桃水晶の六尾姫   作:ココスケ

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父との再開(初対面)

巻物を開き、書かれていた手順に従って晶翠眼を使う。

 

ドロンと煙が立ち上り、桃色の瞳に空のような髪色の…写真でしか見た事のない、父の姿が現れた。

 

「お父さん…?な、なんで…」

「大きくなったね、トウカ。

晶翠眼を開眼するのが思ったよりも早かったけど…でも、成長している娘の姿を間近で見ることが出来て嬉しいよ。

それと、辛い思いをさせたようだね。済まない…僕がしっかりしていれば…。」

『トウゲン…!死んだんじゃ…!』

「あぁ、確かにあの時俺は死んだ。

ここにいるのは、特殊な術式を組み込んだチャクラ体…魂だけ黄泉から呼び寄せた、色々と制限されている限定的な物だよ。」

 

父曰く、この巻物は一族がマンツーマンで晶遁や晶翠眼の使い方を伝えて行くための物で、最後に巻物を開いた者のチャクラが自動的に組み込まれ、組み込まれてさえいれば死んだとしても魂は呼び寄せる事の出来る高度な技術が使われているらしい。

 

読むだけの巻物だけでは技術を伝えて行くことは出来ず、先輩開眼者のいない世代ではどうしても手探りになりやすい。

隠して生きていく事を選んだとはいえ、伝えて行くことを放棄して子孫が困るのを放置する事は出来なかったようだ。

 

チャクラが持つのは約1週間。

一族の者以外の人間からは見えないようになっている。

 

一通りの説明が終わり、その日は遅かった為にご飯を食べて寝るだけに終わった。

 

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それから1週間地獄のような修行を行い、何とかお父さんの満足そうな顔を見ることが出来た。

 

…一本も取れなかったがな!

 

晶翠眼で考えを読もうとすると頭が割るように痛み、一方的に読まれてしまうのだ。

 

恐らく、私が処理しきれないほどの情報を垂れ流していると思われるが…それを出来るのは世界を探しても父だけであろう。

 

お父さんが帰る直前、聞きたくてウズウズしていた事を聞く。

 

「ねぇ、そういえば…攻撃に対して自動的に泡が出てくるのってなんで?どうなってるの?」

「あー…」

 

お父さんは言いにくそうに目を泳がせ、慎重に言葉を選んで話し始めた。

 

「トウカが記憶を失った日、余りの酷さにお母さんの堪忍袋の緒が切れてね…近くにいた子供を持つ親の魂も手伝わせて、無理矢理空間の狭間を壊してそこに居座って、精神は犀犬に任せる他無いからせめて肉体だけでも…痛い思いをしないようにって操ってるよ。」

「…え、あれ手動だったの?」

 

頷いたお父さんに少し眩暈がしてしまう。

我愛羅の母のように、不思議パワーで成り立っているのでは無かったのだ。

 

…いや、不思議パワーと言えばこちらもどっこいどっこい、団栗の背比べか。

空間の狭間って壊せるの?壊したお母さんって何者?しかも、壊すだけじゃなく居座る?

 

「お母さんって…生前からそんなだったの?」

「うん…何も変わってないよ。」

『さすがモモカやよ。

トウカを守る為なら命を掛けてでも…絶対に諦めない。』

「それと…お母さんから手紙を預かってる。」

 

お父さんは、一つの封筒を何も無いところから取り出した。

…物品まで届くってなんなの?ってかどうやって書いたのかどうやって封筒と便箋を手に入れたのなど、色々突っ込みたい所は色々あったけど、桃の花が描かれた封筒をあける。

 

〝トウカへ

お母さんは色々あったけど、黄泉と現世の狭間で何とかやっています。

トウカと犀犬が仲良くなれた事に歓喜したり、小さな子供であるトウカ(天使)に平然と暴行を働く里人達に何も無いところでコケやすくなる呪いを掛けたり、トウカとやぐら君との仲を応援したり、忙しくはあるけれどとても楽しく過ごしています。

 

 

トウカともっと遊んであげたかった。

もっと一緒に過ごしたかった。

もっと成長を見守りたかった。

私がトウカを守って抱き締めてあげたかった。

寂しい思いをさせてごめんね。辛い思いをさせてごめんね。

トウカが私達の事を全て忘れようと、私達はずっとトウカを愛しているから。

犀犬と仲良く生きてね。

お母さんより〟

 

濡れた後が残る紙と、震える文字が何よりもお母さんの気持ちを代弁していた。

手紙を置いて、いつの間にか流れていた涙を拭う。

 

「お父さん、こっちからは何も送れないの?」

「ん?送れるよ?

何かあげたいものでもあるのか?」

「うん。」

 

部屋から水晶で作られた宝物箱を移動させ、その中から1番綺麗に出来た自信作を取り出した。

 

桃の花が埋め込まれたペンダントだ。

透明の水晶は光を反射して銀色に光るようにカットされており、ラメとパールを詰め込んだような輝きを放っていた。

 

「これ…一番綺麗に出来たの。

桃の花が入ってるんだ。…お母さんに、あげる。…あと、これはお父さんに。」

 

私が取り出したのは、ブレスレットだ。

チェーンのように加工された翡翠色の水晶に、リボンのように薄い蒼水晶を通した物。

 

二つを渡し終えると、お父さんの体はうっすらと透け始めた。

 

「トウカ…うぅ…ありがとう…!

愛しているよ、トウカ…!

例えトウカが僕達の事を覚えていなくとも…トウカは、僕達の宝物だ。」

「お父さん…ありがとう。

お母さんにも、言っといてね。」

『俺からも、モモカに伝言やよ。…もう絶対にトウカを1人にはしない。

トウカの心の支えになるって。』

「あぁ…任せろ。

トウカ、犀犬…1週間、2人と過ごせて楽しかった。ありがとう…。」

 

お父さんは影のように消えていく。

お父さんがいたのはたった1週間だったのに家が広く感じ、寂しくなって犀犬を抱き締めた。

 

「犀犬…居てくれてありがと。」

『一緒に居るくらいならいくらでも出来るやよ。

…俺が、2人の代わりにトウカを守ったるけんね。』


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