―体育祭当日 1-A控室―
「障子君、切島君!あれから特訓上手くいった?」
「おお!バッチリだ!本番で見せてやっから楽しみにしとけ!!」
切島君はうまくいったようでへへっと笑いながらサムズアップをしてくる
「俺もいい感じに仕上がった。そういう緑谷はどうなんだ?」
障子君も問題ない様で、逆に「お前はどうだ?」と聞き返してきた
「もちろん僕もバッチリ!かっこいい必殺技も完成したし優勝目指すよ!」
「おお!強力なライバルだ!」
「お互い頑張ろうね!」
「皆、準備は出来てるか!?もうじき入場だ!!」
「緑谷」
飯田君の呼びかけに気合を入れていると轟君が声をかけてきた
「轟君・・・何?」
「おまえオールマイトに目ぇかけられてるよな?別にそこ詮索するつもりはねぇが・・・お前は恐らくこのクラスで一番強いだろう・・・だからこそ、おまえには勝つぞ」
「急にケンカ腰でどうした!?直前にやめろって・・・」
轟君の突然の宣戦布告に切島君が仲裁に入る
「仲良しごっこじゃねえんだ、なんだって良いだろ」
「君が思ってるほど僕は強くないよ・・・」
「おい、緑谷も急にネガティブになるなって――」
「でも!皆本気でトップを狙っているんだ!僕だって負けられない理由があるんだ!」
絶望から救い出してくれた人の思い、最も憧れ今でも憧れている人の期待、僕が僕として立ち続けるための決意、etc・・・・・・挙げたらきりがないほど負けられない理由がある!
だからこそ
「僕も本気で獲りに行く!」
「・・・・・・おお」
『1年ステージ!生徒の入場だ!』
――『君が来た!』ってことを世に知らしめてほしい!!――
「了解オールマイト」
――――――
『雄英高校体育祭!!ヒーローの卵たちが我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル!!お前らの希望通り注目株をさっさと紹介・・・としたいところだが、それじゃあ詰まらんしエンターテインメントじゃない!だから今年は例年と違って逆に行くぜ!と言うわけでいってみよう!』
『どんな奴でもかっこよく!キッチリカッチリ宣伝だ!HIJ組経営科!!』
『困ったときのお助けアイテム、どんな道具も作って見せる。EFG組サポート科!』
『普通という割にゃあ粒揃い!伊達に雄英通ってない!CDE組普通科!』
『雄英高校メイン学科!倒して救って大活躍!未来の同胞ヒーロー科B組!』
『
「うわああ・・・人がすごい」
TV越しにしか見たことないから実感湧かなかったけど人、人、人、見渡す限り全部人、兎に角沢山居る
「大人数に見られる中で最大のパフォーマンスを発揮できるか・・・!これもまたヒーローとしての素養を身に着ける一環なんだな」
飯田君はこれもヒーローに必要なことだと意気込んでいる
「めっちゃ持ち上げられてんな・・・なんか緊張すんな!なぁ爆豪」
「しねえよ、ただただアガるわ」
切島君も僕と同じく緊張している様子だったが、相変わらず胆の据わったかっちゃんは全く動じた様子はなかった
「選手宣誓!!」
ピシャンと手に持った鞭を振るって声を張り上げたのは18禁ヒーローことミッドナイト
「18禁なのに高校にいてもいいものか」
「いい」
「静かにしなさい!!選手代表!!1-A緑谷出久!!」
常闇君のもっともな疑問に峰田君が鼻血でも吹き出すんじゃないかってくらい興奮気味にミッドナイトの存在を肯定した。
もちろん勝手にしゃべることをミッドナイトが許すわけもなく鞭をピシャリと振って黙らせ、僕の名前を呼ぶ
壇上まで上がり早鐘のようになる心臓を息を吐くことで落ち着かせ、宣言する
「ふう・・・・・・宣誓、僕は正々堂々戦うことをここに誓います。そして、ヒーロー科でもサポート科でも普通科でも、どこの誰が相手でも戦って勝ち抜いて表彰台で師匠達や今は亡き恩人に宣言します。僕を選んだことは間違いじゃなかったと。そのために僕はここで1位になる。1年代表緑谷出久」
「調子のんなよA組オラァ!」
「どんだけ自信過剰なんだよ!」
「ふざけんな!!」
1位宣言なんて言えば多方面からブーイングが来ることは分かってたけれど、それでも言わなければならなかった。
自分自身の逃げ道をなくすため、そして何より――
「さーてそれじゃあ早速第一種目行きましょう!いわゆる予選よ!毎年多くの者が
「障害物競走・・・」
「計11クラスでの総当たりレースよ!コースはこのスタジアムの外周約4km!我が校は自由が売り文句!うふふふ・・・コースさえ守れば何をしたって構わないわ!さあさあ位置につきまくりなさい・・・」
重たい音を立てながら開く門の前には今か今かとスタートの合図を待つ生徒がひしめいている
パッ パッ
一つ二つとランプが点灯する
――オールマイトと誓った『最強と平和の象徴の卵』として『僕が来た』って知らしめるために!!
