緋色に並ぶΑ   作:ノムリ

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リュパン救出

 ピピピピピピ、とけたたましいなる音に目を覚ました。

 

「ふぁ~」

 

 欠伸をしながらん~、とのびをして端末を操作し後どれくらいの時間を確認すると三十分ほどで目的地近くの海岸に付くようだ。城は内陸側にある為遠くない距離を歩いて移動する必要がある。

 雪山を歩いて移動なんてしたくも無いが変に車などを使ってバレるのはマズいから徒歩だ。

 

 持ってきたペットボトルを開けて水分補給をして最後の準備を始める。銃や爆弾、ナイフなどこの程度で倒せる相手なら聖騎士が倒していると思えるがそこは触れないでおこう。

 

 オルクスが海上へ浮上しハッチが開くと冷たく冷えた空気が入り込んだ。

 

 うわ、寒っぶてか冷!空気が冷たいじゃん。カイロとか持ってきた方が良かったかもな。

 

 荷物を片手に持ち岩場にジャンプしてスマホでオルクスを再び海中の潜らせる。

 城がある方向はスマホに入れた地図でわかるが完全な雪山だった。

 

 俺は登山家じゃねえぞ。

 

 心の中で愚痴を漏らしながら諦めて雪山を昇り始めた。太陽が出ている間に城ついてリュパン四世を保護して帰ってこないと夜になったら雪山で凍死しかねない。

 木々の間を抜けながらただ前に進む。

 

 三十分ほど登ったころ城らしき建物の天辺の尖った部分が見えてきた。

 

「流石に雪山を三十分は辛いな」

 

 歩き続けた事で汗が流れ汗が急激に冷えて体温が奪われていく。

 ウエストポーチから板チョコを取り出し噛み砕きながらまた昇り始める。

 

「居ないと楽でいいんだけどなブラド公」

 

 半分食べた板チョコをウエストポーチに戻しリュックからP90を二丁取り出しリュックの左右に固定する。こうすることで手をまわすだけで銃が取れるようになる。

 脇からグロックを取り出し構えながら城の目の前まで移動する。

 

 城は扉などは無く。

 誰もが出入りできるようになっている部分がより不気味さかもしだしていた。

 

「監禁してるなら恐らく地下に居るんじゃねえかな」

 

 辺りを経過しながらゆっくりと地下に続く階段を下りていく。

 地下に鉄格子で遮られて窓とも言えないものが一つと大人一人を余裕で閉じ込めておける檻が一つあったが不自然なことにその檻は鍵が開いていた。

 

 鍵穴を小型ライトで照らして調べるとピッキングツールと使って開けた痕は無い。

「ブラドが連れ出したか、それもと自力で脱出したかのどっちか」

 

 前者の方が有力だけど、自力で脱出したのも捨て方。

 じゃあ、どうやって自力で脱出するか……超能力(ステルス)かな。成長して使えるようになったかそれとも元から使えて機会を待ていたか、とにかく探してみるか。

 

 地上に続く階段を急いで駆け上がり外にでるも足跡らしきものは見当たらない。

 

 ”目”で見つけられないなら鼻と耳を使えばいい。

 

 人間の脳は通常10%しか動いていない。けれど火事場の馬鹿力というものがあるように稀に脳のリミットが外れることがある、では、なぜ脳にリミットがあるか。

 理由は単純だ。常に100%の力を使い続ければ体がもたないからだ。なら、最初から使える10%をより効率良く使えるようにすればいい。

 

 例えば戦闘の最中なら味覚と嗅覚の処理能力をオフにして代わりに視覚の情報処理能力に上乗せすればより早く思考し行動できるようになる。

 俺が子供の頃生き残る為に自力で編み出した技術の一つだ。教授からPO(プロセス・オプレイション)と名付けられた。

 

 今回必要なのは視覚と味覚をオフにして嗅覚と聴覚の処理にまわことだ。

 

「さて始めようか」

 

 奥地の雪山だからこそ人間の匂いは残りやすい。加えて今も移動しているなら静かな雪山で探しだすのは容易なことだ。

 

 鼻で空気を名一杯吸い込みながら、耳を研ぎ澄ませる。

 ザッザ、と雪の上を歩く音。

 は、は、息切れを起こしながらの呼吸音。

 匂いも同じ方向から流れてきている。

 

「ビンゴ。自力で脱出してたのか」

 

 五感の処理を通常状態に戻してグロックを脇のホルスターにしまい。リュパン四世が歩いていう方向に走り出す。

 

 五分ほど走り続けていると雪にも足痕が残っているが俺と同い年と聞いていた割に足跡が小さい過ぎる気がする。

 まともに飯食べてないな急がないとぶっ倒れて死ぬぞ。

 

 先ほどよりも早く走り足跡を追った。

 そして運の悪いことに出くわした人外に、吸血鬼に、ブラド公に。

 

