緋色に並ぶΑ   作:ノムリ

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間宮

 茨木県の山奥にある小さな村。のどかな田舎だった数分前までは。

 

 村中の建物は燃え、倒壊した建物の瓦礫があちこちに散乱している。

 

 どうして田舎の村をイ・ウーが襲ってるかと言えば、この村は公儀隠密、今でいう暗部の仕事をしていた間宮林蔵の子孫が集まっている村で教授は間宮の技術を教えて欲しいと頼んだのだが、断られたことで力づく手に入れようと数人のメンバーが動いた。

 

 俺も仕事終わりに駆り出された一人になる。

 

 口元を強化プラスチックで作った折り畳み式フェイスマスクで隠し。

 あちこちに投げナイフを仕込んでいる深い緑色のジャケット。

 黒色のズボンにベルトに数種類の爆弾を入れているポーチを左右三つつづ取り付け。

 腰には長さ15cmのトレンチナイフ。脇のホルスターにグロック18cを1丁。

 これが仕事着になる。

 

 火が上がり地味に暑さがしんどい中で遠くから、

 

 ガガガガガガガ、とモーター音が聞こえてくる方向に向かうと久々顔を合わせる知り合いがいた。

 

 小柄の体系に中国の着物っぽい服装に左右に流れるツインテールまでは馴染みがあるが、両手で持つガトリングガンは知らない。

 

「久しぶりココ」

 

「久しいネ。アスカ」

 

 アスカは俺の本名であり明可というのは当て字だ。教授が学校に入る時に必要だろうと気を使ってくれたが、漢字表記で呼ぶのはイ・ウーでも教授だけだ。

 

 喋りながらココはガトリングガンで横薙ぎに動かし建物をハチの巣にしていく。

 建物に隠れているやつが居ないかあぶり出しをしているんだろうけど、ストレス発散に無駄弾撃っているようにしか見えない。

 

「あんまり撃って無駄に金使うなよ」

 

「分かってるヨ」

 

 頬を膨らませながら離したトリガーにまた指を掛ける。

 ほんとに分かってるのやら。

 

 村の中央を目指しながら酷く燃えてない建物を見つけては入って間宮の技について書かれている書物が無いかと探したが目ぼしいものは見つからず、他のメンバー集まっている村の中央についてしまった。

 

今回メンバーではカナ、パトラ、ココ、ブラド、夾竹桃、俺の6人だ。

 

 自分勝手なパトラのお目付け役がカナ。

 ブラドが暴走しないように抑えるのが俺。

 ココと夾竹桃は普通にそれぞれの目的があるんだろう。

 

「あら。アスカじゃない久しぶりね」

 

 メンバー全員が集まっている中で最初に声を掛けて来たのは武偵でながら犯罪者集団であるイ・ウーに所属しているコートに長い髪を束、肩には武器であるサソリの尾(スコルピオ)を担いでいるカナ。

 

「ゲババババ。お前と会うのも確かに珍しいな」

 

 ブラドは今『無限罪のブラド』という異名で呼ばれるようになっている。

 俺がブラドに会わないのはブラドがしつこく俺の血を狙ってくるから逃げているだけだ。

 

(わらわ)はそうでもないのこの前取引をしたからの」

 

 イ・ウーでのナンバー2の強さを誇るクレオパトラの子孫、パトラ。

 ピラミッド型のものが近くにあると超能力(ステルス)を使い続けることが出来る。他にも呪いなどを操ることも出来る。

 ちなみに俺がパトラとした取引というのは仕事で手に入れた金の装飾品を渡す代わりに呪いについて教えてもらった。

 

「アスカ今度時間がある時で良いから私の所に手伝いに来なさい。勿論報酬も出すから」

 

 夾竹桃の手伝いとは同人活動。

 理子は夾竹桃と関わってオタクになった。

 夾竹桃の同人誌は百合だ。あれを手伝うのは精神的にくるものがあるのだが。

 

 挨拶替わりの会話をしていると、子供二人が走る姿とそれを追うブラドの手下のコーカサスハクギンオオカミが数十匹の姿が見えた。

 

「キャッ!」

「ののか!」

 手を引かれて走っていた子が瓦礫に躓き転ぶと前を走っていた子が包丁を前に突き出す。

 

「お姉ちゃん!」

「さ、下がっててののか!」

 

 姉ということは姉妹なのだろう。

 二人とも膝をガクガクさせ涙を流している。

 

「逃げ遅れたのがいたようぢゃの」

 

「殺しちゃダメよ。教授からそう言われているでしょ」

「何故じゃ!妾はファラオなのぢゃぞ。生贄が居なくては面白くない」

 

 カナの忠告に不満の声を上げるパトラ。

 パトラの問題点はこの性格だ。知り合いとしては良いのだが友人として付き合うのは疲れる。

 

「パトラあまり我儘言ってるとカナに愛想つかされるぞ」

 顔を赤くしながら俯いてボソボソと何かつぶやいている。

 

「相変わらずパトアの扱いが上手いわね」

 

 夾竹桃の褒め言葉なのか呆れているのか分からない言葉にどうも、と返事をする。

 何とか立ち上がり逃げようとしている姉妹の首を夾竹桃は両手で掴む。

 

「左手で掴まれた子はお気の毒。毒してあげる」

 

 首の皮を切り爪に塗られた毒が傷口から体内に入る。

 殺すな、という命令はあくまでこの場限りのものでしかな。

 

 パァッ、とる両手を離すと左手掴まれた子は蹲り姉の方は妹の名前を呼び続けている。

 

 なんの毒を使ったことやら。

 夾竹桃はイ・ウーでの毒のスペシャリストだ。左手の爪にはバラバラな毒が塗られている傷をつけられることがあればあっというまに毒が体内にまわる。

 

「私の名前は夾竹桃。いずれまた会うでしょうね」

 

「仕事は終わったな。で、夾竹桃。なんの毒使ったわけ」

 

 左手に手袋をつけながら答えた。

「秘密よ。その方が楽しみでしょ」

 

 楽しみね~。あの二人はそれところじゃないだるけど。

 待つ側としては確かに楽しみではあるな。

 

 ニシシとフェイスマスクで隠れたアスカの口元は三日月型に歪んでいた。

  


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