託された力   作:lulufen

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第20話 勝ち抜いた正義

「緑谷ぁ!!大丈夫か!?」

 

「切島君!・・・はっ!まって止まって!大丈夫だから!!ストップ!!!ストーーップ!!!!」

 

 やばいよ!オールマイトの変身が解けちゃうよ!!まって来ないで切島君!!!!

 

 必死に切島君を止めようと叫ぶが彼に聞こえていないのか駆け足で接近してくる

 

「待っ――」

 

 ズズズズッ!!

 

 もうおしまいかと思った時、切島君とオールマイトを隔てるように壁がせり上がってきた

 

「うおっ!」

 

「生徒の安否を確認したいからゲート前に集まってくれ、怪我人の方はこちらで対処するよ」

 

「そりゃそうだ!ラジャっす!!」

 

 急に出現した壁に驚く切島君に壁を作ったヒーローのセメントスが「生徒はゲート前に集合、怪我人はこちらで対処する」と言って切島君をゲートに向かわせた

 

 助かった・・・

 

「ありがとう、助かったよセメントス」

 

「俺もあなたのファンなので・・・このまま姿を隠しつつ保健室へ向かいましょう。しかしまぁ、毎度無茶しますね」

 

「無茶をしなければやられてた。それ程に強敵だった。でも彼のお蔭でまだマシな方さ」

 

 そう言ってオールマイトは僕に笑って見せた

 

 ――――――――――

 

 ―― どこかのバー ―――

 

 ズズズズズ・・・

 

「ってえ・・・両手両足撃たれたし火傷も負った・・・完敗だ」

 

 両手足からドクドクと血を流し、特に両手は酷い火傷が目立つ男がワープゲートから這い出てきた

 

「脳無もやられた。手下共は瞬殺だ・・・子供も強かった・・・平和の象徴は健在だった・・・!!話が違うぞ先生・・・」

 

『違わないよ、ただ見通しが甘かったね』

 

『うむ・・・なめすぎたな、(ヴィラン)連合なんちうチープな団体名で良かったわい、ところでワシと先生の共作、脳無は?回収していないのかい?』

 

 床に倒れたままで文句を言う男に机の上に設置されたPCから2つの返答と1つの質問があった

 

「吹き飛ばされました。正確な位置座標を把握出来なければいくらワープとはいえ探せないのです。そのような時間は取れなかった」

 

 質問に対し返答したのは床に伏した男とは別の頭や手が黒い霧状になっている男でその答えは「否」だった

 

『せっかくオールマイト並みのパワーにしたのに・・・』

 

『まァ仕方ないか・・・残念』

 

「パワー・・・そうだ・・・一人、オールマイト並みの速さと強さを持つ子供が居たな・・・脳無も奴にぶっ飛ばされた・・・ちっ!」

 

 質問の返答が『共作の未回収』であることを知り、2人の声の主は「残念だ」と零した

 そして声の主の「オールマイト並みのパワー」の一言に男は一人のある生徒を脳裏に浮かべ、その生徒にやられた怪人と両腕の火傷のジクジクとした痛みに顔をしかめた

 

『・・・・・・』

 

『へえ』

 

「しかも先生みたいにいろんな力を使ってた、バリヤ、火、電気、硬化、増強系・・・あいつさえ、あのオールマイトもどきさえ居なければオールマイトを殺せたかもしれない」

 

『僕みたい、ねえ?・・・その子の特徴は?』

 

 男から多数の【個性】持ちの可能性のある子供が居ることを聞き声の主はとても興味深そうにつぶやき次いで質問をした

 

「特徴?緑のボサボサ髪の冴えない顔、殴り主体の戦闘スタイル。あぁ、あと額に青い石のようなものがついてた・・・・・・奴さえ・・・奴さえ居なければ!!」

 

『額に青い石・・・ということは彼の後継者の可能性が・・・・クククク」

 

 声の主にとって「額に青い石」とは重要なことの様で隠しきれない歓喜の笑いを上げた

 

