振りまわされる太い腕を躱しながらリュックに付けておいたP90を一丁手に取り引き金を引く。
ダダダダダダダダダダ!
絶え間なく放たれる弾丸がブラドの動きを止める。
右脇腹、右肩、左肩にある目の形をした|刺青(タトゥー)が昔聖騎士に付けられたブラドの弱点。
「弱点が見えるって便利だな」
「ゲェバババ最後の一個が分からなければ意味ないだろ」
違いない。
ブラドを倒すには同時に四つの弱点を攻撃する必要がある。そして最後に一つが分かっていない。
マガジンを一つ打つ尽くし弾の嵐が止まるとブラドの体から撃ち込まれた弾が排出され傷も再生を始めた。
「マジで再生するのかよ。チート過ぎないか」
撃ち尽くしたマガジンと新しいマガジンを入れ替えながら弱点をありそうな場所に目ぼしを付ける。
外から見えるようになっているなら通常は見えない箇所にあるはずだ。足の裏か眼球自体にあるのかそれとも胸か。
「考え込んでると簡単にくたばるぞ!」
すぐ近くに生えていた電柱と同じ位の太さの木根本を片手で掴み地面から引き抜くと振り回した。
「ありかよ!?ぐふッ!」
普通の人間にはあり得ない行動に気を取られ、脇腹にモロに振り回された木を受けた。
衝撃が全身を襲い呼吸が止まる。
咄嗟に右腕でガードしながら後ろに飛び、雪がクッションの代わりになった。
立ちあがると脇から違和感と痛みが走った。
何本かいったか。腕じゃない分マシと思うべきか。
「木を抜いて振り回すとかマジで人外だな」
ぺッと口の中に溜まった血を吐き捨てる。
「ドンドン行くぞ!」
木を棍棒か槍のように振り回すブラド。
生えている木に当たり倒れてくる木を避けながら振り回される木を避ける。
避けるにも雪に足が取られて早く動くことも出来ず、攻撃しても高い回復力で意味をなさない。
こんなことならリュパンと一緒にイ・ウーに帰ればよかったな。
「ゲェバババ狩りはこうでなくっちゃな!」
―――狩りか。なら罠くらい仕掛けないとな。
右手に持っているP90をブラドに向けて引き金を引く。
ダダダダダダダダダダダ!
半分以上は木を盾に代わりにされ体に届いていないが関係ない。
ベルトから接触型の爆弾を取り外し木を破壊するために投げる。
ドカン!と熱と爆風で木をバラバラに壊し煙が目くらましになった。
「テメェは小細工が好きだな」
腕を煙を払うとそこには明可の姿は無かった。
「ッチ隠れたか」
爆弾を囮にブラドから数メートル離れた場所で気配を消し静かに潜んでいた。
P90の最後マガジンを交換しながら武器の整備を始め、リュックに入れてる爆弾をベルトに取り付ける。
「銃もダメ、爆弾は足止めにしかならない」
勘違いするな。倒すんじゃない身動きできなくすればそれでいいんだ。アイツは狩りだと言ってなら罠を張って待ち受けるのが当たり前だろ。
木に持たれながらニシシ、と笑い考えて作戦に必要な道具をリュックから取り出し服のあちこちに仕込んでいいく。そして作戦に最も適した場所を探し始めた。
「じゃあ、化物狩りと行こうか」
@@@
「やっと見つけたぞガキ」
ゲェババババと独特な笑いからをしながら目の前に居る明可に近付く。
「俺が勝ったらさリュパンは俺が貰うぞ」
「ああいいぞ!俺様に勝つことが出来たら四世を好きにするといいさ」
「伯爵なら契約は違えるなよ」
ポケットから両手で持てる限りのストリングボールを取り出し。ブラドに向かって投げつけた。
ストリングボールを爆弾と勘違いしブラドは腕で防ごうとしたのは間違いだった。
指、手の平、手首、腕、二の腕、肩へと次々解けながら全身に余すことなくワイヤーが絡みついて行く。
そして、ワイヤー同士も絡み合い周りに生えている木々に絡み一つの檻と化した。
「――――――――ッ!」
力を入れ無理やり動こうとするがいくら木を引き抜き振り回す力があっても力を分散させれば効果は発揮されない。
「狩りなんだろ、罠を張るのは当たり前だ」
リュックから飲みかけ水が入ってペットボトルを取り出し上の部分をタクティカルナイフで切り取りブラドに投げつける。
頭から水ぶっかけられてブラドはずぶ濡れとなった。
ビタビタになってブラドの両目と両肩、右脇腹の目の刺青を確実に狙い投げナイフを投げる。そして残っている数十本の投げナイフも確認することの出来ない最後の刺青がある可能性がある箇所を虱潰しに投げナイフを刺してく。
「――――――ァ――ァ!」
何かをしゃべっているようだが開いたままの口にもワイヤーが絡みついている為何をしゃべっているか分からない。
「水は電気を通すんだぞ」
ベルトから外した手に握れるサイズの筒型の爆弾をスイッチを押してブラドに投げる。
爆弾はカシャと上下に開き空中で爆弾の本来の効果を発揮した。
バリバリバリ!
