古城くんは基本けだるげ   作:トマボ

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別名中の人ネタ。
グラブルやっていたら衝動が…。
思い付きでやってるのでネタ切れは無いのですがね…。気だるげとはなんなのかという命題に打ちのめされる。

いや、しかしですね… ''基本'' 気だるげなのですよ(ボソッ

はい、いつもの言い訳でした。すいやせん。




別枠 酔い酔い古城くん 1

それは、お年頃の少女の僅かな冒険心から始まった。

 

両親はなかなか帰宅しないために、兄妹二人分とはいえ、中学生には負担ともなりうる暁家の家事をほぼ一人でこなす健気な少女。

 

 

兄は特殊なタイプの人間である。その事実を、幼い頃からずっと近くで見ていた彼女はよく知っている。そして、放っておくと際限なく堕ちて行くであろう兄の為、立ち上がったのがこの女神。暁凪沙嬢である。(矢瀬談)

 

そんな彼女は今日も兄の朝食を作ろうとしていた。

 

 

料理を覚えてから、毎日の健康バランスを考えて、食の細い兄の…否、食事は摂取するが結構な割合で睡眠欲に置換されたり、動き回ることの少なさから3食の合間に消費されないカロリーやら満腹感に振り回されながらも、負けじと栄養を摂らせようと奮闘している。

 

 

そして、今朝も日差しの強いこの島での一日に負けないようにと、食べ易くかつ適度に栄養を補給できるメニューを作ろうと思いついた訳なのだが…。

 

 

彼女がいくら大人びていても、中学生の好奇心は留まることを知らない。普段の責任感が強く、自制心のある彼女は、昨夜の料理番組で見かけたばかりの試したことの無い調理法を思い付きで試そうとは思わなかったのだろう。

 

 

火を扱う以上は、考えた上で行わなければならない。後から後悔しても遅いのだ。

 

 

しっかりとした環境と監修のもとで行わなければならない。

 

 

しかし、それ以前に料理スキルとは少しずつ試して磨いてゆくものではないだろうか。

 

ふと思いつきで試してみた結果、ゲテモノと化すか新しい美味しさに巡り合うかは運次第かもしれないが。

 

 

まぁ、そんなわけで、安売りしていた良い感じのお肉と、母が置いて行った赤いラベルのぶどうから作ったお酒。

 

サラダはそのままに、手に取った卵とベーコンと、目に入ってしまった新調したフライパン。

 

 

 

 

手元と冷蔵庫の中身を幾度となく見比べる。

 

 

 

簡単な話だ。朝に弱い兄のことを考えれば、どちらを選べば良いかなど分かりきっている。

 

 

朝からガッツリとしたメニューなど兄に限らず低血圧の者には拷問でしか無いだろう。

 

 

それに、試したいのならば夕飯にしたって良いのだ。簡単とは言え、朝食はまさに今作りかけだったのだから。そのまま作ってしまえばいい。

 

 

朝練が無いために幾分か余裕があるとは言えども、自分も兄も駅から通学しているのだ。そこまで時間に余裕は無いし、愚図る兄を起こさなければならない。

 

 

ならば、悩むこともないだろう。さて、と自身の煩悩を打ちはらい、賢い彼女は答えを出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女の頭の上には幻のコック帽が乗っていた。

 

 

 

 

 

 

 

____________

 

 

 

 

 

 

結果的に言えば、本日の暁家には朝から香ばしい香りが昇り、作った本人はとても満足していた。

 

そして、いつも通りに妹に起こして貰った古城。

 

テンションが高いのはいつものことだが、何故かご機嫌な妹はニコニコと華やかな笑顔を浮かべながら正面に座っている。

いつも丁寧で古城の体調を慮った朝食を作ってくれている凪沙。最初は勿論失敗し、真っ黒だった。

 

そして、テーブルに並べられたいつも以上にオシャレで豪勢な食事。

 

 

「さ、食べよ。古城くん。」

 

 

勧められるがままに、良く火の通った柔らかい肉を口に運び、回らない口で感想を告げる。

 

 

「えっへへ〜。そうかな。良かったよ。なんとなく魔が差して、昨日見たフランベを真似してみたんだよね。ちゃんと火が通るようには気をつけたんだけど、焼き過ぎちゃったかなって思って心配だったんだよね。上手くできて良かった〜。」

 

 

はにかむように笑顔を浮かべ、そして自身でも良く焼けた肉の旨味に目を輝かせている様子の凪沙を見て、古城は思う。

 

ーーうちの妹がこんなにk(略

 

 

 

