「「「「「いただきます!」」」」」
「あー染み渡るわー!」
「まさかぶっ通しで森を踏破させられると思わなかった」
「しかも隙あらば魔獣だろ?もう勘弁だな・・・」
「ホントホント!もうやりたくないよね!あ、そこの取って」
「ほいよ」
「ありがと」
初めは食器と箸がぶつかり合う音だけが木霊していたが、徐々に話し声が聞こえ初め、宿の内装や今後の予定について話に花を咲かせたりとワイワイガヤガヤと騒がしくなっていた
「そうだ。皆に聞きたいんだけど、途中で飲んだスープについてなんか意見ある?」
皆の食べるペースが落ち着いてきたところで魔獣の森踏破の途中で飲んだ自作スープについて意見を求めてみた
「アレかー美味かったし特にないかな」
「俺は正直これくらい何て贅沢言わないけど、小っちゃくても形のある肉を食いたいかな?まあ、腹持ちそのものは良かったけどさ・・・」
箸で掴んだ唐揚げを持ちあげながら肉がほしいと尾白君が言う
「なるほど、食べ応えが足りないと・・・肉は一応は細かくしたジャーキーを入れてあるから、入っているっちゃ入ってるんだよな・・・」
「それってもしかしてあの繊維みたいなの?細かすぎて気付かねえって」
「緑谷ちゃん、それならドライフードのお肉を使ったらどう?」
「ドライフードの肉ってあのインスタント食品とかに入ってるアレ?」
「ええ、ソレよ。あれってひき肉を固めたモノでしょ?」
「ドライフードか・・・でも、そうすると錠剤が大きくなって持ち運びに難が出てきちゃうからなぁ・・・」
「別に一緒にしなくてもスープと具を別々のタブレットで用意してはどうだろうか。スープに関しては食材が細かくとろみがあるから幼児やご老人でも飲み易いし、腹持ちが良いのは皆が実感している。わざわざ大きめの食材を混ぜて万人受けする状態から変えなくとも必要に応じて追加する形を取ればいいだろう」
「そっか、別に用意すればスープの方に手を加えなくていいし、使い分けができるから個々に合わせられるか・・・野菜はキャベツを使えば安上がりで大量に用意できるとして、お肉って高いんだよな・・・そもそもドライフードってどう作ればいいんだ?たしか減圧乾燥とか言うのをするんだっけ?あれ加圧だっけ?」
飯田君の言う通り別個で作ればいいから大きさに変更点はないが、梅雨ちゃん提案のドライフードはそもそも作り方が分からない。圧力を変えて乾燥させるんだったと思うけどそんな機材は個人で用意できるものじゃないし・・・カル爺なら作って・・・いや、あんまり頼るのは良くないか・・・
「そのなんちゃら乾燥ってのは解らないけど、お肉の代わりに大豆肉はどう?」
「大豆肉?え、大豆?何それ」
どうやって乾燥肉を作るか頭を悩ませていると葉隠さんが大豆肉とやらを進めてきた
「大豆をペーストにして固めた奴だったと思うけど詳しくは解んない。でも肉じゃないけど水に戻せば食感は似てるし、出汁も吸ってお肉より安いからって母さんが良く買ってるから値段もそんなしないと思うよ。」
「ありがとう葉隠さん、今度探してみるよ」
大豆肉か・・・どんなのだろう?