『まあ悔やんでも仕方ない!今回だって決して無駄ではなかったハズだ』

 

『精鋭を集めよう!じっくり時間をかけて!』

 

『我々は自由に動けない!』

 

『だから君のような”シンボル”が必要なんだ死柄木弔!!次こそ君という恐怖を世に知らしめろ』

 

「奴さえ居なければ」と苛立ちを募らせる男に画面の向こう側の声の主達は「次こそは」と「君が必要だ」と口々に言い、その様子を男は床に伏したまま黙って聞いていた

 

 ――――――――――

 

 ―― 保健室 ――

 

 僕は保健室のベッドの上に寝かされていた

 隣にはトゥルーフォーム姿のオールマイトも寝ている

 

 あの後、[自己治癒(セルフヒール)]で粗方治したとはいえ、やっと重傷の域を出た状態だったためセメントスにオールマイトと共に保健室へ担ぎ込まれ、ベッドに寝かされた

 

「今回は事情が事情だなだけに小言も言えない・・・としたいが1つだけ、緑谷の坊や!アンタ!自分の【個性】でも治しきれないなんてどんな無茶すればそうなるのかね?アンタの治癒の【個性】はあたしの【個性】の自己版だろ?しかも性能がもっと良いそうじゃないか!なのに治しきれないなんて、そんなんじゃ何時か死んじまうよ!」

 

「ははは・・・」

 

「笑い事じゃない!」

 

「はい、すみません!」

 

「全く!近頃の若いもんは――」

 

 意識が朦朧としててはっきり覚えていないとはいえ、一度の[自己治癒(セルフヒール)]で治しきれないほどの怪我――殆ど技や【個性】の反動――を負ってしまいリカバリーガールから厳重注意を受けた

 

 ガラ・・・

 

「失礼します」

 

 僕がリカバリーガールから注意を受けているとトレンチコートを着た男性が入ってきた

 

「オールマイト久しぶり!」

 

「塚内君!!君もこっちに来てたのか!!」

 

「え?ちょ!オールマイト!姿!姿が!!」

 

 バレちゃいけないのに!!

 

 慌てる僕を余所にオールマイトは「問題ない」と笑い、男性の紹介を始めた

 

「ああ!大丈夫さ!何故かって!?彼は最も仲良しの警察、塚内直正君だからさ!」

 

「ハハッ何だその紹介」

 

 ほっ、知り合いだったか

 

「早速で悪いがオールマイト、(ヴィラン)について詳しく――」

 

「待った、待ってくれ、それより生徒は皆無事か!?相澤――イレイザーヘッドと13号は!!」

 

 僕も気になってた。僕が見た時には相澤先生は両手足が砕かれて他の場所もボロボロになってたし、13号先生もすでに倒された後だったらしいから

 

「ふぅ・・・生徒はそこにいる彼以外は軽傷数名、教師2人はとりあえず命に別状なしだ・・・3人のヒーローが身を挺していなければ生徒らも無事じゃいられなかったろうな」

 

 急かすオールマイトに男性――塚内さんはため息を一つ吐き現状報告をした

 

「そうか・・・しかし、一つ違うぜ塚内君、生徒らもまた戦い身を挺した。特に彼なんて私も梃子摺る相手をぶっ飛ばした、お蔭で私も大した無理をしないで済んだしね?」

 

「オールマイト・・・」

 

 僕も役に立てたんだ・・・

 

「それに、こんなにも早く実践を経験し生き残り、大人の世界を、恐怖を知った一年生など今まであっただろうか!?(ヴィラン)も馬鹿なことをした!!1-A(このクラス)は強いヒーローになるぞ!!私はそう確信しているよ」

 

 オールマイトはサムズアップしながらそう締めくくり笑って見せた




次回からは「こうだったら」と最も妄想した体育祭だ!!
でも辻褄合わせの都合でやっぱり亀更新・・・・

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