量は少なめで、サラダなどの副菜も丁度良いが、いくら美味しくとも確かに胃にくることに変わりはない。が、兄の意地にかけて、喜ぶ妹のためになんとか食べきった古城。

頭に響く鈍痛がいつも以上に強いのは、きっと今日もカーテンから覗く日差しが強いせいなのだろう。

 

酒精は確かに飛んだ筈のものを食べ、幾分か上がった体温を感じながら、古城の意識は薄れていった。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

朝食を終えたあと、突っ伏すように寝始めた兄を置いて、後片付けを始めた凪沙。

 

兄がふとした瞬間に睡魔に負けるはいつものことである。

 

料理を口に運ぶ途中で寝られるよりはマシなので、もう少しだけ寝かせておいてあげようと思いながらも、慣れたもので、直ぐに皿を洗い終え、流し台の水気を取り終える。

 

 

「さて、それじゃあ古城くんを着替えさせて学校行こっか!」

 

 

今日も一日がんばるぞいっと、手を握って気合いを入れ、まだ眠りこけている兄を起こしに向かう。

 

 

リビングのドアを開け放ち、勢いよく起こしにかかる。

 

 

「さー、起きろー!寝坊助さんめー!」

 

「おいおい、凪沙。誰が寝坊助さんだって?」

 

「ぇっ!?!?」

 

 

だが、大きく一歩進んだところで、誰かにぶつかって抱きとめられた。

 

今朝は矢瀬も浅葱も来ていないので、言うまでもなく古城しかいない。逆に古城以外だとすれば怖い。大穴で、所在不明の父か母だが、声からして両方違う。

 

恐る恐る目を開けると、いつの間にか制服に着替えた古城がおり、寝ぼけ眼がデフォルトの兄にしては珍しくニヒルな笑みを浮かべていた。

 

 

「えっ…と、古城くん起きてたんだ?」

 

「ああ、可愛いらしい妹が胸に飛び込んで来てくれたとあっては、眠ってる場合じゃないだろう?」

 

「!!と、とりあえず離して!//」

 

歯に着せたような台詞を吐く兄。元々低めの声だったが、今日はどこか落ち着いたような声音をしており、無性に渋い。

似合っていると思ったが、さっきまで二度寝をしていた人物が何をくさいセリフをほざくのか。

 

だが、何か言い返そうという思考が働くよりもまず、古城の台詞から、自分が抱きとめられていたことを思い出し、羞恥心が働く。

 

 

 

整った容姿の銀髪が無性に似合う声音で、甘い台詞を吐きながら自分を抱きとめている。

 

 

キャ、キャー。ナンテハズカシイシチュエーションナノカシラー(棒

 

 

胸の前にあった手を突き出すように、思わず強めに押してしまい、すぐにハッとなった。

 

自分よりも非力で、元はスポーツマンのために体格は良いのに何故かヒョロヒョロな古城を突き飛ばしてしまった。

 

 

のだが、背に回されていた手が離れることはなく、突き飛ばした筈の手は対して距離を離せていなかった。

 

 

「ハッハ。恥ずかしがらなくても良いだろ。ほら、安心して力を抜け。」

 

 

右手は頭に置かれて、優しく髪をすくように撫でられ、片手になった筈なのに先よりも力強く胸元に引き寄せられる。

 

「え、ちょっと!どうしたの!?」

 

制服の上に着られたいつものパーカー。

 

鼻先に広がる柔軟剤の香りとは別に嗅ぎ慣れた古城の香り。

 

そして、久しぶりに兄に頭を撫でられ、その優しい手付きに思考がふわっと飛びかける。

 

どうしたのは、自分の方かもしれない。

 

 

 

 

早くトチ狂った兄をどうにかして、学校に行かねばならないのだが、日差し以上に自分の顔が熱い。鏡を見ずとも真っ赤であるのは分かりきっている。

 

 

「緊張してんのか?大丈夫だ。俺たちは兄妹だろ。だから、いつも頑張ってる可愛い妹にお礼がてら……。」

「ひうっ!?」

そこで台詞を止めて、肩に抱く様に頭を引き寄せられる。うなじに回された手の感触のこそばゆさに思わず変な声を上げてしまう。

 

 

そして、優しい表情のまま耳元に顔を寄せられ…

 

 

 

'''お兄ちゃんが可愛がってやるよ'''

 

 

 

 

 

 

雪菜ちゃん、ごめんね。朝に本を貸す約束をしてたけど、今日は遅刻するかもしれない。

 

腰が抜けてしまったのを兄に支えられながら、心の中で仲の良いクラスメイトに謝罪を送った。

 

 

 

 

 

 

 




ん?古城くんと凪沙さん?その後頭を撫でられながら少しだけ休んで、仲良く普通に登校しましたよ?

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