セングラ的須賀京太郎の人生   作:DICEK

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業務連絡っぽいものです。

今回のインターハイ編は登場キャラが多く、また初めて出てくるキャラもニ、三いるため時系列順に掲載するのを見送りました。
便宜上①、②と振っていますが、若い番号の方が必ずしも前ということではないのでご注意ください。

共通ルールは

・咲さんは夏風邪を拗らせて寝込んでいるため、京ちゃんだけ先に東京入り。咲さんは個人戦が始まるくらいから合流します。
・モンブチーズは個人戦には参加してません。団体戦が終わったら個人戦を見ずに帰ります。咲さんとは入れ違いです。
・今回のシードは白糸台、千里山、姫松、臨海の4つです。白糸台と千里山がAブロック。臨海と姫松がBブロック。モンブチはBブロックで、姫松のグループです。


43 中学生三年 二度目のインターハイ編②

 姫松高校麻雀部副監督兼ヘッドコーチ。それが今の赤阪郁乃の肩書である。

 

 かつてはプロの世界で名を知らしめた郁乃であるが、現在は母校に戻って後輩の現役女子高生に指導をしている。高校時代の郁乃が現在の自分を見たら、例え姿形がそっくりだったとしても、同一人物とは信じないに違いない。それ程までに、他人に尽くすということは郁乃の元来の性格からは外れている。自分でも意識しているその性質にも関わらず、それでも郁乃がこの仕事を引き受けたのは、現在監督をしている一美から要請があったからだ。

 

 監督に就任するにあたって、コーチを統括する人間が別に必要になる。自分以外に誰がと考えた一美は、迷わず郁乃を推薦した。プロの世界に未練がなかった訳ではないが、大恩ある先輩の頼みならばと郁乃はその要請を引き受けることにした。

 

 これからは後輩の女子高生の指導か、と思っていたのもつかの間、元々プロであったという事実が、郁乃にコーチ以外の仕事もさせていた。

 

 伝統ある名門校であるが、卒業生の全てがプロや実業団の道に進む訳ではない。麻雀に打ち込むのは高校までと牌を置く人間もいれば、逆に何でも良いから麻雀に関わる仕事がしたいと希望する人間もいる。そういう希望を叶えるために、郁乃の元プロという肩書はある意味最適なものだった。

 

 現役時代は広く活躍していたこともあって、郁乃の顔は名門校の平均的なコーチと比べて格段に広い。現役選手はもちろんのこと、業界関係者にも多くの知り合いがいる。これ以上となると、郁乃と同様に元プロの肩書を持っている人間を連れてくるしかない。今現在高校麻雀界に籍を置いている中では、千里山の監督である愛宕雅枝か、臨海の監督であるアレクサンドラ・ヴィントハイムくらいのものだろう。

 

 とは言え、コネがあるというのも良いことばかりではない。インターハイという大事な時期に、他の学校のリサーチも放り出してなに切る問題を作っているのは、コネが生み出した弊害のためだった。

 

 一美や郁乃から見て数代上の先輩で、今は麻雀雑誌の編集部にいる女性からの頼みである。作家が一人行方不明となり、誌面に穴が開いたというのだ。今はインターハイの取材で編集部のほとんどが出払っており、方々手を尽くしたが代わりの作家も捕まらない。ページ下の簡単なものならばそれこそ編集部員でも作ることができるが、今回穴が開いたのは詳しい解説付きの、数ぺージプチ抜き企画である。

 

 困った先輩が泣きついてきたのが、母校の麻雀部でコーチをしている元プロだったという訳だ。本音を言えばこのクソ忙しい時期に、そんな面倒臭い仕事など引き受けたくなかったのだが、かつて同じ麻雀部に所属していたのだから、この時期に母校がどれくらい忙しいかという事情は、向こうも十分に知っている。それでも尚頼んできたということは、本当に他に方法がなかったのだろう。

 

