武偵高校に受かって、正式に武偵となり高校生となった。
入学式は滞りなく終了し、割り振られている自分の教室に移動する。
ガラガラ、とドアを開けると何人か生徒が座っていた。
「お!金次だ。入試の時ぶりだな」
疲れた顔をしながら振り返る金次。
「ああ、明可。それと武偵だと金次はカタカナ表記になってキンジになるからな」
へー知らなかった。興味無いし。
「んじゃ俺もアスカでいいや、どうで漢字は当て字だから」
イ・ウーでも明可って呼ぶのは教授だけだ。
キンジの後ろの席に何食わぬ顔で腰を下ろす。
席に座った後は武偵について知らない所をキンジに質問しまくった。
やれ、ランクがどうとか、やれ、武偵は学力が低いだとか、やれ、金一にカナを話しをして殴られたとか、だ。
キンジと駄弁っていると教室に入ってきたイケメンが近づいて来た。
「始めましてだね。僕は
キンジは差し出された手を握り握手をする。
「なんで、俺なんかのこと知ってんだよ」
「強襲科でも、噂になっているよ。入試で試験官を倒した奴が居るってね」
まじか、と頭を抱えるキンジ。
武偵は実力が重要視される。特に強襲は前線にでる分危険度も高い、強ければ有名になる当たり前のことだ。
笑いながら肩に手を置いておいてやる。
「ドンマイだな。俺も試験官とやってみたかったな。絶対強いから楽しい勝負になると思うんだよ」
「お前は
「戦うのって面白いだろ。こう生きてるって感じがするじゃん!」
まあ、戦わなければ死ぬ環境に居たからだけどな。
「日隅くんは同級生の中で噂になっているよ。一撃目か二激目で確実に相手を気絶させて、攻撃を受けたのは素手で戦った遠山くんとの戦いだけってね」
にこやかに笑いながら不知火は教えてくれた。
「あれくらいできなきゃダメだろ。キンジは素手が強かったからな。少し素手での戦い方を工夫しなきゃいけないな」
「あれ以上強くなられたら、たまらないぞ」
入試で戦ったキンジはHSSの状態だった。
つまり、その状態でほぼ互角に戦った俺のことを自分より格上だと思うのは当然かもしれない。でも、HSSはやり方によって金一のように自在になれるようになるかもしれない。そうしたら、当然実力も上がる。
「本物のナイフありならもうちょっとはいい動いできるぞ。俺の主武器はトレンチナイフとカラビットナイフの立体移動戦術だからな。さて、不知火あっちで仲良くお話をしようじゃないか、キンジを席で待っているといいぞ。新し話相手がすぐ来てくれるからな」
意味を理解していないキンジを放っていて不知火の腕を引っ張りながら廊下に出る。
「どうしたんだい?」
「恋する乙女に気を使ってやるのは学友として当然だと思わないか」
「それって、ああそういうことか」
不知火も理解したようだ。
キンジと仲良くしゃべっている綺麗な黒髪美人のピンクオーラを纏っているクラスメイト。
俺と不知火がキンジが三人でしゃべっていると席に座りながらチラチラとキンジの様子を伺っていたからもしかしたらと思ったけど。正解だったか。
「よく気づいたね」
「偶然、視界に入ったからな。キンジに恋人ができるのは時間の問題か」
ニシシシ、と笑いっていると、不知火も笑っていた。
「
よくご存じで。
「超能力捜査研究科か。超能力ってよく分からんからな。知り合いに何人か使える奴いるけど」
イ・ウーでも超能力は少なくない人数がいる。例外もいるけど。
「アーくん!」
廊下の壁にもたれていると横から衝撃が襲ってきた。
「ごふっ!」
横っ腹に受けた衝撃で呼吸が乱れ咳込む。
息を整えながら衝撃の原因に視線を向ける。
そこに居たのは綺麗なな金髪ロングを左右で括ったツインテールの顔なじみだ。
「理子さんや、朝からボディータックルとは如何なもんかと思うんですがね」
「大丈夫だよ。アーくんなら耐えられるよ」
何を根拠に耐えられるといっているのやら。
抱き着いたままの理子を剥がそうと身じろぎしていると、
「二人は仲良いね。知り合いなのかい」
「そうだよ。アーくんは理子を助けてくれる王子様なんだよ!これからコンビも組むしね」
王子様か~と笑いながら理子から明可に視線を移す不知火。
「んなこと初めて聞いたぞ!」
初めて言ったんだから当たり前じゃ~ん、と返された。
コイツ、イ・ウーに来た当初と性格違いすぎるだろ。数年の間少ししか会わない間に何が有ったんだか。
理子を剥がすことは諦め壁に体重を掛ける。
「理子よ、そろそろ離れてはくれまいか。周りからの嫉妬の視線が刺さりまくってる。自分が可愛いくて綺麗だと自覚してからくっ付いてくれ」
「か、可愛いとか、き、綺麗とか面と向かって言われると、流石にりこりんも恥ずかしいかな~」
赤くなった顔を両手で隠しながら教室に逃げるように入っていく理子。
「あそこまではっきり言えるなんてすごいね。日隅くんて」
「不知火だって言えるだろ。そのイケメンスマイルで言えば効果は三倍だ。それに可愛いくて綺麗な人に可愛いっていうのも綺麗って言うのも普通だろ、その通りなんだから」
これを聞いた周りの男子は、普通は恥ずかしくて言えないから、と、心の中でツッコミをした。
担任教師が教室に到着したことでお喋りは終了となった。
学校は特に何事もなく終了を迎えた。
時刻は既に九時をまわり、学生寮の自室で休んでいた。
本来なら四人部屋なのだが、同じ部屋になるはずだった生徒が入試で俺と戦ったらしく合格通知を受けたずに一般校に移ってしまったため、一人で使用している。
そう、本来なら一人のはずだった。
「アハハハハ!面白すぎるよ~」
ソファに座って俺の買ってきたポテチを勝手に食べている理子が居なければな。
「どうやって入ったかは聞かなくていいや。なんのようだ」
「なにって遊びに来たんだよ」
ポテチを口に放り込みながら答える。
「遊びにか、てっきりブラドとした約束について報告でもするつもりなのかと思ったよ」
緑茶が入った湯のみを傾ける。
ポテチを食べていた手は止まり袋を机の上に置いた、
「やっぱり知ってたんだね」
「そりゃ~も予想してたことだしな。お前がイ・ウーに来てすぐに私の自由はって聞かれたときにブラドに捕まらい位って答えたから、そのうちブラドにケンカ売るか、それともブラドとなんか約束でもするんじゃないかと思ってたよ。それで、約束の内容が初代リュパンを超えるって」
「無理だって言いたいのかよ」
いつものちゃらけた喋り方ではなくガラの悪い喋り方に変わった。
―――通称、裏理子。
「無理とは言わないけど、絶対勝てるとも言わない。ま、自分で選んだなら覚悟を持てよ」
「分かってるよ」
再びポテチをパリパリ食べだす理子。
「あれ、もうないや、ねーアーくん新しいの買って来てよ」
「まだ、棚に入ってたろ」
「全部食べちゃった」
テヘ、と言いながら舌を出してリアクションをする理子。
リアクションにツッコミも入れずに湯のみを机に置いて台所の棚を開けると、いつもお菓子を入れている所には五袋あったポテチが一つもなく、代わりに、一枚の紙が置いてあった。
―――理子はうすしおよりコンソメの方が好き―――
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