託された力   作:lulufen

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遅くなりましたが27話の投稿です。



第27話 二回戦 VS常闇

「!!」

 

「あ!かっちゃん!」

 

「んだてめえ!てめえの番はまだ先だろうが!」

 

 麗日さんのもとへ向かう途中、控え室に戻るかっちゃんとバッタリ出くわした

 

「えっと、麗日さん大丈夫かなぁって・・・その、様子を見に・・・・・・じゃ、じゃあ・・・」

 

「・・・デク、てめえだろ。丸顔に捨て身なんて糞なこと吹き込んだのは。厄介なことしやがって」

 

 その場から立ち去ろうとする僕に眉間にシワを寄せたまま開口一番、麗日さんの戦い方に僕が関与していることを問い詰めてきた

 

「違う。いや違わないけど、でも違う」

 

「あ?」

 

 はっきりしない僕に益々眉間のシワを寄せる

 

「開始早々に爆煙に隠れてかっちゃんに触ろうとしたのは僕が言ったことだけど、上着を使った変わり身や瓦礫の雨は麗日さんが考えたことだよ?だから厄介だってかっちゃんが思ったんなら、それだけ麗日さんが君を翻弄したんだ」

 

「・・・ちっ!まあいい・・・デク!」

 

「なに?」

 

 僕の答えに一応の納得をしたかっちゃんは苛立った表情から一変、真剣な表情で僕を呼んだ

 

「俺は次の試合も勝って準決勝に進む。だから詰まらねえことで二回戦敗退とかすんじゃねえぞ」

 

「うん」

 

「それから・・・・・・今度こそ勝つぞ」

 

「僕だって」

 

 真剣な表情で一言、宣戦布告するかっちゃんに「負けるつもりはない」と宣言し、そのまま別れた

 

 ――――――――――

 

 ―― 保健室 ――

 

「え!もう出てった?」

 

 麗日さんに会おうと保健室を尋ねるとリカバリーガールから既に治療が終わり、出ていったといわれた

 

「完全に治すには体力が足りなかったから応急措置だけして帰したよ。控え室にでもいるんじゃないかい?」

 

 控え室か・・・

 

「ありがとうございました!失礼します!」

 

 ――――――――――

 

 ―― 控え室 ――

 

 コンコン

 

「麗日さんいる?」

 

「その声はデク君?いるよ」

 

 ガチャリ

 

 中に入ると頬に大きなガーゼを張り付けた麗日さんがいた

 

「ははは、格好つけて挑んだ割に負けてしまった!いやあーやっぱ強いねえ爆豪君は!完膚なかったよ!もっと頑張らんといかんな私も!」

 

「・・・・・・麗日さん・・・」

 

 いつものように明るく振る舞おうと笑う麗日さんに僕は笑うことができなかった。

 そんな僕を見てか麗日さんも無理に笑うのを止めてポツリと弱音を吐いた

 

「でも・・・・・・こんなんじゃ指名なんてないだろうな・・・」

 

「大丈夫、絶対プロから支持があるはずだよ」

 

「やめて、やめてよ。慰めはいらないよ。負けたんだよ?それも一回戦で!支持なんて貰えないよ!」

 

 諦めた様に呟く麗日さんに「大丈夫」と声をかけると、徐々に声を荒らげながら叫んだ

 

「ごめん、怒鳴ったりして。負けた上に八つ当たりなんて格好悪いね・・・」

 

 はっとしたように怒気を納め、自己嫌悪で落ち込む麗日さん

 

「慰めなんかじゃないよ、麗日さん」

 

「え?」

 

「僕にだって見てくれる人が居たんだもん。麗日さんにいないわけないよ」

 

「それはデク君がスゴいから見てくれる人がいるんでしょ?」

 

 何をいってるのと言わんばかりの困惑した表情の麗日さん

 

「そっか、知らないんだよね・・・一つ僕の秘密を教えるよ」

 

「秘密?」

 

「うん。って言ってもかっちゃんとか小さい頃からの知り合いは皆知ってるんだけどね」

 

 そう前置きしてから話した

 

