この素晴らしい世界に捻くれを!   作:八住白露

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今回は少し長めに頑張りました。
温かい目でお願いします。


やはりこの世界の美人には何かがある。

「うっ…うぐっ……。ぐすっ……。生臭いよう……」

 

カズマの後ろを、粘液まみれのアクアがめそめそと泣きながら付いて行く。

そしてその後ろを同じく粘液まみれのめぐみんを背負った俺が歩く。

…カエル臭い。

 

「カエルの体内って、臭いけどいい感じに温かいんですね……。知りたくもない知識が増え増した」

 

それ、完全にこっちのセリフだよ。

俺がめぐみんから漂う、カエル臭い匂いと体…主に背中に纏わりつくカエルの粘液に耐えていると、カズマがめぐみんに声を掛ける。

 

「今後、爆裂魔法は緊急の時以外禁止だな。これからは、ほかの魔法で頑張ってくれよ、めぐみん」

 

カズマの問いに、俺の背中におぶさっているめぐみんが、肩を掴む手に力を込めた。

 

「………使えません」

 

「………は?何が使えないんだ?」

 

「…私は、爆裂魔法しか使えないんです。他には、一切の魔法が使えません」

 

「…マジか」

 

「……マジです」

 

カズマとめぐみんが静まり返るなか、先程まで、鼻をぐずぐず鳴らしてたアクアが、ようやく会話に参加する。

 

「爆裂魔法以外使えないってどういう事?爆裂魔法を取得できる程のスキルポイントがあるなら、他の魔法を会得していない訳がないでしょう?」

 

特典の死神カードを持っているので、俺はポイントでスキルを会得できる事を知っているのだが、カズマは詳しいことを知らないようなので、不思議そうにした、カズマの顔を見てアクアが説明を始める。

多少の知識のある俺だが、冒険者カードについては未だ何もしていないので、俺もアクアの説明に耳を傾ける。

 

「スキルポイントってのは、職業に就いた時に貰える、スキルを習得するためのポイントよ。優秀な者ほど初期ポイントは多くて、このポイントを振り分けて様々なスキルを習得するの。例えば、超優秀な私なんかは、まず宴会芸スキルを全部習得し、それからアークウィザードの全魔法も習得したわ」

 

「なあ、宴会芸スキルってなんだ?」

 

アクアは俺の質問を無視して先を続ける。

 

「スキルは、職業や個人によって習得できる種類が限られてくるわ。例えば水が苦手な人は氷結や水属性のスキルを取得する際、普通の人よりも大量のポイントが必要だったり、最悪、習得自体ができなかったり。…で、爆発系の魔法は複数属性って言って、火や風系列のの魔法の深い知識が必要な魔法なの。つまり、爆発系の魔法を習得できるくらいの者なら、他の属性の魔法なんて簡単に習得できるはずなのよ」

 

「…私は爆裂魔法をこよなく愛するアークウィザード。爆発系の魔法が好きなんじゃないです。爆裂魔法だけが好きなのです。もちろんほかのスキルを取れば楽に冒険ができるでしょう。火、水、土、風。この基本属性のスキルを取っておくだけでも違うでしょう。…でもダメなのです。私は爆裂魔法しか愛せない。たとえ今の私の魔力では一日一発が限界でも。たとえ魔法を使った後あ倒れるとしても。それでも私は、爆裂魔法しか愛せない!だって、私は爆裂魔法を使うためだけに、アークウィザードの道を選んだのですから!」

 

「素晴らしい!素晴らしいわ!その、非効率ばがらもロマンを追い求めるその姿に、私は感動したわ!」

 

アクアがめぐみんの姿勢を褒めていると、カズマが慌てたように、会話に入る。

 

「そっか。多分茨の道だろうけど頑張れよ。お、そろそろ街が見えて来たな。それじゃあ、ギルドに着いたら今回の報酬を山分けにしよう。うん、まあ、また機会があれば何処かで会うこともあるだろ」

 

カズマのロケットが切り離し作業に入ったのと同時にめぐみんが俺の服を離さんとばかりに強く握りしめる。

 

