―― 緑谷 ――
オールマイトと別れ、保健室に向かったときにはかっちゃんはもういなかった。リカバリーガールが言うには数分前に出て行ってすれ違いになっていたようだ
「いた!」
急いで昇降口に向かうとかっちゃんの後ろ姿が見えた
「体は大丈夫か」とか「僕だってもうやっていける」とか言いたいことは沢山あった。けど、いざ話しかけようと近付いてはっきり見えたその背中はいつものあふれ出る自信なんてなくて、8年前の絶望した自分を見ているようだった
胸がざわついた
「かっちゃん」
「なんだ」
思わず声をかけたが返事に覇気がない
弱っている
そう思った途端に胸のざわつきが強くなった
「俺がいっちゃん強いんだ」
かつて彼がいった言葉
「あ゛あ゛!?」
「もしもの時はてめえごとモブ共全部助けてやんよ」
泣いていた僕に手を差し出して言った言葉
「デクてめえ!」
言葉にするたび胸のざわつきが強くなりついに我慢できず叫んだ
「君の言った言葉だ!!」
「あん?」
「君が!何もできなくて泣いていた僕に!君が言ったんだ!俺が守ってやるって!!お前らの兄貴分だからって!!僕はあの日、託された!だから頑張った!!ヒーローに成りたいから努力した!!君を見返したかったから体も鍛えた!でも一番は君に追い着きたかったからだ!」
僕だってやれると、もう君の隣に立って共に歩けると証明したかった
「今日、僕は君に勝って追いついた!たった一勝、それも借り物を使っての一勝だ!君はたった一度の敗北で折れるのか!!!」
やっと証明したのに君が歩みを止めてどうする!!
「うるせー黙れ」
「嫌だ!君は僕にとって見返したい人で、目標で、憧れの人だ!いつも自信に満ち溢れていた君が、前だけ向いて突き進んでいた君が!下を向いているのに何も言わずにいられるか!!君は【個性】が発現してから嫌な奴になった!でもできない事や嘘だけは言わなかったじゃないか!ならこの程度で諦めないでよ!
「黙れっつてんだろーが!!!!」
先ほどまでの覇気のない声とは打って変わっていつもの声になった
「今日・・・俺はてめえに負けた!!石ころだと、足元にも及ばないゴミだと思ってたてめえにだ!!それも完膚なきまでに負けた!氷の奴見てっ!敵わねえんじゃって思っちまった!!クソ!!!ポニーテールの奴の言うことに納得しちまった」
途中から声が震えだした
「クソが!!!クッソ!!!なあ!!てめぇもだ!デク!こっからだ!!俺は!!こっから!いいか!?俺はここで一番になってやる!!!」
かっちゃんは涙を浮かべそう宣言した
それでこそ僕の知る
―― 爆豪 ――
あれからどうやって来たのか分からない。何も考えられなくて、ただ体の動くままに家に向かっていた
「かっちゃん」
「なんだ」
背後から声が聞こえた
なんだデクか・・・
「俺がいっちゃん強いんだ」
「あ゛あ゛!?」
今、なんつった?
「もしもの時はてめえごとモブ共全部助けてやんよ」
「デクてめえ!」
こいつ喧嘩売ってんのか?
「君の言った言葉だ!!」
「あん?」
俺が言った言葉?
「君が!何もできなくて泣いていた僕に!君が言ったんだ!俺が守ってやるって!!お前らの兄貴分だからって!!僕はあの日、託された!だから頑張った!!ヒーローに成りたいから努力した!!君を見返したかったから体も鍛えた!でも一番は君に追い着きたかったからだ!今日、僕は君に勝って追いついた!たった一勝、それも借り物を使っての一勝だ!君はたった一度の敗北で折れるのか!!!」
「うるせー黙れ」
言われなくたって分かってんだよ。たった一敗だって。それでも俺は負けたんだよ、お前に・・・お前だけには負けたくなかったのに!『俺がすげーんだ、皆俺よりすごくない!』ってそう思ってたのに、思ってたのに!
「嫌だ!君は僕にとって見返したい人で、目標で、憧れの人だ!いつも自信に満ち溢れていた君が、前だけ向いて突き進んでいた君が!下を向いているのに何も言わずにいられるか!!君は【個性】が発現してから嫌な奴になった!でもできない事や嘘だけは言わなかったじゃないか!ならこの程度で諦めないでよ!
「黙れっつてんだろーが!!!!今日・・・俺はてめえに負けた!!石ころだと、足元にも及ばないゴミだと思ってたてめえにだ!!それも完膚なきまでに負けた!氷の奴見てっ!敵わねえんじゃって思っちまった!!クソ!!!ポニーテールの奴の言うことに納得しちまった」
俺は弱い、もう一番じゃない。なら一番になってやる!
「クソが!!!クッソ!!!なあ!!てめぇもだ!デク!こっからだ!!俺は!!こっから!いいか!?俺はここで一番になってやる!!!」
俺がいっちゃん強いんだ!モブ共全部ねじ伏せて天辺取ってやる!!!!