私こと、姫柊雪菜はある悩みを抱えています。
固い、融通が効かない、面倒くさい性格してるわね、etc…
剣巫としての修行を途中で切り上げて第四真祖の監視任務に就いた未熟な私では有りますが、それでも三聖様直々に指名を受け、手を抜くことなく研鑽を重ねてきた自負があります。
自らを律し常に最善を尽くす様に心掛け、私はこの任務に就いているのです。
ですので、これは決して勢いで行動しているわけではありません。自身を抑えきれずに午後の授業をサボってしまったなどということは無く、先輩の監視役としての任務を遂行するために、仕様のないことだったのです。
避けることのできない、どうしようもないことというのは誰にでもあるでしょう?
ええ、確かに個々人によって問題の大きさは違いますが、私にとっても大変遺憾な事態だと認識しています。
………そう、ですね。怒り狂ってなどいませんが、確かに何気ない言葉が琴線に触れた事実は認めましょう。
ですが、私は堪え性のない人間ではありませんので、例え図星で痛いところをつかれたところで、感情に任せて暴挙に出たりなどしませんとも。
今も任務の為に、そして、伸び悩んでいる自覚のある今の自分を越える為に、こうしてある人物に師事を仰ぐために前へと進んでいるのです。
あの人の前では、誰も肩肘を張らない。
高校生という思春期真っ盛りの時期であっても…、いえ、若者に限らず、老若男女問わずに、安心させられてしまう。
そんな不思議な魅力を持った人。
正確には、人間では無いのですが、心を持ったヒトであることには変わりません。
逆に心配させられてしまうことの方が多くとも、そこはご愛嬌というものでしょう。
思い返して見れば、最初からそうでした。
世界最強の吸血鬼を監視せよ、そんな任務を受けた時、言ってはなんですが、その、うちの組織の心配をしました。
監視任務だけならまだ分かります。しかし、秘密兵器を用意して頂いたのは有難い限りでしたが、私の様な小娘1人で災害を倒しきれ、などという無茶を仰る組織のトップ。
>ロケットランチャー渡すから台風止めてきてね☆
言わばこんな感じでしょうか。いえ、この槍はもっと強力なものでしょうが、しかし、それでも槍ですよ?
訓練も積みました。厳しい修行にも耐えました。そんな兵士がいたとします。
確かに、戦場やその他諸々で活躍はできるでしょう。はたまた英雄視されることもあるかも知れません。
しかし、そんな兵士にとても強い槍を渡して、隕石をどうにかしろと?
どないせいっちゅうねん。
こほん。失礼しました。少し熱くなりすぎましたね。しかしながら、的を得ている例えだと思います。
それでも、魔王が人の生活に溶け込んでいるという無理のある状況を先ずは見てから確認しようと、覚悟を決めてこの島へと来ました。
しかし、そこに居たのは、魔王の名札を付けたチワワさんでした。
はっ!?ごめんなさい!違うんです。物の例えです。ですので、落ち込まないでください!
…はい。続けさせて頂きます。
そうして、私は、監視対象の人となりを探るために普段の生活を追いました。接触すべきか否かは迷っていたので、今思えば、無理のある変装をして近づいたこともあります。
世間知らずでしたからね…。ふふ…。凪沙ちゃんと言う通りです…。
百均のマスクに眼鏡、帽子で、怪しさ満点のままついていきましたが、それでも、気付かれませんでした。
街の方々に会うと心配されるその人は、不思議と慕われています。きっと、その人を見ると、毒気を抜かれてしまうからだと思います。
妹さんと一緒に買い物に行く所も見ました。
重そうな買い物袋を妹さんだけが持っている光景に、少しだけむっとした覚えが有ります。今でこそ疑問に思うこともありませんが、適材適所、などと仰るその人は、悪知恵が働く者だと思っていました。
勉学よりも大切なことがある。そう言って、ご友人の方々から逃走し、昼寝に勤しんでいる所を見ました。
普段はその場所で喧嘩ばかりしている小さい子が、自分から相手を思い遣る事を覚えていました。公園で干からびかけていたその人を放っておけなかったのだと思います。
……あれ?知恵の回る人だというエピソードを挙げようとしたのですが。
あ、有りました。そうです、この島で初めて出会った悲しい問題です。詳細とは違いますが、後から得た教訓は、このような話だと思います。
先祖の遺品を取り返すために、止まることのできなかった優しい宣教師。
殺生を好まなかった信徒は、異国の地を壊してでも取り返さなければならないものがあった。
人の命と、矜持とを測りにかけているうちに、怨讐に取り憑かれた神父の言い分も最もで、始めに悪いのは、こちら側だったのです。
島の人間からすれば、それでも黙って殺されてたまるか、と言った話でしょうか。
向こうの怒りも最もで、こちらの怒りも最もで。
感情同士でぶつかり合って、話し合いも出来なくて、後は……。
そんな時に、その年中眠そうな人は、ズルをなさいました。
何気なく話をしてしまった神父の話を聞いて、共感し、泣きました。
そして、それだけでも周りのこわ〜い方々が勝手に解決してくれるのですが、その人は、普通なら取り次いでもらえないその電話を、絃神島のこれまたえら〜い方々に。
借りたものはちゃんと返さないと駄目。
言ってしまえばそれだけで、後は行き場のない怒りだけでした。
サブフロートに住人を避難させ、柱の建設を急ピッチで進め、差し替える。
大掛かりなそれは、大問題になる筈でした。けれど、サンドバックを進んで選んび、殴れなかった神父の代わりにロリビンタをくらってボロボロのその人と、その人を慕う小さな子達からのビデオメッセージには、無言の圧力が有りました。
汚い意地を張って、この顔を歪めるか?
後はお察しの通りで、細かい問題はこわ〜い方々が時間短縮です。
ですので、私は、そんな先輩の人を安心させる不思議な魅力と、いつでも周りを和ませる気だるげさ、暗い面を知ってもなお変わらないその純粋で柔軟なその心に憧れました。
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丁度昼休みに差しあたり、一番良い風が窓から吹き込む絶好の睡眠タイムにやってきた後輩が、なんか色々言っている。
そんな時には、どうするべきか。
「先輩、いえ…師匠!!どうか私を弟子に!!」
「え…嫌だ。」
「っ!いえ、諦めませんよ師匠!」
結論、寝る。
「寝ないでください!師匠!ししょーー!!」
よくお世話になっている後輩に無視を決め込むのはあんまらりしたくはないのだが、ハイライトが仕事を再開するまでは、関わるわけにはいかない。
「矢瀬、助けてくれ。」
「無理。」
古「勝手にうまく話が進んだだけで、ダラっとしたいだけなんだが……。」
そのうち続くかも、ということで思いつかなかったオチを放り投げて、投稿です。
また寒い。体調には気をつけてください、