古城くんは基本けだるげ   作:トマボ

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日が空いて申し訳ないですが、ご容赦を。


古城くんは眠りについた2

暁家の母、暁深森は過能力者であり、その能力故かどうかは本人しか与り知らないところではあるが、医療に携わっている人間である。

 

その為、息子や娘の健康を維持しようという想いはありつつも、仕事兼趣味に比重がよりすぎている故に、生活能力が乏しいのだが、そこはご愛嬌だ。

 

しかし、家に帰る機会が少なくとも、自身を含めてトラブルや厄介事に事欠かない暁家の住人である子供達の為に、自身の持ち得る能力を活かして、よく、診ては、悩みを聞き、聞いては、見守っている。

自身が関わってきた患者や相手は少なくなどなく、一般的な人の縁とは異なるような人生経験を積んできているとも自覚している。

 

その為、大抵のことでは彼女を驚かせるには値しないのだが…。

 

何故か、眠りから目を覚まさない古城に対して己の無力さを感じていた。

ただ、眠っているだけならば珍しくもないが、呼吸も少なく、体温も低下し、心拍など偶に思い出したようにする程度まで下がっているのだ。

 

植物状態に近いかもしれないが、微かにではあるが脳は機能し、非常に僅かだが身体は反応を返す。

 

いつも通りに叩き起こそうとした妹や友人が苦心していたが、あまりにも起きなかった上に安らかな寝顔を浮かべていたので、割とまずい音のする一撃を入れてしまったのだが、それでも起こすことは叶わなかった。

 

通常の医師ならば匙を投げるか、患者だということを忘れて肘打ちでもくらわせているところである。

 

しかし、彼女はその優秀な能力と読み取った情報を読み解く頭脳、ある種の霊的な共鳴にまで及ぶその感覚から、最先端の技術よりも深いところまで、古城の状態を確認できてしまった。

 

 

結論として言うのならば、冬眠である。

 

 

餌も少なく、厳しい寒さの冬を越すために、秋の間に巣穴を準備して長い期間眠りに就き、春を待つ。

小動物やクマのイメージが強いだろうか。リスなどは木や土の中に巣穴を作り、木の実を溜め込んで冬の間はじっとしていると聞く。

 

冬眠中の動物達ですら、身に危険が迫っていたり危害を加えられたりすればすぐさま、逃げるか反撃するかを選ぶのだが、いちようとはいえ動物であるところの彼は野性をゴミ箱にシュートしてしまっているので危機感知能力が一切無い。

 

故に、年中暑いこの島で冬眠などと言う暴挙に出られるのだろう。

 

脱水症状にならないように、何度も点滴を取り替えられているのだが、血に眠る眷獣達が、『お、スポドリじゃん!ゴチになりやーす』とばかりに、吸収していくので追加が追いついていない。

 

ーーー 不死身なんだからほっとけばいいのでは?

 

……などと言われようとも、放っておけない優しい母なのである。多分。恐らく。きっと。メイビー。

 

だから、部屋の隅に放置されていたりはしない。きっと寝返りうったんだろ。(スッとぼけ

 

微動だにしていないけれど、無意識に床擦れを起こさぬようにしているのだろう。そういうことにしておいてもらいたい。

 

 

 

ならば、 結局のところ、一番心配しているのはどこなのか?

 

 

「はぁ……。うちの息子、卒業できるのかなぁ…?」

 

 

 

留年……出来るのだろうか?やはりまだまだ問題は多いらしい。

 

 

ただし、それを心配しているのは周りの人間達だけである。本人にも気にしろと言いたいところであった。

 

 

 

 

 

 

______________

 

 

 

 

 

所変わって彩海学園では、友人である矢瀬も溜息をついていた。

 

 

「浅葱〜?」

 

「古城……古城ぅ……。」

 

「あはは〜、ダメだこりゃ。矢瀬くんどうにかならへん?」

 

(俺が助けてほしいところなんだが。)

 

クラスメイトが古城成分不足で机で潰れている中、矢瀬は学校中から拾える同じような状態の者達の声を拾いながらウンザリしていた。

 

古城成分って何だよ…。もっともなツッコミをしながら全体を探っていく。

妹である凪沙は既に心を無にしているので何も聞こえない。

 

これだけならば、日常モノの一部で済まされるのだが、良くも悪くも有名な魔族特区なこの島である。

 

外からも中からもこぞって動き出すのだ。良くない者達が。

 

 

今なら、島でも世界でも獲れるぞ!!頑張れ悪役共!

 

 

 

もちろんそんなことを許すわけにも行かないので今日もキーストーンゲートでは、ポンコツと化したアルバイトの天才ハッカーに代わって、様々な人々やAIが涙目になり、魔導犯罪を取り締まる側では主戦力の魔女がコーヒー片手に古城くん人形に話しかけている為、こちらもピンチであった。

 

 

 

「まーじで、勘弁してくれよ。」

 

 

 

諜報活動が山積みになっていく冬の間は、結界を増やすために、能力を引き上げる化学薬品と共に胃薬を噛み砕いている矢瀬と島の守り手たる警備隊の一同であった。

 

 

頑張れ能力者と住人達よ!妹殿がコタツを出す許可をするまでの辛抱である!

 

 

 

 

 

 

 





結構また空きます。

皆さんは……、コタツを出すのはいつですか?
私は、出られないのでだしませぬ。

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