託された力   作:lulufen

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トーナメントの対戦相手を一部入れ替えました

修正
対戦後の休憩時間を15分から5分に変更しました


第25話 トーナメント開始 ~ 一回戦 VS 芦戸

「あの・・・話って何?早くしないと食堂すごい混みそうだし」

 

「この間の敵襲ん時、お前は俺らが束になっても足止めすらできないような相手に圧倒した。物理攻撃が効かず再生能力まである敵をだ・・・まるでオールマイトを見ているようだった。」

 

「えっと、褒められてる・・・のかな?」

 

「・・・・・・・なあ、お前とオールマイトってどんな関係なんだ?」

 

「えっ!?ど、どんなって」

 

 唐突な質問に自分の肩が跳ねるのが分かる

 

「お前はオールマイトとよく一緒にいるよな?」

 

「それは、その・・・そう!分からない所があったから聞いてたんだよ!ほら僕オールマイトのファンだからさ!それを口実に会いに行ってるんだ!」

 

「ならなんでオールマイトがお前を飯に誘うんだ?飯田と麗日が言ってたぜ?お前はオールマイトと仲がいいってな。お前がオールマイトに目ぇ掛けられてんのはもう知ってんだ」

 

「そ、れは・・・その」

 

 考えろ!なにか、なにか良い言い訳は・・・

 

「まあ、言いたくないならいいさ」

 

 助かった・・・

 

「俺の親父はエンデヴァー、知ってんだろ?万年No.2ヒーローだ。お前がオールマイトと生徒と教師以上の何らかの関係があるってんなら・・・尚更勝たなきゃいけねえ」

 

「え?」

 

「親父は極めて上昇志向の強い奴だ。ヒーローとして破竹の勢いで名を馳せたが・・・それだけに生ける伝説オールマイトが目障りで仕方がなかったらしい。自分ではオールマイトを超えられねぇ親父は次の策に出た」

 

「何の話だよ轟君、僕に何が言いたいんだ」

 

 オールマイトと僕の関係の次は自分の父親の話?どういうこと?

 

「個性婚・・・って知ってるよな?」

 

 個性婚・・・

 

「次世代の【個性】の強化を図るために相性のいい【個性】同士で結婚すること・・・」

 

 たしか人を人として見ないで、持っている【個性】が自身、()いては血族にとって有益か無益かだけで結婚を決めることが多かったから人権無視だって大騒ぎになったんだっけ・・・

 

「ああ、そしてそれは当人の望む望まぬに関わらず、ただ次世代に強い【個性】を残せるかどうかで結婚を強いる倫理観の欠落した前時代的発想」

 

 この単語が出るってことは・・・まさか!

 

「まさかエンデヴァーの次の策って・・・!」

 

「そうだ、実績と金だけはある男だ・・・親父は母の親族を丸め込み、母の【個性】を手に入れた。俺をオールマイト以上のヒーローに育て上げることで自身の欲求を満たそうってこった。うっとうしい!そんな屑の道具にはならねえ」

 

「でも、もしかしたらお母さんも結婚して良かったって喜んでるかもよ?」

 

 結婚してから好きになったとかあるらしいし

 

「喜ぶ?喜んじゃいねえよ!記憶の中の母はいつも泣いている・・・寧ろ憎んでんだろうな。『お前の左側が憎い』と俺に煮え湯を浴びせた程だからな」

 

 それじゃあその火傷は・・・!

 

「そこまで精神を病んだ母を親父は病院へと隔離した。自分には関係ないと、何故母がそうなったかも知ろうとしないまま!!」

 

「そんな・・・」

 

「ざっと話したが俺がお前につっかかんのは見返す為だ。クソ親父の【個性】なんざなくたって・・・いや、使わずに一番になることで奴を完全否定する」

 

「・・・轟君がなんで右しか使わないかは分かった。でも、だからってそんな君に負けてあげられるほどお人よしじゃないんだ」

 

「負けてあげる(・・・)だと!?」

 

「うん。僕はね轟君・・・僕は薄氷の上を助けを借りて渡り切ったからこそ、【個性】()を使えているんだ。じゃなきゃとっくの昔に心が折れてヒーローに守られる一般人、かっちゃんの言葉を借りるならモブになってたと思うよ・・・だからこそ、手を差し伸べてくれた人達のために全力で報いようと足掻いている。君がエンデヴァーを理由に右しか使わないと誓ったように、僕には僕の譲れない理由がある。だから改めて言うよ?・・・僕も本気で獲りに行く」

 

「・・・・・・」

 

 ――

 ―――――

 ――――――――

 ―――――――――――

 

『最終種目発表の前に予選落ちの皆へ朗報だ!あくまで体育祭!ちゃんと全員参加のレクリエーションも用意してんのさ!』

 

『本場アメリカからチアリーダーも呼んで一層盛り上げ・・・ん?アリャ?どーしたA組!!?』

 

「ブハッ!」

 

 なんでチアの格好してんの!?