青白い電流を周囲に巻き散らす。
水に濡れた頭は特に電気を通し、ワイヤーを伝って投げナイフから体内へと伝わり。体外と体内から同時に電流を流している。
確かに再生するが痛覚し電気を流すことで筋肉の痙攣を引き起こし動きを止めることも出来る。
「|無力電流爆弾(スタンボルトボム)試作だったけど結構威力あるな」
電力を使いきった無力電流爆弾は雪の上を転がっている。威力が高すぎて無力化する前に対象を殺してしまう威力があった。
威力は少し弱くして充電式にすれば繰り返し使えるようになるか。
改良の余地を頭に浮かべながら口から白い煙を吐いているブラドにゆっくりと近付く。
「俺の勝ちだな」
「ま、まだ……まぁけぇ」
「あんたの負けだよ」
ブラドの足の健をタクティカルナイフで切り付け無理やり膝を付かせる。
ドサ、と雪の上に膝を付いてブラドの目には今だ投げナイフが刺さったままだった。
口にベルトに持っていた箱型をした時間設定式の爆弾を全てスイッチを入れしゃっべているブラドの口の中に放り込み。
背が低くて確認出来なかった舌ベロを引っ張るとそこには目の形をした刺青があった。
道理でP90を頭を狙っている時庇う動きをしてたわけだ。
「再生するなら再生すればいい、その度に爆弾使って爆発させるから」
タクティカルナイフを刺青に突き刺し。
十歩ほど下がり腕時計で時間を確認するとブラドの体内から衝撃が漏れて伝わった。
口から赤い血を零しながらブラドの意識は既に無かった。
「一応後三つ作戦を考えておいたけど一個目で上手くいってよかった」
パチ、パチ、パチ
背後からする拍手の音。
後ろを振り返ればそこにたっていたのは数十分まえ電話を相手である教授だった。
「まさか戦闘不能まで追い込むとは思わなかったよ」
嬉しそうな笑顔で話し始める教授。
「身動きを止めるだけのはずだったさ。無力電流爆弾の試作品が予想以上に威力があったからな」
勿論無力電流爆弾がきちんと作動しなかった時の為の対策もしていた。
「それでもだ、自分より数倍強い相手に道具、環境、技術、知恵を使い弱さを補い勝利を収めた。実に君らしい戦い方じゃないか
全部知っている辺りが教授らしい。
そうPOを使わなかったのは故意でだ。
確かにPOは使い勝っていいし便利だが、頼ってばかりいると何かあった時に戦えなくなる。
「今回位使っても良かったんじゃないかと私は思うが、意味のPOに頼らずに戦えるようにという心がけは嫌いではないよ」
考えていること思っていることを口にしなくても全部分かっているあたりが教授の苦手な所だ。
「さて、海岸にオルクスを待機させてある先に戻っていなさい。私は彼と少し話しがあるのでね」
そういって横を通り過ぎブラドの元へ行く。
「ブラドに言っとけリュパンの所有権は俺が貰った勝手に触れるなって」
分かっている、と言ってブラドの何か話しを始めた。
疲れた体を引きづって海岸に待機させているというオルクス目指して移動を始めた。
当分、人外との戦いか勘弁だな。