 これも母校のため、後輩のため、引いては一美のためだ。とは言え、現在の仕事も疎かにはできない。姫松はシードだから今日は試合がないから良かったものの、対戦する三校は今日決まる。今日の夜には収集したデータを使って検討会が始まるだろう。原稿はそれまでに完成させて、先方に提出しなければならない。

 

 この時間を捻出するために、一美が自らスケジュールの調整をしてくれた甲斐もあって、依頼された原稿は会心のデキとなった。

 

 牌譜を一から創作しろというのであれば、流石に無理難題とキレていたかもしれないが、自分の体験を下にして良いという要望なので、作成する身としてはまだ楽な方である。今回原稿に起こしたのは、さる大会の決勝戦。他家を狙い撃ちにして合法ロリを捲り、優勝を決めた局のものだ。

 

 何切る問題は基本的に前に出ることを前提にしている。この局は無理だからもう諦めよう、では問題にならないからだが、この問題では手順として正解の選択をすれば、確実に上家か下家に振り込むようにできている。現実には降りるという選択肢もあるが、十半荘戦の南四局で総合得点も僅差。ここで引いたら優勝はかなり遠のくという状況設定が、その選択を実質的に不可能なものにしていた。

 

 問題としてはかなり悪質な部類に入るだろうが、そういう企画なのだから問題はない。こういう原稿を書く、という概要をすでに先方に説明してあるが、ゴーサインも貰っていた。毎回それでは読者が逃げるがたまに突っ込む程度ならば問題ないという認識らしい。

 

 原稿を手にしながら、考える。この問題を前に、後輩の部員たちはどういう選択をするのだろう。場況を見て、振り込みの気配を感じ取れないようでは見込みはない。誰にどの牌が危険というのを自覚した上で、どう行動するのがリスクが少ないか。そこまで考えて最善手を模索できるのは、今の姫松では愛宕姉妹の面白い方と、末原恭子くらいのものだろう。

 

 一美に指定された刻限までは、まだもう少しある。優雅にコーヒーでも飲んでから、と考え事をしながら歩いていた郁乃は、対面から歩いてきた男性に正面からぶつかった。溜らず尻餅をつき、抱えていた原稿が辺りに散乱する。反射的に出そうになった舌打ちを堪え、顔をあげると、

 

「すいません、俺の不注意で」

 

 そこにいたのは少年だった。燻った色の金髪に、そこそこの身長。高校生というには幼い顔立ちをしているから、ぎりぎり中学生といったところだろう。考え事をしながら歩いていたのは自分の方なのに、少年は自分の方から頭を下げた。中学生にしては、随分と紳士的な対応である。

 

「お怪我は?」

「あ~、大丈夫や。心配してくれてありがとな~」

 

 ひらひらと手を振り、床に散らばった原稿と資料をかき集める。数えてみると一枚、それも問題文に使う場況を示した図が見当たらなかった。牌譜用の記号を使った簡単なものだが、記憶を掘り起こして漸く捨牌まで完璧に再現したものである。なくしたとなると書き直すのにとても時間がかかるものだ。慌てて周囲を見渡すと、探し物はぶつかった少年の手の中にあった。図に視線を落とす凄まじく真剣な表情に思わずどきりとしながらも、麻雀打ちとしての興味から郁乃は少年に問うてみた。

 

「それ、君やったらどう攻める?」

「そうですね、俺だったら降ります」

 

 少年は問題の意図をあっさりと回避してみせる。これには、郁乃のプライドが刺激された。

 

「――理由を聞いてもええかな?」

 

 郁乃の声色には僅かに力が篭っていた。顔こそいつもの通り笑顔であるが、雰囲気はまるで笑っていない。普段指導を受けている姫松の生徒であれば、この雰囲気になった瞬間に悲鳴を挙げていただろうが、図に真剣に目を落とす少年は郁乃の顔を見てもいなかった。

 

 郁乃の問いに、図に目を落としながら、少年は言葉を続ける。

 

