「~♪」
「上機嫌ですね、茄子さん」
「久しぶりに三人でお出かけですからね~」
今、茄子さんとほたると食事に来ています。食事って言ってもファミレスだけどね!
「でも、大丈夫なんでしょうか……」
「ほたるはまだ不幸の事気にしてるのか?」
「ちが……うわけじゃないんですけど」
ほたると二人で食事したとき、水を持ってきた店員さんがこけて二人ともびしょ濡れに。
ドリンクバーを入れようとしたらドリンクサーバーが故障。
店に飾ってあった絵画が落下、幸い誰もけがはしていなかった。
カラス・黒猫は当たり前のように集まり横切り、植木鉢が降ってきたり、来なかったり。
もう俺からしてみたら運とかそういう次元では無いところまで来ているような気がしなくもないが……まぁ、それは置いといて。周りから見ても分かるぐらい不幸体質なのだ。
変わって茄子さんは、幸運体質。くじ引きでは一等当たり前。アイスでは当たり棒を量産したり、よく『来店記念何万人目!』とかで茄子さん連れて行くと必ず当たる。おみくじでは大吉以外出たのを見たことがない。
ガラガラでは一等から順に当てていくっていう逆宝くじ。
その幸運体質のせいかほたるがいると中吉がでたり、アイスがはずれだったりと普通の人と同じ感覚でいられるのが嬉しいのかよく一緒にいて、実際仲が良い。
ほたるは逆に運が普通になるので嬉しいのはあるが、いつか茄子が不運になるのではないかと思ったりしている。
まぁ、運抜きにしても仲のいいユニットだよね!!
「大丈夫ですよ~♪私がいますから!」
「気にするなほたる。茄子さんもそうだし、この事務所に来てから不幸が少なくなってるだろ?」
「うぅ、こんな幸せでいいのでしょうか……」
「今までの分幸せにしてやるよ!!」
「えっ……///」
「まぁ♪」
今俺が言った言葉を自分の中で繰り返してみる。『幸せにしてやるよ』……?幸せにしてやるよ……だと……
「あぁ~、いっ今のはあの~、言葉の綾ってやつだから。な?」
「プロデューサー大胆ですねぇ~。こんな所で告白だなんて♪」
「//////」
「あんまりそういうこと言うなよ……」
「この三人だから許しますけどね?」
「えっ」
茄子さんが放った言葉で周りの温度が少し下がったような?気のせい気のせい。
「お食事した後はどうしましょうか?私もほたるちゃんもこの後オフなんですよね~」
「そう、ですね……」
「う~ん、俺はこの後事務処理があるしなぁ」
ピローン
「ん、ちひろさんからメール?」
『残っていた事務処理は私がやっておくので、プロデューサーさんは午後から半休取っていいですよ~♪たまには休んでくださいね?』
「…………」
「あら?プロデューサー誰からのメールですか?」
「えっと、ちひろさんからだったんだけど……午後から半休取っていいって」
「あら?そうなると三人で暇になりましたね~?」
「プロデューサーさん、良かったですね」
「お、おう」
これが、これが神の力というものなのか……あるいは彼女の悪戯か……
「……?プロデューサーどうかしたんですか?」
「いや、別に」
まさかね?そんなことあるわけないよね!だって彼女は普通の少し?運のいいアイドルだからね!!
「それで、どうしましょう?」
「う~ん、プロデューサー?」
「何だ?」
「プロデューサーの家にお邪魔をしたりとか出来ますか~?」
「出来るわけないだろう?」
「…………そうですよね~♪うふふ……」
「取り合えず食べ終わったら、解散でいいだろ」
「あっ、じゃあ途中まで道が一緒なのでそこまではいいですか?」
「それぐらいなら、構わんが」
「えっ、でも茄子さん道反対じゃ……」
「ほ・た・る・ちゃん♪」
「ひゃあっ!?」
茄子さんが突然隣のほたるに抱き着いた。これがあれですよあれ。俗にいう百合営業ってやつですか?こちらとしては眼福なのでそれはそれで良いけどね?というかそういう売り出し方もあるのか……閃いた!!後でちっひに相談してみよ。
「だ……、ね?プ……に……行き……ない?」
「で、でも……に迷惑……が」
「私……が……よ?」
「わ、分かりました……」
「それに……でしょ……?」
「はっ、はい///」
は~二人で耳元で内緒話ですか~。あ^~いいですねぇ~。ほたるも顔真っ赤ですぞぉ~。茄子ほたってやつですね、分かるわ。何話してるのかは分からんけども。
「ごめんなさいプロデューサー、ほたるちゃんと内緒話、しちゃいました」
「うん全然良いよ。むしろそのまま続けて」
「えっ?」
「ごめん、なんでもない」
「それじゃあ注文しましょうか」
「そういえばまだ注文してなかったな」
すっかり忘れてた~。ここファミレスですよファミレス。……なんでファミレスで百合営業について考えてるの?俺気持ち悪くね?