 

 八百万さんを先頭に麗日さん、芦戸さん、梅雨ちゃん、耳郎さん、葉隠さんがチアガールの格好で現れた。相当恥ずかしいのか顔は真っ赤に染まっていて若干俯き気味だ

 

「峰田さん、上鳴さん!!騙しましたわね!?」

 

 プレゼントマイクが不思議がったことで何かに気付いたのか峰田君と上鳴君に叫んでいる。八百万さんの言葉に近くにいる峰田君達を見ると、上鳴君は隠しきれないニヤケ顔で、峰田君は目を血走らせてサムズアップしていた

 

 あとで峰田君達にお礼言っとこ・・・いいもん見れたし

 

『さァさァ皆楽しく競えよレクリエーション!それが終われば最終種目、進出4チーム総勢16名からなるトーナメント形式!!一対一のガチバトルだ!!』

 

「トーナメントか!毎年テレビで見てた舞台に立つんだあ!」

 

「去年トーナメントだっけ?」

 

「形式は違ったりするけど例年サシで競ってるよ。去年はスポーツチャンバラしてたハズ」

 

「それじゃあ組み合わせ決めのくじ引きしちゃうわよ。組が決まったらレクリエーションを挟んで開始になります!レクに関して進出者16人は参加するもしないも個人の判断に任せるわ。息抜きしたい人も温存したい人もいるしね」

 

 僕は不参加で休憩かな?あと八百万さんに体操服の上着を作って貰えるように頼んどかなきゃ・・・作ってくれるかなぁ・・・特訓ばかりしてて[複製腕]用の服に変更してもらうよう申請し忘れちゃったから

 

 その後はくじ引きで対戦相手を決めたら解散の流れだったんだけど、尾白君とB組の・・・ええと、たしか庄田君が「自分はトーナメントに出る資格はない」と辞退を宣言、繰り上げで選ばれた騎馬戦5位のチームの人も「自分よりこいつ」と辞退したことにより、塩崎さんって女性と切島君とすごく気が合いそうな鉄哲君が繰り上げでトーナメントに進出となった

 

 くじの結果

 

 一試合目 青山 VS 心操

 

 二試合目 轟  VS 瀬呂

 

 三試合目 塩崎 VS 上鳴

 

 四試合目 飯田 VS 発目

 

 五試合目 芦戸 VS 緑谷

 

 六試合目 常闇 VS 八百万

 

 七試合目 鉄哲 VS 切島

 

 八試合目 麗日 VS 爆豪

 

 となった。

 

 八試合目は麗日さんとかっちゃんか・・・幼馴染として、元弟分としてかっちゃんには勝ち抜いて僕と対戦してほしい所だけど、麗日さんにも勝ち抜いてほしい。麗日さんだってこの一週間で何か秘策を考えてるだろうけど、かっちゃんはこと戦闘に関しては抜群の才能を発揮するからそう簡単に下せる相手じゃない。どっちも応援したいけど、どっちも応援できない

 それに麗日さんとかっちゃんの前に僕の試合もある。しかも――

 

「僕の初戦は芦戸さんかぁ・・・」

 

 ――女性である。差別なんてするつもりはないけど、女性相手に戦った事ってないんだよな・・・お母さんにも鬼哭のお婆ちゃん達にも「女性には優しくしなさい」って口を酸っぱくして言われたし・・・お爺ちゃん達みたいに「敵対者は(すべか)らく実験体!」って単純思考ならどれだけ楽か・・・

 

「よし!やっぱレクリエーション出よう!」

 

 逃避だって分かってるけど、試合が始まるまでウジウジしてるよりは気が晴れるだろう!

