家の中にある巻物も解析が終わり、殆どの分身を修行に回すことにした。
あれからやぐらさんとは会えていない。
やぐらさんがどこら辺に住んでいるのかも知らない為、こちらからやぐらさんの居場所を知ることが出来ないのだ。
日課になっている森への散歩は、こうして外へ出る事で、前みたいにやぐらさんと偶然会えたらいいなという気持ちもある。
街中であれば殺気を向けられすぎて疲れるため、こうして森の中へと進む。
森であれば、修行しているかもしれないから。
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カキンッ…カキン…と金属がぶつかる甲高い音が聞こえ、音が聞こえる方角へと走る。
『…磯撫から連絡が入ったやよ。
やぐらが森の中で雲隠れの忍集団に襲われてるって。』
「…助けなきゃっ!」
スピードを上げて音のする場所へと向かうと、開けた場所で戦闘が行われていた。
10名の忍がやぐらさんを取り囲んでいる。
7名は地に突っ伏しており、事切れている事がわかる。
状況はやぐらさんが劣勢。
半透明の赤いチャクラに覆われたやぐらさんは、右肩から大量の血を流していた。
向こうからは木に隠れており、私の姿はバレていないようだ。
その隙に、手にチャクラを溜める。
「晶遁・螺旋丸!」
私が
驚いた雲忍達を水晶の槍で攻撃し、水晶で覆って上から塊を落として砕く。
水晶を解除すれば、残っているのは粉々になった、雲忍〝だった〟モノであった。
初めて人を殺した。
後悔はしていないしする予定も無いが、確実に帰った後に吐くだろう。
「…やぐらさん、大丈夫?」
「あ、あぁ…えっと…え?」
驚きすぎて挙動不審になっているやぐらさんだが、当然だ。
都市伝説と言われる水晶を扱う血継限界の威力を目の当たりにしたのだから。
そして、やぐらさんが驚いているのはそれだけではない。
私の眼は桃色と翡翠色に発光している。
晶翠眼を、開眼したのだ。
取り敢えずやぐらさんに近づき、怪我の治療を開始する。
1番酷いのはやはり右肩の刺し傷だ。
水遁で作り出した水で汚れや雑菌を洗い流し、手にチャクラを溜めると緑の光が放出される。
私の手を見れば、桃色のチャクラが流れている事がわかる。
犀犬のチャクラもしっかり映っている。
右肩の治療が終わり、細かい怪我を治していくと同時に、
〝水晶…?都市伝説、本当?〟
〝眼…瞳術?〟
〝どうして、なんで〟
色々な感情が頭に響く。
疑問が大量に出てきているらしく、固まっている。
襲われた時の状況もしっかりと入ってきた。
17名から襲われ、善戦していたが…体力面でも経験面でも劣るやぐらさんはあっという間に追い込まれてしまったらしい。
『やぐら、しっかりして〜。』
「そ、そうだ…助けてくれてありがとう、トウカちゃん。その目は…」
「…晶翠眼。
晶遁と晶翠眼は晶獅一族の血継限界だよ。」
『開眼条件は〝誰かを心から助けたいと願った時〟やよ。』
アカデミー入学前に開眼できたのは幸いだった。
「やぐらさん、目閉じて。」
「…?お、おう…。」
私の突然の要求に、やぐらさんはとまどいながらも目を閉じた。
…可愛いキス顔にしか見えない。
頭を振って雑念を振り払ってやぐらさんの家を確認し、一気に
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一瞬で景色が変わってプチパニックになったやぐらさんを宥め、私も帰ることにした。
自宅に飛び、部屋着に着替えてからある巻物を取り出す。
晶翠眼の全てが記されているらしい巻物だ。
特殊な封印術まで掛けられており、晶翠眼を開眼した者にしか見ることが許されない。
それ程、晶翠眼というのは大層な代物なのだろう。
いや、開眼したての今日だけでもそのチート具合がよく分かった。
転生者とはいえ、ただの小娘が思い付くだけでもかなり多種多様な戦法が取れる。
晶遁との組み合わせも考えれば、一騎当千と言ってもいいだろう。
何が書かれているのか戦々恐々としながらも、巻物を開いた。