「店員さ~ん!」
この後普通に美味しく食事した。
・・・・・
「じゃあ途中まで一緒ですね♪」
「そうだな~」
「そ、そうですね」
ん、なんだかほたるがさっきから落ち着かないな?何かあったか?
「よく分からんがほたる、大丈夫か?」
「はっ、はい!!」
「ほたるがそういうならいいけど……」
さて、いつも通り近道で帰るか……あれ?ここ工事中だったっけ?
「工事中ですね」
「じゃあここは通れませんね~」
「仕方ない、違う道にするか」
・・・・・
「…………おかしいな」
「どうしたんですか?」
「少し思うところがあってな」
「大丈夫ですよ~。だって私がいますからね~」
「それは心配してないんだが」
いつも通っている道が全て塞がってた。ある所は工事中、ある所は交通事故で通行禁止、またある所は黒猫・カラスの群れがいて通れなかった。そして今、目の前の道には…………
「なぁ、本当にここ通るのか……?」
「仕方ないですよね?だってここ以外の道塞がってましたし♪」
「それはそうなんだが……」
「………///」
ネオン街、お城のような建物、ホテル等。所謂裏通り的な場所にいる。こんな所でパパラッチに会ったら?週刊誌に載って一発KOなわけだ。
「………ふふっ♪え~い」
「おわっ!?茄子さん!?」
「えへへ~。今私達どういう関係で見られてるんでしょうかね?」
「それは……っ」
茄子が俺に抱き着いてくる。俺の右腕に88が当たるぅ!!包み込まてるぅ!!あぁ、なんて柔らかさでしょう。この柔らかさに…………っていけない。とてもいけない。危うく過ちを起こすところだったぞ今。ただこれは反則ではないでしょうか?
「ほらっ。ほたるちゃんも!」
「えっと、その……えいっ///」
「ほたるまで!?」
「えへへへ……///」
くっそ!可愛いなこいつ!!そして控えめだけど確かに柔らかさが分かる77が当たってますよほたるさん。
「今は、茄子さんもいるので……少し甘えちゃいますね♪」
「うっぐぅ!?!?」
「スリスリ♪」
「きゃ~ほたるちゃんったら大胆ですね!なら私も~」
「ふ、二人とも!やめっ……」
両手に花とはこのことだわ。彼岸花と青い薔薇って感じか。
「ほらほら!早く通らないと見つかっちゃいますよ~」
「じゃあ離れてくれ……」
「それはダメです!それにほら」
「ん?」
茄子は目配せをしてほたるを見る。
「プロデューサーさん♪プロデューサーさん……♪えへへぇ///」
「茄子さん」
「何でしょう?」
「この可愛い娘、お持ち帰りしていいですか」
「いいですよ~♪ついでに幸運の女神はどうでしょうか!!」
「なるほど!……って違いますよ!!」
「そんな幸せな顔してるほたるちゃんを、無理やり引き剥がすんですか?」
「それは……」
できねぇ……出来るわけねぇよぉ……だってここまで幸せなほたる見たことある?俺はない。事務所に来て、皆と出会って笑顔になることも増えてきたけど。これは笑顔というより……なんか志希的な、若干トリップしてるような気がしなくもない。
「じゃあ行きましょうか」
「そうだ、早く帰らないと!」
「はふぅ……///」
若干一名トリップしてはいるが、何事もなく家に着いた。
・・・・・
「で?」
「で?」
「いやオウム返しされても困りますよ、なんで家に来てるんですか」
「だって帰り道全部塞がってましたし~」
「それはおかしい」
「それにほたるちゃんだって幸せそうでしたし」
「/////」
家に着いてほたるをトリップ状態から正気に戻してから、ずっと顔を真っ赤にして俯いている。頭から湯気が出そうなくらい真っ赤だ。
「さっきのは……その……」
「ほたるちゃん、幸せでしたよね?」
「うぅ、その……はい///」
「あんまり、というか絶対ダメなんだが。仕方がないので部屋にどうぞ」
「ほたるちゃん、言った通りでしょう?」
「そうですね……」
二人が何を言っているのかは知らないふりをしておこう。
「何もない家だがどうぞ」
「幸運がお邪魔しますよ~♪」
「ふ、不幸が……お邪魔し……」
「ほたる、別に言わなくていいんだぞ?」
実際家には帰って寝るだけしかやってないので、本当に何も無い。自炊?そんなものは知りません。
「プロデューサーの部屋はどこですか?」
「………なぜそんなことを聞く」
「漁るためです!!」
「プロデューサーさんの部屋……」
「俺の部屋だけは入れさせんぞぉ!!」
ガチャ
「あっ、ここですね~」
くそぅ!!これだから幸運娘は!!!
