原作ではたった一コマで終わっていた臨時休校の一日が普段の倍の9000字台にまで膨れ上がりました
オリジナル展開も加えてオリジナルの登場人物も5人ほど(4人は名前と説明だけ)出してとまあ詰め込みましたよ
修正を重ねるごとに文字数が増える増える
初めは9700文字位だったんですけどね?
9が四つ揃っちゃいました(笑)
広く見晴らしのいい何処かの広場
見覚えのあるような場所
そこで僕は全身が黒い
眼も鼻も口さえない
気付けば
迫りくる拳
それ首を傾け避けると左頬を掠るように通り過ぎていく
カウンターで
咄嗟に【個性】を多重発動させようとするも発動しない
なんで!?
振りほどこうと腕に力を籠めるが、それよりも速く
不味い!
必死に【個性】を発動させるも一向に変化は訪れない
そして
――――――――――
一転してどこかの商店街に景色が変わった
目の前には俯いたままトボトボと歩く少年の後ろ姿があった
その姿は何かに絶望したかの様に足取りは重く、吹けば消し飛ぶような希薄な存在だった
そして少年が歩く先には赤いスーツを着た白髪の偉丈夫の姿
この場所は・・・
見覚えがあるなんてもんじゃない。あの日のあの人に出会った場面そのものだった
このあとに「少年、力が、【個性】が欲しくはないかね?」と声を掛けられ、この言葉によって僕は救われた
少年は赤いスーツの男性に気付き顔を上げる
そして男性――アダムさん――が発した言葉は――
「あの程度の
――記憶と違う落胆の言葉だった
気付けば幼少期の僕はいなくなり、目の前にアダムさんがいた
「え?」
「君ならばと託したというのに・・・」
「何を言って・・・」
「使えないのなら返してもらおう」
そう言ってアダムさんは僕の頭に手を乗せた
途端に体から何かが抜けていく
「アダ――」
―― 何故、我らを使わない ――
「え?」
―― 何故、我らの力を使わない ――
「だ、誰ですか!?」
辺りを見渡すも誰もいない真っ暗な空間
気付けば先ほどまで僕の頭に手を載せていたアダムさんもいない
しかしどこからか声が聞こえる
―― 汝は我らの無念を晴らす気がないのか ――
「さっきから何を言ってるんですか!?力って何なんですか!?せめて姿を見せてください!!」
―― 我らの力、受け継がれし力、彼の者を打ち倒すため代々託された力 ――
「それって[
その言葉に反応したのか真っ黒な空間に2対16の目が浮き出るようにして現れた
―― 9代目はこの力を使うことを躊躇っている ――
―― 我らの無念を無きものとするつもりか ――
―― 9代目には混じり物がある ――
―― 他者の力を己が物にする忌むべき【個性】 ――
―― この力は相応しくない ――
―― 剥奪すべき ――
恐らく[
そして9代目とは僕のこと、混ざりものとは[
「・・・・・・」
否定したい「そんなことない」と
しかし、声が出ない
本当に僕に[
オールマイトから託されていながら使ったのは
しかも二度目は意識がハッキリしていない時で実質意識して使ったのは一度だけ
制御できないからと言い訳して覚えた【個性】ばかり使っていた
――――――ク
本当に制御できないのだろうか、制御する気がないからではないか
そんなので本当に僕が相応しいと言えるのだろうか
考えその物に重さがあるかの如く次々と出てくる不安が体に圧し掛かり潰れそうだった
―― 否、奴の力と似て非なる物 ――
―― 結論を出すには時期尚早 ――
「え?」
そんな考え諸共、否定的な意見を一蹴したのは2つの声
一つは女性特有の少しキーの高い優しい声、もう一つは何処か儚げでありながらも力強い男性の声
―― この者、まだ未熟者なり ――
―― 今は見守るのも我らの務め ――
この声は――
「少年」
「オールマイト!?」
振り向くとそこにはオールマイトの姿があった
―――――ズク
「君なら大丈夫だ、心配しなくていい」
「笑え」
「え?誰?」
気付けばオールマイトの隣に黒髪を後ろで結わえた女性がいた
「笑ってるやつが一番強い!」
女性はニイと人差し指で頬を持ちあげ笑って見せた
――――イズク!