「僕はね、8歳まで【無個性】だって周りから貶されて罵倒されて嗤われてたんだ」

 

「え、でも異形系だって・・・」

 

 僕の額に視線を向けながら問いかけてくる

 

「これは後天的に、使い方がわかったから現れたんだ。この【個性】は体か頭で理解しないと[模倣]できない。だから【個性】が発動しなくて【無個性】だって言われてた。いくら検査を受けても、理解してないから[模倣]できない。[模倣]できないからなんにもできない。なんにもできないから【無個性】であるってね」

 

「そんな・・・」

 

「でも恩人にあったことで僕に力があることがわかった。自他共に僕は【無個性】だって認識してたのに、その人は僕を見つけてくれた。君ならできるってね・・・それからは必死に体を鍛えて【個性】を沢山[模倣]して今に至るって訳さ。一回戦で敗退がなんだよ。テレビやネットを通して皆が麗日さんを見たんだ。結果こそ一回戦敗退だったとしてもあのかっちゃん相手に善戦だってした。【無個性】で無力だった時の僕だって見てくれる人が居たんだ。あれだけ注目を集めて無支持なんてあるはずないよ!」

 

「デク君・・・うん、ありがとう」

 

「じゃあ、僕は観客席に戻るから」

 

 ばたん

 

「・・・・・・!!」

 

 扉を閉め、少し歩いた所で控え室の中から嗚咽混じりの泣き声が聞こえた

 

 オールマイトといい麗日さんといい、どうして僕の回りには『負けられない理由』を増やす人が多いんだろうか・・・・・・

 

「よし!頑張ろう!」

 

 一層気合いを入れてその場を後にした

 

 ――――――――――

 

『さあさあ、二回戦行くぜ!一試合目!大したことねえって思ってたら、思った以上にやべえ奴だった!心操人使!! VS(バーサス) 一回戦では巨大な氷塊で対戦相手を氷漬けにしやがった別の意味でやべえ奴!轟焦凍!!」

 

 心操君の【個性】は返答さえあればいい。対策は無視し続ければいいが、轟君は父親であるエンデヴァー関係で挑発されると反論しそうだ。もし「父親がエンデヴァーで羨ましい」とか言われたら怒り狂いそうな気がする・・・

 

『ready――――START!!』

 

 パキーン!

 

 しかしその予想は裏切られた。試合開始と共に轟君が心操君を氷漬けにしたから。[複製腕]に目を複製して轟君の表情を確認したところ鬼の形相だったので、恐らく挑発事態は上手くいったのだろうが、轟君からの返事は言葉ではなく氷だったわけだ。瀬呂君と似た状態だが、瀬呂君の時のような巨大な氷ではなくステージと心操君だけを凍らせるだけに留まっていたところが自制を利かせているところだろう。

 

『圧勝!!心操に何かさせる暇すら与えず氷漬けにしやがった!!轟!もうちょっと体育祭が盛り上がるような戦い見せろよな!』

 

 余りに速攻で勝負をつける轟君にさすがのプレゼントマイクも苦情をこぼした

 そしてステージから立ち去る心操君と轟君と入れ替わるように飯田君とB組の塩崎さんがステージに上がる

 

『一回戦ではいい様に利用されて同情されまくりの飯田天哉!! VS(バーサス)――』

 

 僕もそろそろ行かないと・・・

 

 ――

 ―――――

 ――――――――

 ―――――――――――

 

『二回戦!三試合目!治りかけの中二病も再発必死!チビッ子に大人気間違いなしの常闇踏影!! VS(バーサス) 強者の風格なんて微塵もねえのにメチャ強い!緑谷出久!』

 

 分かってはいるけど他の人に言われると釈然としない・・・

 

『ready――――START!!』

 

「ダークシャドウ!行け!!」

 

「アイヨ!」

 

[巨大化:拳]

 

「うが!」

 

 開始早々に攻撃を仕掛けてきたので巨大化した掌で叩く様に攻撃するが、まるで煙のようにすり抜け反撃を喰らった

 

 すり抜けた!?実態あるんじゃないの!?

