるその様子を「画面の向こう側」として多くの試験官たちが観察し、それぞれ評価している

 

「この入試は敵の総数も配置も伝えていない。限られた時間と広大な敷地・・・そこからあぶり出されるのさ

 

 状況をいち早く把握する――情報力――

 

 遅れて登場じゃ話にならない――機動力――

 

 どんな状況でも冷静でいられるか――判断力――

 

 そして純然たる――戦闘力――

 

 市井の平和を守る為の基礎能力がP(ポイント)数という形でね」

 

 画面には各個、【個性】を最大限生かして現状を把握する者、縦横無尽に駆け回る者、状況に左右されず敵を倒す者、ただ只管に敵を屠り続ける者と様々な受験生が映し出されている

 

「今年はなかなか豊作じゃないか?」

 

「いやーまだわからんよ、真価が問われるのは・・・これからさ!!――圧倒的脅威――それを目も前にした人間の行動は正直さ・・・・・・」

 

 ヒーローに求められることを語っている試験官に対し、別の試験官が『質が良い』と優秀な成績を出す受験生の多さを理由に問いかけたが『まだこれからだ』と試験官はボタンを押して答えた

 

 その答えは現れた超大型敵(0P)に対する受験生の行動が物語っていた

 つい先程までは果敢に敵に挑んでいたにもかかわらず、超大型敵(0P)の出現に脇目も振らず逃げ出す受験生に試験官たちは『やっぱり』と言いたげな失望した顔を画面に向けていた

 

 そんな中、凄まじい速度で飛び出し、今まさに超大型敵(0P)に襲われそうな少女を身を挺して守っている少年が映った

 

 「「「「おおぉぉ!!」」」」

 

 その様子に試験官たちは先ほどとは一転、その顔に歓喜を露わにした

 

 少年は超大型敵(0P)の攻撃にカウンターを行い、隙をついて少女を逃がした

 そしてその場から超大型敵(0P)の頭上まで飛び上がった

 

 いよいよ現場は終局(クライマックス)を迎えようとしていた

 

「メリットは一切無い、だからこそ色濃く浮かび上がる時がある。ヒーローの大前提!!自己犠牲ってやつが!!」

 

 試験官が一様に画面を見つめる中、紫電を纏った腕で雷轟と共に超大型敵(0P)を吹き飛ばす少年の姿があった

 

 ――― 試験終了後 ―――

 

「実技総合成績出ました」

 

 画面に各受験生の成績が─戦績が映し出され試験官たちは最終評価を下していく

 

救助P(レスキューポイント)0で2位通過とはなぁ、『1P』『2P』(仮想ヴィラン)は標的を捕捉し近寄ってくる。後半他が鈍っていく中派手な【個性】で寄せ付け迎撃し続けたタフネスのたまものだ」

 

「そして敵P(ヴィランポイント)87Pに救助P(レスキューポイント)73Pと両方ともブッチギリの1位とは凄まじいのが居たもんだ。

 アレに立ち向かったのは過去にもいたけど・・・ぶっ飛ばしちゃったのは久しく見てないね。思わずYEAH(ヤー)!って言っちゃったからな――

 それにしてもこいつの【個性】って何だ?地面から棘出して、すげー早くてバリア張って、んでメッチャ跳んで超大型敵(0P)を一撃、その上翼まで出してって複合系にも限度があるぞ?」

 

「ぶん殴る時電気纏ってたよね?」

 

「肌も黒光りしたムキムキだったけど、そのあと色白の細い体だったからそれも【個性】だろ?」

 

「手を大きくして超大型敵(0P)弾いてたよね?弾いたように見えなかったけど」

 

 試験官達は少年の【個性】が何かとそれぞれが試験中に使用していた【個性】を上げていく

 

「えーっと、資料によると彼の【個性】は・・・おいおいおいおい!!マジかよ‼」

 

 そんな中、一人の試験官が手元の資料から少年の【個性】を確認すると驚きの声を上げた

 

「どうしたよ?」

 

「こいつの【個性】、[覚える]【個性】だ‼しかもご丁寧なことに額に青い石があるってよ‼」

 

 資料には『とある人物』を連想させる【個性】が記載されていた

 

「おいおい、冗談だろ!?」

 

「しかもこいつ【無個性】の診断受けてんのに8歳で【個性】が発現してるよ‼その上、親の親そのまた親まで戻ってもこの【個性】に行き着く可能性0だと!!」

 

「確か奴がいなくなったのって7年前だよな?もしかしてってことはあり得るか?」

 

「あり得ないって言いたいところだが、アイツならやってのけそうだな」

 

「マジかよ、今年の生徒は金の大粒どころか出所不明の金塊まであるのかよ・・・」

 

 多くの試験官に衝撃を与え、雄英高校一般入試は幕を閉じた

 


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