「緑谷さん」
「ん?」
「今回のタブレットですが、ケースは気密性の高い物を使用して乾燥剤を居れるかタブレット自体を何かでコーティングした方がよろしいかと。そのままですと湿気を吸ってしまいます。湿気てしまえば弱りやすく衛生面でも不安があります」
「あー、確かに・・・乾燥剤が無難かな?」
「爆豪も黙って食ってないでなにかアドバイスとか要望とかないの?」
「あ゙あ゙?んなもん企業に投げときゃ良いだろうが。ど素人が頭付き合わせたって碌なもんが出来るわきゃねえだろ、てめぇらはバカか。何のためにサポート会社に要望だせるようになってると思ってんだバカが」
葉隠さんがもくもくと夕食を口に運ぶかっちゃんに意見を求めると、棘を多分に含んだ至極真っ当な意見が返って来た
「なにおぅ!!」
「どうどう、落ち着けって」
かっちゃんのバカ発言に僕は慣れちゃったから何とも思わなかったが、葉隠さんは憤慨してしまい、尾白君に宥められていた
「あのさ、私も爆豪君に賛成だな。一個一個手作りなんでしょ?大変じゃない?爆豪君の言う通りサポート会社で代わりに作ってもらったらどうなん?」
「そりゃ大変だけど・・・食料の
「確認だけでもされてみては?緑谷さんのタブレットはヒーロー関係なく登山などの持ち運べる重量が制限されるものや災害時の非常食などでとても魅力的ですので何がしかのアクションがあると思いますわ。それに私達は所詮素人ですので可能かの是非は兎も角、プロの方に一度見てもらった方が改善点などが分かってよろしいかと」
「それもそうだね」
「お前ら、そろそろ風呂に入る時間だ。さっさと準備して入れよ」
「「「「はーい」」」」
―― 浴場 ――
「あ゙あ゙あ゙あ゙ぁぁ生き返るわぁ・・・ぷは!ちょバカ!」
「上鳴君!ここはプールではない!泳ぐのは止めたまえ!」
「固い事言うなよ~!おおい峰田!そんなとこ突っ立てないでお前も浸かれよ!極楽だぜ!」
「極楽?はっはっは!何を言ってるんスか?極楽なのはこの壁の向こう側にあるんスよ」
「峰田君どうしたの?さっきからブツブツと・・・」
「疲れすぎて頭イったか?」
峰田君は女子風呂との敷居に耳を当て、虚ろな目で虚空を見つめている
『気持ちいいねぇ』
『温泉あるなんてサイコーだわ』
「ホラ・・・今日日男女の入浴時間をズラさないなんて事故・・・そうこれは事故なんスよ・・・」
「なあ緑谷・・・峰田のあの悟ったような顔とイッちゃった目、それと塀の向こうの女子の声でなんか嫌な予感がするんだけど」
「奇遇だね、僕もする・・・捕縛の準備しておくか」
「頼むわ・・・」
[操水]
切島君も同じように峰田君の様子に嫌な予感を感じたようで温泉のお湯を操り、いつでも捕縛できるように峰田君の背後に近づける
「峰田君止めたまえ!君のしている事は己も女性陣も貶める恥ずべき行為だ!」
「やかましいんスよ・・・壁とは超える為にある!!PlusUltra!!!」
「速っ!」
「緑谷急げ!!」
飯君の注意が切っ掛けとなり突如峰田君が壁を登りだした
くっ!速すぎて捕縛が間に合わない!!
すぐさま水球で峰田君を襲うが、まるで台所の黒い悪魔の様な物凄い素早さで壁をよじ登って行き、水球を躱されてしまった
「ヒーロー以前に人のあれこれから学び直せ」
峰田君はあと少しの所でぬっと壁から現れた洸汰君に突き飛ばされ落下
「くそガキィイイィイ!!?」
確保!!
「ぼがぶべべべべべばぶべぶばぼぶばぼばぶべぶぶば!!!(はなせぇぇぇぇ楽園がオイラをまってるんだ!!!)ごぼごぼごぼごぼ・・・ごぱ」
峰田君は水球に閉じ込められても尚壁の向こうへ行こうとガボガボと何かを叫びながら足掻き、最後は力尽きて意識を失った
「ふん!」
『やっぱり峰田ちゃんサイテーね』
『ありがと洸汰くーん!』
「わわっ・・・あ・・・」
「洸汰君!」
っぶな!もう少しで頭から床に激突するところだった
何故か白目を向いて落下してきた洸汰を咄嗟に近くにあった峰田君入りの水球をクッションに衝撃を和らげ、少し跳ねたところを掬い上げる様にキャッチした
「洸汰君!洸汰君!?しっかりして!ああっと・・・兎に角マンダレイの所に連れてかなきゃ!」
「あ、緑谷君!」
―― Building Manager Office ――
「頭からの激突は回避したんですが目を覚まさなくて・・・」
「落下の恐怖で失神しちゃっただけだね、ありがとう。イレイザーに『一人性欲の権化がいる』って聞いてたから見張って貰ってたんだけど・・・最近の女の子は発育が良いからねぇ」
性欲の権化ってのは間違いなく峰田君のことだろうな
「兎に角なんともなくて良かった・・・」
『俺はヒーローになりたいなんて連中とつるむ気はねえ!』
「洸汰君はヒーローに否定的なんですね」
「ん?」