 

「どんどん行くぞ!!」

 

「ガッテン!」

 

「ちぃ!!」

 

【個性】のダークシャドウに対しての物理攻撃は効かないのにあっちからの物理攻撃は喰らう・・・常闇君(本体)に攻撃を仕掛けるしかないな?

 

[脚力強化]

 

 ダークシャドウを迂回するように加速し、常闇君に接近するも即座にダークシャドウが間に現れ進路妨害と攻撃を加えてくる

 

「トオサナイヨ!」

 

 流石、【個性】が[影]なだけある。一瞬で常闇君の所に現れるとは・・・ある程度距離を開ければ追撃がない所を考えれば、常闇君を中心に7、8mが守備範囲だろう

 

『おお!攻撃しようにも常闇の【個性】が邪魔で近づけねえ!さすがの緑谷も攻めあぐねてやがるぜ!』

 

「こっちからも行くぞ!」

 

 常闇君は僕に接近してくる。それに伴って【個性】の攻撃範囲に僕が入り、攻撃が再開される

 

「らあ!」

 

 振り払うかのように腕を振るもすり抜けてしまう

 

[金剛石]

[炭素硬化(ハードクロム)]

 

 即座に体を硬くして防御姿勢をとる

 

 衝撃はあるけど痛くはない、とりあえず一方的にやられる心配はなくなったか・・・

 

『緑谷真っ黒になったと思ったら防御姿勢まで解きやがった!諦めたかァ!?』

 

『守る必要がなくなったんだろう。現にさっきまで通っていた攻撃が全く効いていないようだしな』

 

『マジだ!じゃあこりゃ緑谷は無敵モードが終わるまでに常闇を倒すか、常闇が守り切るかの耐久戦か!?』

 

『いや、緑谷のことだ、常闇の弱点となりえる何かを使ってきても不思議じゃない』

 

『おお?じゃあ緑谷が無敵モード終わらせるまでに対策練られたら常闇は敗北濃厚かァ?』

 

 弱点・・・そう言えば騎馬の時、上鳴君の放電が弱点になりえるって本人が言ってたじゃないか!光!光だよ!照らせるもの!雷・・・と炎!

 

 体のあちこちを執拗に攻撃してくる常闇君のダークシャドウを無視して対策を考える

 

「よし!試してみよう!まずは雷!」

 

[雷]

 

 バチバチと全身に紫電が走り、その光にダークシャドウが怯む

 

「アウゥゥ・・・」

 

 行ける!!

 

「放電!」

 

 バリバリバリと空気を引き裂く音と共に全方位に電気は放射され、イオン臭があたりに広がる

 

「ギャァァ!」

 

『ビッカビカに電気だしてんぞ!どっかのスパーキングキリングボーイと違ってアホ面晒す事無く相手を弱らせていく!』

 

「ち!あの時話したのは失策だったか!」

 

 ダークシャドウは悲鳴と共に目に見えて小さくなっていき、その様子を見た常闇君が動揺する

 

 畳みかける!

 

[火を吹く]

 

「ふぅぅぅ!!」

 

 視界一杯に広がった青い炎の向こう側で常闇君はダークシャドウを盾に炎を防いでいるが、盾にされているダークシャドウは弱っているのが見て取れる

 

『今度は火炎放射だァ!!怒涛の攻撃に常闇為す術無し!』

 

[爆破]

 

 強化した脚力でステージを蹴り、掌の[爆破]の反動で加速する。弱り切ったダークシャドウを無視して慣性と腕の力をそのまま本命の常闇君の顔面に叩き込む。

 

「ぐあぁ!」

 

 ステージと身体が水平になるよう吹き飛び、2転3転とバウンドして場外へと飛び出した

 拳が触れる直前に[金剛石]と[炭素硬化(ハードクロム)]の【個性】は解除したのでそこまで酷い怪我はしてないはずだ

 

「常闇君場外!緑谷君三回戦進出!」

 

『流れるようなコンボで緑谷勝利!やっぱこいつが(こん)体育祭の最有力優勝候補だ!!』

 

 次は・・・切島君とかっちゃんか・・・見逃せないな


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