「一発で当てちゃいました!!」
「だろうね!!」
「プロデューサーさんの使ってるベッド……」
「ほたる?俺のベッドを見つめてどうした?」
「あの、ベッド入っていいですか?」
「良いわけないでしょう何言ってるんですか貴方女の子でしょう気軽にそんなこと言うんじゃありません」
「プロデューサー早口になってますよ?」
「大丈夫、きっといい匂いがしますよ」
「そういう問題じゃなくてですねぇ!?」
なんか知らんが今日のほたるやけに積極的だなおい!
「あー、足が滑ってほたるちゃんをベッドに押しちゃいましたー(棒)」
「やるならもう少しマシなやり方ありませんか!?」
「あっ、プロデューサーのベッド冷たいですね」
「今昼過ぎですからね」
「私が温めてあげますね」
「まだ寝ませんよ!?」
夜寝るときほたるの体温とか匂いとか付いてたら、寝れるわけないでしょ!?彼女いない歴=年齢だと何度言えば……
「すぅ……」
「ほたるさ~ん!?」
「ほたるちゃん寝ちゃいましたね」
「まさか寝るとは」
「あれだけはしゃいでたから、疲れたんですね~」
「可愛いですね」
「分かります」
ほたるは俺のベッドで寝かしておいて、お茶でも入れるか。アイドルとはいえお客さんだし。
「じゃあ俺ちょっとお茶入れてきますね」
「お願いしますね」
茄子と居間に移動して対面に座る。部屋に誰かを呼ぶ、なんてほとんどないことだから少し緊張してるのは否めない。ましてや担当アイドルで女性だから尚更緊張する。
「今日、プロデューサーといて少し気になってたことがあるんですけど」
「何ですか?」
「どうしてほたるちゃんは『ほたる』って呼んでるのに、私は『茄子さん』何ですか?それと、若干口調が丁寧じゃないですか」
「どうしてもといわれても、茄子さん大人ですし」
「大人の人は呼び捨てされないんですか?」
「敬意というのもあるんですけど……」
「ふ~ん、そうですか」
ありゃ、急にそっけなくなったな。機嫌損ねたか。
「プロデューサー?」
「今度は何ですか」
「私、超能力使えるようになりました!!」
「は?」
おいおいおい急にどうしたんだ茄子さん。とうとうゆっこ路線入りだしたか?いや幸運は超能力じゃないからね?
「プロデューサーはもし私が人の幸運を操作できるって言ったらどうします?」
「なんだそれ」
幸運を操作だって?確かにそれは超能力の類だが……茄子さんがそれをできるって??そんなバカな。
「今日、ちひろさんから急に休んでもいいというメールが来ましたね?」
「そう、ですね」
「今日、やけに道が塞がってましたね?」
「……えぇ」
「ほたるちゃん、寝ちゃいましたね?」
「……………」
「まぁ、ほたるちゃんが寝たのは関係ないですけど」
いや関係ないんか~い!!