――
―――――
――――――――
―――――――――――
「出久!!!」
「・・・・・・え?」
先ほどまでの真っ暗な空間が見覚えのある部屋に変わった
棚にはヒーローのフィギュアや資料本が所狭しと並び壁にはポスターが張られている
そして僕はベッドにいてお母さんは心配そうに僕を見下ろしている
「・・・・・・夢?」
「出久!?大丈夫!?すごいうなされてたわよ?」
「い、いやなんでもないよ!大丈夫!」
そうか、夢か・・・夢か・・・・・・あの人は誰だったんだろう・・・
思い出されるのは最後に笑っていた女性、
オールマイトなら知ってるだろうか?
ただの夢にしては鮮明で何の根拠もないのにオールマイトなら知っている気がした
「そう?あ、これ朝ご飯、食べられる?疲れてそうだから胃に優しいお粥にしたわよ?」
お母さんは手に持ったお盆を差し出してきた。お盆の上には出来立ての卵粥が載せてあった
ギュルギュルギュル
それを見た途端にお腹が盛大に鳴った
「ふふふ、それだけお腹が鳴ってれば食べられるわね!はい、熱いから気を付けるのよ?」
うぅ恥ずかしい・・・
「ありがとう」
「もう!
「いや、その、あー・・・うん、ごめん」
その、実は[
「で、もう起きて大丈夫なの?昨日は帰ってくるなり寝ちゃってたけど?今日一日位寝てても罰は当たらないわよ?」
そっか今日は臨時休校なんだっけか
「うん、もう大丈夫だよ」
「なら良かったわ」
その後お粥を食べきった僕はお母さんにお礼を言って家を出た
向かう先はお爺ちゃん達のいる鬼哭道場
僕は弱い
昨日の
でもそれは相性だとか経験の差だとかそんなものだと思ってた
今回の
普段から戦いなれている近距離での肉弾戦に加え、【個性】の重ね掛けで最大限強化して挑んだ
ところが蓋を開けてみれば惨敗
意識がハッキリしてないときにすごく活躍したらしいけど、僕の認識としては速さでも堅さでも力でも負けた。試合に勝って勝負で負けたって感じだ
だから僕よりも僕の癖や戦い方に詳しいお爺ちゃん達に現状報告を兼て相談し、可能ならもう一度稽古を付けてもらおうと思った
―― 鬼哭道場 ――
「最近の若造はなっておらん!俺こそがと言う気概がない!」
「全部貴方達のせいだろ!?」
道場に行くと外にまで声が聞こえるほど大きな声での言い争いが聞こえた
「なんじゃ、先生の跡を継ぐ奴らをちょいと揉んでやっただけではないか。分家とはいえ先生と同じ[鬼]の【個性】持ちの癖して武術のぶの字もできておらんかった上に根性までひん曲がっておった!何が『俺こそ最も強い鬼だ!だから老兵はさっさと引退して道場を明け渡せ』じゃ!ふざけおってからに!だから身の程を知らしめるために徹底的に叩き潰してその根性を叩きなおしてやっただけだ!それに奴らは!!・・・・小童共が!!」
「おはようございまーす、ごめんくださーい・・・・・・おじゃましまーす」
返事がないので上がらせてもらうべく、ゆっくり引き戸を開けて気付かれないように道場に入るとお爺ちゃん達と若い男性が言い争っていた
「あ、克兄だ」
僕の兄弟子であり道場の――本人は嫌がっているけど――正統後継者
180cmを超える長身と鍛えられた体、女性なら一度は振り向くような整った顔
優しく理解力が高いこともあってモテる。すごくモテる。そして苦労人
言い争いの中に飛び込む勇気がなかったので「克兄が声を荒らげるなんて珍しいこともあるもんだ」と柱の陰に隠れるようにして覗き見していた
「降参してるのに追撃して全治1カ月の大怪我を負わせて何が叩きなおしてやっただよ!そのせいで他の親戚の連中は全員『鬼哭道場は継がない!継ぐくらいなら武術をやめる』って言っちゃってんだよ!?ここがご近所さんになんて言われてるか知ってる!?悪餓鬼
それ、聞いたことある。ナマハゲ的な感じの脅し文句で近所の子が言われてるの見たことがある
僕?言われるような事はしてなかったし、言われる前に本拠地に特攻かましてたよ?
