校門の前には報道陣が詰めかけていて雄英高校の関係者が通るたびにマイクとカメラが向けられ次々と質問される
皆、真面目にだったり、緊張しながらだったりそれぞれ答えていた。中にはかっちゃんの様に無視して通り過ぎる人もいた
斯く言う僕も質問された――が、即逃げた。
怪我なんてしてないのに保健室を言い訳に逃げた
『オールマイトの授業はどんな感じです?』なんて聞かれたけどなんて答えればいいのさ。
「楽しい」とか「すごい」とか「さすがオールマイト」とか言えばよかったのかな?
―― 教室 ――
「昨日の戦闘訓練お疲れ、Vと成績見させてもらった。爆豪、お前もうガキみてえなマネするな。能力あるんだから」
「・・・分かってる」
相澤先生は開口一番昨日の戦闘訓練について話し、かっちゃんを注意した
それに対し、以前のかっちゃんならそっぽを向くか反発していたのに今は素直に頷いていた
「さてHRの本題だ・・・急で悪いが今日は君らに・・・」
何だ!?また臨時テスト!?
「学級委員長を決めてもらう」
「「「学校っぽいの来たー!!」」」
先生の一言で教室は一気に騒がしくなった
皆自分がやりたいと手を上げて主張し始めたからだ
それを鎮めたのは
「静粛にしたまえ!!」
飯田君だった
「〝多〟をけん引する責任重大な仕事だぞ!『やりたい者』がやれるモノではないだろう!」
立派な意見だと思うよ!でもね、飯田君?
「周囲からの信頼あってこそ務まる聖務!民主主義に則り真のリーダーを皆で決めるというのなら、これは投票で決めるべき議案!!!」
「そびえ立ってんじゃねーか!!何故発案した!!!」
その天を突かんばかりにそびえ立つ右手が全てを台無しにしてるよ・・・
「どうでしょうか先生!!!」
「時間内に決めりゃ何でもいいよ」
僕は飯田君に投票しよう。真面目だし、こういうのに向いてそう
そして投票結果は
「僕三票!!?」
「わかってはいた!!さすが聖職と言ったところか・・・しかしこの一票は誰が・・・」
「うーん悔しい」
「ママママジで、マジでか!」
僕が三票で委員長、次点二票で八百万さんが副委員長に決まった
―― 食堂 ――
「いざ委員長やるとなると不安だな~」
「大丈夫さ、緑谷君はここぞという時の胆力や判断力は〝多〟をけん引するに値するだから君に投票したのだ」
君だったのか!!
「でも飯田君も委員長やりたかったんじゃないの?眼鏡だし!」
いや眼鏡は関係ないよ麗日さん
「やりたいと相応しいか否かは別の話・・僕は僕の正しいと思う判断をしたまでだ」
「「僕?」」
麗日さんと異口同音に聞き返した
「飯田君て坊っちゃん!?」
「坊!!!・・・そういわれるのが嫌で一人称を変えてたんだが」
飯田君はため息とともに手に持っていたカレーをテーブルに置いた
「ああ、俺の家は代々ヒーロー一家なんだ。俺はその次男だよ」
な、なんだって!!
「ターボヒーローインゲニウムは知ってるかい?」
知ってるとも!!
「もちろんだよ!!東京の事務所に65人もの相棒を雇ってる大人気ヒーローじゃないか!!まさか!」
「詳しい・・・フフン!それが俺の兄さ」
飯田君は誇らしげに胸を張り、眼鏡を直しながら「自分の兄だ」と言った
「規律を重んじ人を導く愛すべきヒーロー!!俺はそんな兄に憧れヒーローを志した。人を導く立場はまだ俺には早いのだと思う。上手の緑谷君が就任するのが正しい!」
飯田君・・・
「しかし、俺に入れてくれた人は誰だったのだろうか・・・」
「あ、それ僕だよ」
「なに!君が入れてくれたのか!でもどうして!?」
「特に深い理由があったわけじゃないよ?誰が相応しいかなんて知り合って日も浅いのに分かる訳がないから、今分かる中で向いていると思ったのが飯田君だったんだ」
「そうだったのか、ありがとう!そして俺の分まで皆をけん引してくれ!もちろん協力は惜しまないから!」
「うん、頑張るよ!・・・そうだ!飯田君!」
「何だい?」
「君に、いや君にしか頼めない事がある」
「頼み事?」
飯田君は僕からの突然のお願いに首を傾げた
「突然だけど飯田君の家の人のサインをもらってもいいかな?」
「・・・・・・は?」
「だから君のご家族のサインが欲しいんだ!」
「え?あ、うん、構わないが・・・」
「本当かい!?ありがとう!!」
やっぱ持つべきは友達だな!