 

 赤白分かれての大玉ころがし、玉入れ、綱引きなどの団体競技から始まり、借り物競争、障害物競争、パン食い競争などの個人競技まで様々な競技、その全てを終えて遂に最終種目、トーナメントが始まった

 

 ちなみに、八百万さんに体操着の上着の件をお願いしたところ潔く承諾してくれて予備を含めて2着作ってくれた。

 そして、ボロボロのままTVに映っていたことを「雄英の生徒として恥ずべきことだ」って叱られた、チアの格好で。

 お願いしてる時も叱られている時も視界の端にチラチラ映る皆のチアガール姿に目を向けそうになるのが辛かった。男性のチラ見は女性のガン見って言うらしいし・・・少しでも視線が動いたら即座にばれる。

 

 チラ見我慢耐久レースを見事完走した僕に峰田君から「どうだった?」って涎でも零しそうなくらい興奮して聞いて来たので、無言で【個性】を発動させ[(フレグランス)]で峰田君にとっての理想郷に旅立ってもらった。白目を剥いて倒れた峰田君は救護班に運ばれている間も顔は常時ニヤケて鼻血を垂らし、ビクンビクンと激しく痙攣をおこしていた。あまりの痙攣の激しさにちょっとやりすぎたかな?って思ったけれど、峰田君が浮かべる表情がそのまま天国に旅立てそうなくらい幸せそうだったのでそのままにしておいた。一時間もすれば元に戻るし大丈夫だろう

 

 ――

 ―――――

 ――――――――

 ―――――――――――

 

『さァさァ色々やってきましたが!!結局これだぜガチンコ勝負!!頼れるのは己のみ!ヒーローでなくともそんな場面ばっかりだ!わかるよな!!心・技・体に知恵知識!!総動員して駆け上がれ!!』

 

 それぞれの入場口から青山君とその対戦相手の心操君が入場してくる

 

「はぁ大丈夫かなぁ・・・」

 

「どうしたの?尾白君」

 

「いや、実はな?あの心操って奴は恐らく洗脳系の【個性】を持ってると思うから気を付けろって青山の奴に忠告したんだが「心配無用!華麗に倒して見せるさ!」の一点張りでまともに取り合ってくれなかったんだよ」

 

 隣の席でいきなりため息をついたので理由を問うとまさかの返答があった

 

「え!?それってやばいじゃん!条件とか分かってるの?」

 

 折角忠告しても聞き入れてもらえないんじゃ意味ないじゃん!しかも洗脳系って・・・

 

『一試合目、自意識過剰なナルシスト!成績は可もなく不可もなしの地味!!ヒーロー科 青山優雅』

 

「たぶん問い掛けに答えることが発動の条件だと思う。俺、騎馬戦の時アイツの問い掛けに答えてからほぼ記憶が抜け落ちてたから」

 

 条件軽!!青山君引っかかるな・・・

 

VS(バーサス) ごめん、まだ目立った活躍なし!普通科 心操人使!!』

 

「青山の奴引っかからないで戦えると思うか?」

 

「いや、無理だと思う。たぶん速攻で引っかかると思うよ?寧ろ自分から話しかけそう「メルシー♪」とか言いながら・・・」

 

 二言三言の会話は意外とキャッチボールが成立するし律儀に返してくれるんだよな・・・それ以上の長い会話は言葉のドッジボールになるのが青山君ぽいけど

 

「だよな・・・」

 

『ルールは簡単!相手を場外に落とすか行動不能にする。あと「まいった」とか言わせても勝ちのガチンコだ!!怪我上等!!こちとら我らがリカバリーガールが待機してっから!!道徳倫理は一旦捨ておけ!!だがまぁもちろん命に関わるよーなのはクソだぜ!!アウト!ヒーローは(ヴィラン)を捕まえる為に拳を振るうのだ!』

 

 予想が大外れしてくれればいいけど

 

『Ready・・・START!!』

 

「ああ!折角忠告したってのに!!」

 

 開始早々動きを止めた青山君に尾白君が頭を抱えた

 

 嬉しくない大当たりを引いたよ・・・

 

『オイオイどうした大事な緒戦だ盛り上げてくれよ!?青山開始早々完全停止!?心操の【個性】か!?全っっっっっっ然目立ってなかったけど彼ひょっとしてやべえ奴なのか!!!』

 

