「露天風呂っす〜!」
女湯に繋がる扉から勢いよく飛び出して来たのは女版・ナルトとも言うべき性格のフウだ。
「あ、トウカちゃんとやぐら!」
フウの目線が私達の後ろにある桶に向くと、驚きの表情を見せる。
「尾獣…なんでこんなところに?それに、随分と小さいっすね…。3、4、5、6…あれ?2体多いっすよ?」
『あぁ、俺達は忍界大戦でやぐらとトウカに会ってな…友達になった。
いつでも会えるようにチャクラを渡して置いたから、時々こうやって具現化させてくれるんだ。』
『2人との出会いがきっかけでハンと仲良くなれたんです。』
フウは孫の〝友達〟という単語にキラキラと目を輝かせる。
「友達…皆、あっしとも友達になって欲しいっす!」
『拳を合わせろ。』
「ふおぉっ…4匹のチャクラが入ってきたっすね…」
磯撫、孫悟空、穆王、犀犬の順に拳を合わせる。
『トウカ達にやったチャクラ量に比べると大分すくねぇがな。まぁ、具現化する分には問題ねぇ。』
「具現化ってどうやるっすか?」
フウの根本的な疑問に対し、私が答える。
「まず、七尾とは友達になってる?」
原作での守鶴や九喇嘛、キラービーと出会う前の牛鬼などは、暴走させて人柱力を乗っ取ろうとするような…それこそ、尾獣化は命懸けのものであった。
大前提として、尾獣と仲良くなければ具現化しようとすればその隙に乗っ取ってしまう可能性もある。
「うん、重明とは友達っすよ!
時々うざいって精神世界から追い出されるけど、話を聞いてくれるっす。」
「なら大丈夫ね。
尾獣チャクラを尾獣玉の要領で集めていくだけよ。基本、フウからはあまり離れられないけど…近くなら歩き回っても平気よ。」
「孫や穆王みたいに、チャクラを渡していれば本来の人柱力でなくとも具現化する事は可能だ。」
「2人とも、ありがとうっす!早速やるっすよ〜。」
フウの目の前に現れたのは、カブトムシのような尾獣だ。
羽は太陽の光でキラキラと輝いており、明るい色合いがフウと重なって見えた。
『お前ら久しぶりだな。ラッキーにやれているようで何よりだ。
それと、やぐらとトウカ。…ありがとな。フウは初めて里の外に出ることが出来て友達を作ろうと他の人柱力に会えるのを楽しみにしてたんだ。
フウと、それから…俺達尾獣を友達として認めてくれてありがとう。』
差し出された手に手を合わせると、重明のチャクラが入ってくるのが分かった。
「重明、少しじっとしててね…」
『ん?』
私の手の中に、重明そっくりの水晶像が2つ現れる。
羽の透かしとグラデーション、立派な角などがポイントだ。
「はい、フウちゃん。お友達だから…あげる。」
「いいんっすか!?重明、お揃いっす!これ、めちゃくちゃそっくりっすよ!」
それからお風呂をあがるまで…いや、あがってからも、フウのテンションは高いままであった。
…私達から離れている隙に君麻呂とメイさんが〝大人の関係〟になったのは余談である。
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「うぅっ…ひっぐ…」
「フウちゃん…」
楽しかった時間はあっという間に過ぎていき、帰るときがやってきた。
2人が困ったようにオロオロとしているが、どうしても涙が止まらない。
初めて、里の外の友達が出来た。
滝隠れの里の人達は、皆仲良くしてくれたけれど…それでも、疎外感や不安を感じていた。
明るく能天気に振る舞わなければ、抱え切れない寂しさで押し潰されそうだった。
同じ不安を抱え、同じ様に尾獣と仲良くなった、唯一無二の存在。
離れてしまって消えるんじゃないかって不安で苦しくなった。
「フウちゃん、はい。」
「…これ…」
手渡されたのは、あっしの髪色と瞳の色が入った、
トウカちゃんの首には、〝6〟が掛けられていて、やぐらは〝3〟だった。
「フウちゃんの中に
それに、私達は離れていても友達でしょ?」
「そうだぞ。それに、お前の中にいる重明はラッキーセブンなんだろ?
お前が一番ラッキーにならなきゃ重明の顔に泥を塗る事になるぞ。」
また新たな涙が溢れるが、顔に浮かんでいる表情は正反対の笑顔だった。