「明可くんには理子くんと一緒に東京武偵高校に入学してもらいたい」
朝ごはんを食べて、すぐに呼び出されたと思えば、いきなり武偵高校に入学しろとは………何言ってんだこの人。
「教授。俺は人を殺して金を稼いでるんだぞ、それが犯罪者を捕まえるのが仕事の武偵になってどうすんだよ」
武偵とは"武装探偵"の略称で読んで字のごとく武装した探偵だ。
銃と刀剣類の所持が認められた武偵は犯罪差を逮捕や護衛、猫探しや倉庫の片付けなど金を積めばなんでもやる何でも屋だ。
「問題ないよ。綺麗な戸籍も用意した。一度学校というものを経験するのはいいことだ。それに金一くんの弟である金次くんと来年、東京武偵高校に私の曾孫が転校する。その観察と監視を頼みたいから先に潜入して場に慣れていてほしいんだ」
金一とはカナだ。正しくはカナは金一が女装した姿で、金一とカナの状態では精神が分かれているらしく。金一の状態でカナの話を振ると怒る。
ちなみに、俺はそれを知らずに話を振ったら飲んでいた缶コーヒーを投げられた。
金一が女装する理由は
女装をといたら精神的に来るものがあるのは難点だと思うけど。
つまり、弟の金次もHSSを受け継いでいるということ。そして教授の曾孫。
絶対になにか起こるよな。
「学校か、一回くらい行ってみるのもありか……分かった。武偵校に行く。代わりにルカを
イ・ウーに所属している万能メイド、リサ・アヴェ・デュ・アンク。
会計の仕事を任せると7~8割りくらいまでまけさせる。ココは交渉後、二度と取引したくない、とまで言わせた。
「分かった、頼んでおこう。武偵校の入試は明日だ。一時後に出発すれば余裕で間に合うよ」
はいはい、と手を振りながら部屋を出て、自室に戻り荷造りを始めた。
着替え、銃、ナイフ、爆弾の整備道具。これくらいか。他に必要なものが有れば現地で調達すればいいか。
日本ね~。親に捨てられから数年。一度も日本の地に足を踏み入れたことはない。
「ま、親の顔なんて覚えてないから、どうでもいいか」
カバンのチャックをしめて、肩に担ぎ、ドアを開けると、ドアの前にはジャンヌに借りたちょっとサイズの大きい服をきたルアが立っていた。
研究所で出会った時とは違い、ボサボサだった髪も綺麗に整えられている。
「イ・ウーを出て日本で学生に生活を送ると教授から聞きました」
「そうだけど、ルアことは教授に頼んでおいたから好きにすると良いよ。残るのも出て行くのもルカが選べばいい」
「………どうしたいかはもう決まっているから大丈夫。アスカ」
言いたいことは言った、とばかりにそそくさと何処かへ行ってしまった。
カバンを担ぎ直し、オルクスの保管庫に向かった。
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レインボーブリッジ南方に浮かぶ南北およそ2キロメートル・東西500メートルに作られた人工浮島に武偵高校はある。
カバンをチェックインしたホテルの置いて、筆記用具とスマホ、グロック、トレンチとカラビットだけを持って入試に向かう。ホテルには同じように県外から来ていた生徒が何人かいたので、後ろをついていくだけで迷わずに武偵校に到着した。
武偵校には
そして今から始まるのは専門学科のテスト。
俺が選んだのは金一の弟、金次が入る強襲科。
試験の内容はバトルロワイヤル。ルールはシンプルに出会いえば戦って勝ち残るだけ、死に至らしめる攻撃は禁止。武器はゴム弾を使った銃とゴムナイフ。罠を使って良しということだ。
『そんじゃ、お前等殺し合えや!』
建物全体に響く渡る声で開始が宣言された。
開始じゃなくて殺し合えだったけど。
右手にグロック、左手に逆手のゴムナイフ。
コンコン、と床をつま先で叩き、走り出した。
確認した相手から手当たり次第に沈めていく。
ゴム弾を躱しながら、腹にゴム弾を撃ち込み。横られたならゴムナイフを沈める。
最初の5人程は特攻が来るとは想定していなかったのか、ただ弱いだけなのか、一撃で気絶し、そこからは一発目は防ぐか躱すかをして対象するも二発目には気絶という結果だった。
階の敵を全員片づけたあとは階段を使って下に降りては同じことを繰り返す。ゴム弾には制限がある分、出来る限りゴムナイフもしくは素手で敵を気絶させる。
「武偵の強さを金一を強さの基準にてたら弱っち奴ばっかじゃん」
きっと、それを聞いた理子やジャンヌ、金一強さを知っている人物なら基準がおかしい、とツッコミ入れる事だろうがこの階で意識があるのはアスカただ一人だけだ。
ナイフをペン回しのように回しながら敵を捜すが、既に開始から二十分経過している。残り人数は少ない中でそうそう敵に出会うことも無い。
理子も強襲科の試験受けるって言ってたから戦えたらって思ったけど、上の階だったかな。
仕方無くもう一つ下の階に降りるとガタイの良い大人が床に倒れており、近くには一人の男が立っていた。
「日本人の学生って、そんなガタイのいい奴いるのか」
「いや、この人は監督官だよ」
独り言に律儀に答えてくれた青年は雰囲気が金一―――いや、カナに似ていた。
「もしかして金一の弟だったりする?」
「兄さんを知っているのかい」
合っていた。常時あの雰囲気なのかそれとも何かあってHSSになっているか分からないが、金一の弟なら強いだろうと、構えを取る。
「金一とはまあ、そうだな。友人ってよりは仕事仲間って方が近いかな。一戦お願いするよ!」
返事を聞かずに、約5メートルの距離を詰める為に走り出した。
「いいよ。相手になろう」
走りながらグロックを構え発砲すると、金次は最小の動きでゴム弾を避けてみせた。
目はいいか。ナイフは使ってないようだし、こっちも拳を使うか。
グロックとゴムナイフをしまい、拳を握る。
「素手みたいだからこっちも素手でいくわ」
「わざわざ親切にどうも!」
走りながら1メートルの距離に近付いてアスカに対して金次は脇を蹴ろうと足を動かすも、殺気を感じ取り床に膝を付け膝立の状態になり上半身を後ろに倒すことで蹴りを避けた。
「よく避けられたね」
「鼻先掠った」
鼻の先を掻きながらニシシ、と笑う。
カナと戦っている時とすごい似てるな。一度も勝ったこと無いけど。
再び拳が届く距離まで近づいたアスカは金次の拳や蹴りを服には掠るも体には当たらないギリギリで避けながら攻撃を繰り返した。
「兄さんにも引けを取らない強さだ」
「金一との勝負は今の所引き分けのままだからな」
『試験はここまでや!』
決着は着くことなく試験終わりのアナウンスが流れた。
「俺は遠山金次だ。キンジでいいよ」
「