精神的に壊しちゃった(てへっ)事件から1ヶ月。
何をしたのかと聞かれ、(簡易)幻術を見せたら壊れたの一点張りで通した。
そして、あの事件以来
前世ではネットでグロ画像なども見てきた為、それを思い出して晶遁で作ったノートに書き留める。
他の人から見れば乳白色の水晶盤、私にはノートに見える物だ。
タブレット風のこのノート、かなり重宝している。
前世の知識を覚えているだけ書き留め、それを元に術や物作りに活かすのだ。
----------------------------------------
「メイさん、大丈夫?」
「えぇ、大丈夫よ。…トウカちゃんがぎゅってしてくれたら楽になるかも。」
「ぎゅー!」
メイさんのフカフカなマシュマロに飛び込み、スリスリと猫のマーキングのような行為をする。
優しく頭を撫でてくれる手は熱く、それでも普段通り慈愛の篭ったものであった。
メイさんが過労で熱を出してしまったのだ。
冷却機能がある泡を出し、額や脇の下を冷やせばメイさんの苦しそうな息遣いも落ち着いてきた。
メイさんの家に泊まる事にして、家から着替えなどを取り寄せる。
「
『血継限界の無駄使いやね。』
「効率的な使用方法と言ってほしいな。
使わずに腐らせるより、こうして使った方がいいに決まってるじゃない。
卑遁は晶遁より強いんだから。」
『へぇ、卑遁のチカラってすげーやよ!』
着替えと馬鹿なやり取りも終わり、後は寝るだけとなった。
メイさんと同じ布団に潜り込み、頭を撫でられる。
「髪…伸びたわね。
トウカちゃんの髪、私が切ってたのよ。…また切ってあげる。」
「ホント?メイさん、早く良くなってね。」
「勿論、すぐにでも良くなるわ。」
肩を越してショートボブからセミロングとなった髪を愛おしげに撫でながら約束してくれた。
私が眠りにつく直前、小さな声が聞こえた。
「大好きよ、トウカちゃん。
私が、貴女を守るから。」
----------------------------------------
「ふぅ…スッキリ〜…。」
肩よりも伸びていた若草色の髪は、顎辺りで切りそろえられていた。
メイさんの家から帰り、森の中を進む。
『うんうん、可愛いやよ。』
「本当に…可愛いね、トウカちゃん。」
突如後ろから掛けられた声。
「…やぐらさん?あれ?」
やぐらさんと似た容姿の…左頬の傷が無いだけの男の子が立っていた。
私がやぐらさんと口にすれば、困ったように苦笑いを浮かべる。
「良く間違われやすいんだけどね。
やぐらの兄、ユウムだよ。因みに、やぐらの2歳上。」
「初めまして。私、トウカ。」
「初めまして、か…。」
苦しげな顔を見せたユウムさんだったが、近づいて来たと思えばいつの間にか抱き締められていた。
「済まない…俺…守ってやれなかった。」
「ユウム、さん?」
記憶を失ってから出会う、私を知る人達は皆が責任を感じているようだった。
後悔や自己嫌悪などが一様に伝わって来る。
〝守ってやれなかった〟
皆が口を揃えて言う言葉だ。
もしも、記憶を失う前の私に何か言えるとしたら。
こんなにも大切に思ってくれる人が沢山居るんだよ、ひとりじゃないから大丈夫だと伝えたかった。