「前の二つ、もし私が意図的に起こしてたらどうします?」
「その問いにはどういう意味があるんですか?」
茄子さんが幸運を操れる。茄子さんのことだから人を不幸にするものでは無いだろう。
「幸運を操るって、人に幸運をあげるだけじゃないんですよ?」
「それは……?」
「人の幸運を奪うんです」
「なっ!?」
「気に入らない人がいたらその人の幸運を取り上げちゃうんです。そしたらその人は不幸になる。必然ですよね」
茄子さんがそんなことをしている……?そんなはずはない。アイドルになったのもファンの皆に少しでも笑顔に、そして幸運を与えることが出来たらと。その茄子さんが人の幸運を奪う?そんなはずが……
「無いと思いますか?」
「……っ」
「私が、今まで人の幸運を奪ったことが」
「無い……と思っています」
「そうです。『今日』までは」
「今日まで?」
確かにおかしいとは思った。余りにも今日は運がない、あんなに道は塞がってったし。つまり……
「はい♪今プロデューサが考えた通りだと思います♪」
「なぜそんなことを」
「愚問ですね。私達がプロデューサーに好意を持ってることは既に分かっていたはずです」
「はい、それについては自分でも考えていましたから」
「私、ほたるちゃんのこともプロデューサーの次ぐらいに好きで、大切に思ってるんです」
「……はい」
「プロデューサー」
「このまま三人で暮らしませんか?」
今日あったことは全て茄子さんが計画していた事。ほたると内緒話で何を話していたのか。全て分かってしまった。いや、分かりたくなかったが。
「私が宝くじを買えばお金なんてどうとでもなりますよ?」
「……そういうことのために茄子さんの運は使わないのではなかったのですか?」
「好きな人の隣にいられる。それ以上の幸福なんてあるんですか?」
「………」
「私はほたるちゃん、プロデューサーがいればそれでいいんです。それ以外は何もいりません。パパラッチなんてみ~んな運を吸い取ってあげます。私達の邪魔をする人皆です。それが例え事務所の皆さんでも、です。それを私がほたるちゃん。プロデューサーに分けてあげます」
「茄子さん……貴方は」
「『茄子』って呼んでください。あまりしたくありませんが……」
「……」
「今この場で『不幸』になりたくないですよね?」
「……茄子」
「それでいいんです。そうすれば私達は幸せです♪万事解決ですね!!」
「プロデュースはどうするんですか……俺が辞めるなんて言い出した日には暴動が起きますよ」
これを茄子さんが本気で言っているなら俺はどこで間違えたのだろう?やはりきちんと拒絶すべきだったのかもしれない。そうしていれば……
「大丈夫ですよ?だって皆運がないんですよ?そんなの皆さんあっという間に……ね?」
「何故……」
「『不慮の事故』ってニュースでよく聞くことになるかもしれませんね」
「茄子……!!」
「………冗談ですよ。私も流石にそこまではしません。私を温かく迎えてくれた皆さんには感謝もしていますから。だからそんなに目くじら立てないでください」
歪んでいる……のか?これは歪んだ愛なのか?俺には分からないな……
「歪んでいると思っていますね?確かにそうかもしれません。でも私はそれでも良いと思っています」
「ほたるは……ほたるはどうなんだ」
「ほたるちゃんも快く承諾してくれると思いますよ?だってほたるちゃんもプロデューサーのこと、好きなんですから」
「ほたるはそんなこと受け入れるわけないだろう!彼女は人を不幸にしてまで幸せを掴もうとは思ってはいないはずだ!!」
「……プロデューサー彼女いたことありませんね?まったくもう」
「あの幸せな顔を見てもそんなことが言えるんですか?」
「女の子ってどこまで純粋なんでしょう?」
「純粋、素直って素敵な言葉ですよね。今の私には似合わないぐらい」
「プロデューサー、もし私がほたるちゃんと今日のことを計画していたらどう思いますか?」
「軽蔑しますか?見捨てたりしますか?……しませんよね。いや出来るはずが無いんです。プロデューサーお人よしですから」
「ここで一つプロデューサーに朗報ですよ♪」
いやな予感がする。すでに喉はカラカラ、身体から冷や汗が出て背筋を伝っていく。全身から震えが止まらない。これ以上聞きたくない。いや聞くな。聞いちゃだめだ。