「ふ……。我が望みは、爆裂魔法を放つ事。報酬などおまけに過ぎず、なんなら山分けではなく、食事とお風呂とその他雑費を出して貰えるなら、我は無報酬でもいいと考えている。そう、アークウィザードである我が力が、今なら食費とちょこっとだけ!これはもう、長期契約を交わすしかないのではないだろうか!」

 

「ねえ、ちょっと、カズマさん?あんまりこの子を興奮させないでくれません?この子背負っているの、俺なんですけど、とてもアークウィザードと思えない握力で握りしめられているの、俺の肩なんですけど」

 

「いやいや、その強力な力は俺達みたいな弱小パーティーには向いてない。そう、めぐみんの力は俺達には宝の持ち腐れだ。俺達の様な駆け出しは普通の魔法使いで十分だ。それにウチにはエンチャンターのハチマンがいるしな」

 

カズマの発言により、めぐみんの矛先がこちらへと向く。

 

「いえいえ、ハチマンはそんな事、思っていないですよね?エンチャンターは支援魔法と攻撃魔法に、エンチャンター本来の魔法が使えますけど、覚えられる魔法が多い分、攻撃魔法だけに、スキルポイントを割くわけにはいきませんし、本職のアークウィザードがいた方が心強いですよね。それに、覚えられる攻撃魔法にも限りがありますし、そこはハチマンの魔法属性の適正によりますけど、ともかく!アークウィザードを仲間にして損はないですよ」

 

「いや、本職のアークウィザードを仲間にって言われても。確かに俺は覚えられる攻撃魔法には限りがあるけど……お前、爆裂魔法しか覚えてないじゃん」

 

一瞬の沈黙の後、めぐみんは強硬策に出た。

 

「見捨てないでください!もうどこのパーティーも拾ってくれないのです!荷物持ちでも何でもしますから!お願いです、私を捨てないでください!」

 

現在、平原から戻り街からギルドへ戻ろうとしている最中、なのでもちろん人の目もある。

そんな中めぐみんが、捨てないでだのと大声で叫ぶためか、通行人達がこちらを見てひそひそ話していた。

その通行人達の様子を見ると、めぐみんは口元をにやり歪め…。

 

「どんなプレイでも大丈夫ですから!先程の、カエルを使ったヌルヌルプレイだって耐えてみせ」

 

「よーし分かった!めぐみん、これからよろしくな!」

 

急いでカズマがめぐみんの口を塞ぎ、新たなパーティーメンバーができた瞬間だった。

 

 

 

「はい、確かに。ジャイアントトードを三日以内に五匹討伐。クエストの完了を確認いたしました。ご苦労様でした」

 

冒険者ギルドの受付に報告を終え、規定の報酬を貰う。

粘液まみれたアクアとめぐみんは、大衆浴場に向かわせ、俺とカズマで受付で、冒険者カードをカウンターに置いてある妙な箱を操作して、チェックを終えていた。

改めてカードを見てると自分のレベルが上がっていた。

 

「おおーレベルが三に上がってる」

 

カズマも上がっていたようで、声を上げている。

 

「ハチマンも上がったのか?」

 

「ああ、俺もレベルが三に上がっているな」

 

同じ量のカエルを倒したのだから、当然だと思うのだが、職業ごとに経験値の基準の差があったりするかもしれない。

 

「でも、レベルが上がってもたいして強くなった気がしないよなー」

 

「まあ、一応ステータスが少し上がっているけど、確かにあんまし強くなった気がしないな」

 

「やっぱ、ここはスキルを覚えないとな、さっき冒険者カードを見たらスキルポイントが三になってたからな」

 

やっぱレベルが上がると、スキルポイントが上がるのか、自分のスキルポイント数を確認するために、カードのスキルポイントの書かれているいる場所を探すと。

六十二……これが今の俺のスキルポイント数だ、あまりのポイント数に驚くが、アクアの言葉を思い出す。『スキルポイントってのは、職業に就いた時に貰える、スキルを習得するためのポイントよ。優秀な者ほど初期ポイントは多くて、このポイントを振り分けて様々なスキルを習得するの。例えば、超優秀な私なんかは、まず宴会芸スキルを全部習得し、それからアークウィザードの全魔法も習得したわ』つまり、俺の初期ポイント数は五十九で、レベルが上がったことによりスキルポンとが三追加された。

