託された力   作:lulufen

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第17話 立ちはだかる悪意

 侵入者騒ぎから二日後の午後、二回目のヒーロー基礎学

 

「今日のヒーロー基礎学だが、俺とオールマイトそしてもう一人の3人体制で見ることになった」

 

 なった?

 

 まるで今回は特別だと言うような口ぶりだった

 

「ハーイ!なにするんですか!?」

 

「災害水難なんでもござれ人命救助(レスキュー)訓練だ!!」

 

 瀬呂君からの質問に相澤先生は前回のオールマイトのようにカードを掲げて人命救助(レスキュー)訓練と言った

 

 自己判断で戦闘服(コスチューム)は着用せずともいいとはいえ、全員が全員とも戦闘服(コスチューム)を着用してロータリーに集合した

 そしてロータリーには一台のバスが止まっていて、乗車時に混乱しないようにとさっそく飯田君が張り切って誘導を行っていたが、自由席が多いタイプだったため意味をなさず空回りだった

 

「こういうタイプだった、くそう!!」

 

 就任初めての委員長としての仕事に張り切っていただけに落ち込みようもすごかった

 

「ねえ、緑谷ちゃん」

 

「え!?ハイ!?蛙吹さん!!」

 

 飯田君を見ているとまったく意識していなかった隣に座る蛙吹さんに声を掛けられた

 

「梅雨ちゃんと呼んで」

 

 行き成り名前呼びですか・・・

 

「あなたの戦い方ってどこかオールマイトみたい」

 

「え!?そ、そうかな?」

 

「うん、昨日の戦闘訓練でほぼ近距離肉弾戦だったよ?」

 

「確かに最後もオールマイトみたいに男らしく拳でケリ付けてんもんな!」

 

 蛙吹さんの言葉に戸惑っていると切島君が同意してきた

 

 なんか自然と肉弾戦に落ち着くんだよな・・・オールマイトに憧れた影響かな?いや、お爺ちゃん達か・・・

 道具を使う間もなく撃沈、よしんば道具を使えても拳で叩き砕いて道具を失って隙だらけの僕を続く二撃目で撃沈、結局【個性】で体を強化して殴る蹴るの方がマシという状態で稽古着けてもらってたからなぁ

 

「しかし増強系のシンプルな【個性】はいいな!派手で出来ることが多い!俺の[硬化]は対人じゃ強えけどいかんせん地味なんだよなー」

 

 左腕を硬化させながら「自分の【個性】が地味だ」と切島君は語るが[金剛石]などの硬化の(たぐい)の【個性】を多用する僕としてはまるで「[硬化]より増強系の【個性】が良かった」と言われてるようで思わず言い返してしまった

 

「一見地味かもしれないけど硬くなれば受けるダメージを減らせるし、逆に与えるダメージは上がるじゃないか!増強系は力が上がっても皮膚や骨が丈夫になった訳じゃないから硬い物を殴ったり、鋭い物に触れれば怪我をしちゃうから[硬化]みたいに肉体を保護できる【個性】は格闘とかの近距離肉弾戦では最も有効な【個性】だよ‼」

 

 じゃなきゃ今頃僕の入院未遂記録が3桁突破してるところだよ、[自己治癒(セルフヒール)]がなかったらもう一桁増えてるだろうな・・・加減を間違えたって言ってるけどあの笑顔は絶対ワザとだ

 

「お、おう、随分喰いついてくるな緑谷は」

 

「う、ごめん」

 

「はは、謝ることねえって!そういえば緑谷も黒光りして硬くなるタイプの【個性】使ってたもんな!」

 

 黒光りって[炭素硬化(ハードクロム)]のことだよね?その言い方だとまるでゴ――いや考えるのは良そう

 

「そういやよ?緑谷の【個性】って何なんだ?硬くなったってことは硬化系だろうけど、【個性】把握テストんときすげえ速く走ったり跳んだりしてたじゃんか」

 

「む、それは俺も気になっていた!入試の時はバリアのようなものを張ったり、手を大きくしたり、翼で飛んだりしていたし、聞くところによると昨日は爆豪君と似たようなものまで使ったそうじゃないか」

 

「マジかよ、すげえな!で、そこんとこどうなんだ?」

 

 切島君からの質問にさっきまで落ち込んでいた飯田君が「自分も気になる」と会話に加わってきた

 

「何って、えっと、うーんと異形・変化・発動系の複合かな?」

 

「異形系?どこが?」

 

 僕の異形系発言に違和感を持ったようで聞き返された

 

「そっか、普段隠れてるから見えないのか・・・ほら、ここに青い石みたいなのがくっついてるでしょ?」

 

 そう言って前髪を手でかき上げて額にある白毫(びゃくごう)を見せた

 

「あ、なんかくっついてる」

 

「これといって特別な能力はないけど、ちょっと体が丈夫になってるよ」

 

「じゃあ後の変化系、発動系ってのは?」

 

「この額の青い石と別の[模倣]って【個性】が変化系と発動系になるんだ。」

 

 この【個性】( PF-ZERO)について無暗に言いふらさない方が良いってオールマイトも言ってたし、事前に考えてた『答え』を言うことにした

 

 皆を信用していないわけじゃないけど、ごめんね?