「まず上家ですが、何としてもトップを取りたいこの状況で、リーチをしていません。捨牌から手ができていないということはなさそうですから、積み棒を含めてトップの下家を捲くれる手が既にできているんでしょう。そう考えると、この捨牌もプレイヤーに『振り込め!』って訴えかけているように見えます。おそらく高めを目指して真っ直ぐ行くと、上家に振り込むんじゃないかと」

「で、トップ目でラス親の下家ですが、捨牌を見るに真ん中の脂っこい牌で待ってる可能性が高い――というか、クイタンとかの安い手で流すだけだったら、とっくにアガってたと思うんですが、どうして態々手を遅くしてるのかはすいません、考えたんですが説明がつきませんでした」

 

 そこまで解ったらエスパーである。この時、郁乃は休み時間の全てを費やしてちくちくと対面の合法ロリを煽っていたのだ。この時点で彼女のストレスは極限まで高まっていたことだろう。いつもの合法ロリであればさっと鳴いて、あるいは彼女らしい高く派手な手が入って優勝を決めていたのだろうが、特定の一人に向いた苛立ちが、手を遅らせ、判断を僅かに鈍らせていたのだ。

 

「ともあれ、高めを放棄して裏ドラか一発にかける形で真っ直ぐ手を伸ばすと、今度はこっちの下家に振り込むんじゃないかと思います。見逃される可能性もなきにしもあらずですが、それで勝利確定なら、流石にアガるでしょう。ただ、何となくですけど、このまま放っておくと次かその次くらいに下家がツモりそうな気がするんですよね。これにはさっぱり根拠がないんですが、俺の場合、悪い予感だけはかなりの確率で当たるんで、とにもかくにも回すことにすると思います。いや、こうなった時点でもう詰みですね」

 

 ははは、と笑う少年に、郁乃は沈黙で返した。偶然にしてもできすぎの読みである。何切る問題の解答としては不適格かもしれないが、あくまで回避するというケースの読みとして、少年の答えは満点に近いものだった。実戦の緊張感の中にないというハンデこそあるがそれでも、紙面からそれだけの読みができたことは元プロで現教育者の郁乃の目から見ても、賞賛に値する。

 

「君、何で女子やないん?」

「や、そんなことを言われましても……」

 

 分析だけで実戦は弱い可能性があるが、これだけできるのであれば腕のあるなしはもう関係ない。インターハイなどのリアルタイムの情報が状況を左右するような大会では、対戦校の分析をする人間はいくらいても足りないくらいである。問題を解いた分析が常にできるのであれば、今すぐバイト代を払ってでも雇いたいくらいだ。

 

「申し遅れたけど、ウチはこういうもんや」

 

 差し出した名刺には『姫松高校麻雀部副監督兼ヘッドコーチ』と、郁乃の名前と現在の肩書きが書かれている。想像もしていなかった肩書きに驚きの表情を浮かべる少年に、郁乃は畳み掛けるようにして言葉を続けた。

 

「発売前やから答えは教えられんのやけど、協力してくれたお礼に雑誌を送らせてもらうわ。それで悪いんやけど、君の住所教えてくれへん?」

「良いですよ。長野県――」

 

 全く疑いもせずに住所をぺらぺらと喋る少年に、郁乃は逆に不安になった。この時勢にこの危機管理意識で大丈夫なのだろうか。純朴なのも結構やけど、もう少し人を疑うことを覚えた方がええでーと内心で思いながらも、口にはしない。かつて麻雀プロの世界で数々の悪名を欲しいままにした麻雀打ちは、大体において自分の都合を優先させるのである。

 

「――須賀京太郎です」

「ありがとな~。君は中学生? 長野やったら龍門渕の応援かな」

「後は白糸台ですね。宮永照さんが、俺の中学の先輩で」

「せやったら毎日応援か~、大変やな~」

 

 白糸台はAブロックのシード、長野代表の龍門渕はBブロックの一回戦から。インターハイはAブロックBブロックと交互に、それも終日会場を使って試合がおこなわれるため、両方のブロックに応援する相手がおり、その両方が勝ち残っていると団体決勝まで会場に通い詰めることになる。

 