 ほんの数秒青山君に心操君が話しかけた後、クルリと青山君が心操君に背を向けて歩き出した

 

『ああーー!青山自ら場外に向かって歩き出した!!!』

 

 自力で洗脳を解く術を持たない青山君は自ら場外線を越えて敗北した

 

「青山君場外!!心操君二回戦進出!!」

 

『場外!場ーー外!!呆気なく終わっちまったから二試合目に期待だ!二試合目は5分の休憩後に行うからちょい待ちな!』

 

 ――――――――――――

 

 その後、僕が戦う五試合目までどちらかが一方的に相手を抑え込んで勝利を得ていた

 

 第二試合の轟君と瀬呂君の試合は開始早々、場外に追い出すべく瀬呂君が奮闘するも、僕たちのいる観客席すれすれを通る程超巨大な氷で瀬呂君ごとステージを凍らせて轟君が勝利した

 余りにも一方的過ぎてドンマイコールが会場から送られたくらいだ

 

 第三試合はどうも上鳴君が格好つけてたみたいだけど、スタートの合図と共に茨に拘束され、得意の放電も拘束している茨をアースの様に伝って意味を為さず瞬殺。誰もこの記録は塗り替えられないだろうって自信をもって言えるくらい一瞬の勝負と上鳴君のアホ顔が全国ネットで放映され、勝敗は塩崎さんの圧勝となった

 

 第四試合は飯田君と発目さんの試合だが、これは他とは違う意味で異様だった。なにせサポート科の発目さんは兎も角、ヒーロー科の飯田君がサポートアイテムフル装備でステージに立っていたのだから。

 飯田君曰く、発目さんの「対等に戦いたい」という言葉に心打たれ彼女から借り受けたサポートアイテムを装備して試合に臨んだというが、自分の利益のためなら真正面から「目立つためにあなたを利用します」なんて言って僕と騎馬戦に挑む発目さんがそんな利益の欠片もないこと言わないと思う。

 その予想は的中し、スタートの合図と共に飯田君と自分が装備するサポートアイテムの解説を初め、真面目に戦おうとする飯田君と説明が終わるまでの10分間、只管鬼ごっこを繰り広げた。最後は満足気に発目さんが自ら場外へ出ることで飯田君の勝利となったが、飯田君が叫んだのは勝利の雄たけびではなく、真面目に戦うことなく自分を騙し、利用するだけ利用して自ら負けた発目さんに対する叫びだった。

 

 ――

 ―――――

 ――――――――

 ―――――――――――

 

『四試合目は盛り上がるどころか興ざめもいいとこな試合だったが、気を取り直して五試合目行ってみよう!』

 

「一回戦から緑谷とかぁ・・・きっついなぁ」

 

 いつもの陽気さはどこえやら。八の字眉にへの字口の芦戸さん

 

『一回戦!!ピンクな肌がチャーミング!ヒーロー科 芦戸三奈!!』

 

「はぁ・・・よし!緑谷!」

 

「うん?」

 

 頬をペシリと叩き気持ちを切り替えた芦戸さんは気合の入った顔で僕を呼んだ

 

VS(バーサス)

 

「アタシ、全力で行くけど手加減してよね?」

 

「うん・・・うん?」

 

 全力で行くけど手加減して?つまり僕に手を抜けってこと?

 

『予選も騎馬もトップ通過!ヒーロー科 緑谷出久!』

 

「緑谷強いじゃん!戦ってるとこ二回しか見てないけど強いじゃん!」

 

「まあ、弱くはないと思うけど・・・」

 

 でも僕より強い人、特に鬼哭のお爺ちゃん三人とかオールマイトとか結構いるはずだけど?

 

『Ready・・・』

 

「そんな緑谷に全力で殴られたらアタシ死んじゃう!」

 

「え?」

 

『START!!』

 

「善戦はするつもりだけどお手柔らかに!!」

 

 一人言うだけ言ってステージをスケートリンクの様に滑り、接近しながら何かの液体を投げつけてくる

 

「ちょ!いきなり!?」

 

 次々と飛んでくる液体を避けていると外れた液体がステージに落ち、ジュワっという音と共に白煙を上げる

 

「!?」

 

 溶けた!?そう言えば芦戸さんの【個性】って体から酸性の液体を出せるんだっけ!

