【無個性】
ただそれだけで人は変わる
「はん!俺がいっちゃん強いんだ!
「【無個性】の分際で俺に盾突いてんじゃねーぞ!デク!!」
「おっ!お前もヒーローになりたいのか?やっぱ格好いいもんな!」
同じ夢を持った友達は
「ヒーロー?お前が?ぶはははは!【無個性】なんかがヒーローになれるわけねーだろ?ばーか!」
【無個性】と嗤ってきた
「出久君は将来何になりたいの?ヒーロー?そっか、じゃあお勉強も運動も頑張らなきゃね?」
夢を応援してくれた先生は
「出久君。出久君には出久君にしかできない事がいっぱいあるんだからヒーローは残念だけど諦めましょ?」
夢を諦めるよう諭すようになった
「やめて!やめてよ!痛いよ」
いじめを止めようとして代わりに殴られたら
「助ける
助けようとした相手に罵倒された
「出久は本当にヒーローが好きね~出久ならきっとなれるわ!頑張って!!」
僕のことを一番分かってくれていた母さんは
「ごめんねえ出久ごめんね…!」
止めどなく涙を流しながら謝ってきた
【無個性】とは
庇護対象から加虐対象に変わるほど悪いことなのか
人助けすらしてはならないのだろうか
母が泣かなければならないほど酷いものなのだろうか
地獄の日々の中で少しずつヒビが広がり今にも心が砕けそうだった
それでも
そんな思いすらも粉々に砕かれたのは【無個性】という現実を突きつけられてから4年、8歳の時
目的もなく町中を散策していた時に偶然にもオールマイトが
【無個性】はヒーローになんてなれない
半ば諦めていた気持ちももしかしたら、オールマイトなら「大丈夫」と「ヒーローになれる」と言ってくれるかもしれない
蜘蛛の糸のような細い希望だと分かっていてもしがみ付きたかった
そして文字通り
「夢見ることは悪いことじゃない。だが・・・相応に現実も見なくてはな」
【無個性】はヒーローになれない
周りと同じ飽きるほど、慣れてしまうほど言われた事実
他の人に言われるなら耐えられた、耐えることができた言葉
でも他でもない
目の前が真っ暗になった
『彼』に会ったのはそんな絶望の底にいた時
俯き下を向いていた視界に誰かの足を捉え、顔を上げた時、『彼』はそこにいた
『彼』は
「少年、力が、【個性】が欲しくはないかね?」
そう問いかけてきた