 また、宮永照は当然個人戦にもエントリーしており、こちらも優勝候補の筆頭である。下手をすると開会式から閉会式まで会場に足を運び続けることにもなりかねない。出場者でも関係者でもない人間で、そこまでする人間は稀だろう。滞在費だってバカにならないはずだが、郁乃の言葉を聞いて少年は恥ずかしそうに微笑んだ。

 

「それは全然。麻雀好きなんで」

「ええ返事やな。これも何かの縁やし、姫松のことも気が向いたら応援してなぁ~?」

 

 にこにこ微笑む郁乃に、京太郎は苦笑を浮かべる。龍門渕が順当に駒を進めたら、姫松とは二回戦から当たることになる。一回戦突破を予定調和としているなら、龍門渕が姫松と戦うことは確定的だ。それを十分に理解した上で郁乃は京太郎にそれを言ったのだが、彼もまた、姫松がどこのシードかをしっかりと理解しているようだった。情報収集もきちんとしている。本当に、悪くない。

 

「それじゃあ、俺はこれで失礼しますね。そろそろ控室に戻らないと」

「ウチも行くわ。母校のためにも、しっかりリサーチせんとな~」

「ご健闘を祈ってます」

 

 ぺこり、と頭を下げて京太郎は足早に去っていく。その背中をにこにこと眺めていた郁乃は、京太郎の姿が見えなくなると同時にポケットからスマホを取り出した。ぽちぽちと素早く打ったメールの内容はこうである。

 

『一美さんへ。面白い男の子を見つけました。麻雀そのものが強いかは解りませんが、有能そうです』

 

 ポケットにスマホをしまい、さてリサーチに向かおうとした矢先、メールの着信。画面を見ると一美からで、内容はこうだ。

 

『それは良かったですね。名刺はちゃんと渡しましたか? 仔細は郁乃に任せます。なるべく逃がさないように』

 

 敬愛する先輩が自分と同じ考えであることに、郁乃はかつての二つ名に相応しい邪悪な笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと」

 

 郁乃と別れた京太郎は、名刺を見ながらスマホを取り出した。業界関係者からコンタクトがあったら、必ず連絡するようにと咏から念を押されていたからだ。

 

 しかし、と京太郎は考える。名門校とは言え高校のスタッフを、『業界関係者』としても良いのだろうか。悩みつつも、とりあえず郁乃と出会った経緯と彼女の肩書きを添えて、咏にメールを送信。移動しようとした矢先、スマホに着信があった。

 

「咏さん、どうかしましたか?」

『今すぐそいつから離れろ!』

「もう離れてますよ。どうしたんですか?」

『こっちのセリフだ! 何でお前が『女狐』と一緒にいるんだよ!』

 

 名刺の名前を見ても思い当たることはなかったが、咏の口からその二つ名を聞いて思い出した。『女狐』という二つ名は、咏の口から何度も聞いたことがある。麻雀打ちとしては大層相性が悪い相手らしく、咏からその名を聞く時は大抵、愚痴か恨み言がセットになっていた。日本代表で九大タイトルの一つを保持している咏にそこまで言われる時点でかなりの力量であることが伺えるが、咏ががみがみ言っていたからか、不思議と京太郎がその『女狐』のことをリサーチしようと思ったことはなかった。『女狐』という二つ名は覚えていたのに、顔と名前を記憶していなかったのはそのためだ。

 

「あ、じゃあ黙テンで張ってたラス親は、もしかして咏さんだったんですか?」

『よりによってその話をしたのか!! あー、くそ、じゃあついでだから聞くか。あの女が問題文に起こしてたなら最終局で、私の上家の手が開いてたと思うが、お前だったらその時点で何を切ったよ』

「頭を切って回しますね。上家と下家に振りそうだったんで、勝負はしません」

 

 振らない可能性があるのならば、振るのを覚悟で勝負をかけるという選択肢もあったのだろうが、京太郎は自分の読みに絶対に近い自信をもって打ちまわす。感性が当たると判断したなら、実際にどうであれそれはもう当たりなのだ。当たったらそこで試合終了である。ならば、例えツモられそうという悪い予感がしていても、ツモられず、また自分に良い手が転がり込む方に賭けることが、勝つための唯一の手段である。