 

宴会芸スキルにアークプリーストの魔法をすべて習得したということは、アクアの初期スキルポイントは俺とは比べ物にならないと思うが、それでも俺はかなりマシな方だと思う。

なんせカズマは…初期ポイントゼロだったということだからだ。

そんなカズマに俺のスキルポイント数を教えるのを躊躇うが、話の流れ上、言わない訳にもいかない、覚悟を決め言おうとしたとき、第三者の加入によってそれは阻止された。

 

「…すまない、ちょっといいだろうか……?」

 

女騎士…見た感じ、クールな印象を持つ、とびきりの美女が無表情にこちらを見ていた。

身長はカズマより上で俺と同じぐらい、女にしては背が高い方だろう。

頑丈そうな金属鎧に身を包んだ、金髪碧眼の美女である。

年は一つか二つ程俺より上の印象を感じる。

 

「あ、えーっと、何でしょうか?」

 

「うむ……。この募集はあなたのパーティーの募集だろう?もう人の募集はしていないのだろうか」

 

カズマの若干上擦った声を見事にスルーしてもらい、彼女の本題を問いかけてくる。

 

「あー、一応まだメンバーは募集いていますよ。オススメはしませんけど」

 

「ぜひ私を!ぜひ、この私をパーティーに!」

 

さりげなく断ろうと俺の言葉に突然食いつく女騎士

この瞬間にもうすでに、俺の危機感値センサーあ反応していた。

最初は美人局かと思ったのだが、違うようだ、何かもっと得体の知れないものを感じる、それも極度の何かだ。

 

「い、いやいや、待って、いろいろと問題があるパーティーなんですよ、他の仲間二人はポンコツだし、俺なんて最弱職で、さっきだって仲間二人が粘液まみれに」

 

カズマが『粘液まみれ』といった瞬間に女騎士が反応する。

 

「やはり、先程の粘液まみれの二人はあなた達の仲間だったのか!一体何があったらあんな目に……!わ、私も…!私もあんな風に…!」

 

「え?」

 

あまりの女騎士の発言にカズマが声を上げる。

 

「いや違う。あんな年端もいかない二人の少女、それがあんな目に遭うだなんて騎士として見過ごせない。どうだろう、この私はクルセイダーというナイトの上級職だ。募集要項にも当てはまると思うのだが」

 

カズマもこの女騎士から何かを感じ取ったのか、やんわりと断る体制に入る。

 

「いやー、先程も言いましたけどオススメしませんよ。仲間の一人は何の役に立つのか分らないですし、もう一人は一日一発しか魔法が撃てないです。そして俺は最弱職に隣の仲間は、覚える魔法が多くて晩成タイプのエンチャンター。未だレベルは三のポンコツパーティーなんで、他の所をオススメします」

 

「なら尚更都合が良い!いや実は言い辛かったのだが、私は力と耐久力には自信があるのだが不器用で……。その……、攻撃が全く当たらないのだ……という訳で、上級職だが気を遣わなくていい。ガンガン前に出るので、盾代わりにこき使って欲しい」

 

「いや、女性が盾代わりなんて、ウチのパーティーは貧弱なんで本当にあなたに攻撃が回ってきますって。それこそ毎回モンスターに袋叩きにされるかも知れませんよ!?」

 

「望む所だ」

 

「いや、アレですよ。今日なんて仲間二人がカエルに捕食されて粘液まみれにされたんですよ!?それが毎日続くかも」

 

「むしろ望むと所だっ!」

 

カズマのやんわりと断る作戦はむしろ相手の条件を満たすだけで終わった。

 

 

 

 

翌日

目が覚めると、いつも道理の馬糞の匂いに藁の匂いが俺の穴を透き通って、俺の意識を覚醒させる。

それと同時に、身体に僅かばかりの痛みを感じた。

この痛みは、異世界生活二日目にして、味わったことのある痛みだ。

最近はあまり痛むことがなかったのだが、やはり昨日のジャイアントトード討伐のクエストが原因であろう。

…多少、言い回しを変えただけで、簡潔に言うと、ただの筋肉痛のことだ、土木工事を始めたばかりの頃は、日常生活内で使わない筋肉を使ったので二日目の土木掃除は地獄だった。