特攻かましたら親に言えないような無茶させられるようになったけど・・・
「ふんっ!喧しいのう、別にご近所さんに何と言われようと構わんじゃろ?ちゃんとご近所付き合いもしとるし」
克兄の言葉に「知ったことか」と経爺は返すが納得いかない克兄が噛み付いた
「構うよ!!俺をこの道場の後継者に仕立て上げようとしてるのは知ってんだからね!?京香達に無理やり色仕掛けなんてさせて!!」
あーたぶんソレは無理やりじゃないと・・・
「無理やりなんかじゃないぞ?」
やっぱり
「じゃあ何なんだよ!!公衆の面前で抱きついてきたり頬にキスしてきたり!」
「ワシらの可愛い孫娘達がお前に惚れておって、お前とくっ付けなかったらじいじ嫌いになると言われたから仕方なくじゃ」
京香姉達押せ押せだからなぁ
話に出てくる京香とは経爺の孫娘で腰まである
厳つい男性陣に似なくて本当に良かったと心の底から思えるくらい美人、そして3人とも八頭身な上ボンッキュッボンである
そのおかげでいろんな男性から目の敵にされている克兄にはご愁傷さまとしか言えない
「尚のこと道場関係ないじゃん!!」
「何を言っとる!先生の直系の孫であり可愛い孫娘の将来の夫が先生の後も継がんなどワシらが我慢ならん!孫が欲しくば道場主位なって見せろ!」
「何で親父じゃなくて俺なんだよ!!」
「決まっておろう!」
「何が!?」
「嬢ちゃんは嫌がるし、入り婿のモヤシなんぞ気に食わん!それにお前さんは[鬼]の【個性】も持ってるし、チミッコの時から道場に顔を出しとったから可愛がっておったじゃろうて」
「あれは!」
雲行きが怪しくなってきたな
「飴ちゃん美味かったろ?誕生日だって祝ってやったのにこの仕打ち・・・」
「その飴ちゃんの後は大概が稽古だったじゃないか!!」
「お前も楽しがっておったではないか!それに知らんとは言わせんぞ!
経爺がすっごいにやにやしながらお爺ちゃんズ必殺「お前の小さい頃は」と「思春期のお前の行動」を発動、克兄に大ダメージ
「それは、その、あーもう!兎に角!!平和に暮らしたいんだよ!」
克兄は言い淀むも咄嗟に話をそらして追撃を回避
「平和じゃないか。死ぬ心配もなく強くなれる。そこいらの
僕の時も言われたなそのセリフ
「ぶん殴る時点でアウト!!」
「別に強制はしておらんだろ?ただ孫と結婚するなら道場主になれといってるだけだ」
硬爺も参戦、2対1とか絶望的だな
「親戚やご近所さんまで巻き込んで何が『強制はしてない キリッ』だよ!!出歩くだけで『あんな可愛い嫁さん3人も娶れるなんて羨ましいね未来の道場主!』とか『可愛いお嫁さん貰えて幸せ者ね、道場主さん?』とか言われたんだぞ!!挙句に果てに『婚約指輪位あげなさい!道場の経営は一人じゃ大変らしいから逃げられないようにしなきゃ』とか母さんに叱られたんだぞ!意味わかんねーよ!!!」
「それは妻達の入れ知恵だな、特に岩哲んところはそういうのが上手いからな」
「アイツは押しが強いかんな~『押してダメなら押しまくれ!その間に外堀埋めれば逃げられない』だかんな、ワシもやられたわ!わははははは!!」
おっと岩爺も参戦?
「笑い事じゃないよ!!」
「なんじゃ?よもや可愛い孫娘が気に入らんと言う気か?殺すぞ?」
ヒーロー志望としては良くないが、自分に被害が及ばないところで眺めてるのすっごい楽しい
特に克兄がお姉さん達とくっ付くなら尚のこと楽しい
全員のこと好きな筈なのにそういうことにならないのが不思議なんだよな
「嫌いじゃないよ!嫌いなわけないだろ!でも一辺に相手になんてできるか!」
「もう手を出しよったか!」
「出してねえよ!!!」
「じゃあ何が気に食わんのだ」
「結婚は1人としかできないんだよ!」
ああ、常識人だったのか・・・お爺ちゃん達に小さい頃から毒されてるなら非常識人だと思ってたのに・・・
これはお婆ちゃん達の教育の賜物かな?
