「塵遁・原界剥離の術!」
私が放ったビームは、機動力がある2匹に余裕で避けられる。
当たった地面にはその部分だけが大きなスプーンでくり抜かれたような穴が空いていた。
「犀犬!」
『あいよ!』
私の体が大きな6本の尻尾があるナメクジ─犀犬へと変わり、視点も大分高くなっている。
そういえば、初めて完全尾獣化したな…と小さく見える人間を見やりながら思いつつ、四尾が放った溶岩を泡で消し、やぐらさんに並ぶ。
『やぐらさん、私も一緒に戦う。』
『あぁ、助かる!
どうやら、向こうは尾獣の名前も知らないクズ野郎らしいぞ。
尾獣を兵器としてしか見てない。
尾獣化した時も、自爆だとかこの身が滅びようともだとか言ってたな。』
『うわ…最っ低…力だけ借りて名前さえ呼ばないなんて…。
尾獣をなんだと思ってるのかな。犀犬と磯撫と友達になってる私達とは大違いね。』
尾獣化して意識は尾獣側に変わり、暴走して無差別に攻撃される事を恐れて味方である岩忍も距離を置いているようだ。
恐らく、土影がやられて劣勢を打破するには尾獣化しかないと思ったのだろう。
〝友達…?〟〝人間と友達?〟
私の〝友達〟という言葉に、尾獣達は反応する。
『貴方達も大変ね…相棒である筈の人柱力にまで名前を呼んでもらえないなんて…。』
『なんなら霧隠れに来るか?
俺らなら…お前達と友達になれる。俺らはまだ子供で若いからな。
変に年齢だけ重ねて頭でっかちになっている奴らとは違うんだよ。』
『ウキキーッ!俺らの人柱力と違って良く分かってんじゃねぇか!
俺様は水簾洞の美猿王、六道仙人より孫の法号を与えられし仙猿の王、孫悟空斉天大聖だ!』
『私は穆王。…ハンも、貴方達の様に歩み寄ってくれれば…いえ、ここで言っても仕方ないですね。
なんだか…戦う気が失せました。』
なんか満足気な2匹。
闘気が失せた2匹に、私達はそっと手を出す。
お互いの手を合わせてチャクラを流される。恐らく、2匹の力を借りて沸遁と熔遁が仕えるようになる筈だ。
2匹の満足そうな表情を最後に尾獣化は解け、赤髪でヒゲが生えている小柄なおじさんと赤鎧を身にまとって肌の九割が隠れている大男が2匹がいた所に現れる。
私達も尾獣化を解いて辺りを見渡せば、君麻呂とメイさんが無双した痕跡があちらこちらに残り、士気が上がっていた霧隠れが形勢逆転を果たして戦いは粗方終えて後処理に追われていた。
私達は岩隠れの人柱力2人に向き合う。
「別に殺しても支障はないけど…」
「ま、捕まえたら賠償金も増えるらしいからな。」
とりあえず晶遁で簀巻きにして野営地へと飛ぶ。
私達でほぼ全員揃ったらしく、キラキラとした目線が私達に降り注ぐ中、人柱力2人を部隊長に引き渡す。
〝英雄だ〟〝あの子達のお陰で死亡者ゼロか…〟〝やぐらきゅんハァハァペロペロ〟
そう、
その目線に気付いたやぐらさんが怯えた表情を見せると、それに
やぐらさんの手を安心させるようにそっと握り、ニコニコとしてじっと見つめる。
〝トウカちゃん可愛い〟〝大好き〟
「トウカちゃん、行こっか。」
「うん!」
メイさん達の元へ手を繋ぎながら歩いていった。
私達を見詰める2人の岩隠れの忍は、何とも言えない表情を浮かべていた。