魔女と怪異と心の穴───もしくは一ノ瀬巽の怪異譚───   作:タキオンのモルモット

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センパイだから書きやすくて助かるぜ


ヤンデレ短編────因幡めぐるの場合────

 

「センパ〜イ、明日の休み何処かへ行きませんか?その後お泊まりしましょう!!めぐるの家、明日から親がいないんで♪」

 

金曜日の放課後、彼女である因幡めぐるからそんな提案をされたので二つ返事で了承した。

 

「やったー!!ふふっ、遅刻厳禁ですよ?セーンパイ?」

 

────そう言ってこの前のデートで遅刻した挙句超上から目線で「出迎えご苦労」と言ってきたのは誰だっけ。

 

「いや、あれはジョーダンですってば!!それに許してくれたじゃないですか!!」

 

いや、まあ本気で怒るわけが無いのだが。

 

凄いおまいう案件だったから突っ込んだだけで。他意は無い。

 

「な、何も言い返せない······ッ!!」

 

そう言って蹲るめぐるを放置し、とっとと帰るぞ、と言葉をかける。

 

「あっ、待ってくださいよセンパーイ!!」

 

大声をあげながらめぐるは、その背中を追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日。特に早く出たわけでもないし、何かあったわけでもないけれど、十五分ほど早く来てしまったので珈琲を飲みながらめぐるを待っていると────

 

「あれ?どうしてこんな所に君が?」

 

オカルト研究部の椎葉紬に声をかけられた。どうもオカルト研究部がめぐるの後押しをしていたらしく、たまにだが、自分を見たら話しかけてくるのだ。

 

めぐるを待っていると伝えると、彼女は笑顔で

 

「うん、仲が良好なようで何より!!」

 

と、心底そう思っているような顔で言ってきた。

 

いやまぁ、彼女達からしたら凄く苦労した事がちゃんと成功しているという安堵からの言葉なのだろうけれど。それは彼女達のせいだ。自分のせいじゃない。

 

そう思っていたら────どうやら口に出ていたらしい。心底呆れた様子で彼女は口を開いた。

 

「そりゃ告白の返事が『ドッキリか何かですか?』って言われて、焦っている間にこっちの協力が全面的に裏目に出てたのを指摘されて危うく大変な事になってたからね······」

 

いや、あれだけ露骨だと疑うのは当たり前だ。最初なんの接点もないめぐるからいきなり校舎裏で寝てたところを強襲されて「モン猟りやりませんか!?」って言われただけでもかなり驚いたのに。露骨に保科が好きなものとか聞いてきた挙句、君達が周りを嗅ぎ回ってたらそりゃそうなるわ。九割······いや、全ての人間がドッキリを疑うだろ。集団でハメに来てんのかと思った。

 

ちなみにその時、めぐるが泣いて弁明して本気だとわかったので受け入れた。────これは蛇足だが、その後オカルト研究部の連中に「そこまで協力してやらずに全部因幡にやらせたら疑わなかったのに」と言っておいた。遠回しに第三者があまり関わるなと言ったのだが、どうやら身内だからやった感があり、反省もしてたのでもう特に何も言わない。

 

「うん、あの時の事は本当に反省してる······流石に干渉しすぎたよね······あはは······」

 

うん、まあそんな話は止めておこう。

 

「そっかそっか、ちゃんとお付き合い続いてるんだね」

 

そこからはただの世間話が続く。

 

それから数分くらいだろうか、椎葉紬が自分の後ろを見て、ニヤニヤし始めた。

 

「ほら、愛しの彼女さんがこっちに向かってきてるよ?」

 

どうやらめぐるが来たらしい。時計を見ると待ち合わせの五分前だ。

 

────ドサッ

 

と、なにか音がした。振り返るとめぐるが自分の荷物を落として呆然としている。

 

「······セン······パイ······、な、なんで椎葉センパイと······」

 

「······へ?」

 

「な、なんで······なんで······嘘だ······嘘······嘘だ······」

 

虚ろな目をして泣き始めた。

 

ただごとではない、そう判断し、めぐるに問いかける

 

前に、こちらに向かって抱き着いてきた。

 

 

 

「センパイ、嫌だ嫌だ······すてないでください······な、何でもしますから······!!センパイの言う事なんでも聞きますから!!ダメな所があったら直しますから!!わ、私をすてないで······!!」

 

泣きながら懇願するその目はどこまでも暗く濁っていた。

 

取り敢えず、慰める。

 

棄てたりしないと、何回も言い聞かせる。落ち着かせる。

 

 

数分後、落ち着いためぐるに話を聞くと、どうも自分と椎葉が抱き合ってたように見えたらしい。それで自分が棄てられたと、勘違いしたようだ。

 

その後、めぐるが赤面して蹲ったのは言うまでもないだろう。

 

その後は、普通にデートを楽しんだ。

 

 

 

────だが、その日からだろうか?

 

日に日にめぐるはおかしくなっていった。

 

今までは休み時間の度に自分の教室に来るなんてことは無かったのに来るようになったし、クラスメイト······特に女子と話しているところを見られた後の休み時間は人気のない所に呼び出され、「棄てないで」との懇願。行為の時も、自身の体力の限界を迎えてもまだ求めてきたり。

 

 

まるで、依存しているような────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「センパイ、私はセンパイの事が大好きです。愛してます。もう離れたくありません。」

 

そう、もう大切な人と離れるなんて嫌だ。

 

親友が突然いなくなったとき、私は心にポッカリと穴が空いた気がした。

 

────そして、それ以上の喪失感を、あの日、味わいそうになった。

 

センパイも居なくなったら────そう考えるだけで吐き気がする。棄てられないか不安で不安でしょうがない。そんな気持ちが、私の心を蝕んでゆく。

 

「センパイ······私はセンパイの為なら何でもします、悪い所があれば直します、常にセンパイにとって『1番』の女になります。ペットになれというならペットになりましょう。奴隷になれと言うならなりましょう。なんでも、なんでもしますから────」

 

 

 

 

 

どうか、私を棄てないでくださいね?センパイ?

 





んー、難しい······これはヤンデレ······だよね?

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