「僕を含めて皆ヒーローになりたいって人ばかりで・・・この歳の子がそんな風なの珍しいな・・・って思って」
「そうだね・・・当然世間じゃヒーローを良く思わない人も沢山いるけど・・・普通に育ってればこの子もヒーローに憧れてたんじゃないかな」
「普通・・・?」
ヒーロー嫌いな所を除けばどこにでもいる子供に見えるけど・・・
「マンダレイのいとこ・・・洸汰の両親ね。ヒーローだったけど殉職しちゃったんだよ」
「え、殉・・・職・・・」
お盆にカップを乗せてやってきたピクシーボブが放った言葉に二の句が継げない
「二年前・・・敵から市民を守ってね。ヒーローとしてはこれ以上ない程に立派な最後だし名誉ある死だった・・・でも物心ついたばかりの子供にはそんなことはわからない。親が世界のすべてだもんね。『
『救えなかった人間などいなかったかのようにヘラヘラ笑ってるからだよなあ!!』
「何て言ったらいいか・・・」
「気にするな・・・なんて言えるほど軽くはないけど、今は洸汰が心を開いてくれるのを待つしかないんだよ・・・」
何か理由があるだろうとは思っていたが、想像以上に重い話になにも言えず沈黙が訪れる
「ところでいつまで腰のタオル一枚で私らの前に居る気?マンダレイが居なくて学生じゃなきゃペロリといっちゃうよ?」
「ちょっと、からかうならもうちょっと冗談か本気か判るのにしてくれない?」
暫く続いた沈黙を破ったのはピクシーボブがからかう様な言葉だった
「わわ!し、失礼しました!」
洸汰君をマンダレイの元に連れていくことだけ考えてて服を着てなかった!
急に恥ずかしくなって急いで浴場へ走った
翌日 AM5:30
昨日の疲れに加え普段はまだ布団の中に居る時間の為皆は半分寝ぼけたままボーっとしている
「おはよう諸君、本日から本格的に強化合宿を始める。今合宿の目的は全員の強化及びそれによる仮免の取得。具体的になりつつある敵意に立ち向かうための準備だ。心して臨むように・・・と言う訳で爆豪、こいつを投げてみろ」
相澤先生が取り出したのは入学直後の体力測定時に使用した飛距離測定の球で、それをかっちゃんに投げ渡した
「前回の・・・入学直後の記録は705.2m・・・どんだけ伸びてるかな?」
「この三カ月色々濃かったからな!1kmとか行くんじゃね!?」
「いったれ爆豪!」
「んじゃま、よっこら・・・くたばれ!!!」
相変わらず掛け声が物騒だ・・・
「709.6m」
「え!?思ったより・・・」
「確かに君らは成長しているだろう、だがそれは精神面や技術面、まあ多少は肉体面も成長しているだろう・・・だが、【個性】そのものは今見た通りでそこまで成長していない。だから今日から君らの【個性】を伸ばす。死ぬほどキツイがくれぐれも死なないように」
相澤先生の案内の元向かった先はそこだけ荒野になったかのように地肌が剥き出しでそこには何もなかった
「さて、君達の【個性】強化に当たって、やってもらう事は至極簡単、限界突破だ」
「限界突破??」
「先生質問良いっスか!!」
「なんだ切島」
「限界突破は分かったんすけど、どうやって突破するんすか?緑谷除いて他と同じ【個性】使える奴いねえし全員同じじゃあんま効果ない奴とか出そうなんすけど?」
切島君の言う通り20人20通りの【個性】があり、それぞれが違う特訓が必要になる。共通なのは基礎体力作りとかだけど、それは特訓とは呼ばないだろうし・・・
「その為の特別講師の彼女らだ」
「そうなの、アチキら四位一体!」
「輝く眼でロックオン!!」
「猫の手手助けやって来る!!」
「どこからともなくやって来る・・・」
「キュートにキャットにスティンガー!!」
「「「「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!」」」」
「うおぉぉぉぉ!フルヴァージョンだ!!フルのワイプシだ!!」
「緑谷五月蠅い」
余りの嬉しさに大きな声を上げてしまって相澤先生に睨まれた・・・
「アチキの【個性】は[サーチ]!この目で見た人の情報100人まで丸わかり!居場所も弱点も!」
とラグドールは轟君を指さし「例えばそこの君は【個性】の制御がダダ甘とかね」と指摘する
指摘された轟君は目を見開いて驚いている
「私の[土流]で各々の鍛錬に見合う場を形成!」
とピクシーボブが言いながら地に手を着くと、背後に瞬く間に隆起の激しい崖が出来上がる
「そしてわたしの[テレパス]で一度に複数の人間へアドバイス」
『昨日の話はデリケートな話だから他言無用よ?』
突然頭の中にマンダレイの声が聞こえ、洸汰君の過去について釘を刺された
「そこを我が殴る蹴るの暴行よ・・・!」
虎は一人だけ違う雰囲気で暴力発言をする
いや最後だけおかしくないか??