「でもなんでまた俺の家族を?」
「君の家族って言うよりヒーローのサインが欲しいんだ!さっき君はヒーロー一家って言ってたから」
「デク君は本当にヒーローが好きなんだね?」
「だってカッコイイじゃないか!颯爽と現れ敵を倒し、皆を救う!!ザ・正義の味方!!」
「はははは!君にとってのヒーローは俺にとっての兄みたいな感じか!」
ウウ~~~~~
「警報!?」
麗日さんと飯田君の三人で談笑していると突如、警報音が鳴り響いた
『セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんは速やかに屋外へ避難してください』
「3!?」
「セキュリティ3て何ですか?」
「校舎内に誰か侵入してきたってことだよ!三年間でこんなの初めてだ!!君らも早く!!」
飯田君が近くにいた先輩に質問すると侵入者の警報だという
「いたっ!急に何!?」
「さすが最高峰!!危機への対応が迅速だ!!」
「迅速過ぎてパニックに・・・どわーしまったー!!」
入り口に向かって人の波が押し寄せ、僕たちは飲み込まれ逸れてしまった
「くっ!!皆と逸れちゃったし周りは暴走してるし!!ああもう!兎に角鎮圧しなきゃ!」
暴動鎮圧には[
[
[物を引き寄せる]
その場で飛び上がり、天井を対象に[物を引き寄せる]【個性】を発動させ背中を天井に張り付ける
一旦皆の動きを止めないと!
「すうぅぅぅ・・・」
[声真似] + [大声]
『『グルルルガアアアァァァァァウウ!!!!!!!!』』
「「「「「ビクッ!!」」」」」
窓ガラスがビリビリと震え、皆足を止めた
その内3割から4割ほどの生徒は腰を抜かしているようで床にへたり込んでいた
良し止まった!!聴いといて良かったライオンの威嚇声!!後はまた暴走する前に捕縛しないと!
バゴン!!
あれは飯田君!?
「皆さん!大丈ー夫!!ただのマスコミです!何もパニックになることはありません大丈ー夫!!ここは雄英!!最高峰の人間に相応しい行動をとりましょう!!」
この騒ぎの原因はマスコミによるものだったらしく、警察が到着し撤退していった
―― 教室 ――
「ホラ委員長始めて」
「では他の委員決めを執り行って参ります!・・・けどその前に良いですか!」
皆を見渡してから続きを話す
「委員長はやっぱり飯田君が良いと思います。あの時、僕は暴徒による暴動の鎮圧を主として行動したのに対し、飯田君は誇りある雄英高校の生徒として扱い騒ぎを納めた。騒ぎを止めようとしたことは同じでも暴徒と生徒じゃ全く別物だ。委員長ならばどんな状況であれ相手を思いやる気持ちがなくちゃいけないと思うんだ!だから僕は飯田君がやるのが正しいと思うよ」
「あ!良いんじゃね!!飯田、食堂で超活躍してたし!!緑谷でも別にいいけどさ!」
「非常口の標識みてえになってたよな」
「何でも良いから早く進めろ・・・時間がもったいない」
「やば!!相澤先生が切れてる!」
僕の提案により時間が掛かっていることに相澤先生はストレスを溜め始めて機嫌が悪くなり出した
「委員長の指名なら仕方あるまい!!」
そんな中、皆の声援もあってか飯田君は委員長の交代を承諾してくれた
「任せたぜ非常口!!」
「非常口飯田!!しっかりやれよー!!」
良し!これで委員長は飯田君がやるとして、八百万さんにも言っとかないと
「ごめんね、八百万さん。本当なら繰り上げで君が成るはずだったんだけど、君の【個性】の性質上、先陣切って戦うよりも後方から物資を届けて自陣を優位に立たせ続ける方が良い事が多くなると思うんだ。だから委員長よりも副委員長の方が適しているんじゃないかと思ってさ」
「いえ、不満がないといえばウソになりますが、飯田さんの活躍も緑谷さんの意見も納得がいきますから」
「ありがとう!」
こうして委員長は飯田君が勤め、そのサポートとして副委員長を八百万さんが務めるとことなった