託された力   作:lulufen

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第28話 切島 VS 爆豪

 さて、切島君とかっちゃんの試合はどうなるだろうか・・・・・・

 

 切島君は防御型で何かの盾として立ち回るのが向いている。攻勢に出る場合は硬くなった手足で殴る蹴るの白兵戦だ。決定打に欠けるため長期戦になりがちだが、最長で10分しか連続して[硬化]できないので短・中期戦向き

 再使用に必要な『一息』が数秒から数十秒なら長期戦も可能だが恐らく分単位は必要だろう

『覚えた』から判った事だが、[金剛石]や[炭素硬化(ハードクロム)]は体組織を変化させることで硬くなるため、スイッチのON・OFFの様に使う使わないを決めるだけであとは解除するか体力の限界が来るまでいつまでも硬いままだが、切島君の[硬化]は力んでいる間だけ硬くなる為、「硬化時間の圧縮による硬度の向上」なんて芸当も可能な反面、硬化時間が長引くほど集中力が切れて綻びが出やすくなる。

 切島くんにとって、その綻びがでる限界が10分。

 

 対するかっちゃんは攻撃型。攻撃こそ最大の防御と言わんばかりの猛攻で短期戦に持ち込むことが多い。しかし、汗をかけばかくほど威力が大きくなる[爆破]の【個性】持ちで本人も周りから「タフネス」と言われるほどスタミナが多いため長期戦向き。戦い方も[爆破]による衝撃波や熱による攻撃の他、加速や空中での軌道変更などの補助的に使用したりと多岐に渡り、その上戦闘に関しては持ち前の頭脳で大体のことはその場で対処してしまうため小細工の類いは効き目が薄い

 

 切島君の新技「圧縮硬化(仮)」によってどれだけ硬化可能時間が延びたかは解らないが、この試合かっちゃんが有利だ

 

 ――――――――――

 

『ラッシュ!ラッシュ!ラッシュ!!効かぬなら効くまで殴ろうこの野郎ってかぁ!』

 

 試合は[硬化]によって[爆破]を無効化した切島君が優勢でスタートしたが、絶え間なく続くかっちゃんからの爆撃に圧縮硬化(仮)を使えず、従来の[硬化]したままで戦うことを強いられてしまった

 

『カァウゥンタァーー!!!』

 

 カウンターや投げ技で距離と時間を稼いで息継ぎの様に[硬化]を解いているようだが、それもほんの数秒程度で気休めだろう

 

『おっと!投げられた側から即反撃!』

 

 しかも、2度3度と距離を取ってからの解除を目の前で見せられたかっちゃんは即座に対応し、投げられた直後に爆発の勢いで急接近して[硬化]を解いている切島君に一撃を加え始めた。幸い、ギリギリで[硬化]が間に合った様だが、これで数秒の息継ぎすら出来なくなった。

 

「緑谷君!」

 

「飯田君?」

 

 切島君の試合を観戦していると、背後から声をかけられた

 

「飯田君、試合勝ったんだね!ベスト4おめでとう!」

 

「ありがとう!」

 

「あとごめん!実は飯田君の試合、見れてないんだ。それで飯田君の相手って塩崎さんだったよね?全方位に伸びるイバラをどう攻略したの?」

 

 飯田君の試合が始まる直前に控え室に向かったから、勝ったってことしか知らない。ちょうど当人がいるからどうやって勝ったのか聞いてみた

 

「機動力に勝るものなし!開幕「レシプロバースト」で背を取り場外さ!というか見逃した分は後にVTRで確認できるぞ」

 

「なるほど」

 

 確かに全方位に伸びるイバラは驚異だが、伸びる速度はそこまで速くはなかった。騎馬戦の時の超加速なら速攻で近づけるからそのまま場外に押し出せばいいか

 

「飯田君の活躍、お兄さん(インゲニウム)も見てるかな?」

 

「さっき電話してきたんだが、仕事中だったよ・・・でも逆に良かった。ここまで来たらNo.1で報告しないと」

 

 飯田君はどこか吹っ切れたような表情で前を向いて笑った

 

「緑谷君が負けるところは想像できないから、きっと次の試合も勝って決勝に進むんだろうね」

 

「何事もやってみなくちゃ判らないよ?まあ、僕にできるのは負けないように全力で相手に挑むことだけだよ」

 

 お母さんや鬼哭道場の皆が見てるからね!下手な試合は出来ない

 

「そうか・・・先に行う俺の試合、相手はあの轟君。そう易々と勝たせてはくれないだろう。決勝で待つなんて言えるほど自惚れてはいないが、もし勝ち抜いたら今度こそリベンジ、させてもらうよ」

 

「今度も負けないよ」

 

「ああ、そうでなくては挑み甲斐がない!」

 

 ――――――――――

 

『ああー!!効いた!!?』

 

 飯田君と話ながら観戦すること10分ちょっと。試合が始まってから12分が経過した頃、ついにかっちゃんの攻撃が切島君の[硬化]を抜いた。

[硬化]を維持しつつカウンターでかっちゃんにダメージを蓄積させてきたが、どうやら先に切島君の硬化可能限界が近づいてきたようだ。特訓の成果か単なる意地か判らないが、以前言っていた限界より僅かに長く[硬化]していた。しかし、比例してかっちゃんからの爆撃が激しくなっていた為、たった一撃でもダメージは大きい

 

 切島君はどうにか限界を迎える前に決着を着けようと奮闘するが、ほんの僅かでもかっちゃんが隙を見逃すはずがなく、[爆破]のラッシュで畳み掛けられてあえなく敗退

 

『爆豪、エゲツない絨毯爆撃で三回戦進出!!これでベスト4が出揃った!!』

 

「・・・よし、行ってくる」

 

「頑張って!」

 

 次の試合の為に立ち去る飯田君に激励の言葉をかけて見送った

 


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