―― 爆豪 ――
「訓練とはいえ
眼鏡がコンコンとノックするように叩き張りぼてを確認している
「おい、デクの【個性】は火を噴く【個性】だけのはずだよな?」
こいつはデクとよく話しているし、入試の時も同じ会場だったらしいから知っているだろうと声を掛けた
「何を言ってるんだ?あの怪力を見ただろ?それにバリアを張ったり翼を生やしたりと、何という【個性】かは分からないが複合系の様だぞ?それにしても君はやけに緑谷君につっかかるな」
しかし返事は予想外のことだった
バリアに翼だと!?
「この俺をだましてたのか!?くそデクが!!」
ぜってー許さねー!!
――――――――――
―― 緑谷 ――
「がんばろうね」
「う、うん」
ついにこの時が・・・
「緊張しとる?」
「いや、その相手がかっちゃんだからちょっとね?それに飯田君もいるし」
「爆豪君ってデク君を馬鹿にしてくる人だっけ・・・」
「凄いんだよ、なんでも出来てなんでも知ってて、あの日まで僕の憧れだった。今は嫌な奴になっちゃったけどね?だからこそ負けられない」
そう、負けられないんだ
――――――――――
――― ビル内部 ―――
「潜入成功!」
「死角が多いから気を付けよう・・・たぶんかっちゃんは僕を襲うと思うから麗日さんは飯田君をお願いしてもいい?」
「どうしてわかるの?」
「昨日盛大にブチギレてたからね?その翌日に敵同士の戦闘訓練なら間違いなくかっちゃんは私怨に走る」
あの切れ具合だ絶対根に持ってる
「ほぇ、よくわかってるね!でもデク君なら大丈夫だよ!試験の時みたいにシュバッてバリア張ればいいんだから」
「いや、そうでもないよ、あれはたしかに物は通さないけど――」
噂をすれば影とばかりにかっちゃんが奇襲を仕掛けてきた
[バリア]
襲い掛かると同時に右腕を振り抜き、同時に爆発させてきた
かっちゃんの右腕はバリアによって阻まれいるが、爆破の熱風は通り抜けてこちらを襲って来る
咄嗟に爆風から麗日さんを庇う
「デク君!?」
「あづ!!――この通り非物理攻撃は素通りしちゃうんだ」
「デク!!テメー今までこの俺を騙してやがったな!!」
怒鳴りながら右腕を大ぶりに振りな殴り掛かってくる
かっちゃんが振り切る前に接近し右腕を掴み、肩に担ぐようにしてそのまま投げる
「がはっ!」
受け身も取る間もなく背中から落ちたかっちゃんは、肺の中の空気を強制的に吐き出した
「変わってなくてよかったよ・・・大抵最初に右の大振り、小さい頃の4年間何度も何度も喰らって覚えた君の癖だ」
「デ~ク~!!!!!」
「僕は君の知ってるデクじゃない!!あの日から鍛え続けた”頑張れって感じのデク”だ!!」
そう、変わったんだ!!もう木偶の坊のデクじゃない!!
「ムッカツクなああー!!!!!!!!」
腹の底から出る声、にじみ出る怒気、完全にキレたようだ
「黙って守備してろ!ムカツいてんだよ俺ぁ今ぁ!!」
突然誰かに怒鳴り出したが、恐らく無線で飯田君に何か言われたのだろう
「麗日さん!!麗日さんは核を回収しに行って!!すぐ追いかけるから!!」
「わかった!」
「俺を前に余所見か!余裕だな!!」
麗日さんに指示を出した直後に爆破の勢いを利用して蹴りを放ってきた
[
「グッ!!」
ガンッという金属がぶつかるような音と共にかっちゃんからうめき声が聞こえた
「硬化する【個性】持ちに生身の蹴りは自滅行為だよ?今度はこっちの番だ」
[剛力]
[怪力]
[剛腕]
[
「お返しだ!!」
怯むかっちゃんの足を掴んで床に叩きつけ、すぐさま壁に向かって叩きつけるようにして投げる
「ぐはっ」
かっちゃんが態勢を持ちなおす前に畳みかける!!
[物を引き寄せる]
かっちゃんを引き寄せ、その勢いを利用して腹部へ蹴りをいれて、また引き寄せそのまま床に叩きつける
「いぎ!!」
続けて追撃しようと引き寄せたところで腕を掴まれ、爆破を諸に受けたので咄嗟に蹴りを入れて距離を取った
至近距離で爆破させるなんて!
[
ズキズキする痛みを堪えて治癒の【個性】を使う。
体力を消費するから出来れば使いたくなかったが、片腕で戦えるほどかっちゃんは甘くない
『デク君!!』
「麗日さん!どうしたの!?」
『飯田君に見つかっちゃった!ごめん!今ジリジリと―』
「今どこ!?」
『5階の真ん中のフロア!!』
「わかった!すぐに向かうから捕まらないようにしてて」
『わかった』
ちょうど麗日さんと話が終わったところでかっちゃんは憤怒の形相で立ち上がった
「すぐ向かうだと!?ハァハァ、なめてんのか!?デクの、分際で、俺をなめてんじゃねぇ!!!!!!」
息も切れ切れにそう叫ぶと右腕をこちらに向け、腕についた手榴弾のようなものをガチャンと操作した
何かする気だ!!
【個性】を重ね掛けしながら、念のため右腰のカードケースから”ある絵”の描かれた紙をすべて取り出し、【個性】を発動させる
「死ねぇぇぇぇえええええ!!!!!!!」
かっちゃんは叫びながら腕についたピンに親指をひっかけた
[翼]
[
[金剛石]
そして一瞬の躊躇いなく引き抜いた
[
[操水]
その直後に凄まじい威力の爆発が起きた
ドッゴォォォォオオオオオン