 

 京太郎にとっては当然の選択であるその言葉に、咏は電話の向こうで快哉を上げた。

 

『だよな!? そうなんだよ、あの時上家がお前と同じ判断をしてたら、私がツモって優勝を決めてたんだ。それだってのに、くそ、あの『女狐』……』

 

 咏の声音には悔しさが滲んでいた。電話の向こうで扇子を握り締め、ぐぬぬと唸っている姿が見えるようである。

 

 麻雀打ちとしてその悔しさは解らないでもない。たらればを考えるのは人間の常だが、あの局はクイタンでさっさと流すのが正解のように思えた。

 

 弟子として、それを指摘するかどうか迷った京太郎だったが、結局は口にしないことにした。彼女は三尋木咏であり、自分の師匠である。麻雀に関する彼女の行動には、きっと何か深い理由があるに違いないと、京太郎は心の底から信じていた。

 

 ちなみに、不意に京太郎が沈黙したことで、咏は彼が何を思っているのかを電話の向こうで察していた。咏も、あの時はさっさと流すのが正解だったと後になって感じていたが、あの時は郁乃に対する怒りで頭に血が上っており、彼女を凹ませることしか頭になかったのだ。

 

 理性をなくすと手痛い目に合うという、良い見本である。その日の敗北は咏の心にしっかりと刻まれ、同時に、元々かなり相性が悪かった郁乃との関係をさらに決定的なものにしていた。結局、郁乃が手早く引退を決め、母校の姫松に戻るまで個人で戦うことは一度もなかったが、よもやこんな形で『再会』するとは思っても見なかった。

 

「で、この名刺どうしましょう」

『破って捨てておけ、って言いたいところだけどさ、何がお前の将来にプラスになるかわかんねーんだから、まぁ、良いんじゃねーの? 取っておけば…………知らんけど』

 

 きっと咏は電話の向こうで、不機嫌な顔をして拗ねているのだろう。幼い容姿の彼女がそういうことをすると、年下の京太郎の目から見ても非常にかわいらしい。かわいいものが好きなはやり辺りが喜びそうな光景が電話の向こうでは広がっているのだろうが、何より、師匠の機嫌が悪くなることを、弟子の京太郎は望まないのである。

 

「咏さん、インターハイの解説の仕事でこっちに来てますよね?」

『まぁな。私の解説は毎年聞きたくなるほど評判良いとは思えねーけど』

「そんなことありませんって。咏さんの解説、俺は好きですよ」

『じゃあ、はやりんの解説とどっちが、ってのは師匠の情けだ、聞かないでおいてやるよ。で、私のかわいい弟子は、師匠の予定なんて聞いてどうするつもりなんだい?』

「インターハイ中は、俺もお守りの予定が詰まってて手が離せないんですが、長野に戻ったら時間が取れます。それでどうでしょう。指導の時間など作っていただけると嬉しいんですが……」

 

 年齢差、立場の差があるからこういう言い方になっているが、同年代的な言葉に変換すると『一緒に遊ばないか』となる。学生でしかも夏休みである京太郎は、予定を入れない限り暇だが、麻雀のプロである咏はそうではない。インターハイに合わせて大会日程が組まれているので時間は取れるが、長野までとなると数少ない休みを完全に潰すことになる。それを埋め合わせに、となると、もうどちらが得をしているのか解らないが、弟子の提案に咏はあっさりと溜飲を下げた。

 

『仕方ない弟子だねぃ、お前は。だがまぁ、弟子の頼みじゃ仕方ない。今日はお前の言葉に乗せられてやるとしよう』

「ありがとうございます」

『お前も『色々な』応援で忙しいだろうから、詳しい話はインターハイが終わってからだな。軽く捻ってやるから覚悟しておけよ?』

「楽しみにしてます。咏さんも、お仕事がんばってください」

 

 

 

 




次回、白糸台編かモンブチ編です。

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