「特訓の内容は、許容限界がある発動型は上限の底上げ、異形型・その他複合型は【個性】に由来する器官・部位の更なる鍛錬を行ってもらう。各自に合った特訓内容を用意したわ!細かい指示については持ち場につき次第、私が【個性】で伝えるわ。持ち場はそこに置いてある紙に開いてあるからそこに向かいなさい」
「「「「はい!」」」」
マンダレイが内容を伝え終えると、各自特訓場所を確認するため集まっていく
「えーと、僕の持ち場はーっと・・・あれ?僕だけ持ち場が書いてない・・・記入漏れ?」
皆が各々の特訓場所に向かう中、僕だけ特訓場所の記入がなく空欄となっていた
聞いてみるか
「すみませ――」
「そこのモジャモジャ君!」
「――うぇ!?」
突然背後から声を掛けられビクリと肩が震えた。声をかけてきたのはラグトールだった
「君だけアチキが
「何したのって、何もしてませんが・・・?」
「本当かにゃ~?今までアチキが
「もしかして
「判らないから無難なことやらせましたはアチキのプライドが許さないし、仕事として生徒の特訓を引き受けた以上いい加減なことはプロとして沽券にかかわるからね~・・・で何をしたのかにゃ~?お姉さんに正直に言ってみ?今なら特訓3倍で許してあげるから」
僕の顔を覗き込むように近づいてくる
「特訓3倍って・・・だから何もってち、近い近い!」
あれ?なんかこの状況どこかで・・・
「ちょっと!何してんのよ!」
「「あだ!」」
「あ、ごめん・・・」
ラグドールが覗き込むようにして顔を近づけてきた為、至近距離で顔を突き合わせる格好となり慌てふためいていると、ピクシーボブがラグドールの頭を叩き、その拍子に頭をぶつけ合ってしまった
「った~!!いきなり叩くなんて酷いよ!」
「だまらっしゃい!その子はあたしが先に唾付けたんだからね!」
「ブーブー!ちょっと質問してただけじゃにゃいか~ケチ!」
―― 覚えた ――
「・・・は良いけど使えるかなぁ」
[
それから薄く広げる技術を身に付けるまではしょっちゅう気分悪くなってた
もう制御を誤るなんてことはなくなったけどこの【個性】は
にしても既に[
「何が使えるって?」
しまった・・・覚えた事でつい【個性】について考え込んじゃったけど、未だにラグドールは目の前にいるじゃん
「いえ、なんでもなーー」
あ・・・
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ヒーロー名:ラグドール
本 名 :知床知子(しれとこ ともこ)
性 別 :女
身 長 :166c■
血■型 :O■
【個 ■】:@■チ
猫■好▲∴▼■●@■∴
■▼■▲@■で■●■▼
■@▲ ∴■ ▼■▲●■
@■に∴■戦■▲@■●
▼■ ■∴■●った▲@
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「ぐぅぅうううう!!!!」」
痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!頭が割れる!!!コレダメな奴だ!
【個性】が発動した途端、一瞬で周りが真っ暗な空間になりラグドールの虚像が浮かび上がる。
その虚像が砂像のように崩れていき崩れた端から僕の胸に吸い込まれていくと、直後膨大な量の情報が脳に流れ込み悲鳴をあげた
初めはちゃんとした情報なのに、処理が追い付かなくなると文字化けした暗号がいっぱいに広がり、更に脳に負担がかかる
ヤバいと思い直ぐに【個性】を無理やり抑え込んだから意識を手放すことはなかったが、体から力が抜けていく
無理、この【個性】無理!僕じゃ絶対手に負えないよこれは・・・
「モジャモジャ君!?どうしたの!?ピクシーボブ!ちょっと手を貸して!鼻血吹いて倒れた!」
「わかった!」
「大丈夫!?」
そのままピクシーボブの作り出した魔獣に運ばれ、頭痛に苛まれながらベッドに横になった
結局皆の元に戻り特訓を開始できたのは1時間ほど経ってからだった