緋色に並ぶΑ   作:ノムリ

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死は他人事

 高級ホテルの最上階を丸々使った一室

 玄関から部屋に入るまでに短い廊下には六体ほどの護衛の死体と寝室には見るからに高いベッドの上に裸で横たわる額に穴の開いた女の死体が一つ。

 隣の部屋ではバスローブを着たデブがソファに座っていた。不自然な点と言えば額にグロックの銃口が剥けられている事だろう。

 

「頼む命だけは助けてくれ!金ならいくらでもやる!」

 傍に置いてあったアタッシュケースを開くと中からは束にされたドル札が何千枚も零れてきた。

 金は大事だ、衣・食・住を手に入れるには金が要る。だけど、金を手に入れるには暴力という力が一番手っ取り早い。現にこの仕事だって報酬という金が発生している。

 

 

「お前を殺して金を持って行けば、報酬とその金も手に入って得だからそっちを選ぶわ」

 

 指に力を入れグロックの引き金を引く。

 バン!という銃声と共に銃弾が男の額に穴をあけた。

 

 悲鳴を上げることなく男は死んだ。

 

 今まで権力と金の力で犯罪を揉み消し罪に手を染めた男が銃弾一発でただの|駄肉(したい)。世の中なにが起こるか分からないもんだ。にしても部屋が臭い過ぎる喚起しとけよ性行為をしたあとの跡片付けは常識だろ、まったく。

 

 ちっ、と舌打ちをしながらグロックを脇のホルスターに収め、開閉式の窓が見当たらなかったので置いてあったテレビのリモコンを投げつけてガラスを割る。

 パリンと特有の音と共に窓に穴が開くリモコンは下に向かって落ちていくが下はプールだし、使用時間外だから問題は無い誰かいればそれはルールを守らなかった自業自得だ。俺は知らん。

 

 さて、お宝探しと行きますか、まずは、男の愛人の私物から。

 

 社会的に真っ黒な人を殺す仕事の注文は多い。

 権力者だから法で罰せられない。精神に異常があるから罰を受けない。 

 依頼者は被害者から加害者中には息子が犯罪を犯すのをこれ以上見たくないからと依頼してくることもある。何を思って依頼してくるのかは興味ない。ただ殺して金が手に入ればそれでいいし、真面目に働くより高い。

 

 あらかた詰め終わったな。

 あとは最後に置き土産をセットしておくだけだ。

 

 持ってきた手提げカバンから取り出したのはルービックキューブと同じサイズの真っ黒な箱型爆弾を部屋の中心あたりの床に置いて赤いスイッチを押した。

 ピッ、と起動音が鳴ると箱からカシャカシャと不気味な音が漏れてくる。

 

 ソファに置いてあったアタッシュケースを持って出口に向かって進む途中に転がる死体に目もくれずに。

 

 ガチャ、とドアを開けて普通な顔をしてエレベーターに乗って一階に向かう。

 途中何人も人が乗ってくるけど、だれも俺が数分前に人を殺したとは気づかない。こんな近くに人殺しがいるのに。

 家族が友人が殺されることなんて自分の周りでは起こらないと思っているから警戒をしない。事故のニュースを見たって毎回感情移入すう奴なんて世界を探したっていやしない。

 

 ロビーを抜けて外に出ると満月が輝いていた。

 

 五十メートル先の都市部では時計は天辺をまわっているが若者や仕事終わりの人にとってはこれからが始まりだろう。

 発展を遂げた国の都市部の夜は酷いくらいに明るくて騒がしてそして裏には闇がある。

 

 街とは反対方向の海辺がある方向を目指して歩みを進めながら多くの事を考えた。

 手に入れたものを金に変えて何を買おうか考える。

 

 ココに頼んで武器のアップグレードをしてもらうのもいいな、それとも新しい爆弾を作るのもありだろうか・はたまた高級料理でも食べに行くか。

 

 料理の事を頭に思い浮かべているとぐぅ~、と腹から音がした。

 思い起こせば昼ご飯に食べた美味くも不味くもないレーションを食べていこう何も食べていない、もちろん水分は取っているが流石に固形物を摂取していないと体が悲鳴を上げる。

 

 腕時計を見ると長針が天辺を指そうしていた。

 仕掛けてきた箱型爆弾が爆発する頃だ。

 

 ホテルの最上階に注目しながらカウントダウンをする。

 

「3…2…ドカン!」

 

 ドカンと口にすると同時にホテルの最上階は火を噴き黒い煙がモクモクと昇っていく。

 恐らくホテルと周辺はパニックになっているだろうが既にニキロ以上離れたこの場所まで叫び声が聞こえてくることは無い。

 

 部屋にセットしてきた箱型爆弾は簡易な水蒸気爆発を利用した水蒸気爆弾だ。

 

 中にアルコールを少し入れた水をセットしてスイッチを入れれてば水が気化して中に水が空っぽになると勝手に箱が爆発して気化した水に着火して水蒸気爆発を引き起こす。水はアルコールを加えなくとも水道水でも十分だ。

 軽く持ち運びが楽でかつ高い威力を誇る作品の一つだ。

 

 爆発を見届けしっかりと仕事は終わった。

 再び海辺を目指して歩みを進める。

 

 坂道を超えて数十分歩き続けてやっと海辺へ到着した。

 はぁ~、と溜息をもらす。移動に関しては大した距離ではないのだが荷物が重すぎる。

 

 ポケットから取り出したスマホを操作すると海中から魚雷を改造して小型潜水艇『オルクス』が浮上してきた。ハッチが自動で開き中に荷物を入れて自動操縦を設定すれば後は俺の現在の所属している犯罪者集団『イ・ウー』の移動基地とも言える原子力潜水艦に向かって進み始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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