「スタ―――――ト!!」
―― 轟 ――
合図と共にいち早く飛び出し先頭に躍り出た俺は【個性】によって地面を凍結させることで後続の妨害を図った
「ってぇー!!なんだ凍った!!動けん!!」
「んのヤロォォォ!!」
『さーて実況行くぜ解説 Are you ready!?ミイラマン!!』
『勝手に呼んだんだろが』
「甘いわ轟君!」
「そう上手くいかせねえよ半分野郎!!」
出口付近にいた生徒は足が
「クラス連中は当然として思ったより避けられたな・・・」
『さぁいきなり障害物だ!!まずは手始め・・・第一関門ロボ・インフェルノ!!』
「一般入試用の仮想
せっかくならもっとすげえの用意してもらいてえもんだな
「クソ親父が見てるんだから」
第一の障害で現れた大量の仮想
「あいつが止めたぞ!!あの間だ!通れる!」
「やめとけ、不安定な体勢ん時に凍らしたから――」
当然不安定な鉄の塊は前方に偏った重心に引かれるように倒れる
「――倒れるぞ」
後に続こうとする者は倒れてくる鉄塊に足を止める
『1-A轟!!攻略と妨害を一度に!!こいつぁシヴィー!!!すげえな!!一抜けだな、もうなんか・・・ズリィな』
A組を初めとする各人は仮想
『オイオイ第一関門チョロイってよ‼!んじゃ第二はどうさ!?落ちればアウト!!それが嫌なら這いずりな!!ザ・フォーール!!』
続く障害物は綱渡り
底が見えないほど深く、下から風が吹く渓谷に点々と存在する足場
そこに渡された綱は少しの風でも左右に揺れわたる者の心も揺り動かす
足がすくみ動けない者、何のこれしきと乗り越える者、そもそも障害と思わない者と大きく分かれた
俺は綱に氷を這わせることで風による揺れを防いだ。揺れさえしなければ細い一本道と同じである。走り抜けることは造作もない
『実に色々な方がチャンスを掴もうと励んでますねイレイザーヘッドさん』
『なに足止めてんだあのバカ共・・・』
『さあ先頭は難なくイチ抜けしてんぞ!!』
後続との差を広げながら次々と障害を乗り越え残すところはあと一つ
『先頭が一足抜けて下はダンゴ状態!上位何名が通過するかは公表してねえから安心せずに突き進め!!』
緑谷の姿が一向に見えない・・・奴ならば俺と並走していてもおかしくないはず・・・
『そして早くも最終関門!!かくしてその実態は・・・一面地雷原!!!怒りのアフガンだ!!地雷の位置はよく見りゃわかる仕様になってんぞ!!目と脚酷使しろ!!ちなみに地雷!威力は大したことねえが音と見た目は派手だから失禁必至だぜ!』
解説によると音と見た目は派手だが大した威力はないらしいが、結構な威力があることを地雷を踏みぬいた生徒が身をもって示している
なる程なこりゃ先頭ほど不利な障害だ
「エンターテインメントしやがる」
「はっはぁ俺は関係ねーーー!!」
地雷を踏みぬかないように走る俺の元へ【個性】の爆風によって宙に浮き、追い抜かんと並走する爆豪が現れた
「てめェ宣戦布告する相手を間違えてんじゃねえよ‼」
恐らく控室でのことを言っているのだと思うが、爆豪よりも緑谷の方が俺より強いと思ったまでだ
『ここで先頭がかわったー!!喜べマスメディア!!お前ら好みの展開だああ!!』
足元を気にして走っていたら抜かれてしまうと足元を凍らせ地雷を無効化して走る
抜いて抜かれてと首位争いを繰り広げる俺達が地雷原も残り半分を切ったところで突如目の前で地雷が爆発し、地響きと共に足元の地面が何かに引き寄せられる様に前方に集まっていく
地面が動くことで何人もの生徒が転倒するがどこも地雷が起動することはなかった
「ッ!!」
『後続もスパートかけてきた!!!だが引っ張り合いながらも先頭2人がリードかあ!!!?ってなんだあ!!??』
爆炎が晴れた時にはそしてほんの数秒で出来たとは思えないような高さ30mは下るまいというほどの巨大な土壁が現れ、この壁を作るのにどれだけの土を使ったのかを物語るように壁の根元は幅4mほどの底が見えない深い溝ができていた
『おおっと!!いつの間にか第四関門出来ちゃってるぜ!?』