 雪山で目立つ黒い毛皮に覆われ俺の三倍はありそうな背丈。

 目が赤く姿は人間の形を取った狼と言ったほうが適切だろう。

 

「どの辺が吸血鬼だよ。どう見たって狼男じゃねえか」

 片手に金髪の女の子の頭を握り立っているブラドは喋った

 

「あ、なんでこんな所にガキがいんだ」

 

「アンタがブラドで合っているか」

 

「ああ、俺様がブラドだ」

 

「リュパン四世ってお前が握ってる女の子で間違いないよな」

 ボロ布を身を包み裸足恐らく布以外には何も身に付けていないだろう。急がないと体温が急激下がってマジで凍死しかねない。

 

「なんだ?お前四世を助けに来た王子様ってことか」

 

「見た目に寄らずロマンチックな事言うな。正確には組織のボスにいい感じに言いくるめられて助けにきた社畜ってのが一番あってるかもな」

 

「ゲェババババ!この犬一匹助ける為にわざわざ死にに来させるとはなお前のボスも性格悪い奴だな!」

 

 性格悪いのは認めるけど流石にイラッと繰るもんがあるな。

 油断してるからリュパンを助けるのは簡単だ、けどその後はどうする。

 女の子一人抱えて勝てる程ブラドは弱くないだろう。動きを止めてリュパンをオクルスに乗せてイ・ウーまで行かせれば最悪何とかなるか。

 

 腰からつけていた灰色のタクティカルナイフをゆっくりと右手で抜くと同時に左手はズボンに取り付けてある投げナイフをブラドの右目目掛けて投げた。

 

「ガァ!やりやがったなクソガキが!」

 

 反射的に左手で顔を覆い。

 視界が遮られ動きが鈍くなった。

 

 その間にタクティカルナイフで右手の健を切り裂き握力を無くすことでリュパンを傷つけずに確保。キャッチするとほぼ同時にオルクスを待機させてある海岸目指して全力で走る。

 タクティカルナイフをしまいベルトに引っかけておいた自作のスモークグレネードを三つ取り外し走りながら一個つづ起動して等間隔で落としていく。

 

「おい!生きてるかリュパン!」

 

「うる、さい。わた、しは」

 

 喋れるってことは大丈夫ってことだな。

「何言ってるか分かんないし、聞いてる余裕もないから黙ってろ」

 

 にしても軽すぎないかコイツ。

 腕なんて枝みたいに細いし。

 

 クソが!どこ行きやがった!と後方で叫ぶ声が聞こえるが誰がここですなんて返事するかよ。

 今度は地雷型の爆弾を適当にバラまいておく。

 足を置けば勝って起動して爆発する。形状がら威力はイマイチだけど牽制にはなるし持ち運ぶのに便利だ。

 

 リュパンを落とさないように左手で抱きかかえながらスマホを操作してオルクスを浮上させる。

 オルクスの操作をしながらイ・ウーの現在地を確認すると、ここから一時間ほどの場所に居る事が分かった。

 

 こんだけ近ければリュパンだけ先に行かせた方がいいか。

 

 下り坂な分来るときほど移動に時間は掛からずに海岸へ到着し海上で待機していたオルクスにリュパンを乗せて来ていた上着の毛布の代わりにか食べかけの板チョコと開けてない水の入ったペットボトルを渡す。

 自動操縦をオンにして目的地をイ・ウーに設定して発進させた。

 

 ハッチが閉まり海中に沈んでいくなかでリュパンの目だけはしっかりとこっちを見ていた。

 あっという間にオルクスは姿を消した。

 

 リュパンの跡を追わせない為に海岸から離れる必要がある。

 さっき通ってきた道とは違う道を選びながら移動をしながらスマホを操作して教授に連絡を入れる。

 

「教授。リュパンをオルクスに乗せてそっちに送ったから保護しろ」

 

『電話に出て一言目がそれとは、一緒に乗ってこれはよかったんじゃないのかい』

 

「俺まで乗るとブラドが泳ぎながら追ってくるかもしれないだろ、真冬の海でダイビングする趣味はねえよ。リュパンだけど痩せて過ぎてるからスープでも飲ませて寝かせろ。ブラドとの要件が終わったらまた連絡する」

 

『分かった。僕の方も既にそっちに移動を始めてるから三十分ほど持ちこたえてくれ』

 

 ある程度海岸から離れて所で上から黒い巨体が降ってきた。

 

「見つけたぞクソガキが!四世をどこに隠した!」

 

 この雪山で黒い巨体なんてブラドしか居ないだろう。

 

「教授すまないけど電話きるよ。お客さんが到着した」

 

『君の無事を祈ろう』

 

 そう言ってプー、と電話は切れた。

 

「遺言は伝えたか」

 

「遺言じゃなくてただの連絡だっつーの」

 

 人生初の化け物との戦いか。


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