「内縁の妻にでもすればいいだろう?」
「な、内縁!?」
「そうじゃ、結婚は出来なくても添い遂げることは出来よう。それに関しては京香達も妻達も納得してる。第一婦人は誰にするかはお主が決めることだからワシは知らんがな?後はお前が覚悟を決めれば万事丸く収まる。男なら全部まとめて面倒見るくらいの甲斐性見せたらどうだ!」
四面楚歌・・・そして第一婦人を決めるって血を見るんじゃないだろうか・・・・
「な!・・・う・・・あ・・・・・・・はぁ」
克兄は魚のように口をパクパクさせながら驚き、最後には諦めたようにため息を吐いた
これが囲い込み――いや、囲い込まれ婚ってやつか・・・せめてもの救いはお嫁さんになる3人のことは好きだってことかな・・・恐ろしい
「美女3人も!?妬ましい!!」ってのが普通なんだろうけど、「同じことになりたいか?」って聞かれたら全力でNO!!だね
「ん?何じゃミド坊じゃないか!久しぶりじゃのう!5か月・・・いや、6カ月ぶりか!なんか用でもあるのか?」
げっ!気付かれた!
こっそり覗いていたら岩爺に気付かれ、連鎖的に全員にばれた
「いや、えっと、お取込み中みたいだし出直そうかなぁと・・・」
「なに、もう話はついた」
ちらりと克兄を見ると全てを諦めたような何とも言い難い表情で何もない場所を見つめている
あれは話が付いた後って感じじゃないけど・・・
「どうした?」
「い、いえ!」
「で、何か用があったんじゃろ?」
「その、もう一度稽古を付けてもらいたくて」
「なに?もう十分戦えるようにしただろ?」
「昨日、
「いつものことだな、散々実践稽古で伸してきたじゃないか」
「そこいらの
頭を下げてお願いすると岩爺から返答があった
「・・・・・・のう、ミド坊?いつまで自分に枷をはめてるつもりだ?」
「枷?」
少しの沈黙の後、岩爺が「いつまで枷をはめている?」と質問してきた
「鬼の道楽などと呼ばれ、まともに門戸を叩く者は数少ない。いても大概は分派の生ぬるい方を選ぶ、「ここは僕には向いてない」とか抜かしてな?そんな中でミド坊はワシらを訪ねて門戸を叩き、全力でワシらについて来ようと必死じゃった。だからワシらも全力で叩き込んだ。しかし、対人戦で全力だったためしがない」
「え?」
「ミド坊はワシら全員の【個性】が使える、しかも強化されてじゃ。なのに全戦全敗。ワシらに負けるのは当たり前じゃ、お前に勝たせてやれるほど弱くない。しかし同じ【個性】同士で何故負ける?経蔵のように元々の肉体の影響を受ける【個性】ならまだしも、ワシや硬之丞の【個性】で負けるのはおかしい。相手より硬いのならダメージなんぞ受けんし、逆に相手がダメージを負う。いくつかの【個性】を合わせて互角なんぞあり得んことだ。よくよく観察してみればお前さんは怖がっておる」
「怖がる?」
「そうじゃ、恐らく相手を傷つけることを恐れておるんじゃ」
「そんなこと――」
「ないと言い切れるか?一撃で岩を砕く拳を人に放って大丈夫か、あまり硬くなると相手が怪我をするのではと無意識に考えておるのだろう?それは傲りだ。意識しての手加減ならいい、手加減して倒せないなら制限を外していって戦えばいいだけだからだ。しかし、今のミド坊のように無意識に手加減している者は違う。全力を出していると認識していながらその実6・7割の力しか出しておらん。そんなんで勝てるのはそこらのチンピラだけだ。ヒーローとして
「・・・・・・」
心当たりがあった
昨日も意識がハッキリしてるときは遣られっ放しだった。なのに意識が朦朧としててお爺ちゃん達の幻覚を見てた時はオールマイト曰く、全く逆の展開で常に僕が優位に立ってたという。それは
「お前は気付いておらんだろうが、前に
発目
お爺ちゃん達の協力者で、材料費と実際の稼働データを取る条件で何台もの練習台○号を提供してくれる発明家のお爺さん
彼も僕とお爺ちゃん達の稽古を見てよく首をひねっていた
その時は機械が思うように動かなかったことだと気にしなかったけど、今思えばたぶん僕の無意識の手加減によってお爺ちゃん達との対人戦のデータと練習台を相手の戦闘データの齟齬が大きすぎたからおかしいと感じていたんだと思う
「鬼神殺しは意図的に体の
鬼殺し、この技は他の奥義を使うための登竜門、前提条件であって本当の意味で奥義じゃない、それを【個性】の多重発動という裏技でそれらしく見せているだけ
なんで他の奥義を教えてくれないのか聞いても「未熟者にはまだ早い」と言って教えてくれなかった
確かに未熟も未熟、無意識に手加減してるようじゃその先なんて教えられるわけがない
「そうだ!いい機会じゃし分家の連中んとこの道場片っ端から道場破りして来い!仮にも先生の血を引く奴らだ、ちょっとやそっとで死にはせん!ただし、ワシら3人以外の【個性】の使用を禁じる!今回は全力を意識してだせるようにする実践稽古だ!