 

「どんな【個性】なんだ?[模倣]ってんだから何か真似すんだろ?」

 

「過程を理解して似た結果をだすんだ。だからどうやって使ってるか理解できないとダメだし、理解できても自分の許容範囲を超える模倣はできない上、本物より強力だったり弱かったりふり幅があるんだ。特に発動系はそうだね」

 

「へえ」

 

「なるほど、だから君の使う【個性】に統一性がないのか。」

 

「あと、真似とは似て非なるものかな?真似は文字通り真に似せる、つまり対象と鏡写しのように同じ姿や行動をすること。模倣は模して(なら)う、つまり対象を手本にして何かを学び取ること。分かりやすく言いうなら1+2=3という計算で、真似はこの式が2+4とか3+1とかに変わったらアウト、式そのものを暗記しているだけだから暗記した以上のこと、つまり応用が利かない。でも模倣はこの式から足し算の公式を学ぶから2+4や3+1の答えも導き出せる。なぜそうなるかを学ぶか学ばないかの違いは大きいよ?だから広義的には真似も模倣もなにかと同じことをするってことで一括りにされてるんだけど、厳密には違うものだからね?」

 

「ふむ、俺が兄ならばと考えて行動するのと同じことか」

 

「だね、飯田君はお兄さんになりたんじゃなくてお兄さんのような立派なヒーローになりたいって言ってたもんね?」

 

「俺も憧れてる人がいるから飯田の気持ち分かる!真似っていって悪かったな緑谷!」

 

「いいよ、気にしないで」

 

 僕の「真似と模倣は違う」という発言に2人は納得し、その上で切島君は真似発言について謝ってきた

 

「ありがとな!まぁそれはそうと色々制限は多そうだけど、いろんな【個性】が使えるって点で使い勝手は良さそうだな!」

 

「ありがとう」

 

「他に派手で強えっつったらやっぱ轟と爆豪だよな」

 

「ケッ」

 

 あ、ちょっと嬉しそう

 

「爆豪ちゃんはキレてばっかだから人気でなそ」

 

「んだとコラ出すわ!!」

 

「ホラ」

 

 ああ、蛙吹さんの言葉に怒っちゃったよ

 

 かっちゃんは切島君に派手で強いと言われて満更でもなさそうに顔を背けていたが、続く蛙吹さんの一言に怒鳴りながら反論してきた

 

「この付き合いの浅さで既にクソを下水で煮込んだような性格と認識されてるってすげぇよ」

 

「てめぇのボキャブラリーは何だコラ殺すぞ!!」

 

 上鳴君まで煽っちゃってるし・・・

 

「もう着くぞいい加減にしとけよ・・・」

 

「ハイ!!」

 

 おおう!相澤先生がまたキレてる・・・

 

 ―― USJ ――

 

「すっげ―――!!USJかよ!!?」

 

「水難事故、土砂災害、火事・・・etc、あらゆる事故や災害を想定し僕が作った演習場です。その名もウソ(U)災害(S)事故(J)ルーム!!」

 

 オールマイトと相澤先生以外の特別講師――スペースヒーロー[13号]――は施設についての説明と【個性】の注意事項と扱う心構え、それを踏まえた上で人命の為にどう【個性】を活用するか学んでほしいと語った

 

「君たちの力は人を傷つける為にあるのではない、救ける為にあるのだと心得て帰ってくださいな、以上!ご清聴ありがとうございました」

 

 最後にそういってペコリと頭を下げた

 

「それじゃあまずは――」

 

 ズズ・・・ズズズズ・・・

 

 突然先生の背後の空間――セントラル広場に黒いシミが出来、瞬く間に広がった

 

「―― 一かたまりになって動くな!!」

 

「え?」

 

 そしてそのシミからは様々な格好をした人たちが現れた

 

「13号!!生徒を守れ」

 

「何だアリャ!?また入試ん時みたいなもう始まってんぞパターン?」

 

 違う!あれはそんな生易しいものじゃない!あそこにいる奴らは全員――

 

「動くな、あれは――」

 

『――(ヴィラン)だ!!!!』

 

「13号にイレイザーヘッドですか・・・先日頂いた教師側のカリキュラムではオールマイトがここにいるはずですが・・・」

 

「やはり先日のはくそ共の仕業だったか」

 

「どこだよ・・・せっかくこんなに大衆引き連れてきたのにさ・・・オールマイト、平和の象徴いないなんて・・・・子供を殺せば来るのかな?」

 

「「「「!!!!!」」」」

 

 今まで対峙してきたどの(ヴィラン)よりも濃密で途方もない悪意に満ちた(ヴィラン)が僕らの前に立ちはだかった


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