爆豪は爆風で、俺は氷の壁を作って減速することにより溝に落下することを防いだが、隙ありとばかりに俺達の間を追い抜いた生徒が溝を超え、壁に触れたところで派手な爆発と共に追い抜いた時以上の速度で俺達の間を戻っていく
爆豪も即座に壁に地雷が埋め込まれていることを察知した
爆豪は仮想
しかし、持ち前の運動神経で持ち直し、【個性】による爆風でそのままゴールまで滑空する
俺は氷でスロープ状の道を作り壁を上り、頂上からゴールまでに滑り台のような滑走路を造ることで速度を稼ぎ爆豪を追うが、爆豪と自分の間には追い抜くどころか追い付くことすらできない距離が開いていた
『突如現れた第四関門も1-A爆豪、難なくクリア!轟はちっと梃子摺ってる感じかああ!!??』
それでも必死に追いかけるも結果は――3位
『さァ今一番にスタジアムに還っとぅえあ!!??おま!緑谷!!いつの間にゴールしてんだよ‼』
爆豪以外に抜かれていないはずだし、それまでトップだったのに3位
他に誰がと周囲を見ればプレゼントマイクの驚く声と共に歯を食い縛った爆豪に睨みつけられる緑谷の姿を見つけた
いつの間に緑谷は1位通過していたのか
息一つ乱さず立つその姿は自分が必死に走破したコースは奴にとって障害ですらなかったということを見せ付けてくる
恐らく目の前で爆発が起きた時に抜かれたのだろう
あの壁は偶然というにはタイミングが良すぎるほどに俺と爆豪の前に現れた
緑谷が妨害したと考えた方が自然だ
やはり一筋縄ではいかないようだ
―― 緑谷 ――
かっちゃん、轟君と続いて次々とゴールしていく
『さあ続々とゴールインだ!順位等は後でまとめるからとりあえずお疲れ!!揃うまで時間掛かりそうだし、いつ緑谷がゴールインしたかカメラを見てみよう!メッチャ気になるぜ!!』
プレゼントマイクの言葉と共にモニターに僕が映された
『んんん??第二関門クリアまで言っちゃあ何だけど地味だし遅くね?』
ロボは特に撃破などすることなく隙間を縫うようにしてすり抜けたし、綱渡りはジャンプで飛び越えようと思ったけど、下手して落ちたくないから考え直して普通に這って渡った
それに順位だって正直後ろから数えた方が早いくらい後ろだったし【個性】も使ってなかったから地味だ
モニターは切り替わり第三関門で地面に手を付け何かをした後に立ち上がり、一瞬で姿が消えた僕が映し出されていた
『おお!?ビデオストップ!スーパースロー再生でもう一度!!』
まるで止まった世界を僕だけが動いているように錯覚しそうな不思議な映像がモニターに映された
やったことは、先頭2人の前の地雷を[操土]で起爆させ、表面に地雷を設置した土壁を作り進路妨害、後は[複製腕]に眼を複製して[
目をつぶってるのに[複製腕]を通してものが見えるって不思議な感じだけど、加減した[
それ以上の速度は二重複製の上で眼を複製しないと無理だろうし、被膜が風を受けて思ったより加速しない
『やべえーー!!!スーパースローでも通常再生並みの速さで動くとかやべえー!!てか腕生えてるし!!え、じゃあなにか?俺らが壁に驚いてる間にゴールしてたっての?やべえー!!』
全員が揃うまでプレゼントマイクは壊れたラジオの様に「やべえー」と繰り返して相澤先生に強制的に黙らされていた
「ようやく終了ね、それじゃあ結果をご覧なさい!」
1位が僕、2位がかっちゃん、3位轟君と続き最後は42位青山君までの計42名
「予選通過は上位42名!!!残念ながら落ちちゃった人も安心しなさい!まだ見せ場は用意されてるわ!!」
「そして次からいよいよ本選よ!!ここから取材陣も白熱してくるよ!気張りなさい!!さーて第二種目よ!!気になる種目はーーーーコレよ!!!」
ドラムを叩く様な音と共にモニターに映し出されたのは【騎馬戦】の文字
続くルール説明は基本は変わらないが『各人に振り分けられたポイントの奪い合いがあること』があり、そのポイントの振り分けがおかしかった
「1位に与えられるのは1000万!!!」
「1000万?」
「上位の奴ほど狙われちゃう下剋上サバイバルよ!!!」
周囲の殆どは一斉に僕を見た
冗談でしょ?これからチーム戦になるのに一番標的になりやすい状態じゃ組もうとする人いないんじゃ・・・さっきまでの障害物競争よりハードな障害物なんですが・・・