「ほたるちゃんは…………」
「既にこちら側ですよ♪」
途端に眠気が襲ってくる。これは何だ……俺は自分でお茶を入れた。薬類は入っていないはず。なのに全身が麻酔を打たれたように眠っていく。足先から順番に機能が閉じていく。動けない。何もできない。俺はその場から崩れた。
「あら?『運よく』プロデューサーに眠気が来てますね?」
「ぐっ…………」
「こんな状態で寝るなんて……プロデューサー期待してるんですか?」
「ち…………がっ…………」
「さっきあんな話をしたのにここで寝るなんて、襲ってくださいって言ってるようなものですよ?」
「か……こ…………」
「大丈夫ですよ、起きたら何もかも終わっています。いや、終わってるっていうのも違いますね。だって私達の新しい生活が始まるんですから♪」
「………っ…………!」
「お休みなさい……プロデューサー♪」
その言葉を最後に俺の意識は離れた。
・・・・・
あれから何時間経っただろうか。気づけば俺はほたると一緒に寝ていた。
「んっ……プロデューサー……」
年相応の可愛い寝顔だ。いつまでも見ていたくなる。そんなことを考えていると不意に部屋のドアが開いた。
「プロデューサー、起きたんですね」
「っ!!」
俺はとっさに身構える。ベッド上でかつほたるが横にいるのでそこまで動けないが、それでの反撃はいつでもできるように態勢をとった。
「きゃっ!プロデューサーどうしたんですか?そんなに身構えて……」
「あんなことがあったのに身構えないわけないだろう!!」
「ちょっと、プロデューサー声大きいですよ?それじゃほたるちゃんが起きちゃいます」
「そんなことは……」
「どうでもはよくないですよ?それにプロデューサーだってほたるちゃんと一緒に寝るだなんてずるいです!」
「何を言って……」
「私も一緒にほたるちゃんとプロデューサーと寝たいです!!」
「いやそうじゃなくて」
何かが違う……?俺が寝る前に見たのはあの茄子だったか……?そもそもあれは現実だったか?
「な、なぁ茄子」
「あっ!初めて呼び捨てしてくれましたね!!」
「いや茄子にそう呼べって……」
「呼んでほしいなぁとは思ってましたけど、実際口には出来なかったので……」
『今この場で不幸になりたくないですよね?』 ふと俺の脳裏によぎった言葉。あれはやはり夢だったのか……?
「でももう20時ですから、そろそろほたるちゃんを起こさないと」
「……そうだな」
「プロデューサー?顔色悪いですよ?何か嫌な夢でも見たんですか?」
「……なんでもない、気にしないでくれ」
「そうですか。ほたるちゃ~ん、そろそろ起きないと寮の時間過ぎちゃいますよ~」
「茄子、さん……?……ふぁ~……私、寝ちゃったんですね」
「はい♪それはもうぐっすりと。それにプロデューサも一緒に寝てましたよ?」
「プロデューサーも……?」
「そうですよ?添い寝ってやつですね!」
「あっ……あぁ…………///」
ほたるの白い肌が起きたばかりなのにみるみる顔が赤くなっていく。
「ふふっ。それじゃあもう帰りましょう」
「そうですね」
平和な日常を見ていると、先程までの事が夢だと確信に変わる。
「送っていこうか?」
「お願いしてもいいですか?」
その帰り道、塞がれていたはずの道が全て通れるようになっていた。やはりあれは夢だったのだと。だとしたらいつから夢だったのか、それだけは分からなかった。
「今日はありがとうございましたプロデューサ」
「ありがとう、ございました」
「いや、楽しんでくれたなら問題ないよ。何もしてないけど」
「何言ってるんですか、ほたるちゃんも幸せそうでしたし。今日は最高に幸運な一日でしたね♪」
「はい……♪」
「では帰りますね」
「おう、お疲れ」
「プロデューサーさん、また明日」
茄子とほたるが手をつないで寮の前まで行くと、なぜか二人ともこちらに戻ってきた。そして俺に近づき耳元で囁いた。
「プロデューサーさん、考えておいてくださいね?」
「ん?何がだ?」
「「私達三人で暮らすことですよっ。ふふっ………♪」」
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