 

「うりゃりゃりゃりゃ!」

 

『先手必勝とばかりにグイグイ行くな!!流石の緑谷も女子には手ぇ出せねえかァ!?必死こいて避けまくる!』

 

[翼]

[跳躍(ジャンプ)]

 

「あっ!」

 

 一先ず届かない所に退避!

 

『飛んだァ!三十六計逃げるに如かず!上空に飛んで芦戸の攻撃から逃れた!芦戸もこれじゃあ手も足も出ない!』

 

「降りて来ぉい!!」

 

 その場で飛び跳ねながら文句を言う芦戸さんを無視してどう対処すべきか考える

 

 出来れば女の子は怪我させたくないし、かといって一撃で仕留めようにも不用意に近づくと文字通り火傷を負いそうだし・・・

 

「そうだ!」

 

[(フレグランス)]

 

 バサバサと翼が起こす風にの乗せて芦戸さんの所まで[(フレグランス)]の香りを届かせる

 

「ん?なにこの甘い匂い・・・」

 

 よし、届いたみたいだ

 

 芦戸さんの所まで香りが届いたのを確認してからステージに降り立つ

 

「お?やっと降りてきた!いくぞぉ!・・・あれ?動かない!?」

 

 芦戸さんは訳も分からないと驚きながら必死に動こうともがくも、首から下は微動だにしない

 

『どうした芦戸!?緑谷が下りてきたんだから攻撃届くだろ!ほんとどうした?」

 

「なんで!?この!動けぇ!」

 

「芦戸さん、降参してくれない?無理なら場外まで動いて貰うけど?」

 

「あ!体が動かないの緑谷のせい!?」

 

「うん、出来れば怪我させたくないし、だからって抱えて場外ってのも芦戸さんの【個性】で無理そうだし」

 

「うぅぅぅ・・・」

 

 すっごい睨んでくるけど僕としてはこれが最適解なんだけど・・・

 

「降参は・・・・・・してくれないか・・・じゃあステージ外まで歩いて貰うね?」

 

 再度、翼の羽ばたきに合わせて[(フレグランス)]の香りを風に乗せ運ぶ

 

「あ!動いた!ってそっち逆じゃん!?ちょ!緑谷止めて!!」

 

 やっと動いたと喜ぶのも束の間、綺麗なターンで背後を向き歩き出す。芦戸さんは必死に踏み止まろうとしているが、意思とは反対に足は一歩一歩確実にステージ外へと向かっている

 

『おお!?芦戸どうした!?諦めるにはまだ早いぞ!!』

 

『恐らく心操の【個性】と似たような【個性】を使ったんだろう』

 

『マジか!?』

 

「あああ!!」

 

「芦戸さん場外!!緑谷君二回戦進出!!」

 

 芦戸さんの悲痛な声と共に僕の勝利宣言がなされた

 

『おお!緑谷一切芦戸に触れずに完封!!ちぃとばかし盛り上がりに欠けるが双方無傷で相手を無力化出来るんならこれほどヒーローとして上出来なもんはねえだろ!それに俺的にはボコスカ女殴るよか万倍良い!!』

 

 勝利宣言の後、体の自由を取り戻した芦戸さんは対戦後のお辞儀もそこそこに僕に対し不満の声を上げた

 

「うぅぅ!緑谷!」

 

「なに?」

 

「酷いよ!体を操るなんて!」

 

「えぇぇ!?だってお手柔らかにって言ったじゃん!」

 

 結構気を使ったのに!?

 

「そりゃ言ったよ!言ったけどさ!もっとこう、ばしばしって、しゅばばって感じで格好良く戦うのかと思ってたのに!!」

 

 芦戸さんはその場で全身を使ってシャドウを行いながらブーブーと文句を言う

 

「ご、ごめん」

 

 でも、ばしばし!しゅばば!なんて感じで戦おうとしたら実際にはゴキバキ!スパパッ!って感じになりそうなんですけど?怪我させないように手加減しながら見栄えまで良く戦うなんて無理だよ・・・

 

 芦戸さんに怪我を負わせず、且つ僕が芦戸さんの【個性】で怪我をしないで勝つ方法を選んだが、この勝負の付き方は芦戸さんにとって不服らしい

 

 こうして一回戦は僕の勝利で幕を下ろした

 

 次は切島君の試合だ。特訓はばっちりだって言ってたから楽しみなんだ

 


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