織田信奈と正義の味方   作:零〜ゼロ〜

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どうも、零~ゼロ~です。
処女作といいますか、SSは初投稿ですので多目に見てくださいね()
ではどうぞ!


序章 衛宮士郎の道
序章1 果てしない道を歩く...


果てしない道を歩く。

 

 …あの戦いから何年経ったのだろうか。

 

「正義の味方」

 

 こんな子供のような夢を抱いてから、何年の月日が経ったのだろうか。今となっては判らない。いや、理解したくない、の間違いかもしれないが。

 

果てしない道を歩く。

 

 正義の味方になるために、自らの恩師だった遠坂と決別してからどれだけの時が流れたのだろう。

 魔術師としての才を持ちながら、三流以下の魔術使いの世話をしてくれた彼女は未だに元気にしているだろうか。…いや、彼女への心配は無用か。

 聖杯戦争が終結した後、時計塔留学をするにあたって俺を連れていってくれた。

 たった少しの間だったが、英語は会話ができる程度には話せるようになり、異なる文化の勉強もすることができた。魔術に関しても、簡単な治癒魔術くらいなら使えるようになった。いつ怪我をするか判らない戦場を駆ける俺には、絶対的に必要な魔術である。

 

 遠坂には感謝してもしきれない程の恩がある。しかし、彼女は優しすぎた。

 遠坂の夢は、「魔術の真理への探求」であり、更に言うならば「第二魔法の完成」である。

 「正義の味方」などを目指し、人を守るためには一般人の前ですら魔術を使うことを躊躇わない男。いや、人を守るために魔術を使おうとする男は、魔術協会としては邪魔でしかない。「魔術を一般人の前で使ってはいけない。」という、魔術師の規則に反する俺は危険人物だと認定されつつあり、その男の師匠である遠坂の立場すら危うくなる。

 それでも、彼女は俺を捨てなかった。

 自分の夢の弊害になることも厭わず、「正義の味方になりたい」などと言う男のために、自らの夢を閉ざそうとしている。

 

 俺は、そんな遠坂を裏切った。

 俺の道は破滅の道であり、彼女を巻き込みたくはない。巻き込む訳にはいかなかった。

 恩師であり、一時は恋人のような関係だった人を巻き込みたいなんて思うはずがない。

 とある明け方、遠坂が寝ていることを確認し、手紙だけを残して俺は旅立った。あいつは朝に弱いから、急に起きてくる、なんてことはない。そんな彼女の体質に初めて感謝した。

 どんな理由であれ、師匠を裏切ったことに変わりはない。

 彼女はどう感じたのだろう。どう思っているのだろう。確認する手立ては無いし、確認するつもりは無い。

 彼女には、自分の夢を叶えて欲しい。

 切実にそう願いながら、先の見えない道を進む。

 

果てしない道を歩く。

 

 俺は、自分の理想を叶えることができた。

 悪だと思う人間を殺し、善だと感じる人間を助ける。

 「より多くの人間を救うために、犠牲は仕方がない」という考えも、昔の自分は認めなかっただろうが、これは事実だった。俺はできる限りの手を尽くしている。でも、手から零れ落ちてしまう人が少なからずいるという事実に、俺はどうしようもない苛立ちを感じていた。他でもない、自分の無力さに。

 人は常に選択し続けなければならない。

 人を守るために、人を殺す。

 誰かを守るためには、立ちはだかる奴を殺し尽くさなければならない。

 俺は、沢山の人間を殺した。

 殺して、殺して、殺して、殺して、殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺

 

果てしない道を歩く。

 

 俺は、「正義の味方」であり、「殺人者」だ。

 どんな理由があろうとも、人を殺すことは正当な理由にはならない。

 俺は、この体が壊れるまで動き続ける。

 なぜなら、正義の味方だから。

 もう既に昔の記憶は磨り減ってきている。

 セピア色に色褪せて、思い出したくても思い出せない。

 幸せ、だったのだろうか。

 思い出そうとするだけで涙が流れそうになる。

 いや、「だったのだろうか」ではない。断じて違う。

 

「俺は幸せだった」

 

 突如起こった大火災によって両親を失い、記憶を失い、心を失った。

 そんな俺を包み込んでくれた人が、沢山いた。

 それによって俺は今現在、此処に立っている。故に、俺は皆に支えられて生きている。

 幾度となく行った無茶な投影により、髪の一部の色素が抜け白くなった。

 肌も一部が変色してしまい、浅黒いところができた。

 見た目も段々と“あの男”に近づいている。

 過去の記憶はハッキリとは思い出せないが、一つだけ、自信を持って言えることがある。

 

「決して、間違いなんかじゃなかった」

 

 自分の進んだ道は、正解とは到底言えないだろう。

 やっていることは人殺しだ。

 ――――それでも。

 自分が手を汚すことで救われる命があるなら。報われる人がいるのであれば。俺は戦い続けてみせる。

 

果てない道を歩く。

 

 先に何があろうと、俺が折れることはない。

「体は剣で出来ている」

 どこまでも真っ直ぐに、ひたすら愚直に進んでいこう。

 再度心に誓った男の顔は、とても安らかだった。

 

そして彼は、再び果てしない道を歩いていく。

これから先、何が起こるのかを知る術もなく。

彼が■■るのはそう遠い未来では無かった。


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