だが、そんなバイト生活のおかげか、今回の筋肉痛は違和感程度にし感じない。

 

まあ、そんなこんなで、昨日はかなり疲れていたようで、俺は随分遅くまで寝ていたようだ。

その証拠に、日差しは高く上がり、周りには…誰もいなかった。

少し遅めの昼食を取るためにギルドに向かったのだが、俺はそこでとんでもないモノを目撃してしまったのであった。

ギルドの扉を開け中に入った時に、聞き覚えのある声が聞こえたのだが、俺は目の前に起きている惨状を脳内で処理するので精一杯だった。

カズマがめぐみんのパンツを握りしめていた。

 

 

カズマサイド

 

俺は、レベルが上がったことで得た、スキルポイントで、昨日のダクネス…昨日の女騎士の知り合いである。盗賊のクリスに冒険者ギルドの裏でスキルを教わっていた。

冒険者は他人にスキルを教えてもらうことのよって、冒険者カードに教えて貰ったスキルが表示され、そのスキルをポイントを使って会得する。

俺はクリスから盗賊スキルである窃盗、潜伏、敵感知スキルを教わっていた。

どれも一ポイントで覚えられるお手軽スキルで、用いるスキルポイントを使いこの三つのスキルを会得したのだ。

 

ギルドに戻り次第、覚えたスキルを見せてくれとのことで、めぐみんにクリスから教わった、窃盗をめぐみんに使うことにする。

窃盗は対象者の持ち物をなんでも一つ奪い取るスキル。

窃盗できる物はランダムだが、使用者のステータスの幸運値に依存する。

まさに幸運だけが高い俺に打ってつけのスキル。

 

「スティールッ!」

 

俺が叫び、めぐみんに右手を突き出すと、その手にはしっかりと黒い布が握られていた。

そう、パンツである。

 

「…なんですか?レベルが上がってステータスが上がったから、冒険者から変態にジョブチェンジしたんですか?…あの、スースーするのでぱんつ返してください……」

 

めぐみんにそういわれ、ぱんつを返そうとしたときに、ギルドの扉が開かれ…見知った人物が現れた。

…ぼさぼさの髪にアンテナの様にピンと跳ねたアホ毛に何より、整った顔を一発でダメにする目を持つ…そう俺のパーティーメンバーのハチマンであった。

 

 

 

 

 

ハチマンサイド

 

あまりの状況に言葉が出ないが、何とか言葉をひねり出す。

 

「あー間違えました」

 

自分でも何を言っているのか分からなかったが、何も見ていなかったように、周れ右でギルドの扉を閉めようとする。

 

「待て待て待て待て、ちょっとまてーい!」

 

カズマが慌てて俺の肩を掴んで誤解だと叫ぶ。

 

「大丈夫だから、俺そういうの気にしないタイプあから、性癖なんて人それぞれだしな、恥じることではないぞ…多分」

 

「いや、絶対誤解してるから、ロリコンじゃないから。スキルのせいだから」

 

必死に誤解を解こうとしているカズマに俺は言葉を一言添えてやる。

 

「大丈夫だ、日本じゃあ男性の七割以上がロリコンだから」

 

「だから、俺はロリコンじゃあねえって言ってるだろ!俺は…俺はなあ!おっきいおっぱいが好きなんだよ!!」

 

ロリコン疑惑を解きたいが為に熱くなっていたのか、つい叫んでしまったカズマの本音は冒険者ギルドに響き渡った。

 

…そこから先に何があったのかは想像にお任せします。

いろいろとヒントを与えるなら、周りから目線、ロリコン発言により怒った爆裂娘、カズマの最後の発言を詳しくと問いただすクルセイダーの女騎士。

まあ、俺から言えることはここまでです。

俺は食事を続けているアクアのもとに行きスキルの覚え方を教えてもらいながら昼食を終えた。

 

 

 




本日も最後まで読んでもらった方ありがとうございます。
次は明日にでも投稿する予定です。
評価感想などお待ちしています。

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