「あと
「なんでだよ!俺関係ないじゃん!」
唐突な強制参加に息を吹き返したように噛み付く克兄
「たわけ!ミド坊一人じゃどこに道場があるか分からんではないか!それにワシらの孫娘の婿になるんなら10や20のバカ共捻り潰して来い!」
「嫌ならいいんじゃよ?まあ、京香と石乃と固之恵が悲しむだろうがな?」
「なんであいつらが悲しむんだよ!」
「そりゃあ、自分達を賭けた勝負で惚れた男に逃げられたら泣くだろ?」
「はあ!?なんで!!俺賭けなんてしてねえぞ!」
「ん?そんなもん京香達が『克鬼より強ければ結婚してもいいわ』とあのバカ共を全員振ったからに決まっておろう?」
「な!?」
克兄は「ありえない!」と声を荒らげるが、その答えは予想を反してお爺ちゃん達が原因ではなく、お姉さん達であることに口を開けたまま唖然とした
「悲しむだろうなー。はあ、京香の悲しむ顔は見たくないんじゃがなー」
「石乃に止められんかったら迷わず血祭に挙げるくらい石乃達の胸や尻を邪な目で見るような気に入らん連中なんだがな~」
「仕方ないか、どうしても克鬼が嫌だと言うんだから仕方ない・・・・・ヤるか」
硬爺!最後の方ぼそっとやばいセリフ言わなかった!?その顔とセットだと冗談に聞こえないんですけど!?
ワザとらしく「悲しいなー、辛いなー」と言いながらチラチラを目を向けるお爺ちゃん達に克兄は俯いたままプルプルと振るえブツブツと何かを呟いている
克兄?
「胸や尻を見てた?結婚する?は?ふざけんなよ?そんな屑共に京香と石乃と固之恵を渡す?は?ふざけんなし!許さねぇ!」
大丈夫だろうかと近づくと克兄は完全にブチギレていて、がばっと顔を上げた時には額からは大きく長い角が2本でていた
「上手くいったわ、ひゃひゃひゃひゃ!」
「あとは嫁さん達と石乃達に連絡すれば皆幸せになれるのう!連中にも後継者がそっちに顔を出すとか言っとけば克鬼も逃げられまい!」
「克鬼も重婚できないって点がなければ満更でもなさそうだしな」
「克鬼なら孫をやっても許せるが奴らはいかん、潰さねば」
お爺ちゃん達は「作戦大成功!」と僕や克兄を余所に喜んでいた
「おう、ミド坊!そういうわけだから克鬼と一緒に道場潰しに行ってこい」
「ど、道場破り!破りだよね?潰しじゃないよね!?」
「んな細かいことはいいわい!奴らが潰れるなら道場破りでも潰しでも構わん!むしろ潰せ!2度と石乃を穢せないように目も潰せ!」
「え、ええ・・・」
細かくないよ!破りと潰しじゃ規模が違うよ!!
「あと、ヤバくなったらお前さんが克鬼を止めろよ?ありゃ理性が消し飛ぶ一歩手前じゃ。小童共前にしたら完全に暴走するだろうよ」
硬爺からの言葉に僕は笑えなかった
その後一ヵ所一時間のハイペースで訪ねて回り、5つの道場に対し道場破りを行った
道場側から差し出された
さすがは[鬼]だと思うくらい頑丈で怪力で強かった
意識して全力を出す練習は門下生を相手に行う予定であったが、
暴走状態の克兄が正気を取り戻すまでの5時間、ずっと相手をしていたが1時間は遣られっ放しだった。その間ずっと「もっといける、もっと力を出せるはず」と自分に言い聞かせて戦った結果、ある程度は意識して全力を出せるようになった。
ちなみにその場にいた道場の師範から『鬼子』『鬼哭の秘蔵っ子』などいらない二つ名を貰った
そして克兄は『
僕と戦った道場は壁や床がボロボロだもんな
その件は爺ちゃん達に連絡を入れて僕らの責任者――爺ちゃん達――が修理費を払うことで話は付いた
爺ちゃん達、あんな
そうして休みなのにかえってクタクタになるなんて可笑しな事になりながらも、その日はいい修業になったと満足した僕は家に帰って熟睡した