「犀犬って…骨あるの?」
『一応あるやよ、柔らかいけど。』
小型の犀犬を揉むと、ふよふよしていてスライムのようだ。
骨無さげなんだけどな…。
犀犬をモチモチしていると、任務続きで疲れた心が癒される。
人柱力捕虜化大作戦から10日。
毎日のように任務をこなし、敵を葬って来た。
雲隠れとは停戦協定を結び、捕虜となっていた2人は解放された。
だが、だからと言って戦争が終わるわけではない。他の国との戦いはまだ続いている。
『…木ノ葉や岩、砂との最前線に送られるのも時間の問題やね。
今までは本部隊の援護やったけど…。』
「ま、仕方ないよ。
晶遁使いの人柱力って他国でも広まって来てるしね。
木ノ葉では私達を見たらすぐに逃げろって司令も出てるみたいだし。」
(恐らく)世界でただ一人の晶遁使い。
対策なんて分からない、逃げる事も難しい。
そんな忍の正体がこんなちんちくりんである。
ナルトが生まれて1年。
戦争はまだ終わる気配が無い。
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「トウカちゃん、これ食べる?」
「うん。」
やぐらさんからクッキーを受け取り、かぶりつく。
会いたかったからと、やぐらさんが私の家にやってきた。
好き好きオーラを向けられ、やりづらいと思いつつもやぐらさんの膝の上でティータイムを楽しむ。
…順調に餌付けされつつあるな。
何故か自然に膝に乗せられ、そのままクッキーを食べるハメになった。
〝トウカちゃん…可愛い〟〝閉じ込めたい…俺以外、トウカちゃんに触れさせたく無い〟〝トウカちゃんに俺以外考えないでほしい…俺でいっぱいにしたい〟〝でも、そんな事をして嫌われたくない〟
ヒェッ…がっつりヤンデレじゃ無いですかー…この年齢から下手したら監禁√ってハードモード過ぎでしょ…。
「トウカちゃんは俺にこうやって触られるの…嫌、か?」
「嫌じゃないよ?
やぐらさんの事、大好きだもん。」
「そ、そうか…!」
私が言うと、やぐらさんは花が咲くような可愛い笑顔を見せる。
…
まぁ、ヤンデレ好きな人間には堪らないのだろう。
〝トウカちゃん…大好きって〟〝これから男として見てもらう〟〝トウカちゃんに…もっと好きって言って欲しい〟
やぐらさんからの好感度が上がったのがわかる。やぐらさんはヤンデレでもあり、チョロインでもあったらしい。
ご機嫌で帰っていくやぐらさんを見送った後、犀犬がポツリと呟く。
『トウカ、好感度上げすぎたらやぐらが年頃になった時にR15で収まらなくなるやよ?』
「…ぁ」
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「な…なんでここに…!」
「出来るだけ離れろ!
メイ班に任せておけ!」
木ノ葉との最前線に配置された私達は、黄色い閃光との異名を持つ彼を見やる。
火影になり、最前線へと向かうような立場では無いはずなのに。
霧隠れの忍達も逃げ腰だ。
晶翠眼に切り替え、何時でも動けるように警戒する。
波風ミナトを相手にするには、先読みが出来て
メイさんも同じ事を思ったらしく、君麻呂とやぐらさん、メイさんは他の忍…約200名と交戦しはじめた。
〝こんな小さい子が…〟〝戦争、早く終わらせる〟
刹那、ミナトはクナイを放ち、ミナトの姿が消えて私の目の前に迫って私に斬撃を放つ…事無く、泡に阻まれる。
「晶遁・破晶降龍!」
素早く印を結び、桃水晶で出来た龍を3体出してミナトを襲う。
ミナトはクナイで攻撃するが、攻撃した側からクナイが水晶で覆われ、手を離す事で難を逃れる。
〝厄介〟〝何か穴が無いか〟
ミナトの手に青いチャクラが集まり、球状へと変化していく。
「螺旋…っ!」
「螺旋丸って…意外と簡単ですね。」
私の手に晶遁・螺旋丸が出ると、かなり動揺している。
〝コピーか…写輪眼と同じ〟
いえ、
私が投げた螺旋丸を間一髪で避けた…が、避けられた螺旋丸は鏡に吸い込まれてミナトの後ろに現れ、脇腹に直撃する。
ミナトは水晶の縄で簀巻きにされ、身動き出来ない。
モブ忍者との戦闘が終わり、集まったメイ班に最前線の部隊長が近寄る。
「皆様、お疲れ様でした。
…何も出来ず、申し訳ございません。」
「いいえ、皆様が後ろに居ると分かっているから安心して戦えるのです。
…この子が火影を捕虜にしたみたいなのですが…。」
「チャクラを乱す水晶に被われてるから飛雷神も使えないよ。」
「そうか…ありがとう」